2025年1月6日

2025年 あけましておめでとうございます

2025年
あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願いします

 2024年を以てフリーランスとして独立してから丸15年が経過しました。リーマンショックによる実質契約満了による社内通訳職からの解雇だったため、これからやっていけるのかと途方に暮れるところから始めた道のりでした。おかげさまでここまで続けることができました。お世話になったエージェント企業様、懇意にしてくれた同業者の皆さん、そして頼りにして下さる依頼者様には心よりお礼を申し上げます。本年もどうぞよろしくお願いします。

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 実は昨年末、早めに仕事を切り上げ1週間ハワイ旅行に出かけました。何を血迷って?とお思いでしょう。秋に予定され楽しみにしていたアメリカ出張が直前でキャンセルになったことから、手配したESTAを無駄にするには癪に触る…と何とも安直な理由での渡航でした。ヨワヨワの円に泣かされるのは目に見えていたのですが、思い立ったが吉日とばかりに強行した次第です。

 比較的お天気には恵まれ、滞在期間中には晴れ渡る空の下でワイキキビーチから太平洋に沈む夕陽を世界中から集まった観光客と一緒に(?笑)眺めることができました。ちょうどLIFE GUARDの櫓のそばから見ていたのですが、ライフセーバーのお兄さん達が「長くいるけどこんなの見たことねぇ!」って何度も興奮しながら後ろで叫んでるから「あらそうなのね!」とワクワクしながら見守っていたのですが、ふと声の方に振り向くと、綺麗なお姉さんが「本当に?そうなの?」とお兄さんが構えるカメラのファインダーに顔を寄せて数人でわちゃわちゃしていました。なんだ、そういうことか…笑。若いって良いわね、と思った次第です。でも夕日は本当に美しかったです。

ワイキキビーチ
North Shore

 滞在中は特にアクティビティは計画せずにゆるゆる過ごすつもりで出かけたのですが、そうなると充実させたいのが食事です。が、円安、チップ、プレミアムなビーチ価格でざっと三倍だな、というのが現地物価の体感でした。ABC Storeで水とポテチを購入して2,000円ですからね。レストランで食事をすればチップを含めどうなることか、思い出しても恐ろしい。自分にとって日本が物価的に過ごしやすい良い国であることは間違いない一方で、ここまで格差がついてしまった現実と、この格差ゆり戻しの動きが将来大きく負担になって日本に押し寄せたらどうなる…。南国ビーチ、クリスマスにもかかわらず多少暗澹たる気持ちになる程ではありました。

Oreoがレギュラー価格で800円…!
 
大好きなフムスが
コンビニで買えるのはポイント高い!
けどお値段も高い! 

 ブランドショップの立ち並ぶワイキキを多くの幸せそうな観光客とすれ違いながら(そして自分自身も幸せそうにしていたはずですが)、日本や世界各地の災害復興が進まない地域や戦火に翻弄される人々についてもぼんやり考えていました。誰かが豊かに暮らせることが、他の誰かの尊厳の搾取と引き換えに成り立つものであってはならないと思います。でも、きっと自分が今享受してる豊かさが1ミリもそれに加担していないといえる人など皆無であるほど世界中が繋がっている現在、誰もが自分に何ができるかを「真剣に考える姿勢」を持つことが大切だとしみじみ考えてしまいました。これまで自分自身がテーマにしてきた「より善く生きる」を今後も考えながら自分の軸に過ごしていきたいと思います。

