2015年11月22日

WiFi通訳アプリABELON(3)ー 活用可能性(課題解決編)

前回まで、一般的な使用感、そして実際の通訳シーンへの適用における課題を見てきました。確かに今は課題が多く残されていますが、利用する側がある一定の条件を揃えることで解決したり、あるいはABELONサイドで機能強化することで解決できる問題や、さらに広がる可能性もありそうです。

【一定の条件を揃える(限定する)
▶一方通行のみの通訳


通訳者への耳フィードはマストというのは前回述べた通りです。ここをクリアできれば適用場面はかなり広がるのではないでしょうか?例えば、講演会などの通訳では英語>日本語オンリーの訳出を求められるということが稀にあります。その場合オーディエンスの数が多い事が常ですので、参加者自前のモバイル機器を通訳受信機として利用できれば、主催者側のコストは大いに削減できます。また、急な人数の増加にも対応に困ることはありません。

▶社内のスモールミーティング
freedesignfile.com
企業内では最近は当然のように社内WiFiが設定されています。生耳にはなりますが、社内WiFiを利用できればごく少人数10名程度までの会議であれば、通訳はPCを、会議参加者がモバイル(とイヤホン)を持寄れば機器手配の必要は有りません。ただその際、レイテンシーの問題でタイムラグが発生しないよう、WiFiはローカルであることがやはり望ましいのです。またローカルであればセキュリティ(盗聴防止)もWiFi上で保証されます。

【ABELONサイドでの機能強化】
▶通訳者への耳フィード確保
同じようなWiFiを利用したアイデアで通訳者への耳フィードの改善策はすぐに思いつきます。例えば、同じようにスピーカー用のサーバーを起動してスピーカーにBluetoothなどの無線マイクを持たせて(新規追加の)スピーカー専用チャンネルに入力してもらい、通訳者は通訳席でモバイルからスピーカー音声をフィードすることは簡単にできそうです。問題になるのはレスポンスでしょうか?

ですが、こういうところこそシステム屋さんの腕の見せどころ…です。ぜひ、ABELONさんの今後の取り組みに期待したいところです。



このように、同時通訳者には通訳機器だけ与えておけば快適に通訳できるわけではありません。各通訳シーンに応じて適切な環境が整えられていなけれ思うようなパフォーマンスをだすことがなかなかに難しい、という現実があります。これは同時通訳者が時に「厄介な人達(笑?)」と、サービスを受ける側の人達に捉えられてしまう理由でもあるでしょう。ですが、集中力を要する通訳という作業にはやはり周囲の協力や理解は欠かすことができないのです。

結論は冒頭で述べた通りで、まだまだ課題は多く直ぐに役立つシステムとは言えません。しかし課題があるということは、課題を一つ一つ解決していけば使えるシステムに育てていけるということです。いずれにしても、主催者、通訳者、機材準備サイドのコーディネーション無しには会議の成功は難しいのです。それを考えれば、技術的に克服すべき問題はそれほど大きくはないように思います。今後のABELONの展開に期待します。

尚、JACI(日本会議通訳者協会)ではABELON開発元を招待して機能紹介等を行うようです。私はプライベートな都合で参加できないのですが、参加されたみなさんの感想や、私の想定内容と違ったよ!といったようなご報告があれば、お寄せ頂ければ嬉しいです。

JACIセミナー「通訳ガジェットを語ろう」
通訳の生産性を高めるガジェット、アプリ、ライフハック


日時】2015年12月12日(土)
場所】ハロー貸会議室麹町

<スケジュール>
14:15~14:30 受付
14:30~17:30 講演会(途中休憩あり)
17:30~18:00 Q&A

申込みはコチラ

*会議通訳者協会主催

2015年11月17日

WiFi通訳アプリABELON(2)ー 活用可能性(課題編)

 前回は製品としての「ABELONを使う」という切り口で「性能と使用感」を評価してみましたが、今回は実際に通訳シーンで活用が可能なのかという視点で検証してみました。が、結論から言うと「本格的な会議シーンへの活用へはまだまだ多くの解決すべき課題がある」と思います。まずは解決するべき課題から具体的に見ていきましょう。

【言語切替の操作性の悪さ】
通訳者はPCでABELONサーバを立ち上げPC接続マイクに音声を入力していく、という手順は前回説明した通りです。通訳者は当然二ヶ国語を行き来するわけで、そのためには入力音声を(日英なら)日本語、英語と切り替える作業が発生します。ところがこの切替はABELON画面の中にプルダウンメニューとして表示されていますが、切り替えの度に「マウスでクリック表示」→「プルダウン上でカーソル移動」→「選択」という実に3ステップが要求されます。従来型の通訳機器ですとハード的にボタン一つで切替えることができるため、この操作は繁雑を極めると言わざるを得ません。
上から二つ目のプルダウンメニューが「Language」
【スピーカー音声の通訳者フィードの別途準備の必要性】
通常同時通訳ブースは固定ですので、定位置そのものは問題有りません。しかし、ブース通訳の場合は必ず通訳者の耳にスピーカー音声をフィードするシステムが用意されています。当然のことながら、この通訳への耳フィードは別途準備の必要が出てきます。

▶フィード準備の手配・コスト
事前の準備が必要です。ホテルや貸し会議室などでは大抵の場合、デフォルトでマイク利用できるよう機器が設置されており、会場側に相談することで簡単な機器一つでマイク音声をフィードしてもらう体制を作ることは多くの場合難しく有りません。しかしこの場合はもちろん、ホテル、貸し会議室で追加料金がかかるかどうかの確認は必要です。

▶定位置通訳による音声環境不全
基本的にスピーカーの声が聞こえないため、通訳不可能になります。マイクが使えない環境では「スピーカーの声が聞こえない」という事態はよくあること。現場の通訳者の間ではこれを「生耳(なまみみ)」と呼んでいます。

この場合多くは持ち歩き可能な簡易通訳機器(パナガイド等)を利用する前提で、会議中に部屋の中をスピーカーの声の聞こえる場所に移動できることは必須条件なのです。そういう現場に行く際にはエージェントを通じて「会議中動きまわる可能性がある」事を伝え、ディスカッションになればスピーカーが代わることにアッチへコッチへと通訳者は忙しく動きまわる事になります…。が、ABELONのようにPCサーバーを立ち上げるシステムでは移動ができません。

補足ですが…移動するとなるとメモは取れませんし、例えスピーカーがマイクを使用しても部屋が広ければ音は発散してしまい、通訳者への物理的負担はかえって増大する場合さえ有ります。ですのでこの「生耳同通」は避けて通りたい通訳現場の一つとされています。が…、そういう現場にも対処せざるを得ない状況というのは日常的に発生しています。

その他同時通訳環境不備に対する追加準備
従来型の同時通訳ブース環境に配備されているのは、何も同時通訳機器だけでは有りません。マイクスタンド、デスクスライト、メモスペース、会場内と通訳者の環境を分離するブース・簡易パーティションがありますが、これらを別途準備する必要が出てきます。

従来型のマイクは通常指向性のあるものが使われており、通訳者もここに向かって喋ればいいというのがハッキリ分かるタイプのものを好むと思います(少なくとも私はそうです)。そのためにはイヤホン兼マイクのタイプではないものの準備が必要になります。さらに言語切替スイッチ操作やメモ取りのため両手は空けておきたいため、マイクスタンドは必須でしょう。

また、暗い会場であれば資料を見るのに手元のライトは欠かせません。さらに、通訳者の通訳音声はイヤホンを通じてのみ提供されなければオーディエンスに邪魔になりますし、逆に通訳者は会場の一切の音を遮断してスピーカー音声だけを聞きたいため、ブース・簡易パーティションは外せません。

このように課題がいくつかあり、すぐには現場適用…という訳に行かないのが現状です。では、全く活用の可能性がないのか?というとそうでも有りません。次回はそのABELON活用の可能性を見ていきます。

2015年11月10日

WiFi通訳アプリABELON(1)ー 性能と一般的使用感

すでに数年前にここでも書いていましたが、IT技術の進化によりアナログで対応していた通訳機器は必要のなくなる時代がすぐそこまで来ているようです。(ケータイを通訳機器として利用し同時通訳をしたことがあります、笑)つい先日、JACI(日本会議通訳者協会)のウェブサイトで、WiFi Interpretation System ABELONというアプリを知りました。以下のYoutubeでも簡単に特徴を紹介しています。



早速インストールして、一般的な「性能や使用感」をまとめた上、実際の「通訳シーンでの活用の可能性」を考えてみることにします。

まずは「性能と使用感」についてです。
ABELONサイトはこちら

【アプリとインストール】
使用開始は至って簡単で、PC側のサーバーアプリ(送信側)とクライアント側アプリを(タブレット/スマホ等の受信側)それぞれABELONサイト他からダウンロードしてインストールするだけ。特に難しい設定は有りませんでした。

サーバーアプリ:Windows/MacOS対応
クライアント側アプリ:Android/iOS対応

市場に出回っているWiFiに繋がる機器であれば特に問題なく動作する仕様です。(詳しい仕様についてはABELONサイトでご確認下さい)

