「東京観光ボランティア派遣制度のご案内」がその制服のダサさとともに物議を醸しています。
観光 - ボランティア - プロの仕事
そもそも「観光ボランティア」という名前からしてミスリーディングであるのに、制度紹介サイトのQ&Aセクションでは「様々な観光スポットを回る通訳ガイドとして、観光ボランティアを派遣することはできません。」として、通訳案内士資格や観光通訳の国の要件をすり抜けようとしています。
さらに、業務内容はイベント等における会場案内、来賓対応、簡易通訳業務など、イベントの顔とも言える重要なポジションをうたっているにもかかわらず「専門性が高く責任の重い業務は観光ボランティアには適さない…」としています。
細かく指摘すればキリがないのでこれ以上は控えますが、隠しきれない行政側の裏の事情や思惑が丸見えで、呆れる他ありません。裏の事情と思惑…つまり「お金かけたくない。外国語がちょっとしゃべれれば業務はできる。」という考えです。
「お金をかけずボランティアで賄う」という側面については、多くのネットニュースサイトが一般の方の批判の声を伝えています。それと同時に「外国語がちょっとしゃべれれば…」という側面については、通訳翻訳者のみならず多くのプロフェッショナルから、プロ技術や経験を売る仕事をする人に対する認識が甘すぎる、という声も上がっていて、こちらも当然という気がします。
「おもてなし」ってなんだ?
そもそも「おもてなし」を国が考える時に、相手の国の言葉で対応することだけが親切なのか?という問題です。気持ちの問題だから…ということでボランティアという考えを前面に出しているのかもしれませんが、そんなものはお上が音頭とってやるものとは私はどうしても思えないのです。日本人は海外からの旅行者には概して親切で、日本の治安や評判のよさ、はそういった国民性に根ざしたものではないでしょうか。
そう考えれば、行政は「国の顔」としてやるべきことを見極めそこに力を注ぎ、民間の草の根の求めに応じて支援を拡充して欲しい、そうすることで草の根や民間の「おもてなし」の意識をさらに高めることは十分可能だと思うのです。
通訳翻訳アプリの活用
先日、私の事務所でも「宿泊施設の窓口で通訳サービスを提供したいのだけど…」という電話を受けました。
一流料亭や一流ホテルのサービスであればスタッフの対応が求められるところです。しかし、そこまでのレベルでない場合「自分たちにできるおもてなしはなにか?」をもっとクリエイティブに考えてもいいはずです。
このお客さまには、一般にネットに用意されている通訳コンシェルジュのサービスもご紹介しましたが、おすすめしたのはスマートフォンやタブレットの通訳翻訳アプリの利用でした。驚かれたでしょうか?
私は、日常生活で遭遇する外国人旅行者とのやり取りの場面では、アプリの利用はどんどん奨励されるべきだと思っています。最近では対応言語数も充実してきており、翻訳精度も5年前と比べても大きく改善していると感じています。しかし、それでも満足いく「コミュニケーション」をするには、どうしても人の介在が必要なのです。
マズイじゃんっ(笑)! |
通訳翻訳アプリは「それだけでは『おもてなし』が完結しない」という意味において、人々が「おもてなし」を積極的に考えていく良いきっかけになると思います。
タブレットやスマートフォンを真ん中において日本人と海外からのお客さまがが会話をする様子を想像して下さい。それだけで楽しそう!…と思うのは私だけでしょうか(笑)