Merry Xmas in Summer

 そして、還暦まであと数年となった現在、自分自身の残りの職業人生をどう歩んで締め括っていくのかを少しずつ考え始めました。生成AIの進化が目覚ましかった昨年秋の繁忙期が少し落ち着きを見せた頃に次々とやり取りした同僚とのメッセージがそれを後押しした気がします。通訳という職業の行末について「翻訳と比べれば通訳はまだしばらく大丈夫だろう」と考えていた同僚が多く、以前は現実味を持って話題に上ることはほとんどなかったのですが…。実際、私自身も昨年までは「もう10年くらいは大丈夫だろう」と漠然と思っていましたが、ここにきて「あっという間」だと考えるようになりました。それがどのくらい「あっという間」なのかはあえてここでは触れませんが、私はおそらく多くの人が考えるよりもっと「あっという間」を想定している気がします。それに対して何ができるか、は一般的によく訊かれる問いですが、結局は今までと変わらず「一つ一つの仕事に丁寧に誠実に取り組んでいく」ことを精一杯心がけるしかなさそうです。

 そして、さてさて、まずは確定申告!笑。
 改めまして、本年もどうぞよろしくお願いします。

ピースリンク通訳事務所
代表通訳翻訳者 宮原 美佳子

2024年12月30日

「もうすぐ消滅するという人間の翻訳について」に思うこと

 年末も差し迫り少し早めに仕事を切り上げて出かけた旅の途中で「もうすぐ消滅するという人間の翻訳について」と題した平野暁人さんのNoteのエッセイを読みました。翻訳が人間の全体的な営みの中でどのように人間の未来に影響を与えてきたのか、また機械翻訳がその有り様にどんな変化をもたらすことになるのか、そしてそれを平野さん自身がどう捉えているのかを綴ったとても長い文章でした。

 長いには理由があって、平野さん自身の言語や翻訳という行為に対するフェティッシュなまでの姿勢(きっとご本人にその自覚はそれほど強くない気もしますが)と、表現したいという欲求と、何よりそうした姿勢で欲求の赴くままに真心込めて取り組まれたお仕事の中で静かに着実に積み重ねられた語彙力と文章力が、このエッセイを短く終わらせることを許さなかったのだと感じました。長い文章を批判する界隈もあったようですが、私は読んでいて後から後から溢れてくる言葉達や概念にただただ感嘆するうちに読み終わったという感じです。読み応えのある上質な文章、エッセイだと思いました。

 私自身が自分の通訳翻訳者としての生業について、機械翻訳の進化の流れの中でどう考えどう進んでいくのかということについては、もう少しよく考えて発言しようと思います。考えているうちにAI通訳が席巻してしまう…ということがないように頑張ります〜笑。

2024年3月9日

広島通訳 Tea Salon を開催します

例年、3月の決算締め月に向けて皆さん予算を使い切ろうとなさるのか、2月中旬から通訳業界は多忙を極めます。そんな中、 なんとかかんとか確定申告を終わらせて、週末にほっと一息ついているところです。

このブログのオーナーである私は、今でこそ東京住まいですが、出身の広島には頻繁に帰省しています。家族だけでなく友人や通訳翻訳仲間がいるという意味ではもちろん、私が通訳者としてのキャリアをスタートさせた広島は、私にとって大切で特別な場所です。

ちょうど今月末に帰郷する予定があることから、この企画を思い立ちました。10年以上前に同様の企画をしたところ、10名以上が集まり皆さんと交流するとても良い会になりました。
その会がきっかけで知り合った方々とは今でもSNSで繋がりがあり、皆さんそれぞれの場所で楽しんでお仕事に取り組まれているのを目にするのは、嬉しいことです。

10年前に場所を借りようとすると、安いところだと公共施設の貸し会議室しかなく、それ以外はホテルの会議室になりとても高額な為、なかなか気軽にこうした集まりは難しい感じ…でした。今回は直前でしたが、素敵なお部屋を押さえることができました。シェアリングエコノミーが浸透しているのを肌で感じています。

直前のお知らせで恐縮ですが、ご興味のある方はこちらからお申し込みください。沢山のご参加(定員14名先着順)をお待ちしています。

2024年1月4日

2024年もよろしくお願いします。

 

