2011年8月14日

IT通訳が得意?

フリーランス通訳になって「私はITが得意です。」という通訳さんによく出会います。でも…本当にIT詳しいのかな…?と、残念ながら時々そういう方に出会います。

私は大学卒業後にメーカー系のシステムエンジニアを5年ほどしていました。担当したのは製造業で、CADシステムを使った図面管理システムを含む生産管理システムの導入メンテナンスなどをメインに行っていました。

入社当時のプラットフォームは汎用機!5年勤めてやめる頃にやっとワークステーションが出てきた…という感じ、既に止めたのは15年近く前。ですから、「ITが得意!」とフリーランスになって当初言いたい気持ちもあったのですが、自分からはそれを前面に出しませんでした。

最初は職歴書を見たエージェントが「これだけ経験していたら全然違いますよ!」と言ってくださいましたが、それでもピンとこなかったのです。そのエージェントから最初に配置された先は某化粧品会社の物流管理システムの再構築プロジェクト。お客様に「これまで「『ITが得意』な通訳を配置してもらったものの、なかなか話が通じなかったけれど、助かった!」と、とても感謝されたのです。とても嬉しかったし「IT得意」という事に自信が持てたのを覚えています。

その後、ご一緒する「IT得意」通訳のペアの方にいろいろ話を聞いてみると、特にシステム関係の仕事のバックグラウンドのある方は本当に数少なく、多くの方が口にした得意の理由は「カタカナにすればいいだけだから」(!)という衝撃のものでした。

通訳が入るのは、システム構築の下位レベルの会議よりは、どちらかというと意思決定を伴うような全体設計を決めるような会議が多いように思います。下位の作業者レベルの会議であれば「カタカナ通訳」でも、なんとかなる事もあるでしょうが(むしろ、担当者どうしで直接頑張って英語でやり取りしても十分その方が円滑に行く事もあります。)、全体設計の会話になったときに、DBの話か、認証システムの話か、それとも最上位ERPの話か…少なくとも上位システム及び周辺システムで何が動いているのかを理解しないままに会議に入るのはとても危険な事だと思います。

もちろん、ITと言っても範囲が広いですし、ビジネスの場合お客様の意向でなるべく情報を外に出したくないというのはよくある話です。それでも、お仕事の度にきちんと勉強されている方はとても強いと経験上感じますし、言葉にだけ頼る事無くロジックを理解する姿勢のある方は、必ずしも個別システムに精通してなくても基本的な知識で卒無くこなせるものです。(例外もありますが…)

「ITが得意分野です…。」と言った通訳さんと、IT関連の会議をサポートする長期出張をご一緒した事がありますが、出張が終わる頃にはすっかり彼女の英日は…

「では、次回のビジットまでにもう一度バジェットをエスティメートし直して、ファイナルレビューの準備とさせて頂きます。」

もちろん、お客様はちゃんと分かっていました。
自戒の意味も込めて…