1.確定案件、仮案件の意味
通訳案件が入ってくる場合、これはもうお約束と言っても良いかもしれませんが、業務日まで日にちのある場合に「確定案件」で話が来ることはほぼなく、まずは「仮案件」として抑えて欲しいと言われることがほとんどです。基本的に、案件確定してから「キャンセル規定」が適用されるます。
ですから、案件打診の段階から各社のキャンセル規定をある程度頭に入れ、受けるか受けないか決めることは割と重要です。なぜなら「確定案件」であっても、キャンセル料金が発生するタイミングに入ってこない限りは、通訳者にとっては本当の意味での「確定」では無いからです。
2.各エージェントの案件依頼時の傾向を把握する
そこで、知っておくべきは各エージェントの傾向でしょう。下記は前回上げたエージェントのキャンセル規定にそれぞれ依頼の傾向を追加してみたものです。
このように、エージェンの案件依頼傾向とキャンセル規定を見るだけでも、それぞれのエージェントがどういう信条でビジネスをやっているところかが見えてこないでしょうか?例えば…【エージェントA】
打診頻度は時期によりまちまち、打診は早い時期にあてっても直前まで確定しない。
1日前~当日 合計の100%
5~2日前 合計の60%
※キャンセル日は、土日、祝日を除く営業日数で計算いたします。
【エージェントB】
打診頻度は低いが、仮案件で入ってきてもほぼ確定に結びつく。
当日/前日 100%
2,3日前 50%
4~5日前 10%
【エージェントC】
打診は頻繁にあり確定時期も早いが、直前キャンセルが多い。
前日 100%
前々日 50%
3日前 25%
【エージェントD】
打診頻度は頻繁ではないが、比較的複数日案件が多い。仮案件はまずまず確定に結びつく。
当日/前日のキャンセル: 100%
前々日/3日前のキャンセル: 50%
4/5日前のキャンセル: 30%
※上記日数表記は原則営業日換算ですが、土日、祝祭日業務の場合はその都度取り決めさせていただきます。 ※終日案件が半日案件になった場合、差額分がキャンセレーションの対象になります。 ※各種拘束費のキャンセレーションについては、その都度ご相談させていただきます。
エージェントAはキャンセル規定は割と寛大な内容ですが、確定をなかなか持ってこない。それをある程度彼らサイドの保険としていることろがあります。こうしたエージェントは場合によっては案件が確定していても、レートの安い通訳者が見つかるのを待って(もちろん、そうとは告げずに)案件キャンセルを連絡してくるところがあるので要注意。
さらにエージェントCは案件は多く抱えているようですが、客先要件のためか変更キャンセルが多いようで、あえてキャンセル料発生タイミングを直前にすることで、自社リスクを最小限に抑えようとしています。つまり、その分のリスクは通訳者が取らなければならない構造です。
エージェントBとエージェントDについては確定に結びつきやすというのは通訳者にとっては大きな信頼感につながります。通訳者の顔を一人一人意識してビジネスをしていることが分かります。
3.仕事を受ける順序を考える
例えば、エージェントCから2ヶ月先迄の日程で「空いてる日程」を全部教えて欲しいと言われました。あなたならどうしますか?この「空いている日程を教えて欲しい。」攻撃…(笑)皆さん、安易に教えていませんか?これは通訳者の稼働状況や、どの位お仕事を欲しがっているかなど、相手に手の内をすべて明かしてしまうのも同じことなのです。経験上、通訳者を尊重してくれるエージェントであれば個別にそうした問合せを入れてくることは、ほぼ有りません。
通訳者には仕事の内容を見て、仕事を選ぶ権利があることを認識しましょう。もし、このエージェントCの要望に応え空き日程をすべて確定として抑えられてしまい、軒並み4日前にキャンセルされてしまったら…!大変なことです。
或いは、複数日をエージェントAやエージェントCに仮で抑えられる場合には、その期間に一日でも別エージェントからオファーがあった時には受けられない場合も出てきます。割と頻繁に打診をしてきますし、直前案件も沢山抱えているらしいことから早い時期に日程をこの2つのエージェントで抑えるのにはリスクが伴います。
むしろ、エージェントB、Dからの打診をしばらく待ってみて、埋まらない隙間をバランスよくエージェントA、Cで埋めるということを考えるのが得策でしょう。
通訳者側がエージェントを評価するという視点を持つことは大変重要な事です。もちろん、繁忙期にはお世話になっているエージェントのちょっと無理目のお願いも頑張ってみる!というサービス精神も必要ではあります。が、ただ「仕事をもらう。」のではなく「仕事を選んで取ってくる。」という姿勢は持っておきたいものです。
案件が埋まらず、空いているスケジュールを見ては不安になる気持ちは誰もが経験するところです。しかし、「武士は食わねど高楊枝」とまでは言いませんが、いい仕事を選んで、着実にこなし、お客様からよいフィードバックをもらうことこそが、エージェントからの評価にも自分自身の自信、ひいてはレートアップにつながることをしっかり認識しておきましょう。