明けましておめでとうございます
本年もよろしくお願いします

 新年の挨拶を「おめでとうございます」という習わしが憚られるような、元旦(令和六年能登半島地震)、二日(羽田空港日航機衝突事故)の日本の出来事でした。地震や事故は一時のことですが、被災されたり被害に遭われたりした方にはそれが始まりでしかなく、中には癒えない傷を抱えながら残りの人生を歩まなければならない方も数多くおられると思います。心よりお見舞い申し上げます。

 この年始早々の事態を見て、常々考えている「より善く生きること」を続けるしかないと思う一方、年齢を重ねるごとにその難しさをひしひしと感じています。欲の深い私なので、面白そうなこと、楽しそうなこと、色々と首を突っ込みたい衝動は年齢とともに衰える事もなく、しかし身体的な衰えは自覚せざるを得ません。バランスをとりながら、今年も自分がご機嫌でいられるように、仕事にプライベートに精進していこうと思います。

 プライベートでは親族が年齢的に心配される状況になりました。一人暮らしの親族は、介護は必要としないけれど加齢による物忘れが増えたり、運転中の自損事故により免許返納に至ったり、健康面でも少しずつ支障が出てきて昨年は隔月で帰省していました。にもかかわらず、すでに施設入所の親族には、コロナ禍後も面会条件が厳しくて一度しか会いに行くことができませんでした。幸いフリーランスという仕事の形態のため、自身でのスケジューリングが可能ですが、親族の手術が急に決まった時には無理を言って確定した案件のリリースに応じてもらい、エージェントさんのありがたみを強く感じました。仕事を通じて知り合った同僚達や久々に繋がった学生時代の仲間とも親世代についてはさまざまに情報交換ができています。幸いなことでとても心強く感じています。

 仕事面では、生成AIが手軽に利用できるようになったことで、仕事の準備の仕方が変化しました。分野ごとの頻出用語集を自動生成、予定スピーカーがおこなった講演動画を最新数本レコメンドさせる等、いわゆるCo-pilot的な利用を始めました。現場で利用する単語リストだけは未だに「手(身体)で覚える」為に、時間が許せばすべて手書きにし、そうでない場合には印刷したものにマーカーしたり追記したりで記憶を強化するようにしています。実際の現場で通訳しながらの利用は、リモート通訳で自前の機材を利用するときに「文字起こし機能」を利用する程度ですが、必ずしも役に立つとは言えないのが難点。
 こんな風にテクノロジーの進化を楽しみながら活用できていますが、夏以降に昨年に輪をかけて増加した現場案件では、オーディエンスが近い事で自分自身の気持ちが引き締まり静かに高揚する感じを思い出し「人間のコミュニケーションを橋渡ししている実感」を改めて噛み締めることができた気がします。そして現場に「足を運ぶ」事で1日の歩数も昨年から激増し、健康面でも恐らくこれはプラスになっていることを期待しています。

 皆さんは新年にあたりどんな風に今年を展望されたでしょうか?テクノロジーの進歩と自身の加齢と相まってか年々時間の経過が加速度的に速くなっている気がします。できる限り波に乗っていきたいところですが、今年も私らしくマイペースに進んでいきたいと思います。

 引き続き本年もどうぞよろしくお願いします。

追伸
そして今年はフリーランスとして完全独立してから15年を迎えます。さすがにプロフィール写真は撮り直して差し替えなければ…汗。3月末までには実行します!

