2023年12月20日

通訳者のお仕事道具

  昨年秋からオンサイトの仕事は戻ってきていましたが、今年の秋はコロナ以前のペースでオンサイトの問い合わせが入り、久々に数多くの同僚と再会を果たすことができた一年でした。実際に隣に座って仕事をすることで気がつくのが、デスク上に置かれる通訳者の持ち物。みなさん色々進化していて驚きました。遅まきながら、私も通訳セットを持ち歩くためのサブバッグ(?)を導入しました。こんな感じです。

左が閉じた状態
右が開いた状態を横から見た状態。

 蓋をジッパーで開いてひっくり返し、左下のレザー部分についてるスナップで折り返した部分のサイドのスナップ受に留めて固定します。正面から見ると↓こんな感じです。


 今までゴチャっと小さなポーチに詰め込んでいましたが、オペラグラスやペンケースは別の持ち物としてカバンに入っていた為、ゴソゴソ探し出すのが大変でしたし、場合によっては必要なケーブルやアダプタがなくて苦労することもありました。ですが、それが整理されてバラけず綺麗に持ち歩けることの快適さと言ったら!追加で持ち歩くのは老眼鏡くらいです。早く気づくべきでした(悲

 私はアナログにタイマーをまだ使っています。ですが、現場にタブレットかPCは必ず持ち込むようになった今、通訳者によってはタイマーアプリに切り替えてキッチンタイマーを持ち歩かなくなった方もいるようです。電子辞書はとっくに辞書アプリに取って代わっているし…時代は確実に進み、私は確実に歳を重ねていることをひしひしと感じます…。

 

2023年11月20日

ChatGPTの衝撃

 今年これに触れずに一年を終えるのは、ブログ管理者としてどうか?という気もしていたのだけど、すっかり今年もあと残すところ一ヶ月ちょっと。皆様お元気ですか?

 ChatGPTは嘘つく、翻訳に使える、いや使えない、著作権の問題は…等々は日々SNSであらゆる議論や予想がされていて、これといって目新しい見解は私には出せそうにないです。

 でも、提示される将来像として、そうだなぁと納得した動画を残しておきます。機械化が進めばブルーワーカーの仕事から奪われるようなイメージを持たれていたけれど、これを見るとAI導入が進めば実は最終的に残るのは、身体性を伴う(AIのサポートを得たスーパー賢い)作業者、ということになりそうです。
 ですが、AIのサポートを得たスーパー賢い作業者、をどう育てていくの?というのが今度は大きな課題、といえそうです。でも、育成するにしても、自然言語でCo-pilotしてくれるAIの存在で、人間の学習スピードは驚異的にスピードアップすると考えられそうです。

 将棋の世界で藤井聡太棋士がコンピュータ相手に研究を重ねてきたことはよく知られていますが、そのことを裏付けていないでしょうか。羽生善治棋士が若かりし頃にコンピュータ将棋で研究していることは話題になりましたが、時代が劇的にAIを進化させた今、言ってみれば「AIパワードなコンピュータ将棋ネイティブ」な藤井棋士の学習量は羽生棋士のそれと遜色ないかそれ以上なのかもしません。実際、藤井棋士は羽生棋士に完全勝利を収めているわけで。

 以前、AIや機械翻訳が席巻すると修行の場を経て実力強化する通翻訳者の修行する場を奪うことになる為、若い通翻訳者が育たないことが危惧される、と書いた気がします。ですが、学習方法やスピードを格段に進化させる対話型AIの出現で、現場経験を必要としてきた(通訳翻訳に限らず)職種では短期間でデビューに漕ぎ着けることができるようになるのかも知れません。ただ、エントリーレベルの現場はAIに取って代わられ消滅すると考えると、デビューのハードルもまたかなり高くなるわけですが…。

