2012年1月22日

通訳を目指す君へのメッセージ

先日私のもとに、一通の鉛筆書きの封書が舞い込みました。知らない名前からで何だろう?と思って封を開けると、それは将来通訳を目指す小学生からの手紙でした。通訳になろうと思った動機、進学就職を含めた将来の予定を書いて送ってくれて”通訳になるにはどうすればいいのか教えて欲しい”という質問が書かれていました。

出張に移動しようと家を出た後ポストを覗いた時に見つけたので、移動中何度も何度も嬉しい気持ちで読み返し、どう返事を書いてあげればいいのかなぁー?とずっと出張中も気になっていました。週末家に帰って、一気に文章を考え、次の日速達で返信したときには、ちょっとホッとした気持ちになりました。



でも、きっと読むのに苦労していると思うのです…。つい力が入ってしまい、便せんに清書したら何と8枚にもなってしまいました。嬉しいのと、頑張って欲しいので筆が止まらなくて(笑)

自分で読み返してみて、分かりにくいところもあるな…と思う文章で反省しきりです。改めてオーディエンスに合わせることの難しさを思い知らされています。

でも、通訳になりたい、通訳に興味がある、と考えている他の小学生にもエールを送りたいので、私の返事だけをこちらで紹介します。

前述のとおり、とても長い返事になってしまったので、小学生だと途中で読み疲れてしまうかも知れません。そう思ってご家族の方に「読み疲れてしまうようでしたら、読んで聞きかせてあげて下さい。」と、何とも押しつけがましいメモまで付けてしまいました。ごめんなさい…

お手紙ありがとうございました。ちょうど出張に出かけるタイミングでお手紙を見つけたので、お返事が遅くなってしまいました。ごめんなさい。

まず、はっきりとした動機をもって商談通訳に興味を持っていることは素晴らしいと思いました。また君の動機を聞いて「私も(君が思うような形で)役に立っているんだな…」と改めて感じることができてとても嬉しかったです。ありがとう。

通訳のなり方についての質問にお答えします。一言でいうと「英語」も「日本語」もその言葉を好きになってください。そしておかしな表現かもしれませんが、自分のことを含め人間を好きになってください。

でも、これだと「なぜだろう?」と思ってしまうと思うので、もう少し具体的な方法も書きながら、順を追って説明したいと思います。

まず、通訳というのは二つの言語を話す人たちの橋渡しをする仕事です。ですから、二つの言葉をしっかりと運用できる能力を付けることが大切です。「運用できる」とは、話す、聞く、読む、書くです。そして、これらの能力は日本語、英語両方共で必要です。

「話す人」の橋渡しをするわけですから、もしかすると「読む」「書く」がどうして必要なんだろう?と思うかもしれません。でも、インターネットが発達してメールですぐに連絡を取り合うことができる世界です。

メールを通して自分たちの考えを書く力、伝える力、そして相手のメールや送ってくれる情報をしっかりと読んで理解する力は、絶対に必要になります。そして、その後に実際に会って話しをしましょう!ということになると、通訳の出番です。


次に、通訳として人に聞かせるためには、読んで理解したり聞いたりしたことを、まとめて分かりやすく書いたり、話したりを練習することになります。

勉強の過程では、自分の実力がどれだけついたかを確認するために、君も書いていたようなテストを受けるのは励みになります。また、すぐにできることとしては、英語でも日本語でもたくさん本を読むのはとても有効です。色んな言葉や、文章があることを知って下さい。

二つ目に、英語の運用能力がある程度高まってきたら、「通訳の技術」を学ぶことです。日本には有名な通訳養成学校がいくつかあるので、そこに通えばしっかりと勉強の仕方を習うことができます。そのあとも独学で力をつけて、通訳になった後でもコツコツ勉強が必要です。

もうわかりましたか?きっと何でもそうなのですが、勉強や技術の習得には「ここまでやったら終わり」ということがありません。だからコツコツ続けていくには「英語」や「日本語」が好きでいることがとても大切なのです。