ピースリンク通訳事務所
代表通訳翻訳者 宮原美佳子

2023年12月20日

通訳者のお仕事道具

  昨年秋からオンサイトの仕事は戻ってきていましたが、今年の秋はコロナ以前のペースでオンサイトの問い合わせが入り、久々に数多くの同僚と再会を果たすことができた一年でした。実際に隣に座って仕事をすることで気がつくのが、デスク上に置かれる通訳者の持ち物。みなさん色々進化していて驚きました。遅まきながら、私も通訳セットを持ち歩くためのサブバッグ(?)を導入しました。こんな感じです。

左が閉じた状態
右が開いた状態を横から見た状態。

 蓋をジッパーで開いてひっくり返し、左下のレザー部分についてるスナップで折り返した部分のサイドのスナップ受に留めて固定します。正面から見ると↓こんな感じです。


 今までゴチャっと小さなポーチに詰め込んでいましたが、オペラグラスやペンケースは別の持ち物としてカバンに入っていた為、ゴソゴソ探し出すのが大変でしたし、場合によっては必要なケーブルやアダプタがなくて苦労することもありました。ですが、それが整理されてバラけず綺麗に持ち歩けることの快適さと言ったら!追加で持ち歩くのは老眼鏡くらいです。早く気づくべきでした(悲

 私はアナログにタイマーをまだ使っています。ですが、現場にタブレットかPCは必ず持ち込むようになった今、通訳者によってはタイマーアプリに切り替えてキッチンタイマーを持ち歩かなくなった方もいるようです。電子辞書はとっくに辞書アプリに取って代わっているし…時代は確実に進み、私は確実に歳を重ねていることをひしひしと感じます…。

 

2023年11月20日

ChatGPTの衝撃

 今年これに触れずに一年を終えるのは、ブログ管理者としてどうか?という気もしていたのだけど、すっかり今年もあと残すところ一ヶ月ちょっと。皆様お元気ですか?

 ChatGPTは嘘つく、翻訳に使える、いや使えない、著作権の問題は…等々は日々SNSであらゆる議論や予想がされていて、これといって目新しい見解は私には出せそうにないです。

 でも、提示される将来像として、そうだなぁと納得した動画を残しておきます。機械化が進めばブルーワーカーの仕事から奪われるようなイメージを持たれていたけれど、これを見るとAI導入が進めば実は最終的に残るのは、身体性を伴う(AIのサポートを得たスーパー賢い)作業者、ということになりそうです。
 ですが、AIのサポートを得たスーパー賢い作業者、をどう育てていくの?というのが今度は大きな課題、といえそうです。でも、育成するにしても、自然言語でCo-pilotしてくれるAIの存在で、人間の学習スピードは驚異的にスピードアップすると考えられそうです。

 将棋の世界で藤井聡太棋士がコンピュータ相手に研究を重ねてきたことはよく知られていますが、そのことを裏付けていないでしょうか。羽生善治棋士が若かりし頃にコンピュータ将棋で研究していることは話題になりましたが、時代が劇的にAIを進化させた今、言ってみれば「AIパワードなコンピュータ将棋ネイティブ」な藤井棋士の学習量は羽生棋士のそれと遜色ないかそれ以上なのかもしません。実際、藤井棋士は羽生棋士に完全勝利を収めているわけで。

 以前、AIや機械翻訳が席巻すると修行の場を経て実力強化する通翻訳者の修行する場を奪うことになる為、若い通翻訳者が育たないことが危惧される、と書いた気がします。ですが、学習方法やスピードを格段に進化させる対話型AIの出現で、現場経験を必要としてきた(通訳翻訳に限らず)職種では短期間でデビューに漕ぎ着けることができるようになるのかも知れません。ただ、エントリーレベルの現場はAIに取って代わられ消滅すると考えると、デビューのハードルもまたかなり高くなるわけですが…。

 通訳翻訳が職業としてなくなるか?と問われれば「いずれは無くなる」です。しかし、それが「いつ」かを予測するのが難しい。若い方がこの職種が自分が生きている間に無くならないと考えるならば、チャレンジする人が近年激減している分、確実に力をつけることでその希少性からも市場に一旦出てしまえば食べるに困る…という事は、おそらくないと個人的に思います。

 と、ここまで読んで気付きませんか?進化した対話型AI出現前にも散々言われた「通訳翻訳者は不要になる」論が出ていた頃の私の論考とほとんど変わっていません。「AIがー」と心配ばかりしても始まらないって事ですね。お互い(AIの力も借りながら!)地道に精進いたしましょう。