 通訳翻訳が職業としてなくなるか?と問われれば「いずれは無くなる」です。しかし、それが「いつ」かを予測するのが難しい。若い方がこの職種が自分が生きている間に無くならないと考えるならば、チャレンジする人が近年激減している分、確実に力をつけることでその希少性からも市場に一旦出てしまえば食べるに困る…という事は、おそらくないと個人的に思います。

 と、ここまで読んで気付きませんか?進化した対話型AI出現前にも散々言われた「通訳翻訳者は不要になる」論が出ていた頃の私の論考とほとんど変わっていません。「AIがー」と心配ばかりしても始まらないって事ですね。お互い(AIの力も借りながら!)地道に精進いたしましょう。

2023年4月12日

冠詞の世界 〜 「フローチャートでわかる英語の冠詞」遠田和子著

 英検一級を取得しTOEIC900越えをした頃、恥ずかしながら冠詞をきちんと勉強したことがなありませんでした。知っていたのは中学生程度の理解で、それだけでなんとなく対応していた気がします。英語を使う仕事をするようになり、英文メールやアナウンスメントを書く業務をする段になってはじめて、明確に「冠詞の使い方がわからない」と慌てたのを覚えています。

 基本的なおさらいはするのですが、わからなければ複数形でお茶を濁す…というような適当な感じでメールを書いたりしていたあの頃、振り返ると穴があったら入りたい…。それでも程なく、自分が「使う」場面を超えて「聞く」「読む」場面で非ネイティブの話す/書く英語の誤った冠詞使いで混乱することが続いた事から、誤って理解されるリスクを意識するようになります。以降、体系的に学びたいという気持ちで何冊も参考書を読みました。

 個人的に薦められたり、巷で良いとされる冠詞の参考書があればコソコソ買って勉強したものです。一度読んだだけでは身に付かないと、何度も繰り返し読んだものもあります。ですが、どの参考書も然るべき目次/Indexがあり理路整然とした説明が並んでいるにも関わらず、ぼんやりとしか頭に残らない、整理されて頭に入ってこない…そんな印象でした。

 昨年、そんな私のアイドル遠田和子先生の「フローチャートでわかる英語の冠詞」が刊行されましたが、やっと今頃になって読む罰当たり(発行されてすぐに購入したのに!…汗)。その名の通りフローチャートで冠詞の用法を解説した画期的な内容でした。冒頭でまず、辞書の読み方や調べ方を説明されています。そうすることでこの本の内容は代表的な用例の解説にとどめ、どのような視点で捉えるべきかに重点を置き、冠詞の世界をフローチャートで理解できるようにまとめた一冊です。

 本書を冠詞の指南書としてまず一番に手に取っていたらより整理して理解できたかどうか、は正直わかりません。ですが、それなりに知識のある状態で読んでみたところ、今までのぼんやり感がずいぶん整理されました。初学者か学習経験者かを問わず、まずは本書を入り口として、細かい使用法や使用法のさらなる検証は別の参考書に当たる、ということを繰り返しながら冠詞の使い方の定着を確実に図ることができそう。お勧めの一冊です。

Amazonの評価もとても良いですね!
遠田先生のご著書が評価されてファンの私も嬉し〜

***

 蛇足ですが、私が持っている(一応、通読した)冠詞の参考書です。これ以外にも一冊、電子書籍で「3つの基本ルール+αで英語の冠詞はここまで簡単になる~ジェームス・M・バーダマン (著) ネイティブ精選192問」も購入済み。(つまり通読できてないものが、これ以外にもあるわけで…汗)

「英語の中の複数と冠詞」小泉健吉郎著
 初めて通読した冠詞専門書です。英日完全バイリンガルの知人に勧められ購入しました。知人はいくつか読んだ中で「一番わかりやすかった」との事でしたが、私には大変難しく感じられました。用例の細かい説明が多数紹介されています。読んだ時には「そうか」と思うのですが、自分で同様の判断や説得力のある説明ができるか…となると難しかったです。