【運用上の注意点】
▶ WiFi設定について
同一WiFi上にサーバーとクライアントが乗っていないとダメであるということ。ABELONのサイトにも情報がありますが、通常は専用ルータを準備してローカルWiFiネットワークを設定した上での運用を想定しています。
携帯電話に付いているテザリング機能では?と思う方もいるかもしれませんが、親子関係が発生するネットワークでは子端末どうしが通信することはセキュリティ上良しとされていないため、不可と考えるのが妥当でしょう。実際、私も試してみましたがダメでした。

▶ 複数言語対応
複数言語を発信する際は、サーバーを言語の数だけ立ち上げます。サーバーが複数起動していればWiFi上でそれを検知し、クライアント側のアプリインターフェースに自動的に利用可能言語がリストで表示されます。

【最大クライアント数について】
マルチキャストを使っていないかぎり最大でも40−50クライアントがせいぜい?と思っていましたが、ABELONサイト情報によれば、高スペックのルータを調達すれば数百〜まで行けるようです。恐らく帯域とチャネルのコンビネーションでクライアント数を確保していると思われます。ただし、数百まで対応できるスペックのものだと値段が跳ね上がります。40-50クライアント対応のルータは安ければ1万円を十分切る価格ですが、その上となると一気に8 - 10万円に跳ね上がります。

【インターフェースと一般ユーザビリティ】
機能自体も大変単純なもので、特にメニューに迷うことは有りません。

▶ サーバー(送信側)


言語毎のチャネル割当はデフォルトで行なわれており、通訳者は対応言語をリストメニューから選択します。使用方法としては会議スタートした段階で左側「再生ボタン」コフアウトは右側「Muteボタン」クリックで対応するのが妥当のようです。というのも「再生ボタン」の感度が今ひとつ…で、クリックしてもすぐに再生表示にならない(PCスペック依存と思われますが…)感じです。それに比べると「Muteボタン」の反応は比較的スムーズでした(ま、機構上そうなりますよね)ので、通常の通訳ブースでやるようなスイッチON/OFFの切り替えを「Muteボタン」でするイメージになり、特に混乱はないと思います。

▶ クライアント(受信側)
  
一旦言語設定してしまえば特に操作を要求される場面は有りません。言語選択は上述の通りリストから選択するだけ。あとはボリューム調整くらいでしょう。

【音質等の使用感】
ノイズ等はほとんど感じません。非常にクリアです。ただし、サーバー側で通訳音声入力のタイミングからクライアント側で通訳音声が聞こえてくるまでに微妙なタイムラグがあります。一秒以下ですが、パナガイドと比べた時とは感覚的に明らかにワンテンポ遅い印象です(自宅のWiFi環境でテストしています)。ただし、これはサーバーのスペックに随分依存すると思われますので、スペックの高いPCを用意し他のアプリを全てシャットダウンして運用するなどで多少の改善は見られそうです。

そんな感じで、アプリ自体の性能と使用感は「かなりイイ!」という第一印象です。次回は「通訳シーンでの活用の可能性」について検証したことを紹介したいと思います。

2015年11月8日

These countries speak English as a second language best

INDEPENDENTのサイトにおもしろい報告書に関する記事を見つけました。「第二外国語としての英語を上手に話せている国民はこいつらだっ!」…な、感じ(笑)?

These countries speak English as a second language best
by Bethan McKernan in discover

元になった詳しい報告書はコチラ↓
EF ENGLISH PROFICIENCY INDEX
5th Edition (2015) by EF EPI(EF English Pro ciency Index)

まだ一部しか読めていないけど、Asiaの項目をざっと眺めただけでもおもしろいです。例えば、韓国では英語教育への投資が凄まじく、実力も日本の学生に比べると格段に上がってきた…のような論調(COURRiER Japon)がよく聞かれていますが(数年前に中国についても同じような持ち上げ方をしてたこともあった)グローバルに見ればドングリの背比べだということがよく分かります。

年齢層別にも分析がされてて、過去のその国の英語教育政策が奏功したか否かも見えてきそうです。

ただ、各国国民の英語力レベルよりも気になったことが、一貫してINDEPENDENTの記事にも報告書の数カ所にも出てきます。
INDEPENDENT記事
"In the developing world, English is less of a foreign language skill and more a tool synonymous with development, expanding a country's economy and increasing its connectedness to the rest of the world."

***   ***   ***   ***   ***

FE EPI 5the Edition

Executive Summary
"The status of English today sets it apart from other foreign languages."

Conclusion
"Although it takes a great deal of effort
to change course, steering a country, region, or company towards a future with an English-speaking workforce cannot be considered misguided. Economically speaking, English is here to stay, at least for the next several decades. We hope that by examining the level of English skills among adults around the world, we can contribute to discussions about these strategic decisions."
…そうなっちゃったよね、という感じ。私が若い頃は何か日本語以外の言語を学ぶことに意義があると感じていました。もちろん、その考えに今も変わりはないのだけれど、損得を考えると英語をやらない訳には行かない…という現実。実際、最近は非英語/日本語の通訳者でも英語を理解できることが求められると聞いたことが有ります。

英語以外の言語を選択する人がこの動きの中で減少するとしたら、残念な事だと感じます。

2015年10月20日

ムネリン(MLBブルージェイズ:川崎宗則)に学ぼう!



これを見てしまうと、ほとんど言葉は要らない気がします…(笑)

でも、彼の英語は本当に昨年に比べると格段に上達しています。昨年は単語の羅列に毛が生えたレベルでしたが、このインタビューの中ではセンテンスでしっかり話しているのが分かります。日々、チームメイトとの会話だけではなく、本当にきっと教科書と首っ引きで勉強しているに違いありません。

通訳者も彼のような選手だと、テンションが上がるでしょうね。実際、知り合いの元スポーツ通訳者から「選手が周りに溶け込む気がゼロだと一緒にやってて全然楽しくないしダメだね」という話を直接聞いたことがあります。

ムネリンがんばれー。

2015年10月18日

スポーツ通訳募集「報酬: 能力、経験等を考慮のうえ決定します」


阪神タイガースが、通訳者を募集しています。
球団職員(通訳)募集について
阪神タイガース公式サイト http://hanshintigers.jp/news/topics/info_4010.html
報酬:能力、経験等考慮のうえ、決定します。
私はスポーツ関連は究極インハウス通訳だと思っていることは、このブログの中で何度も書いている通りです。入団して育つかどうか?は球団側の一番判断の難しいところ。確かに、報酬の多寡に関係なくやりたいという「ガッツの有るヤツ」を取って、そういう人が育てば一番投資効率はいいわけですが…。でも、どのくらいの確率で「育つ人材」に当たるのでしょうか?

先の南アフリカ戦で歴史的勝利を記録した全日本ラグビー主将リーチ・マイケルは、主将の立場で英語ができることは大切…と語っています。これはスポーツという同じルールの元でゲームをするという、表面上は言語能力がほぼ関係しないような枠組みの中でさえ、実は「ことば」がとても大切だということを示しています。

リーチ・マイケル主将の発言は対相手チームや審判での事でしたが、ラグビー日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏の通訳を務めた佐藤秀典氏も、やはり何度もメディアに取り上げられチームの勝利に貢献したと報じられたことは多くの人もご存知の通りです。

松山英樹についていた通訳者ボブ・ターナー氏、アメリカでアスリートを支える通訳者養成アカデミー(ターナー・コミュニケーション・インターナショナル : TCI)を創設しているのはご存知でしょうか?日本にこういう養成学校を作り「育つ人材を育てる」動きは私の知る限りでは有りません。なぜでしょうか?
松山英樹に寄り添う米国人通訳の人生
【米国男子 PGA】|GDO ゴルフダイジェスト・オンライン
http://news.golfdigest.co.jp/news/pgaofcl/pga/article/53906/1/
2020年オリンピックに向けて本気でスポーツを盛り上げていきたいのなら、いずれかの通訳学校が考えても良さそうなものです。しかし、技能訓練して稼働能力を身につけたとしても、その後のキャリアパスを明確(報酬レベルを含め)示すことができないのが原因ではないか?と考えられます。無論、卒業後の報酬を明示したうえでのキャリアパスの紹介…という意味では、通常の通訳翻訳学校でさえ上手くやれているところは多くないのですが。

海外で例えばMLB通訳募集や、ゴルフ選手、その他アスリートの通訳募集をする際も、やはりベースラインの報酬提示は初期募集の段階では皆無なのでしょうか?一般募集でなく、口コミ紹介などのコネに頼る募集であれば口頭で伝えられるパターンも想像されます。

スポーツに限りませんが日本のように「報酬は要相談」というのはズルいと思わざるを得ません。スポーツ通訳でそれをやられると「ガッツあるなら給料をうるさくいうな」的に見えてしまう私の心は曲がっているか…(笑)しかしこのアプローチは確実に「スポーツ通訳にとても興味がある、やってみたい」と考える能力ある人材を遠ざけるものでしょう。

「通訳」という肩書がつく以上、その肩書に憧れを持ち「通訳する」「両言語を操る」ことにチャレンジしたい、あるいは自信があるという人材のはず。憧れだけの人材は「ことば」でつまずく確率は高く、ことばに対して思い入れのある人材であればスポーツ通訳でなくとも確実に収入を得られる職業は他に少なく有りません。