2023年4月12日

冠詞の世界 〜 「フローチャートでわかる英語の冠詞」遠田和子著

 英検一級を取得しTOEIC900越えをした頃、恥ずかしながら冠詞をきちんと勉強したことがなありませんでした。知っていたのは中学生程度の理解で、それだけでなんとなく対応していた気がします。英語を使う仕事をするようになり、英文メールやアナウンスメントを書く業務をする段になってはじめて、明確に「冠詞の使い方がわからない」と慌てたのを覚えています。

 基本的なおさらいはするのですが、わからなければ複数形でお茶を濁す…というような適当な感じでメールを書いたりしていたあの頃、振り返ると穴があったら入りたい…。それでも程なく、自分が「使う」場面を超えて「聞く」「読む」場面で非ネイティブの話す/書く英語の誤った冠詞使いで混乱することが続いた事から、誤って理解されるリスクを意識するようになります。以降、体系的に学びたいという気持ちで何冊も参考書を読みました。

 個人的に薦められたり、巷で良いとされる冠詞の参考書があればコソコソ買って勉強したものです。一度読んだだけでは身に付かないと、何度も繰り返し読んだものもあります。ですが、どの参考書も然るべき目次/Indexがあり理路整然とした説明が並んでいるにも関わらず、ぼんやりとしか頭に残らない、整理されて頭に入ってこない…そんな印象でした。

 昨年、そんな私のアイドル遠田和子先生の「フローチャートでわかる英語の冠詞」が刊行されましたが、やっと今頃になって読む罰当たり(発行されてすぐに購入したのに!…汗)。その名の通りフローチャートで冠詞の用法を解説した画期的な内容でした。冒頭でまず、辞書の読み方や調べ方を説明されています。そうすることでこの本の内容は代表的な用例の解説にとどめ、どのような視点で捉えるべきかに重点を置き、冠詞の世界をフローチャートで理解できるようにまとめた一冊です。

 本書を冠詞の指南書としてまず一番に手に取っていたらより整理して理解できたかどうか、は正直わかりません。ですが、それなりに知識のある状態で読んでみたところ、今までのぼんやり感がずいぶん整理されました。初学者か学習経験者かを問わず、まずは本書を入り口として、細かい使用法や使用法のさらなる検証は別の参考書に当たる、ということを繰り返しながら冠詞の使い方の定着を確実に図ることができそう。お勧めの一冊です。

Amazonの評価もとても良いですね!
遠田先生のご著書が評価されてファンの私も嬉し〜

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 蛇足ですが、私が持っている(一応、通読した)冠詞の参考書です。これ以外にも一冊、電子書籍で「3つの基本ルール+αで英語の冠詞はここまで簡単になる~ジェームス・M・バーダマン (著) ネイティブ精選192問」も購入済み。(つまり通読できてないものが、これ以外にもあるわけで…汗)

「英語の中の複数と冠詞」小泉健吉郎著
 初めて通読した冠詞専門書です。英日完全バイリンガルの知人に勧められ購入しました。知人はいくつか読んだ中で「一番わかりやすかった」との事でしたが、私には大変難しく感じられました。用例の細かい説明が多数紹介されています。読んだ時には「そうか」と思うのですが、自分で同様の判断や説得力のある説明ができるか…となると難しかったです。

「英語監視講義」石田秀雄著
 遠田先生の本に出会うまでは、これが私の中のベストでした。加算/不可算、単数/複数、定冠詞/不定冠詞の対比で解説されており、これはこれで体系的に読み進めることができる一冊です。ただ、用例解説で説明に深く踏み込んでいるため、各分類の中でもパターンを個別に覚えるしかないような印象が残りました。その為、数回はこれまで通読しています。遠田先生の著書でも基本は変わらないのですが、段階的にフローチャートにまとめられている分、感覚的に難易度が緩和されています。