では、「自分のことを含め人間を好きになる」とはどういうことでしょう?もう少し詳しく説明しますね。

よく言われることですが、言葉とは文化です。文化とは、特定の言葉を使って考える人がもつ特有の性質や、あるいは特有の性質によってさらに長い時間をかけて人々の中に培われてきた態度や考え方だと言いかえてもいいかもしれません。
少し難しいですね…。


例えば、商談の例を出しましょう。A社の人(日本企業)が、B社(海外企業)のための特別な装置を開発する仕事を請け負いたいと考えています。A社の人はB社に行ってこう言います。

「一生けんめいがんばって、よい装置を作るのでわが社の製品を買ってください!」

日本語だと「頑張ってくれるのか!すごいなぁ~、それではA社に任せておけばよいものができるに違いない!」と聞こえます。

でも、これをそのまま英語に訳してしまうと、B社の人は「えっ…一生けんめいやらないと、よい装置ができないのかな…ちょっと心配だな」と感じてしまうのです。これを英語で表現するときには


「私たちはB社のために最高の製品を作る自信があります。ぜひ、我が社の製品を買ってください!」

という表現にしなければなりません。これは、さっき言った「文化の違い」によるものなのです。おもしろいと思いませんか?

でもこれは何も難しいことではなくて「相手が本当は何を言いたいのか?」「相手が何を聞きたいのか?」に興味をもって人間を観察していると自然に見えてくることです。そして、興味をもって観察するためには、人間のことを好きでいるのが一番なのです。


また、通訳を利用してくれる人たちは、私たちが通訳する内容を信用して聞いてくれます。通訳する内容を信用してもらうには、「通訳する人」を信用してもらわなければなりません。

「この通訳はどうも信用できないな…。」と思うお客さんは、きっと安心して会話を進められないに違いありません。つまり、信用される人になる必要があります。


信用されるには、自分のことを知ってもらう必要があります。自分のことを知ってもらうには自分に興味を持ってもらえることが大切です。つまり、君自身が魅力のある信頼される大人になることが大切なんです。

そのためには「自分を好きになること」が大切です。君は自分のことが好きですか?私も自分のことが好きでいたい…と思いますが、面倒なことは後回しにしたり、文句が言いたくなったりすることもあって、なかなかいつも自分を好きでいることは難しいです。

君の魅力はなんですか?人それぞれ個性があり、君自身が思う「僕のこういうところはオモシロイ!」「僕の長所はこれだ!」というところを探して、自分でもどんどん好きになって伸ばしていきましょう。

私はすでに通訳として働いていますが、やっぱり「自分のオモシロイところ、頼もしいところって何だろう?」と考えながら、毎日ちょっとずつ「イヤな自分の時間」が減るように努力しています。君も、試しにやってみてください。自分のことが見えてくると、人の気持ちも少しずつ分かってくるとおもいます。

長くなりましたが、「英語」も「日本語」もその言葉を好きになる、自分のことを含め人間を好きになるということ、わかってもらえたでしょうか?

でも、最後にもう一つアドバイスさせてください。それは「したいと思うことは絶対にあきらめない」ことです。

もしかすると、君も中学校・高校に進学すると、たくさんの先生や友達に会い、自分の目標が通訳とは別のものに変わってしまうかもしれません。それはそれで、自分で考えて決めることなので他に「自分がやりたい」と思うことが見つかったのなら、進路を変えることは問題ありません。

ただし、絶対にあきらめないことです。きっと、ご家族の協力も必要になるかもしれないけれど、協力してもらえた時は感謝の気持ちをもちましょう。でも、無理なことや思うようにいかないことはたくさんあります。それでも「あきらめない」ことです。

あきらめる理由をあれこれ考えるより「あきらめないためにはどうしたらいいのか?」について知恵を絞りましょう。きっと良い考えが浮かんでくるはずです。そうやって必ず自分がやりたいことに近づける!と信じて下さい。

とても長くなってしまいました。でも、少しでも君の夢のお役にたてるといいなぁ…と思って書きました。最後まで読んでくれてありがとう。頑張ってくださいね!

やっぱり長すぎるよ…苦笑>自分