スポーツ通訳者は本当に凄い。私が知っているのはほんの数名の方ですが、スポーツと人とが心から好きで、チームやメンバーとともに一喜一憂できるハートのある人でないと絶対務まらない仕事だな…と思います。技能だけではけしてなれない、人間性の良さ、ガッツが問われる分、そこには特別なバリューがあります。私がスポーツ通訳者を究極のインハウスと思うのはこのためです。

いずれにしても、良い通訳がアスリートにつくことは、日本のスポーツが世界に進出する上で重要な要素だと考えられます。スポーツ通訳のバリューがしかるべく認められれば、スポーツ通訳を目指す優秀な人が増え、確実に「育つ」確率も上がるはずです。そして、すでにスポーツ通訳者として仕事をしている人もさらにプライドを持って仕事をできるようになるのにな、と思います。

何より、スポーツで日本が世界の舞台で戦う姿をみるのは、私はただのにわかファンですが、それでも日本人としてとても誇らしいしすごく応援したい気持ちになります。そして、それに貢献してる通訳者という仕事を思うと、さらに同じ通訳者としてとても誇らしい気持ちになるのです。

2015年9月22日

広島弁護士会主催イベント 模擬裁判

広島弁護士会館落成記念イベントのご案内が届きました。予約不要、入場無料のイベントなのでご案内します。最近になって話題になったカーブ坊や改め(?)カープローヤーが早速…(笑)!



2015年9月7日

十人十色 広島編2015

十人十色とは翻訳者の自助グループです。主にFacebook上で広報宣伝活動をしていて、会員数は先ほど確認すると400名を超えているようです。メインメンバーは東京の数名だと思いますが、会の開催ごとに参加者がボランティアで自分の知識や考え方をシェアするというやり方をとっています。

その十人十色が広島に出張してきます!今回は二回目。
十人十色 広島編 2015
【日時】10月1日(木)13:00 - 17:00
【場所】広島南区民文化センター 交通アクセス

【内容】
今回はプログラムを前半と後半に分け、前半が翻訳者による発表です。各人持ち時間は30分程度、翻訳方法やPC環境、勉強法、ツールや辞書等についてテーマ自由で発表していただきます。後半はあらかじめアンケートを配布し、皆さんから寄せられたご経験や工夫、困っていることなどを発表者(井口富美子)が自身の経験を交えて「これでいいのか私の翻訳」と題してまとめ発表いたします。なお、今回は人手がないこともあり録画はしない予定です。

【プログラム】
 13時:開場・受け付け開始
 13時15分~15時:第一部発表
(持ち時間は1人約30分。発表者の人数により第2部と時間調整あり)

 15時~15時15分:休憩

 15時15分~16時45分:第2部発表「これでいいのか私の翻訳」
 17時 までに片付け、終了
普段は会員以外に門戸を開いていないのですが、今回は通訳者翻訳者であればどなたでも歓迎!とのこと。最前線で活躍する翻訳者の話を聞いたり、自分が感じている日頃の質問をぶつけてみてはどうでしょう?私も都合が付けば参加したいところですが、ギリギリにならないと予定が見えておらずハッキリ参加表明できないのが辛いところ…。

会の内容については東京から来られる井口富美子さんがブログに書いておられるので参考になさって下さい。

お申し込みはFBのコチラまで…!

2015年9月5日

コミュニティー通訳を通じて私が考えること

通訳業界が一般にお客さまとするのは企業であれ官公庁であれ、高額な通訳料を費やしてでも事業を成功させようと考えている方々がほとんどです。彼らの社会的地位は一般に高く、そこで通訳者に見えてくる技術や経済の動きのダイナミックさは圧倒的で、時に通訳の自分が時代の最前線を走っているような錯覚さえ起こします。「通訳席から世界が見える」で新崎隆子先生が描いた世界はまさにそんな情景ではなかったでしょうか。地に足を付けた自分がありつつ、さらに目の前に広がる広大な社会…。でも、それすら世界の一部に過ぎないということを、私自身が身を持って知るのはいわゆるコミュニティー通訳という仕事を通じてです。

社内通訳職を離れてすぐ、時間のある時にかねてから興味のあった「コミュニティー通訳」に次々と登録をしました。地方裁判所の法廷通訳登録に始まり、入国管理局、警察、弁護士会、そしてその後は口コミで税関にも人脈を得ています。コミュニティー通訳に最も一般的と言われる医療通訳だけは、公的機関に関連したシステムが確立されている例を広島に見つけられていません。弊社のサイトを通じて依頼を受けることはありましたがお仕事に至った案件はありません。

フリーランスになってから、お引き受けする案件数はビジネスの案件数に比べると本当に少ないのですが、これまで予定が詰まっていなければ、必ずお受けしてきました。今年に入ってからも上半期だけで数件お引き受けしており、フリーランス開始当初と比べても問合せの案件数は確実に増えています。ただし、全体的に案件数が増えたのか、私の名前が関係者の間で認知されるようになったのかは定かではありません。

実は、先に上げた、医療通訳以外のコミュニティー通訳についてはレートシステムが確立していない、通訳環境への理解が低い…など業界的に問題が多い分野です。分野の中でも法廷、警察、入管、税関それぞれで求められる通訳像は微妙に違っていますので、それを念頭においた上で対応していく必要があります。また、警察、税関通訳では依頼のかかる時間が深夜や早朝で、しかも一旦取り調べが始まると長時間続くのが常です。そうした難しい背景を抱える分野で有りながら、コミュニティー通訳は世界中から訪れる人の人権を確実に守るという義務を果たす上で責任の大きい分野なのです。

レート・環境的に厳しいとなると「ああ、ボランティア精神か?」と思われるかも知れませんが、私の動機はそれとは随分違っています。一方、コミュニティー通訳者の中には「これが自分の使命」と感じてお仕事をされている方が多く、彼らの丁寧な仕事ぶりには本当に頭が下がります。もちろん、私も仕事としてさせて頂く以上、責任を持って取り組んでいます。でも、私がコミュニティー通訳を辞めない理由は、自分がビジネス分野で日頃お目にかかる方々は社会や地球上の「人間の一部」でしか無いことを、コミュニティー通訳を通じて知ることができるからなのです。

扱う案件としては、入管関係のオーバーステイや不法就労、そして、麻薬、覚せい剤等ドラッグがらみの法廷、警察、税関案件が多いです。それ以外では窃盗、詐欺、傷害などもたまにあります。コミュニティー通訳ではそこに関わる「人間の姿」が鮮明に見えてくるのが大きな特徴です。事件に関わる人の国籍はさまざまですが、対象人物のお国事情の中でのその人の来歴、家族、来日の目的等々を知ることになります。多くの人が経済的に恵まれない人です。そして、必ずしもすべてが悪意に満ちた人かというと、むしろ捕まってしまう類の人達というのはもとはごく普通の市民だった人…であるような気がしてなりません。

中国人はウソをつくというのをよく耳にしますが、アフリカの人も平気でウソをつくのを何度も見ました。人種や出身国にかかわらず、泣き落としで情に訴える、困ると神様が話の中に登場するとか…そういうパターンもよく有ります。東南アジアの人は明るく家族思いのお人好しで半分騙されるようにして犯罪に巻き込まれている人が多い印象です。(あくまでの個人の印象です。)でも国籍にかかわらず、不本意ながらであったり、自分が意図しないうちに犯罪に飲み込まれていたという人は少なくないのです。

人種も、性別も、出身国も関係なくそこには紛れもない「人間」の素の姿が見える気がします。日本人とそういう出会い方をすることは稀ですが、けして海外からくる人達だけの人間像では無いはずだ…といつも思わずにいられません。この人達は海外の日本人の姿かもしれません。言い過ぎでしょうか?あるいは、日本人が将来経済難民となっ海外流出しない、と誰が言い切れるでしょう?その時の日本人の姿…かもしれません。

シリア難民の苦境が連日伝えられています。遠い土地で起きている「関係のないこと」ではなく、「同じ人間」が経験している辛い状況がそこにはあります。そんなことを考えながら、つい先日の案件を通して通訳が相手にしているのは「私と同じ人間」であるということを改めて感じました。これは、ビジネスのお客さまではなかなか得られない感覚です。ビジネスでは通訳者としてその場の熱い想いを共有できる場面もありますが、コミュニティー通訳で迫ってくる素の人間像は、それとは一線を画しています。

よい例えかどうか分かりませんが「海外出張であそこの会社は飛行機のビジネスクラスをケチるのよ…」という発言は、過酷な出張先での業務遂行を考えれば当然な場合もあるでしょう。業界のレベル(?)に合わせて権利主張することはけして悪いとは思いませんし、むしろ通訳者ステータスの底上げには大切なことなのかもしれません。それでも、自分自身が一般的に相手にする業界社会が世界の全て…と勘違いしてしまうことの愚かさを自分自身に戒めたいし、私は他の人と何一つ変わらない「人間である」ということを、コミュニティー通訳の仕事を通じていつもひしひしと感じています。

