2012年12月5日

14. 通訳学校では教えてくれないコト -マーケットへ飛込め-

通訳になりたいと思ったときに考えられるキャリアパスはどんなものか…?意外と「通訳になる」と自分の志を定めた人でさえ、具体的にどう進むべきかが見えないと悩んでいる人が多いようです。

以前、小学生から受けた同様の相談ついての返信を紹介しましたが、もう少し踏み込んだ形で通訳のキャリアパスについて考えて見ました。既に、ある程度言語に精通し、通訳学校に通うなど、通訳になることを決めている人向けに、自分の経験を踏まえて私の考える「通訳のキャリアパス」をご紹介したいと思います。


進め?止まれ?
言いたいことはネタバレしておくと「現場の経験が通訳を作る。」と言うことです。でも実際には現場に出ることを恐れる人が多い。「自分の実力はまだまだなので現場には出られません。」という人すごく多いのです。

でも、そもそも誰があなたの実力レベルを「現場に出ることができますよ。」と判断してくれるのでしょう?


TOEICで満点取れたら?英検1級取れたら?…通訳を目指している方なら当然わかるでしょうが、通訳を仕事としてやる上でそんな資格は全くアピールしません。逆に仕事の文脈でプロ通訳を名乗るの時にTOEIC990点や英検1級ホルダーで有ることをエージェントやクライアントに告げることはかなり恥ずかしいことです。

では、通訳学校の先生が「あなたは市場に出てもいいですよ。」と言ってくれたら安心ですか?自分が通訳学校に長年通った経験があり、現在教えている立場から、正直言って通訳学校卒業はマーケットで仕事をできるかどうかの判断基準には全くなりません。

でも、プロ通訳として働きながら通訳学校に通う人はいるわけで、おかしいじゃないか?と思われるかも知れませんが、通訳学校で学習できることは何かをしっかりと振り返るべきでしょう。

これまで何度も書いていますが、語学力をみがくという意味で検定や資格試験を受験することは実力向上を確認する指標にはなります。しかし、試験はあくまでも試験であり、生きた言葉を試験を通して経験することはできません。

また、通訳学校で学習するのはあくまで通訳技術に過ぎません。通訳の仕事は、通訳を必要とする異なる言語を話す生身の人たちのコミュニケーションの橋渡しをする仕事です。果たして通訳技術だけで「仕事としての通訳」ができるでしょうか?実はここに目が行かない人が多いのです。

断言します。資格試験も、通訳学校卒業も仕事へのGoサインにはなり得ません。Goサインとはそもそも「青信号」で、これならマーケットに出ても大丈夫という「お墨付き」のニュアンスがあります。でも、現実にはそんなお墨付きなんてどこにも有りません。

みんな言わないだけで、どんなに優秀な通訳でも多くの失敗を重ねています。私も「通訳」という肩書を背負って仕事を始めてから10年以上とっくに過ぎていますが、今でも失敗します。あんまり言いたくないけれど…(笑)。でもその失敗は「上手く訳せなかった。」という類のものだけではありません。「マーケットに飛び込んだ人でないと分らない失敗」や、そこから学べる事のいかに多いことか!

語学能力、通訳技術だけではカバーしきれない「通訳という職業に求められる要件」…それは実際に仕事をすることでしか得られない「経験」なのです。また、通訳学校や資格試験からは知り得ない、「経験」を通して知る言語能力、通訳技術のみがき方もあります。

どんなときも、自分のキャリアの節目を判断できるのは「自分」だけです。

特にフリーランス通訳を見据えるのなら、フリーランスという立場上仕事にかかわる事の判断は常に「自分」で下すしか有りません。自分が決断しなければ前に進めない職業だということに気付き早々に覚悟を決めるべきです。

では、実際に「マーケットに飛び込む」にはどういうやり方があるのか、次回からは飛込む準備を含め、具体的に提案していきます。

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例年、3月の決算締め月に向けて皆さん予算を使い切ろうとなさるのか、2月中旬から通訳業界は多忙を極めます。そんな中、 なんとかかんとか確定申告を終わらせて、週末にほっと一息ついているところです。 このブログのオーナーである私は、今でこそ東京住まいですが、出身の広島には頻繁に帰省して...