「現代英語冠詞辞典」樋口昌幸著
 これを通読するのは修行でした(笑)。とにかく用例集として活用するのが吉。通読はお勧めしません〜。

「本当の英語の冠詞の使い方」デイビッド・セイン著
「3つの基本ルール+αで英語の冠詞はここまで簡単になる~ ネイティブ精選192問」ジェームス・M・バーダマン 著

 この二冊は練習問題集として考えるのが良いと思います。特に「本当の英語の〜」の方は、「ネイティブはこう解釈する!」という説明なので、日本人脳で自分から能動的に冠詞を選択する手がかりには乏しいと感じます。

2023年3月13日

気づけば3月…

 明けましておめでとう…などという時期はとっくの昔に過ぎ去り、すでに桜の開花予想が出る時期になってしまいました。このブログを始めて10年以上になりますが、こんなことは初めてです。そのくらい2022年秋以降の通訳市場の繁忙ぶりは異常だったことは、通訳業界に身を置く方なら誰もが経験されているはずです。

ということで、こんな時期ではありますが…

2023年もどうぞよろしくお願いします。


 異常な繁忙ぶりだったからといって、新年のご挨拶ができない程に時間に追われていたかというとそうでもなく、リモート案件の増加をうまく利用して人々がすなるワーケーションと云ふものを私もしてみんとてすなり…なことを、年明けから何回かやってみました。

 このブログで書いた記憶があまりないのですが、運動音痴に加え寒いのが嫌いなくせに温泉地でスキーを楽しむのを趣味にしています。6−7年前から再開した趣味ですが、昨年は久々に板を購入したこともありシーズン前から楽しみにしていました。仲間と予定を合わせるのが難しくそれなら一人で行こうということで決行。

 一月中旬に越後湯沢の岩原スキー場(新潟)、一月末に仲間と行った数泊を延泊してアルツ磐梯(福嶋)、二月に仲間と行く計画に前乗りして北志賀よませスキー場(長野)という具合です。

 ワーケーションで大切なのは、当然ながら仕事優先の姿勢です。つい目の前にあるゲレンデに欲張りな気持ちが芽生えますが、普段の仕事と同じように余裕を持って会議前にスタンバイし、ゲレンデでも欲張って体力を消耗し切らないことにも気を遣いました。また、今シーズンが初の試みだったため用心して初めてのお客様やパートナーと入る会議はブッキングしませんでした。出発前に宿のネット環境やスマホの残りギガ容量を確認しておくことも重要です。また普段と変わらない音声クオリティを担保するために、自宅セットアップから大きく劣らない機材セットを持ち込みました。

 そろそろ雪は緩んでシーズンも終わりです。スキー場でのワーケーションは今シーズンはもうなさそうですが、旅先でのワーケーションも計画してみたいです。特にコロナ禍で海外渡航を控えていたせいで「そろそろどっか海外行きたい!」という気持ちがウズウズ。行き先を思案中のこの時間、もう少し楽しんでみようと思います。

 ということで(?)改めて本年もどうぞよろしくお願いします。

宮原 美佳子
ピースリンク通訳事務所

2022年11月3日

AI通訳翻訳は脅威か?

 先日、地方から出てくる学生時代の友人が幕張メッセで開催中のメタバース展のために上京するというので、友人に会うついでに私もちょっと覗いてみることにしました。主にメタバースが提供するコミュニケーション(会議/イベント/遠隔トレーニング)プラットフォームの企業ブースを周り、同時通訳用チャネルの用意があるか聞いてみましたが、皆無でした(笑)ゲームプレーヤー向けのプラットフォームでは、すでにAI通訳による対応が導入されているようです。「AI通訳かぁ」と何の感慨もなく、思わず心中棒読みで呟いた次第です。

