2011年1月10日

「Google表現検索テクニック」安藤進 著

ずいぶん前に読んだ翻訳入門書に、Googleの翻訳への活用についてページが割かれていました。今から思えばそこに書かれていたことは全くの基本でした。それでも、その基本を知っているおかげでGoogleは私の翻訳作業に大きく貢献してくれています。

ちなみに私が知っていたのは基本のコマンドばかりですが、それでもセンテンスの一部を変化さたり、ワイルドカードを使っての完全一致検索をすることで、欲しい情報にたどり着けたことは数知れません。

ただ、特定のサイト内を検索できる機能や、「-(マイナス)コマンド」等も知ってはいたのですが、どう使ったらいいのか自分の中にはアイデアがなく、使ったことはありませんでした。

そういう訳で、知っていながら使えないコマンドがどんな時に役立つのかを含め、一度体系的に「Googleで何ができる?」を学んみたいと思い手に取ったのが本書です。

本書を読んでの感想は「今まで自分は検索結果の吟味をここまでできていただろうか?」ということ。すこし冷や汗ものですが...

著者がいうとおり「インターネットは生きた文章の表現辞典である!ウェブページの集まりを丸ごと表現辞典とみな」すことができます。アクティブで、広く使われる、わかりやすい用語・表現を膨大なサンプルの中から拾ってこれるこのシステムは、日々よりよい表現を探しているライターや翻訳者にとって、今や必須の存在です。

ですが、むしろ著者がこの本を執筆した理由は「安易に検索結果に飛びついてはダメ」ということを示したかったからのようです。

その一つとして、どんな情報も一瞬にして広がるネットですから、誤情報が多数ヒットすることがあること、ヒット数が多いからといって必ずしも正しい用法と言えない場合があることを指摘しています。

例えば、2007年にヒットした映画「ダヴィンチ・コード」の日本語書評が納得いかず調べたところ、原文の英語を読み誤って奇異な訳になっていたことが分かりました。映画のヒットにともない、間違った訳のまま多くのサイトに表現がコピーされ、広がっていったということを著者は突き止め、その過程を詳しく解説しています。

また、文章の種類によっては表現パターンが変わってくることがあります。これについては、論文なのか、ニュース記事なのか、特許関連なのか、種類によって検索対象サイトを限定した上でさらに検索をかける手法を紹介しています。(これは、私が機能は知りながら使い方が分からない...と思っていたことを、活用した例です。)

このように、検索キーワードと得られるヒット件数に対する信頼度を上げるためのコツが紹介されているのです。もちろんそれがあってはじめて、正しい・ふさわしい訳語にたどりつくことができるのですが...

著者が実際の翻訳時に検索した事例の手順を詳細に解説しているため、とてもわかりやすくまとまっています。実際にブラウザに検索語彙を入力し、テストしながら進むことで随分私も理解が深まりましたし、使えるコマンド数も増えました。


巻末にコマンド一覧や、役立つサイト一覧などがまとめて記載されており、この部分はコマンド辞書的使い方ができそうです。実際私は、買った当初の目的をすっかり忘れ、巻末のコマンド一覧を時々参照するくらいで中身は読まずに長いこと放置していたのです。

ですがそんな使い方は宝の持ち腐れです。(反省..)必ず一度目を通して「仮説を立てながら、Googleコマンドでどういった検証作業ができるか」を知っておくべきでしょう。

本書では著者自身が提唱する具体的な検索・検証手順を解説していますが、それも踏まえた上で、実際のライティング・翻訳作業の中で「自分独自の検索手順のスタイル」を見つけて慣れておくといいかもしれません。私も自分の検索手順スタイルの確立にトライしてみようと思います。

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