2015年7月27日

9月6日(日)セミナー「通訳者への道」ー サイマル・アカデミー主催

サイマル・アカデミー主催で開催されるセミナーのご案内と思うことアレコレ…です。

セミナー概要
「通訳者への道」は第二部となります。
【日時】2015年9月6日(日)第1部13:00~/ 第2部14:30~
【会場】銀座フェニックスプラザ 3階会議室
【定員】80名(事前予約制。先着順)
【対象】サイマル・アカデミーへの通学をご検討の方
【参加費】無料

第2部 通訳者への道 『通訳経験ゼロからでも目指せる通訳者への道』
講師:松下佳世(会議通訳者、サイマル・アカデミー講師)
内容:35歳で未経験の私が通訳者になるまでの軌跡、仕事や家庭と両立しながらでもできる通訳訓練法、仕事の種類と選び方、スケジューリングと準備のコツなど

詳細はコチラ 

講師はどんな方?
会議通訳者の松下佳世さんの「35歳で未経験の私が通訳者になるまでの軌跡」とあったのでどんな方なのか気になって、少し調べてみました。(情報出典:通訳技能向上センター

で…

「大手企業での十数年間のキャリアと、
名門といわれる米国の大学の修士号、
英検1級をはじめとする英語系の資格」

があり

「帰国後、複数の通訳学校を受験する中で、
通訳訓練を全く受けたことがない
私の見よう見まねの通訳を聞いて、
一番上の同時通訳科に入れてくださったのが
サイマル・アカデミーの小松達也先生でした。
1年で卒業し、サイマル・インターナショナルと専属契約
を結ぶタイミングで退社。」

とのこと。つまり、英語キャリアもそうですが元は朝日新聞のニューヨーク特派員という、通訳の素地としても好ましいキャリアベースのかなりしっかりした方でした。

マーケティング的に「未経験から…」というと学習者を引き付けやすく便利な言葉ではあります。ですが、このレベルを前面に出して「未経験から…」というのは何だか腑に落ちない私です。確かにプロ通訳としては未経験なのかもしれません。さらに「仕事や家庭と両立しながらでもできる通訳訓練法…」と、在宅で勉強をする女性にはなんとも甘美な宣伝文句…。でもよく考えてみてください。

通訳学校でしていることの大半は英語力向上にすぎない
「通訳経験がないので天下のサイマル・インターナショナルの同時通訳科に入学したが一年で卒業できた!」ということは、「同時通訳科で通訳を学んだ」と仮定してそれを裏返すと「同時通訳科より下タのクラスはむしろ英語力を鍛えるクラス」ということです。これは私の経験上、インタースクールや他の通訳学校でもほぼ変わらないと考えます。

そして、乱暴な言い方(…とも思わない)ですが実は通訳学校というのは通訳手法だけを教える場所というよりは、英語力全般を強化するための場所と考えるのが一般的には妥当なのです。

彼らが通訳学校と名乗る所以の多くは「通訳手法を、通訳訓練法を教える」「卒業後にお仕事を紹介できます。」というものですが、実際にその恩恵に預かるためにはしっかりとした英語力(読む、書く、聞く、話す)が大前提である、ということです。

通訳学校に通えば「未経験から」でも一年で会議通訳になれる…?
現在、数多くの通訳学校が通訳の心得や理想的な振舞い、ビジネスマナーについてどれだけ踏み込んで教えているのか、正直もう私も把握はしていません。(あまり踏み込んでいるとは思っていませんが。)ですが、市場に出て経験を通じてしか学べないことも実は数多くあり、そうした事柄に育てられて本当のプロになっていくのだ…というのは、どんな職業・プロフェッショナルでも同じだと思います。

もちろん、学校で学ぶことから実際にどれだけのメリット(客観的評価が得られる、一緒に学ぶ仲間ができる、ネットワークが作れる…等々含め)を享受できるかは、学ぶ側の姿勢次第であり、学校に通う意義を過小評価すべきではないと個人的に思っています。

ですが、ゆめゆめ「フツーの35歳(通訳)未経験の主婦が一年間通訳学校に通ったら会議通訳者デビューできた話」と思ってはいけません!

夢を壊してごめんなさい。…そんなこんなで、私は事後レポートを楽しみにしたいと思います!

2015年7月23日

無料!7日間の英日翻訳プロジェクト(大学生対象)

日本通訳翻訳学会から地元広島での大学生を対象とした無料翻訳プロジェクトの案内が届きましたのでご案内します。

大学生対象 第1回:翻訳者養成集中講座
7日間の英日翻訳プロジェクト



7日間充実の英日翻訳プロジェクトです。これだけの規模でしかも内容も事前に綿密に計画されたものを無料で受けられるチャンスは滅多に有りません。

開催場所は広島にある安田女子大学ですが、翻訳に興味のある大学生なら近隣県から足を運ぶ価値が有るのではないでしょうか?求められるレベルはTOEIC600以上と大学生レベルでけして低くは有りません。ですが、こういうことは経験したもの勝ちです。

私が学生時代にこんなのがあったらな…なんて、学生時代は競技スキーに明け暮れてせめて教養英語を真面目に勉強しただけだったのですが(笑)

定員は15名で、お申し込みはコチラ

2015年7月22日

8月29日(土) 日本通訳フォーラム2015開催

夏の終わりに開催される通訳志望者およびプロ通訳者を対象にした1DAYイベントのお知らせです。


通訳技術から市場研究まで幅広くカバーするイベントで、通訳学校では教わらない内容も盛りだくさんのようです。イベント後は懇親会もあります。

主催はこの春設立された、日本会議通訳者協会(Japan Association of Conference Interpreters)で、今年から毎年開催を目指しているとのこと。

要申し込みです。詳しくはイベントサイトでご確認下さい!

2015年7月15日

発音の悪い英語は迷惑か?

英語に興味をもっている方や英語を使って仕事をしたり世界を広げたいと考える学習者に、どうしても伝えたくて書くことを決めました。

発音の悪い英語は迷惑か?

そもそも物議の発端となったのは、NY在住の会議通訳者兼英語講師(以下、YOさん)の『下手な発音で英語を喋るな。気持ちが通じれば良いなどと、下手な英語を聞かされる方は迷惑である…』という主旨のTwitterでの発言でした。

先に私個人(いえ多くの方が彼女に反論して言っていますが)の結論は「どんどん使おう!気持ちを伝えよう!」です。

YOさんをTwitterで見つけたのはごく最近のことでした。プロの実績と自信をベースに歯に衣着せぬ物言いでのツイートを頼もしいと感じるフォロワーも多くおられたと思います。私もフォロー当初はその一人でした。一見ぶっ飛んでいるように見える発言も彼女が前提とするところを正しく理解しさえすれば、特段に炎上するほどのことでもなく、至極まっとうなことを言っていると感じていました。それはこの上記の発言についても「ある程度は」当てはまります。

それでは彼女が前提とするところは何か?「ある程度」としたのは当の本人がその前提を明記していないからです。(私の推測の域をでませんが)その前提とは

一定の成果を出すことが求められる非常にインテンシブなビジネス・交渉の現場
です。


Communicativeであるとは?
発音が悪いと英語として聞きにくいのは、世界中のノンネイティブ英語を聞かなければならない通訳として痛感しています。しかし、実際の現場では発音そのものよりも「Communicativeかどうか?」の方に重きが置かれます。言葉の選択に優れ、ネイティブの言い回しに慣れていても、発音がいいとは言いがたい方は多く存在します。もっと言えば、有名で実績もしっかりした日英通訳者の全てが完璧なネイティブ発音をマスターしているか?と言えば、答えはNOです。

自分の言いたいことを 1.ポイントを絞りつつ 2.自分の言葉で説明し 3.質問に的確に対応できる 英語力が求められるわけですが、この三点を会議で求められる程度に満たすのであれば、そこで話された発音のレベルで十分にCommunicativeであると言えます。

実際に発音のマズイ方でも英語ベースの会議に出席する方は数多くいます…というより、ノンネイティブであれば発音をほぼマスターしているというレベルの人の方が珍しいでしょう。ですが、発音がイマひとつでも会議に大きく貢献される方は多くいます。そういう方には学生時代に読み書きを集中的になさったと思われ、彼らの英語は文章として十分に成立しているため会議の流れから発言内容を理解するのにそれほど困難を感じません。もちろん、読み書き以外にも沢山の英語を聞いて、英語での自然な論理展開の仕方を研究されていもいらっしゃるのでしょう。


なぜ迷惑と思われるのか?
一方、発音もマズく会議でこの人が英語をしゃべっては困るというタイプ…これも経験上ですが「自分は英語ができるんだぞ〜!」ということを誇示したいタイプが一部混ざっていますが、多くは会議本来の目的を超えて「この会議を英語練習の場として使いたい!」としている方ではないでしょうか?