最近はNHKや民放放送局でもAI字幕翻訳で放送するようになりました。瞬時に意味の分かる字幕が繰り出され、不自然な部分もありつつ、ニュース全体として情報を理解するのに特に困らないレベルです(だから放送しているのでしょうけれど)。

NHK国際ニュースナビ 

【AI翻訳】プーチン大統領 演説動画 ウクライナ4州併合を宣言 2022年10月5日

時期を同じくして、監査案件で客先に張り付く仕事を終日対応しました。通訳対応は数回のみ、それ以外はお客様の指示で契約書翻訳をしました。機械翻訳OKとの事でDeepLにかけた後にいわゆるポストエディットで調整という作業です。DeepL出力文章も捨てたものではありません。法律文書である事を意識した文体での出力で手直し不要のセンテンスも有ります。が、周知の通り処理不能な箇所はすっぽり飛ばしたり、混乱してるのか同じ箇所に複数の訳文を出力したり、はたまた定型表現に一部マッチするところは原文にない文章を丁寧にでっち上げていたり…というお約束の展開でした。

個人的には「人間通訳翻訳者がAI通訳翻訳の進化に脅威を感じるべきか?」と問われると、正直「どうでもいい」という感じです(投げやりでごめんなさい)。AIがどんな進化を遂げているのかは興味深いし、業界に入り込んで物議を醸している以上、動向やレベルを知っておいて損はないと考えています。でも「それに対して」私達ができること、私は「何もない」と思っています。

仕事がAIに奪われて無くなる、じわじわとそれは進んでいるし、その未来はどこかの時点できっと来るのだろうと思います。でも、心配してどうなる?通訳業界の歴史で見るなら、鳥インフルエンザ、リーマンショック、新型コロナウィルス、と一気に仕事が消えるような事態は過去に何度かすでに訪れています。この先も、しかも恐らくAI通訳に人間通訳の仕事を全て奪われるまでの間に、また同様の仕事が消える事態が起こる可能性は十分に有ります。AIの脅威などよりむしろそちらの方が私はずっと現実味を帯びて脅威だと感じます。

「仕事が一時的に消滅する事態」に対してできる事は、個人事業主としてビジネス面からの備えを考え、技術職として技術の維持向上に意識を向けること、ではないでしょうか。
業界全体がそれらの誤った使い方を推進する事には反対ですが、AIや機械翻訳をただただ敵視するのはナンセンスだ…という気がします。実際、恥ずかしながら、限られた準備時間の中で調べ物の段階でネット情報を楽に大量に読むためにDeepL、とても役に立ってます。

2022年11月1日

通訳者の声のトーン - その1

通訳場面では「どのような声のトーン、ボリューム、ペースが適切か」については、かねてから興味があり自分自身であれこれ考え、発声法を試してきています。大方の結論として自分自身に課しているのは「トーン下げる、ボリューム下げる、ペース下げる」の原則です。

調子が乗ってくる、緊張してくる、集中度が高まる(集中していないともちろん通訳はできないのですが…)な状況で、私はどうしても声のトーンが上がり、ともすると声が「上ずる」までになりがちでした。さらにそういう時のペースは一様に早く、ボリュームも通常の話し声レベルでの最大になっていたようです。「トーン下げる、ボリューム下げる、ペース下げる」の原則を自分に都度課すようにしてからは、その成果か緊張していても少なくとも声が「上ずる」ことはほぼ無くなりましたし、逆に緊張してきても落ち着いて訳出することができるようになりました。

しかし、上ずらなくなった時に自分が自然に出せている声のトーンのレベルについて気づきがありました。これは同時通訳時ですが、どんなに意図しても自分の音声トーンレンジの「最低トーン」で話す事がなかなかできません。それどころか、むしろ「低いトーン」での訳出では聞き取りに影響が出る感じがする、つまり聞こえづらい感じがしてどうしても意図したトーンよりも少し高めのトーンで訳出しているようです。

