2011年1月18日

「誤訳をしないための翻訳英和辞典」河野一郎 著

「読む辞典」という帯の文句に誘われて読んでみました。

辞典というだけあり、中をぱらぱらめくってみるとアルファベット順に用語を取り上げ解説が加えられれており、果たして本当に最後まで読めるのか?と少々不安になりましたが、読み始めると普通に問題無く読み進めることが出来ました。

翻訳作業に求められる裏付け作業や原文から離れない事の大切さを、実際に活字になった誤訳の例を挙げながら丁寧に解説しています。


私の場合、辞書からではなく会話を通して学んだ表現について, 改めて辞書の説明を確認し「そういうことだったのか」という発見がいくつかありました。(Are you there? I am flattered. など)

例文には、一部中学高校英語で基本事項として習う内容も取り上げています。
しかし、こうした基本事項でさえ訳書の中には誤訳のまま掲載されているものがあるという残念な事実も、著者の厳しいことばを添えて示されています。

出版社の固有名詞を伏せてはいますが、出版社ごとに誤訳文を掲載し、訳者を痛烈に批判しています。でも、批判されて当然...と思われるような、迷訳、珍訳がなんと多いこと。

そんな批判の中に繰り返し出てくるのが「誤訳を防ぐ一番有効な手段は、ともかく辞書を引いてみること。」というセンテンス。

本書内で参照される辞書は約25種類。くまなく引けるだけのことを引いて訳文に対して最善を尽くすべきであることが、著者自身の姿勢によっても示されているといえるでしょう。

ただし「辞書はあくまでも基本的な指針を提供するだけのものであって、それぞれのsituationに一番ふさわしい訳を考えるのは使用者の責任であり、また翻訳者の楽しみでもある。」とも著者は述べています。

一般的に誤訳しそうな例」を体系的に収めているわけではなく、「明らかな誤訳」の例をあくまで著者の視点から「よく見る誤訳」として取り上げています。また、これは私の個人的感覚ですが、著者の日本語用例が随分古い感じがします。(ひどく古いものについては”戦前の...”等断りが有りますし、自身も「ことばは時代につれて変化するため、あまり流行り言葉を訳語に当てすぎるのは適当でない」としていますが...)

ですから、辞書としてではなく、違和感のある訳文に出会ったときの対処法や、翻訳に対する基本姿勢を学ぶことを意識して読むべき「読み物」としてお薦めしたいと思います。