通常、個人でビジネスをしているのでない限り、チームメートやビジネス・パートナーは関係者の英語でのコミュニケーション能力を把握しています。インテンシブな交渉や商談に耐えるコミュニケーション能力のないメンバーがテコでも英語を使おうとする場合には、チームメンバーやボスが予め通訳手配やその他の対応を指示するでしょうし、それもできないようなチームでは会議に臨む前から交渉そのものの行方は怪しいと言っても過言ではありません。

そして、上記前提の現場で一定のレベルでコミュニケーションができない(Communicativeでない)英語を使われると、会議目的の達成に支障をきたし、それでは甚だ迷惑だ…ということになるのは当然のことなのです。

ですが裏を返せば、チームメンバーやボスからそういった指示が入らず、自分でも十分に準備して会議に臨める自信が有るなら試してみるべきでしょう。健全な職場であれば、上手く行かなくとも通訳を使う、発言者を変える等の指示が入るでしょうし、その時に謙虚に指示に従いもう一度自分の英語レベルの検証すればいいだけの話です。英語ネイティブは絶対にその姿勢をバカにしません。それどころかあなたの姿勢を "Nice try!" と讃えてくれるでしょう。


「どんどん使おう!気持ちを伝えよう!」
一方、表敬、交流、意識合わせを目的にするレセプションや会議他では、まさに気持ちが通じることを目的としています。一緒に仕事をする仲間についてお互いが知り合う機会であり、そういう場で日本人が英語を敢えて話そうとする姿勢を見せることは、相手に対しての最大の歓迎を表すことになるでしょう。

逆の立場で、英語ネイティブが日本語を話せばどう思いますか?言語として大きく違う日本語を、拙いながらも会話ができるレベルに仕上げていくことの努力は、苦労して英語を学んでいる日本人であれば理解に難くありません。お互いを知る上で、相手の言語に寄り添って理解したいという姿勢を見せることは、その後の関係に大きく寄与することになるでしょう。


学問に王道なし、英語習得にも王道なし
こうすれば上手く発音できるようになるという手法はいくつも一般に提案されています。そして、自分の発音がマズイと感じる、あるいはそう指摘されているのであれば積極的に取り組んでいく姿勢は必要です。しかし、人によって合う方法、合わない方法があり、コレさえやればみんなが上達する…という意味での王道は存在しません。これは発音だけの問題ではありません。

英語は、a. 読む、b. 書く c. 聞く d. 理解する e. 話す 全てがバランスよくできてこそコミュニケーションが成立します。しかし、その全てが完璧でなければコミュニケーションできないわけではありません。さらに、積極的にこれら五技能は実践を繰り返すことでしか上達しません。たくさん書いて、聞いて、理解して、話して、実際に使いながら長く付き合っていくことができる…それが言語習得の醍醐味ではないでしょうか?

私自身も完全バイリンガルを目標とするなら、発音にかぎらず多くの側面で一生途上…だと思っています。なので、このブログポストを書きながら自分自身も鼓舞しています。元ツイートはご本人が削除したようですが、なぜ削除されたのかはご本人のみぞ知るところ…。でも、大量にリツイートされていたので、そのツイートだけを目にした人達がやる気を削がれたり自分の今までの前に出ようという意欲を恥じたりすることは避けられるので、結果的には良かったのかもしれませんね。

2015年7月10日

「警察通訳人」清水真 著


比較的薄い本で内容的にも特に難しさは無く平易な文章で書かれており、興味をもった人に率先して警察通訳人になってほしいという思いを込めて書かれた、という印象の本でした。

率直な感想として、通訳という職業への理解がこの著者は薄いという気がしました。一般の人にとっての理解もそれほど高くないとは思いますが、ほぼそれと同等レベルのご理解であるという気がします。「警察『通訳人』 」を名乗られる方がそのレベルの理解、あるいは敢えて正しい職業理解を提示せず、ある意味司法通訳の中でも専門の一つといえる分野について著書を上梓されることに、どういう意味やメッセージを込められたのか、甚だ疑問です。正直、通訳者の一人として面白くない…と感じています。

なぜか?…
もちろん警察通訳人に特有な要件は有ることは容易に想像つきますし、専門分野として啓蒙してもらうことには大いに意味があると思います。ですが、のっけから「 実在する『困った(警察)通訳人』 とは」として、警察通訳人でなくともそもそも通訳者のご法度を挙げてしまう事で、通訳者一般への認識を著しく損ねる結果になりはしないかが危惧されるからです。
『困った通訳人』
1.知ったかぶりをする
2.質問してないことを先走りして通訳している。
3.おなじ質問をすると「さっき聞いた」と通訳しない。
4.短い質問なのに、通訳が長すぎる。(その逆もあり)
社内通訳や特殊な通訳の場面では、通訳者にある程度の「権限」が与えられ会話の交通整理をしたり調整役を期待される事は有りますが、それ以外であれば上記はどれも通訳としてはやっては行けないことです。

さらに
1.刑事手続きの流れを理解する
2.高度な語学力を身につける
3.誠実に通訳する
の三点が「裁判員裁判や取り調べの可視化に対応するために」「不可欠」だと述べられています。が、この前提如何を問わず、2と3は通訳者として当然であり、1は通訳者が通訳対象トピックをできるだけ理解した上で現場で臨むべき職業だと定義すれば、やはり警察通訳人として当然のことでしょう。

極めつけは、十年前に来日した方の発言を以下のように引用している部分です。(数名のインタビューを紹介されていますが、どなたも10年〜20年前に来日された専門家あるいは関係者の方ばかり。かなり古いインタビューのようです。)
でも私は、優秀な通訳人というのは「話す力」がどれだけ有るかであると考えます。人によっては「聞く能力」だという人もおられるでしょう。確かに聞き取りができないと話になりませんが
この著書を警察通訳人入門書として位置づけるならば、通訳者全体に求められる基礎力や基礎的倫理観を正しく説明した上で、警察通訳人に求められる特性にフォーカスした内容であって欲しかった、と思います。

刑事手続きの流れや、法律用語解説、実践例も挙げられてはいますが、この本一冊で必要な語彙や知識を大枠でも一覧することも難しいと感じました。逆に少し専門に踏み込んでしまうかもしれませんが、各国語用に法曹界から出版されている「法廷通訳ハンドブック」の方がより体系的にまとまっていますので、そちらをお勧めしたいと思います。

誤解なきよう明示しておきますが、私自身が警察通訳人として稼働したことはほんの数回しか有りません。ですので、警察職員の身分で通訳人を長くやってきた著者に比べれば私の経験は比べ物にならないほど少ないことは間違い有りません。それを十分に理解した上で、著者には警察通訳人でなければ書けないもっと具体的な視点がいくらでも提示できたのでは?と残念に感じました。

2015年7月1日

7月11日(土)中四国の通翻訳者仲間とベルギービールを飲む宴

中四国通翻となってますが、通訳者翻訳者、目指して勉強中の方、あるいは通訳者翻訳者ってどんな人達?と興味のある人すべて歓迎のイベントを企画しました。といっても、本当の動機は、私が久しぶりに会いたいのと、個人的にベルギービールを飲みたいから…なのですが(笑)



7月11日当日は、一次会をベルギービール会場で、二次会を近くの居酒屋でと考えています。以下の要領…というか、かなり適当な感じで開催となりますが、沢山の皆さんとワイワイしながらのビールの宴を楽しみにしています。一次会は「Hiroshima | BELGIAN BEER WEEKEND 2015」に便乗したものです(キリッ ! もちろん一次会のみ、二次会のみの参加OKです。

*Facebookの中四国通訳翻訳グループの方は、改めてお申し込みの必要は有りません。

お申込みは >> 参加登録サイト
一次会 13:30に旧市民球場跡に集合
【チケット:前売り3,000円 / 当日3,100円】
各自集合までに購入しておきましょう。
前売りチケットの入手方法はコチラ
詳しい集合場所等は、お申込みの方に追ってメールでご連絡差し上げます。

二次会 18:00頃から場所を移して近くの居酒屋
【会費:4,500円までくらい】
7月7日(火)には申込みを締切り、お店の予約にかかります。お店のご案内は追ってメールでご連絡差し上げます。

2015年6月8日

「おもてなし」ってなんだ?


 「東京観光ボランティア派遣制度のご案内」がその制服のダサさとともに物議を醸しています。



観光 - ボランティア - プロの仕事
そもそも「観光ボランティア」という名前からしてミスリーディングであるのに、制度紹介サイトのQ&Aセクションでは「様々な観光スポットを回る通訳ガイドとして、観光ボランティアを派遣することはできません。」として、通訳案内士資格や観光通訳の国の要件をすり抜けようとしています。

さらに、業務内容はイベント等における会場案内、来賓対応、簡易通訳業務など、イベントの顔とも言える重要なポジションをうたっているにもかかわらず「専門性が高く責任の重い業務は観光ボランティアには適さない…」としています。

細かく指摘すればキリがないのでこれ以上は控えますが、隠しきれない行政側の裏の事情や思惑が丸見えで、呆れる他ありません。裏の事情と思惑…つまり「お金かけたくない。外国語がちょっとしゃべれれば業務はできる。」という考えです。


「お金をかけずボランティアで賄う」という側面については、多くのネットニュースサイトが一般の方の批判の声を伝えています。それと同時に「外国語がちょっとしゃべれれば…」という側面については、通訳翻訳者のみならず多くのプロフェッショナルから、プロ技術や経験を売る仕事をする人に対する認識が甘すぎる、という声も上がっていて、こちらも当然という気がします。


「おもてなし」ってなんだ?
そもそも「おもてなし」を国が考える時に、相手の国の言葉で対応することだけが親切なのか?という問題です。気持ちの問題だから…ということでボランティアという考えを前面に出しているのかもしれませんが、そんなものはお上が音頭とってやるものとは私はどうしても思えないのです。日本人は海外からの旅行者には概して親切で、日本の治安や評判のよさ、はそういった国民性に根ざしたものではないでしょうか。

そう考えれば、行政は「国の顔」としてやるべきことを見極めそこに力を注ぎ、民間の草の根の求めに応じて支援を拡充して欲しい、そうすることで草の根や民間の「おもてなし」の意識をさらに高めることは十分可能だと思うのです。


通訳翻訳アプリの活用
先日、私の事務所でも「宿泊施設の窓口で通訳サービスを提供したいのだけど…」という電話を受けました。

一流料亭や一流ホテルのサービスであればスタッフの対応が求められるところです。しかし、そこまでのレベルでない場合「自分たちにできるおもてなしはなにか?」をもっとクリエイティブに考えてもいいはずです。

このお客さまには、一般にネットに用意されている通訳コンシェルジュのサービスもご紹介しましたが、おすすめしたのはスマートフォンやタブレットの通訳翻訳アプリの利用でした。驚かれたでしょうか?