「英語監視講義」石田秀雄著
 遠田先生の本に出会うまでは、これが私の中のベストでした。加算/不可算、単数/複数、定冠詞/不定冠詞の対比で解説されており、これはこれで体系的に読み進めることができる一冊です。ただ、用例解説で説明に深く踏み込んでいるため、各分類の中でもパターンを個別に覚えるしかないような印象が残りました。その為、数回はこれまで通読しています。遠田先生の著書でも基本は変わらないのですが、段階的にフローチャートにまとめられている分、感覚的に難易度が緩和されています。

「現代英語冠詞辞典」樋口昌幸著
 これを通読するのは修行でした(笑)。とにかく用例集として活用するのが吉。通読はお勧めしません〜。

「本当の英語の冠詞の使い方」デイビッド・セイン著
「3つの基本ルール+αで英語の冠詞はここまで簡単になる~ ネイティブ精選192問」ジェームス・M・バーダマン 著

 この二冊は練習問題集として考えるのが良いと思います。特に「本当の英語の〜」の方は、「ネイティブはこう解釈する!」という説明なので、日本人脳で自分から能動的に冠詞を選択する手がかりには乏しいと感じます。

2023年3月13日

気づけば3月…

 明けましておめでとう…などという時期はとっくの昔に過ぎ去り、すでに桜の開花予想が出る時期になってしまいました。このブログを始めて10年以上になりますが、こんなことは初めてです。そのくらい2022年秋以降の通訳市場の繁忙ぶりは異常だったことは、通訳業界に身を置く方なら誰もが経験されているはずです。

ということで、こんな時期ではありますが…

2023年もどうぞよろしくお願いします。


 異常な繁忙ぶりだったからといって、新年のご挨拶ができない程に時間に追われていたかというとそうでもなく、リモート案件の増加をうまく利用して人々がすなるワーケーションと云ふものを私もしてみんとてすなり…なことを、年明けから何回かやってみました。

 このブログで書いた記憶があまりないのですが、運動音痴に加え寒いのが嫌いなくせに温泉地でスキーを楽しむのを趣味にしています。6−7年前から再開した趣味ですが、昨年は久々に板を購入したこともありシーズン前から楽しみにしていました。仲間と予定を合わせるのが難しくそれなら一人で行こうということで決行。

 一月中旬に越後湯沢の岩原スキー場(新潟)、一月末に仲間と行った数泊を延泊してアルツ磐梯(福嶋)、二月に仲間と行く計画に前乗りして北志賀よませスキー場(長野)という具合です。

 ワーケーションで大切なのは、当然ながら仕事優先の姿勢です。つい目の前にあるゲレンデに欲張りな気持ちが芽生えますが、普段の仕事と同じように余裕を持って会議前にスタンバイし、ゲレンデでも欲張って体力を消耗し切らないことにも気を遣いました。また、今シーズンが初の試みだったため用心して初めてのお客様やパートナーと入る会議はブッキングしませんでした。出発前に宿のネット環境やスマホの残りギガ容量を確認しておくことも重要です。また普段と変わらない音声クオリティを担保するために、自宅セットアップから大きく劣らない機材セットを持ち込みました。

 そろそろ雪は緩んでシーズンも終わりです。スキー場でのワーケーションは今シーズンはもうなさそうですが、旅先でのワーケーションも計画してみたいです。特にコロナ禍で海外渡航を控えていたせいで「そろそろどっか海外行きたい!」という気持ちがウズウズ。行き先を思案中のこの時間、もう少し楽しんでみようと思います。

 ということで(?)改めて本年もどうぞよろしくお願いします。

宮原 美佳子
ピースリンク通訳事務所

広島通訳 Tea Salon を開催します

例年、3月の決算締め月に向けて皆さん予算を使い切ろうとなさるのか、2月中旬から通訳業界は多忙を極めます。そんな中、 なんとかかんとか確定申告を終わらせて、週末にほっと一息ついているところです。 このブログのオーナーである私は、今でこそ東京住まいですが、出身の広島には頻繁に帰省して...