ただし、上記で上げた項目では、上から順番に「プロとして市場で稼働できる実力あり」を前提に考えられる選択肢となっていて、最終的に受け入れるのに辛いことかもしれませんが「実力が足りない。」という原因も4.として除外できません。
自分の「技術」を活かして仕事を始めたいと考える時、果たしてその「技術レベル」が市場でお金に還元できるものか?が「仕事にできる/できない」の大きな判断基準になってくるでしょう。ですが、すべての技術系の職業人がプロの域に達してから仕事を開始しているかというと、正直なところそうでない場合がほとんどです。なぜなら技術は訓練で完成に近づき、経験を積み重ねるからこそ独自のスキルが身につくからです。
自分が思うだけの実力が自分にないことを知り認めることは辛いことです。しかし、仮にそうでならそれを認めて戦略を立てるしか有りません。無意味に「不安」な状態を継続したところで、世界の終わりはきませんから永遠に不安と戦う辛い状態が続くだけです。そしてその判断は自分にしかできないのです。
「自分の技術レベル」は自分で判断する」しか方法は有りません。それは「キャリアのどのステージにあっても」です。そしてその「自分で判断する。」という事こそ、ビジネスの主体として翻訳者通訳者自身が責任を持って行うべき業務なのです。
例えば、通訳としての訓練は通訳学校で勉強することもそうですが、ある程度レベル的に及ばない事を納得づくで低レートの派遣社員として職場を得ることもできるでしょう。ですが「いつフリーランスになるか?」「プロで食べて行くか?」は誰かが教えてくれるものでは有りません。
会社組織に属していれば通訳翻訳者が組織内で使える存在かどうかを、周囲の人の評価から知ることができるかもしれません。しかし、彼らの判断は市場価値という観点から見た「使える/使えない」の判断であり、技術職能を「売り」とする通訳者翻訳者としてやっていく中で一つの指針にはなっても、技術レベルとして自分がどこにいるかの判断基準には本質的になり得ないと考えるのが適当でしょう。
つまり、翻訳や通訳の職能技術に明るくない人からは、自分の実力レベルを知る上で有効な情報やヒントを得られないということであり、裏返せば同業者(一切のエージェントを含みません。)に当たればそれらが得られるということです。
5.仲間を持つことの意義
もちろん、孤独に言葉と向き合いコツコツと自分の中に力を積み上げていく作業は必要です。しかし、多くの仲間を得ることで、仲間から翻訳通訳スタイルやテクニックを学ぶ事ができます。さらに、実はそうやって技能レベルを高めるということ以上に、派遣フリー立場を問わず、仲間を得るということはビジネス上「自分で判断する力」を養う上で重要なことであると認識しましょう。
何より、同じ翻訳通訳に魅力を感じて集まる仲間と共感し合える事は、大きな喜びです。不安も共有した上で建設的に解決するための智恵を仲間が分けてくれるはずです。
私自身も仲間のお陰で切り抜けた場面が数えきれない程ありました。そして、エラそうにこんなブログを書いている私でさえ(ごめんなさい、エラそうで…)、仲間に支えられながら不安と向き合いフリーランス通訳翻訳者として頑張っていることを書き添えておきます。