私は、日常生活で遭遇する外国人旅行者とのやり取りの場面では、アプリの利用はどんどん奨励されるべきだと思っています。最近では対応言語数も充実してきており、翻訳精度も5年前と比べても大きく改善していると感じています。しかし、それでも満足いく「コミュニケーション」をするには、どうしても人の介在が必要なのです。

マズイじゃんっ(笑)!
相槌やボディランゲージ、笑顔、困った顔などの表情…そういったものがあるからこそ、はじめて人間とコミュニケーションしたという実感が得られるのでは無いでしょうか?できる配慮はなにか?を思考することなしに、単に言語能力だけで「おもてなし」は成り立ちません。

通訳翻訳アプリは「それだけでは『おもてなし』が完結しない」という意味において、人々が「おもてなし」を積極的に考えていく良いきっかけになると思います。

タブレットやスマートフォンを真ん中において日本人と海外からのお客さまがが会話をする様子を想像して下さい。それだけで楽しそう!…と思うのは私だけでしょうか(笑)


2015年6月5日

クレジットカード決済 (Square vs. Paypal)

クレジットカード取引の便利さ
昨年からお客様に対する支払い請求でSquareというサービスを利用しています。これは、クレジットカードのスワイプデバイスを携帯電話やタブレットに装着して、一般的に店頭で行われているのと同等のサービス機能を、個人に気軽に提供してくれるものです。


請求側手数料負担と決済即時性のトレードオフ
特に海外のお客様の場合には、サービスに応じた内容を通訳業務終了時にその場でお支払い頂くほうが格段に好まれます。帰国後に請求書を受信し送金手数料をご負担頂いた上で銀行振込を行っていただく…という手間もなく、送金手数料ももちろんかからない(手数料はサービス提供側の負担)のが大きな理由でしょう。また、サービス提供側にしてみれば、事後の送金(支払い)有無を気にしなくていいというのは大きな安心です。


立ち会い(カードスワイプ)なしで可能なクレジット決済
さらに、サービス提供者がお客さまに直接会わない場合でもクレジット取引可能ですので、翻訳のお客様への利用も十分可能です。



先日、海外からのお客様のインタビュー通訳を私の事務所で対応したのですが、私自身対応できない事情があり、別の地元通訳者にピンチヒッターに入って頂きました。そのため私はお客様ご本人と会うことは有りませんでしたが、お客様の来日と同時に電話で連絡を取り合い、お互いが信用の置けそうな方であることをメールに引き続き再確認しました。その上で、お客様の了解を得てSquareインボイス(請求書)を送り、なんと!…業務前日にはお支払いを完了していただきました。(通訳の場合、通常前日キャンセル料は100%…という背景事情もあります)

弊社の事務所サイトではPaypal経由のクレジット取り扱いをご案内しており、従来こちらを利用していました。ですが、今回の一件で事前に改めてPaypalとSquare両方をテストし、手数料、手間を比べてた結果、Square側に大きなアドバンテージが有ると感じました。他のフリーランサーでご興味の有る方のために簡単に紹介しておこうと思います。

尚、Square以外にも同様のサービス提供する業者は複数ありCoineyは有名どころです。昨年にはAmazonがLocal Registerのサービスを開始していますが日本ではまだ普及していない?…これ以外にも様々なクレジット決済サービスが提供されていますが、取り扱いのクレジットカードの種類やサービス内容も少しずつ違いがあるため、手数料だけでなく決済会社のビジネス継続性も考慮した上で賢く選択するのが良さそうです。

参考:Cybertimes
Square参戦!楽天に続きPayPalも手数料引き下げ!競争激化のスマホ決済サービス比較2013年6月18日 

以下、お客様と直接会わない(スワイプなし)Square利用とPaypal利用の個人的な感想です。ご興味有る方はどうぞ…!



*** *** ***

【初期手続  Square >> Paypal】

▶ Paypal
支払い専用の口座を開設するだけであれば、メールアドレス他の個人情報入力だけでOKで、手続としては簡単。ネット上の支払いにPaypalを多用している人は口座を持っておいて、ある程度入金した中から支払いを行うことが可能です。

ただし、クレジット請求をPaypal経由で行えるようにするには、さらなる登録手続が必要。運転免許証他の身分証明書のスキャンを送信し、一連の手続きや承認には約10日程度は見込んでおくのが無難。
手続にあたってのサポートは、電話ヘルプデスクサービスが優秀で非常に充実しているが、そもそもヘルプデスクを利用せずに手続を最後まで一人で完了させることができないほどには複雑。


▶ Square
サイトから必要情報を記入して申込む。所要時間10分程度。承認までは非常に早く、私の場合はほぼリアムタイムで確認メールが来たような記憶あり。程なくスワイプ用のデバイス一個が無料で指定の住所に後日郵送されてきました。

【請求処理 Square > Paypal】

▶  Paypalも▶ Squareもネット上からの手続きとなるため、手続きステップ数に大きな違いは特に感じない。ただし、インターフェースが請求側・支払い側ともSquareの方がわかりやすいという個人的印象。上図は、テスト請求のメール画面(支払側)で、同様のフォーマットで請求者にも請求確認メール、支払い完了時には支払い完了通知メール、そして、銀行送金時にも送金完了メールが届く。


【手数料 Square >> Paypal】

▶ Paypal
請求先が国内 請求額の3.6% + 40円
請求先が海外 請求額の3.9% + 40円

さらに、手数料を減額した報酬額がPaypal口座に記録されるが、これを指定の銀行口座に送金の場合、指定銀行口座登録作業が必要で、送金金額が50,000円を下回る場合はさらに250円の手数料がかかる。



▶ Square
一律 消費税を含む請求額の3.25%
(スワイプなしの場合でも、Squareインボイス送信の場合は3.25%)
クレジット処理の連絡がくれば、その三日後くらいには指定銀行口座に送金が完了していました。(完了メールが届く)

*** *** ***

以上、個人的感想ですので、詳しい情報は必ずSquare、Paypal他、各社のサイトをご自身でご確認ください。

2015年5月29日

宮城の中学生に会ってきました!

宮城教育大学付属中学校の中学生4人に総勢5名の通訳者で「通訳という職業」についてお話をさせて頂くチャンスが有りました。良くして頂いてる同僚通訳者に誘って頂いたのがきっかけです。場所は虎ノ門にあるサイマル・アカデミーさんの教室をお借りしたのですが、3つの同通ブース併設のとても恵まれた環境でした。

集まった通訳者のバックグラウンドは様々。海外で育ち英語の後で日本語を習得された方、子ども時代から海外と行ったり来たりの生活をされた方、海外の大学に夢を持って留学された方、そしてそもそも27歳で初めて海外に出た私(笑)…という感じです。

前日にメンバーのご自宅スペースをお借りして、どういう構成にしようかと相談し合い「デモがあるといいよね!」などとアイデアが次々飛び出し、思いの外準備から楽しい!

通常は現場で通訳者がお互い「どんな気持ちで仕事に取組んでいるか?」について話をするはずもありません。目的意識を持って取組んでいる同業者の真摯な姿を準備や実際のセミナーを通して見せていただき、本当に励みになり「私もまだまだだぁー!」という気持ちになったのは言うまでもありません。

参加した中学生は4人で、なんと内3人は男子!それぞれ違う動機で参加してくれたようでしたが、数ある職業の中で通訳者を選んでくれた事がやはり誇らしい気持ちがして、私は個人的にとても嬉しかったです。

当日の様子はコチラのサイマル・アカデミーさんのサイトに公開されていますので、ご興味のある方はどうぞ!