英語は日本語よりも喉のより深い場所を使う方が発声しやすく、勢いそうして出す声のトーンは低くなります。また日本語でもそうですが、低い声のトーンの方が落ち着いている、信頼感を与える印象が期待できます。その為「低いトーン」での訳出を心がけていました。

色々考えてみてたどり着いた仮説は、この現象は会議参加者に男性が圧倒的に多い事に起因するということです。ご承知の通り男性は一般的に女性よりも低いトーンで話します。その為、自分の声のトーンを下げると聞こえてくる音声と干渉する感じがして、自分自身の声が聞こえにくいということがあるように感じます。私の地声は女性にしてはかなり低めなので、その傾向が顕著なのかもしれません。

加えて、以前からそうでしたが男性の低い声、いわゆるイケボは私にとっては非常に聞き取りづらいのです。(いえ、イケボは大好物なのですが…)これは同僚通訳者からも同様のことを聞いたことがあります。ある程度の高さのトーンの方が、大多数の男性の音声の中では際立って聞こえると言えるのではないでしょうか。実際、聴く側の立場に立った時にも男性の低いトーンの声に混じって聞こえてくる女性の声は、多くの場合瞬時に聞き分けられることを考えれば納得がいきます。

少なくとも私自身は自分の音声トーンレンジで最低トーンより少し上のトーンを目指して発声する方が良いようです。

2022年4月24日

JAT PROJECT2022「通訳キャリア構築法 - キャリアパスの歩き方のヒント」

  昨日開催されたJAT PROJECT2022で会議通訳者として「通訳キャリア構築法 - キャリアパスの歩き方のヒント」と題して講演しました。公開の場で人前に出るのはとても久しぶりで、少し緊張しました。ただ、参加者もそれほど多くないことを事務局からお聞きしていたこともあり、またリモートで自宅からのスピーチということもあり、本番はリラックスして臨むことができました。

 最初は自身のキャリアパスをなぞりながら、節目毎に判断を要した内容に触れる形でトークを構成しようと考えていました。ですが、それでは聞いてる方がどうご自身に役立てれば良いか分かりにくい…と気づき、前の晩に一から作り直しました。

 結果としては良かったと思っています。視聴くださった方からも一部個人的にポジティブなフィードバックを頂きホッとしています。キャリアパスの歩き方と言っても、私自身が現役通訳者してキャリアパスの途上になります。つまり、お話しした内容は今も自分の判断基準の軸というか信条のようなものになっています。もちろん、キャリアパスの何処にいるかで具体的な行動は変化すると思いますが、それでも基本的な姿勢として変化しないものですし、むしろ変化してはいけないものと近年では考えるようになりました。

 昨今、情報商材や安易なコーチングが通訳翻訳分野でもSNSを騒がせている現状があります。多くの先輩方が日々言葉や仕事と真摯に向き合う様子を間近でみていると、それが詐欺的であることはすぐにピンときます。ですが、初学者にとっては「すぐに〇〇できる!」「みるみる上達!」というコピーは魅力的なのだろうと思います。今回のスピーチではそういう安易にできる的な期待は望めないこと、時間をかけてじっくり歩むべきキャリアパスですよ、というようなことをお話ししました。

 質疑応答では、通訳学校に通うべきか?や、地方在住で通訳キャリアをどう考えるべきか?などまさに私自身がかつて考えていた疑問や不安の声を聞くことができました。私なりの回答をしましたがお役に立てれば嬉しいです。

録画はご勘弁いただきましたが、資料はこちらで閲覧可能にしています。諸々手配くださったJAT事務局、そしてご参加くださった皆さま、ありがとうございました。

2025年 あけましておめでとうございます

2025年 あけましておめでとうございます 本年もよろしくお願いします  2024年を以てフリーランスとして独立してから丸15年が経過しました。リーマンショックによる実質契約満了による社内通訳職からの解雇だったため、これからやっていけるのかと途方に暮れるところから始めた道のりでし...