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2013年10月18日

「人の言葉」を訳すということ(通訳の二次利用)

以前、通訳批判の在り方 - ダライ・ラマ法王会見という記事を書いたことが有ります。この記事へのアクセスは比較的年間一定しており、通訳批判のあり方について、またダライ・ラマ法王のような権威のある方の通訳あるいは通訳者について一般的に興味が高いのだな…と個人的に感じていました。

そんな中、最近ダライ・ラマ方法のチベット語英語の通訳者を長く務めておられる方のニュースが掲載されていたので、興味深く読みました。全文は長いので部分的に抜粋しますが、全文はリンクからご覧ください。
By Jon Letman Posted: 10/18/2013 5:47 pm EDT | Updated: 10/18/2013 5:47 pm EDT

その中でやはり印象的だったのは、法王の言葉を語る事に伴う重責と、言葉を理解して訳出するために求められる知識量でした。この通訳者Mr. Dorjeeは法王との共著も出版するほど法王のメッセージには精通しておられます。しかし、その彼でさえ最初の通訳の場面は、法王に通訳の間違いを指摘され、重責のあまり緊張で
押し黙ってしまったとか…。

スピーカーが通訳者の訳出言語(この場合英語)に慣れているというのは、通訳者にしてはそれだけでも大きなプレッシャーです。でも、そうしたプレッシャーにさらされながら大きなミスをした通訳に、次からもオファーがあったのは何故でしょうか?
“As a Tibetan, the Dalai Lama is everything to us," he says. He is a human but also a divine being and so we put him on a pedestal. I couldn't imagine being in his presence but I was asked to translate. It was the first time and I got nervous.”

Dorjee had made a mistake to which the Dalai Lama responded with a firm "No."

“I was so scared, I had a blackout,” Dorjee says. “When I regained my senses I realized that His Holiness was speaking in English and I thought, 'Well, that was the first and last chance for me. No one will call me back.'”

But they did call back, repeatedly. By working closely with the Dalai Lama again and again, Dorjee says he was able to develop a relationship that allowed him to better understand the Dalai Lama’s way of thinking and gradually he grew more confident.
もしかすると、当初はただ単に渡米の際にチベット語英語通訳に他に適当な人がいなかった…だけかも知れません。でも、そうした偶然を大切にして法王との関係を構築し、法王の考え方をより深めることで自分の通訳に自信を持てるようになった…というのはなんとも心強い話だと思いました。

前回は、通訳批判のあり方について「いつも担当しない通訳が自分の知識を総動員し、発言を瞬時に判断して訳出したものが、いつも担当する通訳のパフォーマンスと比べて批判されるのはフェアでない。」と書きました。これが、今回のMr. Dorjee氏の発言にしっかり裏付けられていると思います。

誰か「人の言葉」を訳すという行為はそれだけ深い行為だ、といえるかもしれません。

話は少しそれますが、通訳の二次利用についてご存知でしょうか?通常、私達が会議通訳で呼ばれて行う同時通訳ですが、主催者側の都合で録音を取ることが有ります。ですが、特に事前の契約のない限り、これを公開目的で利用することはありません。なぜならば、
その現場でしか得られないコンテクストの多くが削ぎ落とされた形でしかまとめられないことが多く、さらに事前のスクリプトなくその場ではじめて行われる発言につけられるベストエフォートの通訳パフォーマンスは、何度も繰り返し再生して行う検証に耐えるパフォーマンスであることは稀だからです。

ところが、時々これをご存じない業者がこれ幸いと動画に音声をのせて流すことがあります。実際に私もこの二次利用について主催者と揉めたことが有りました。説明してもなかなか分かってもらえない、難しい問題の一つです。