2015年5月20日

「福井モデルー”未来は地方から始まる”篇」 藤吉雅春 著

SNSでは既に広く知れ渡った無駄な情報ですが、私はメガネが大好きです。特にブランドやメガネの機構に詳しいとか、そういうことではないのですが、どうもメガネに対する執着とも言える強い憧れが有ります。

そんな私に海外からメガネの仕事が舞い込みました。メガネといえば日本の90%の産出量を福井県鯖江市が占めており、この仕事も東京で関係者と会議後、恵那の生産工場に続いて大阪のメーカー本社から福井県鯖江市へ製造業者へのキャラバンとなりました。

海外のお客様について回る中で、福井のメガネ産業がどうなりたっているのか?ということを自分なりに見聞し「日本のものづくり」が地方創世において重要な位置づけにあることを肌で感じ、一層メガネへの思い入れを強くして出張を終えました。

福井モデル 未来は地方から始まる 
藤吉 雅春 (著)

その出張後に偶然に品川Ecuteの本屋さんで「福井モデル」という本を見つけ、なにかの縁を感じて買って帰りましたが、一週間ほど放ったらかしに…。ですが、読み始めたら面白くて二日かからず読み終えてしまいました。

福井だけでなく、まずは大阪や京都がどう発展した地域で、北陸三県は大阪京都とは違う環境の中、どのように這い上がり、打ちのめされ、また這い上がってきたのかを説明しています。そしてメガネ産業の言及に至っては出張の間に見聞きした同業者連携や、中国製造業による市場席巻での大打撃なども細かく書かれ、興味深く読むことができました。「中国に一番にやられたのは鯖江だ…!」

富山県についての記述では、都市デザインと行政がバランスよく、そして地元の人々の思いを味方に、時に勢い良く地域を導いてきた様子が語られています。地方の人口流出、高齢化が深刻化する中、北陸三県がどう生き残ってきたか?けしてめざましく発展した…というわけでなく、地方なりの独自の方法でのじわじわとした生き残り作戦!…。日本の他の地方都市が学べることは沢山有りそうです。

この本の産業の捉え方に長い時間軸があることは特徴だと思います。近代産業の発展の歴史だけでない、それよりもっと前からその土地に脈々と根付いたその地方の気質のようなものもしっかり抑えています。それらをからめて地方創世を考えることで、未来につながるヒントが得られるのではないかと感じました。(広島は原爆で壊滅都市となり、原爆が地域的気質に与えた影響が大きいと思われるため難しさもあるのかもしれませんが…)

また、巨大産業や大企業は利益の見込める可能性の高いものにしか投資をしません。ですが、もっとミクロに産業をとらえて「より良くするには?」を集積することで地方のニッチが育ちます。そして、地元気質や地方の連携を上手く活かした形でグローバルにしてしまえば、ニッチはニッチでなくなります。

出張中、多くの業者の方とお会いしましたが、ある程度みなさん英語がお出来になります。田んぼに囲まれた小さな工房の社長が、外国のビジネスマンと英語でやり取りする光景は「ニッチのグローバル化」をまざまざと見せつけられたような気がしました。一方、同じ社長が日本語を喋り始めた時のお国ことばや訛りに「ローカル」の力を感じて頼もしい気持ちになったのを思い出します。

お勧めです。


2015年5月7日

通訳案内士、試験担当者が「国策で合格率8割」発言

通訳案内士は会議通訳とは仕事の質が全く違います。確かに通訳をする場面は少なくないでしょうが通訳案内士のメイン業務は、その一般名「通訳ガイド」に見られるように「ガイド」です。そして経験豊かで優秀なガイドの方の仕事は、見ていて本当に気持ちがいいですし、何より旅行者の顔つきがまるで違ってきます。日本という国を印象づけるとても大切な仕事です。

中国政府の規制緩和で、中国を中心とする海外からの観光客は急激に増え、通訳案内士は大幅に不足するようになってきました。さらに、昨今の円安がそれに追い打ちをかけています。そこで苦肉の策として国は法改正を行い、2006年4月からは都道府県単位で地域限定の通訳案内士の登録が行えるようになっています。さらに、国家試験である案内試験の実施要項そのものの改定(英語であれば、英検を持っていれば英語科目の受験免除等…)を行って、実質合格者数増加を狙ってきました。

当初難関とされた試験もこうした経緯を経て合格ラインが低下していることは明らかなわけですが…。遂に、国の通訳案内士に対する無理解が今回のこのニュースで露呈した感じでしょう。
YOMIURI ONLINE
通訳案内士、試験担当者が「国策で合格率8割」
2015年05月06日 15時04分
***以下抜粋***
担当者が、採点役の試験委員に対し、「国策として80%の合格率を目指す」と発言していたことが、関係者への取材でわかった。

採点は受験者の絶対評価が原則。「発言が採点に影響した」とする試験委員もおり、専門家は「合格基準に達しないガイドを生みかねない」と発言を問題視している。
いわゆる通訳ガイドをされている方の場合、それを専業 ではなく副業でしている、あるいは同一世帯に別の主たる稼ぎ手がいる割合が高いと言われています。(4年前に通訳案内士についてこのブログでも詳しく書いています。ご興味のある方はどうぞ。)そうした影響もあってか、通訳案内士のレートは会議通訳者のそれと比べるとかなり低いのが実情です。ベテランの方になるとそうでも無いようですが、業界のヒエラルキーがガッチリしすぎていて、新人にはレートの良い仕事は回ってきにくい構造があるようです。そのため、通訳案内士不足であるにもかかわらず、一時は通訳案内士の資格そのものが敬遠されるようになり、閉鎖を余儀なくされた老舗の通訳案内士予備校もあるほどでした。

であれば、これだけ需要が爆発していれば下層の案内士にも仕事が…と、のんきなことを言えないほどのスピードで「無資格の案内士」が横行し始めてしまいました。国も質を保ちながら通訳士の数を急激に増やすことはできず、稼働中の有資格通訳士にとっては市場を低レートで荒らされる上に、仕事を持っていかれる…というなんともカオスな状況が、今現在です。

国家資格を必要とする士業と言われる職業は他にもありますが、国家資格であっても資格だけでは生活していけない…そういう時代に入ったということでしょうか。いえ、それよりやはり、なんともお粗末な国の失策の顛末としか思えません。資格を持たない、あるいは持っていても低品質の通訳士が日本を海外の方に案内した結果、旅行者はどういった感想を抱いて帰っていくのでしょうか…?

先日、東京駅でベトナムからの一行を引き連れた女性ガイドを見かけました。そのガイドはベトナム人女性でしたが、ホームに停まった電車のドアが開いた直後から旗をふりふり大声で号令をかけて乗り込む始末…。どこの国の人間が通訳案内士を務めてもいいと個人的には思いますが、せめて日本の公共マナーを実践し、美徳として紹介出きる方にお願いしたい、と思った光景でした。(単なるツアコンだったのかもしれませんが…)

2020年オリンピックに向けて民間通訳養成の動きを国も支援しているようですが、どういう資格をもった、あるいは実績のある通訳者が、何について、どういう場で通訳するのか、国が考える具体的な絵がいっこうに見えてこない…なんとも不気味ですね。

2015年4月30日

「思考力の方法ー”聴く力”篇」 外山滋比古 著

久々に本屋にブラっと寄って手にした一冊でした。外山滋比古氏と言えば「思考の整理学」があまりにも有名。(以前にここでも紹介しています。)「思考の整理学」はもう随分前の執筆ですが、本屋では最近出版された氏の書籍を何冊も発見しました。実際御年92歳でいらっしゃる上、昨年秋からの著作がなんと既に4冊!「え…死んじゃうの?」とエラく失礼な心配してしまったのは内緒です(笑)

閑話休題。そこで一番新しい著作を手にしました。

思考力の方法 ―「聴く力」篇
もともと言葉は「聴く」が基本であり、その先に「話す」「読む」「書く」があるはず。ところが、特に明治の初め西洋の文化を取り入れるころから戦後に至る日本近代史の中で「読む」「書く」が偏重され「聴く力」は置き去りにされてきた。この概念を基底として説明した上で、日本のことばの魅力と「現在の日本語」の問題点を検証した内容になっています。

「聴く力」が軽視されているという主張にとても同意します。ことばはそもそもコミュニケーションを目的に生まれたものです。伝えたいという思いありきで生まれたことばはそれが理解されて初めてコミュニケーションが成立します。

昨今の「はい論破」「今北産業」に見られるような、簡潔に全ての無駄を削ぎ落とした、しかも相手の話を「聴く姿勢」を全く許さない形までコミュニケーションとする風潮にはどうも馴染めない私でした。説明する側の「簡潔にまとめる」「理路整然と説明する」能力ばかりが求められ、聴く能力は特に問わない…。

TPOに応じた論旨展開はもちろん求められますし、伝わる話方ができるということを否定しているわけではありません。しかし、結論ありきでの論理展開はやはり西洋的で、日本文化を背景として培われた日本語の自然なアピール、つまり「ことばとしての日本語」を考えた時には必ずしも馴染まないということを外山氏は示してくれていると感じました。

一方でそういう日本語だからこそより「聴く力」が求められる気がします。(たとえ既知のことを耳にしても)スピーカーなりの解釈を聴く側が探りながら聴き、自分の考えと照らした時にそれが新しい文脈として自分の中にどう展開していくのか?それができることで、初めて相手に対しての問いかけができるはずで、さらにトピックに対する自分なりの理解を深められる…そして、私は日本語ではそういう展開の方が馴染む場合もあると感じていました。

英語では結論から初めて、なぜなら…と展開していくのが常であり、日本語でも学会、論文、プレゼンの場等々ではそれこそがあるべき姿と捉えられています。でも、常にそうなのか?それだけが正しい展開の仕方か?と、ずっと私は疑問に感じていたので、氏の問いかけには心強いものを感じました。

