一昨年の夏の終わり頃だったか、広島出身の翻訳者の女性がXにまぁまぁ投稿しているのに気付いてフォローしました。広島の通訳翻訳関係者というだけで興味を惹かれるのだけど、彼女の独特のセンスある忖度のない投稿には、でも、優しさが随所に滲んでいて、そしてそれは最後までまったく変わることがありませんでした。定期健診で肺がんステージ4と診断されたとの投稿を目にし衝撃を受けたのは、しばらく経った年末だったと記憶しています。「がん」と「4」の組み合わせを自分の周辺でほぼ聞いた事がなく、調べてみて「手術が不可能なステージ」と分かり再度衝撃を受けたのでした。
 その時点では彼女とはまだ個人的なやり取りはしておらず、そんな状態で自分に何ができるか考えることさえおこがましいと分かりながら考えた末、実はほぼ10年振りに自身の健康診断を申し込みました。誕生月が1月なので、本当にギリギリのタイミングでした。
 私も実は過去にがんで二度手術しています。一回目は30代で社内通訳をしていた頃、二回目はフォローアップの半年に一回の検診で見つかった再発で、フリーランスになって4年目くらいでした。いずれも初期で、手術後に完全切除が確認できて、抗がん剤治療も不要、完治しています。ズボラな性格もあり、しかも臓器の完全摘出を受けていたので、その後1年くらいは定期でチェックを受けていましたがすぐに行かなくなっていました。
健診を申し込んだタイミングで「みんな健康診断を受けようね!」的な投稿をしたのですが、それに彼女が気付いてくれて相互フォローが始まります。その後、昨年春に広島で開催した通訳者向けサロンに参加してくれて初対面、そして今年は5月に福岡で開催されたIJETというJAT(日本翻訳者協会)主催のイベントで再会し、ランチを食べながら色々おしゃべりできました。夏にも会おうと約束して彼女が食べたいと言ったもんじゃ焼き、私がお勧めのお店を紹介し、そこでまた再会の予定だったのに、運悪く私がコロナに罹患してしまいます。必ず会おうね、と約束していたしきっと会えると思っていました。こんなに早く逝ってしまうなんて思っていなかった。まだ30代…。
個人的なやり取りはここには書きませんが、ニコニコしながら「美佳子さーん、会えた嬉しい〜」と5月の福岡では走り寄ってきてくれたのが忘れらません。SNSを通じて、数多くの人に愛されていた彼女だったと思います。聡明で知性に溢れる彼女なのに、どこか自分自身を頼りない存在と思っていたようです。「弱音ばかり吐く」と呟いていたけれど(彼女のこの春からの怒涛の環境変化を乗り切る様子を見てきたX民は誰も反論しないと思いますが)実際には本当に芯の強い人でした。そして優しい女性だな…といつも感心して見ていました。
亡くなったことを数日知らずに過ごしてしまい、ご家族による訃報の投稿を目にした時には膝から崩れ落ちてしまいました。どうしようと思っても何もできない、もう会えない、若い彼女の無念を思うとしばらくはただ呆然とするばかりでした。が、今週の仕事を今日先ほど終えて、今年も来年1月の検診の予約を取りました。
企業に所属しないフリーランスは、自分で計画しない限り地域の健康診断の案内が来ても行かずにスルーしてしまうことができます。皆さん、老いも若きも健診は必ず受けましょう。
 
 
