2022年11月3日

AI通訳翻訳は脅威か?

 先日、地方から出てくる学生時代の友人が幕張メッセで開催中のメタバース展のために上京するというので、友人に会うついでに私もちょっと覗いてみることにしました。主にメタバースが提供するコミュニケーション(会議/イベント/遠隔トレーニング)プラットフォームの企業ブースを周り、同時通訳用チャネルの用意があるか聞いてみましたが、皆無でした(笑)ゲームプレーヤー向けのプラットフォームでは、すでにAI通訳による対応が導入されているようです。「AI通訳かぁ」と何の感慨もなく、思わず心中棒読みで呟いた次第です。

最近はNHKや民放放送局でもAI字幕翻訳で放送するようになりました。瞬時に意味の分かる字幕が繰り出され、不自然な部分もありつつ、ニュース全体として情報を理解するのに特に困らないレベルです(だから放送しているのでしょうけれど)。

NHK国際ニュースナビ 

【AI翻訳】プーチン大統領 演説動画 ウクライナ4州併合を宣言 2022年10月5日

時期を同じくして、監査案件で客先に張り付く仕事を終日対応しました。通訳対応は数回のみ、それ以外はお客様の指示で契約書翻訳をしました。機械翻訳OKとの事でDeepLにかけた後にいわゆるポストエディットで調整という作業です。DeepL出力文章も捨てたものではありません。法律文書である事を意識した文体での出力で手直し不要のセンテンスも有ります。が、周知の通り処理不能な箇所はすっぽり飛ばしたり、混乱してるのか同じ箇所に複数の訳文を出力したり、はたまた定型表現に一部マッチするところは原文にない文章を丁寧にでっち上げていたり…というお約束の展開でした。

個人的には「人間通訳翻訳者がAI通訳翻訳の進化に脅威を感じるべきか?」と問われると、正直「どうでもいい」という感じです(投げやりでごめんなさい)。AIがどんな進化を遂げているのかは興味深いし、業界に入り込んで物議を醸している以上、動向やレベルを知っておいて損はないと考えています。でも「それに対して」私達ができること、私は「何もない」と思っています。

仕事がAIに奪われて無くなる、じわじわとそれは進んでいるし、その未来はどこかの時点できっと来るのだろうと思います。でも、心配してどうなる?通訳業界の歴史で見るなら、鳥インフルエンザ、リーマンショック、新型コロナウィルス、と一気に仕事が消えるような事態は過去に何度かすでに訪れています。この先も、しかも恐らくAI通訳に人間通訳の仕事を全て奪われるまでの間に、また同様の仕事が消える事態が起こる可能性は十分に有ります。AIの脅威などよりむしろそちらの方が私はずっと現実味を帯びて脅威だと感じます。

「仕事が一時的に消滅する事態」に対してできる事は、個人事業主としてビジネス面からの備えを考え、技術職として技術の維持向上に意識を向けること、ではないでしょうか。
業界全体がそれらの誤った使い方を推進する事には反対ですが、AIや機械翻訳をただただ敵視するのはナンセンスだ…という気がします。実際、恥ずかしながら、限られた準備時間の中で調べ物の段階でネット情報を楽に大量に読むためにDeepL、とても役に立ってます。

広島通訳 Tea Salon を開催します

例年、3月の決算締め月に向けて皆さん予算を使い切ろうとなさるのか、2月中旬から通訳業界は多忙を極めます。そんな中、 なんとかかんとか確定申告を終わらせて、週末にほっと一息ついているところです。 このブログのオーナーである私は、今でこそ東京住まいですが、出身の広島には頻繁に帰省して...