さらに、聴く力を培うことで自分の理解を深めることができ、その過程でさらに重要な意味を持つのが信頼関係の構築だと私は考えています。会話であれば相手の話を聴く姿勢の有無は信頼の構築に大きく左右します。また、それがプレゼンであればスピーカー自身に対する興味をオーディエンスの「聴く」という行為を通してかきたて、スピーカーに対する信任が形成されていくと思います。しかし、そこに「聴く力」が存在することが必須。

話し言葉を相手にする通訳として「聴く力」がなければ仕事ができません。しかし、果たして自分は「聴く」ことができているのか…。改めて、日本語を聴くことの難しさ、深さを考えるよいきっかけになりました。

2015年3月31日

The JapanTimes のインタビューを受けました。

先日、The Japan Timesさんのインタビューを受けました。記者の方がWord Lens と Google Translate から見える翻訳/通訳者の近未来 という2011年のこのブログ記事を読んで下さってコンタクト下さいました。

インタビュ―トピックは「「多言語音声翻訳システム」に関して、アプリなどを用いた自動翻訳・通訳において、今後技術が進歩する中どのような事ができるようになるかを、通訳の視点で聞きたい、というものでした。

MACHINE TRANSLATION
Translation tech gets Olympic push
'All-Japan' effort creating apps to instantly bridge language barrier
BY SHUSUKE MURAI

結論からいうと、会議通訳について言えば特に「サービスを受ける側が通訳者/通訳機械に対してどれほどの信頼感が持てるか?」と私自身は考えているということをお話しました。

機械翻訳・通訳の話をする時にはその精度の良さ、訳文の素晴らしさ、ばかりが取り上げられます。しかし、注目すべきはそればかりではない…と常々考えていました。

日本語のように文脈依存の強い言語では、その場の文脈を組んだ通訳が求められます。精度の良い訳文を機械が出せるようになるには、まだまだ時間がかかりますが、その場の文脈を汲める…となると、さらに先の話になるでしょう。

また、精度の面だけで考えてみても、比較的進化は早いかもしれませんが、それでもお客様が訳出に疑問を持ってしまうような場面が多少なりともあれば、その通訳機械に対する信用度は一気に失墜してしまい、配慮の必要な折衝や会談の類にはとても利用することができないはずなのです。

見逃してはならないのは、これは人間通訳者でも同じということ。残念ながら人間通訳はミスをすることもありますが、その場で学び真摯に修正してよりよいパフォーマンスをすることもできます。そうした現場の態度や、その結果としてのパフォーマンスに対して利用者がどのレベルの信頼感を持てるか…。これは見逃してはならない要素でしょう。

非常に基本的な事では、会議に入る前の立ち居振る舞い、受け答えがしっかりとしていること、同じチームの一員として安心して組める相手か?…機械には求めることすらできないことです。

2011年の記事の締めに書いている内容は、今もそういう意味で変わっていないと感じます。
これからはその時代のレベルの機械にできる以上のことが出来てはじめて、私たちは翻訳者通訳者として価値ある存在になるということを肝に銘じておくべきでしょう。翻訳者も通訳も時代が進むほどに、より高いプロフェッショナリズムが求められるのは間違いなさそうです。

2015年3月17日

ノリノリ手話通訳者に見るプロ根性

スウェーデンのノリノリの手話通訳者の話題。説明するより見たほうが早いと思うので、まずはどうぞ!



この手話通訳者、ただ楽しんでいるようにみえるかもしれないけど、これだけビートに乗せて身体を動かし表情を作りながらのパフォーマンスには、ものすごい練習があったことを想像させます。もちろん彼、きっとこの曲や音楽一般が大好きなのだとは思います。それでもこうやって歌い手に代わって楽しみ表現する様子は、オーディエンス(ろう者だけでなくこの放送を見る人全て!)にとってはオリジナルを表現するにあまりあるエンターテインメント。

通訳者はオリジナルスピーカーの影じゃなきゃダメ…というのは、有声言語通訳では言われることですが、手話通訳者に求められる要件には身体を使って表現するというのは必須のようなので、これはこれで素晴らしいと思います。

見ている、聞いている人にオリジナルを聞いたのと同じだけの感動を届ける、そのために何度も練習を重ねて素晴らしいパフォーマンスに仕上げていくその姿勢はぜひ見習いたいものです。あー日々、楽しんで努力だ!

2015年2月22日

通訳翻訳ジャーナル 2015年4月号発売



通訳翻訳ジャーナル 2015年4月号が発売されました。ほんのちょっとだけ紙面協力させていただいたこともあり献本頂きました。(イカロス出版さん、ありがとうございます!)

どうやれば通訳・翻訳者への道が切り開かれるのかを毎号「今」という視点で切り取って紹介しています。そのためか、私が社内通訳職を得ようと模索していた頃と比べるとやはり時代が現れているな…とうい感じがします。

激変を遂げたのは翻訳者の方かもしれませんが、通訳者も現場にモバイル無しで臨むことは近年まず有りません。某通訳者さんの持ち物やキャリアを紹介した記事でも、いつでもアクセシブルな状態にしておくことが大切、と有りました。

また、以前は通訳学校を卒業するとそこからお仕事のオファーを頂いて(待って)…という方が圧倒的に多かったように思います。しかし、通訳志望者が増える昨今、通訳学校併設エージェントからのオファーを待つだけの「キャリアスタート法」ではあまりにもチャンスが無く、それどころか、近年増加している通訳学校を併設しないエージェントからの仕事のチャンスを完全排除してしまうことになります。

また、通訳学校に通っている場合でも、その通訳学校併設エージェントのジョブサイトを検証してみることをお勧めします。個人的に定期的に更新されとても見やすいのは断トツでアイ・エス・エス・インスティテュートだと思います。この学校には併設の派遣会社があり、ここがリリースしている求人情報を定期的にチェックするだけでも派遣通訳/翻訳市場・レート動向がつかめるのではないでしょうか。(回し者ではありません、笑)

ちなみに今号の私のオススメは「日英英日翻訳の世界へ」の松浦悦子さんのコラムです。気取らない文章で綴られた失敗談に「あるある!」と共感しない翻訳者はいないでしょう。けして目新しいことが綴られているわけじゃないのに、もっと読みたいと思わせる語り口にはお人柄が出ているのかもしれません。

 そして次号はコレ。
買わなくちゃ!(笑)


2015年2月20日

講演会のお知らせ「今日から本気出す英語!」


 「今日から本気出す英語!」

講演をさせていただくことになりました。Twitterから私のことを見つけて頂いたのがきっかけです。何かオモロイことが言えればいいのですけど…笑。

タイトルは
今日から本気出す英語!

です。「明日から本気出す」じゃなくて「今日から」というのがミソ。聞いた瞬間にアドレナリンが噴出するようなそんな講義を目指します。(どんなだ?笑)

通訳訓練の手法を会場のみなさんとやさしい教材で一緒にやって見ながら「英語で伝える」「英語を理解する」とはどういうことなのかを体感していただきます。学校英語で高得点を取ることは必ずしも唯一の英語上達の道ではないけれど、学校英語にももっと学べることがあるということをお伝え出来たらと思っています。

メインの対象は中高生ですが、学生社会人の方もOKとのこと。ご興味のおありの方は 広島の音楽・英語 School Imanishi さんサイトからお申込み下さい。

2015年1月6日

ご案内> 第5回公開通訳コンテスト

日本通訳翻訳学会経由で、明海大学から通訳ミニ講習会、講演会、第5回公開通訳コンテストの案内が来ておりますので、お知らせします。

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この度、放送通訳、法廷通訳などのご専門の先生方の通訳ミニ講習会、英語編集者のご講演、及び学生の通訳コンテストを開催いたします。

英語や通訳にご興味のある方は奮ってご参加くださいませ。
日時:2015年1月10日(土)13:00-18:00
場所:明海大学 〒279-8550千葉県浦安市明海1丁目

通訳ミニ講習会講師・審査員:名古屋外国語大学 浅野輝子先生、神田外国語大学 柴原智幸先生、大阪大学 本條勝彦先生

通訳コンテスト スピーカー:明海大学 小林裕子、Sarah Holland

講演:朝日出版社 山本雄三 編集長『編集者は何を考えながら語学書を編んでいるのか』

アクセス:京葉線、武蔵野線「新浦安」駅徒歩10分、東西線「浦安」駅バス15分

観覧希望:氏名、ご所属、懇親会(無料)のご参加希望をメールでお送りください。

連絡先:meikaimatsui@yahoo.co.jp 松井順子

課題:第一ラウンド:English for the Global Age with CNN, Kansai University ELT Research Group, Vol.15, Asahi Press

後援:The Japan Times、 朝日出版社、NPO法人通訳技能向上センター(CAIS)

2015年1月1日

2015年もよろしくお願いします。

年始のご挨拶を!昨年は東京事務所を渋谷区恵比寿に移転しました(笑)。都内どこへもアクセスのし易い場所になり、沢山のお仕事をさせていただくことができました。本年も引き続き、どうぞよろしくお願い致します。