ついにリンゼイさん殺害事件の犯人として殺人などの罪に問われた市橋容疑者に対し、本日無期懲役の判決が出ました。この事件には被害者のリンゼイ・アン・ホーカーさんのご両親が証言、傍聴していたため、一連の裁判には裁判所が指名した法廷通訳人がついていました。審理は7月4日に始まっていますが、判決の出た本日まで、たった一人の法廷通訳人で対応されていたようです。
このリンゼイ事件の裁判を巡る報道のされ方に、2つの点で問題があると感じています。まずは、通訳人の置かれた環境について法廷通訳・一般的な通訳の知識のない人にもわかるような解説がなされていない事があります。
同じ法廷通訳である立場から、裁判を担当された法廷通訳人のご苦労はどれだけだったろう…と思うのと、通訳人の苦しい立場には直接的な言及がなされていないのを残念に思っています。
審理の途中で「窒息めぐり専門用語連発 通訳『待ってください』と悲鳴」という記事が7月5日付けの産経ニュースで取り上げられれていましたが、そこでも専門用語に通訳人がついて行けなかった事のみに焦点が当てられていました。注目度の高い裁判ですから、裁判所も経験豊富で優秀な通訳を手配していることは間違い有りません。それでもこうしたことが起こってしまった原因はどこにあるのか?には話が展開していきません。
記事中には細かく通訳人がどのように取り違えたのか、審理中に直接訂正された事情についても書かれています。誤訳は誤訳として正す必要はあります。しかし、記事の論調が通訳が優秀でないからこのような誤訳を多発してしまった…と一般読者に伝わらないように心から願います。ほぼ体力の限界に挑戦するように通訳されていたのではないか?と推察します。
もう一点は、リンゼイ事件から見えるべき法廷通訳の現状・問題点・これから展開されるべき議論について言及した報道記事が日本語では皆無であることです。昨年のベニース事件では「誤訳6割」とする鑑定人の発言にメディアは一斉に飛びつき、ネットのみならずテレビでも大きく報道され、私が傍聴した大阪高裁の控訴審判決も新聞各社の翌日の記事では大小はあるもののこぞって取り上げていました。もちろん、裁判の争点そのものが、通訳の誤訳による裁判員への心象影響があったか?というものではあったのですが、それにしても…という感が否めません。
個人的なネットワークでもこの事件担当の通訳人については仲間内でいろいろと話をしていました。そのため、判決当日のネット・新聞記事は各紙注意して見ていましたが、判決そのものや審理の経過について報じる記事はあっても、ベニース事件に見られらたように通訳人を大きく取り上げた”日本語”報道は全く無かったのです。
唯一この問題を取り上げたのがJapanTimes英文記事です。一般の人にもわかりやすく、現在の司法通訳人の制度にどういった問題があるのかを審理の経過も含め客観的に示唆した良くまとまった内容になっています。日本語版では同じ記事は出ていませんでした…が、さっそく翻訳された記事を見つけました。沖縄の通訳翻訳者・関根マイクさんのサイトをご覧下さい。
メディアにはあ社会的問題に焦点をあて、読み手に考えさせる役割があるはずです。「センセーショナルで無ければ取り上げない。」といわんばかりの今回の日本メディアの本件に関する無関心には疑問を抱かざるを得ません。
同時に、こうした外国人の絡む通訳人付き裁判が今後一層増加することを考えれば、法廷通訳人のあり方にメディアも市民ももっと関心を寄せるべきでしょう。外国人を裁く立場にある日本の裁判所が、適正な通訳人制度を持たないままに外国人に不利な裁判を続け、その結果、国際的に海外からの日本の司法制度への信用を失うかも知れないという、重大な問題をはらんでいます。震災後に日本の国力に注目が集まる現在、もっと注目を集めるべきトピックだと考えます。
このリンゼイ事件の裁判を巡る報道のされ方に、2つの点で問題があると感じています。まずは、通訳人の置かれた環境について法廷通訳・一般的な通訳の知識のない人にもわかるような解説がなされていない事があります。
同じ法廷通訳である立場から、裁判を担当された法廷通訳人のご苦労はどれだけだったろう…と思うのと、通訳人の苦しい立場には直接的な言及がなされていないのを残念に思っています。
審理の途中で「窒息めぐり専門用語連発 通訳『待ってください』と悲鳴」という記事が7月5日付けの産経ニュースで取り上げられれていましたが、そこでも専門用語に通訳人がついて行けなかった事のみに焦点が当てられていました。注目度の高い裁判ですから、裁判所も経験豊富で優秀な通訳を手配していることは間違い有りません。それでもこうしたことが起こってしまった原因はどこにあるのか?には話が展開していきません。
記事中には細かく通訳人がどのように取り違えたのか、審理中に直接訂正された事情についても書かれています。誤訳は誤訳として正す必要はあります。しかし、記事の論調が通訳が優秀でないからこのような誤訳を多発してしまった…と一般読者に伝わらないように心から願います。ほぼ体力の限界に挑戦するように通訳されていたのではないか?と推察します。
もう一点は、リンゼイ事件から見えるべき法廷通訳の現状・問題点・これから展開されるべき議論について言及した報道記事が日本語では皆無であることです。昨年のベニース事件では「誤訳6割」とする鑑定人の発言にメディアは一斉に飛びつき、ネットのみならずテレビでも大きく報道され、私が傍聴した大阪高裁の控訴審判決も新聞各社の翌日の記事では大小はあるもののこぞって取り上げていました。もちろん、裁判の争点そのものが、通訳の誤訳による裁判員への心象影響があったか?というものではあったのですが、それにしても…という感が否めません。
個人的なネットワークでもこの事件担当の通訳人については仲間内でいろいろと話をしていました。そのため、判決当日のネット・新聞記事は各紙注意して見ていましたが、判決そのものや審理の経過について報じる記事はあっても、ベニース事件に見られらたように通訳人を大きく取り上げた”日本語”報道は全く無かったのです。
唯一この問題を取り上げたのがJapanTimes英文記事です。一般の人にもわかりやすく、現在の司法通訳人の制度にどういった問題があるのかを審理の経過も含め客観的に示唆した良くまとまった内容になっています。日本語版では同じ記事は出ていませんでした…が、さっそく翻訳された記事を見つけました。沖縄の通訳翻訳者・関根マイクさんのサイトをご覧下さい。
メディアにはあ社会的問題に焦点をあて、読み手に考えさせる役割があるはずです。「センセーショナルで無ければ取り上げない。」といわんばかりの今回の日本メディアの本件に関する無関心には疑問を抱かざるを得ません。
同時に、こうした外国人の絡む通訳人付き裁判が今後一層増加することを考えれば、法廷通訳人のあり方にメディアも市民ももっと関心を寄せるべきでしょう。外国人を裁く立場にある日本の裁判所が、適正な通訳人制度を持たないままに外国人に不利な裁判を続け、その結果、国際的に海外からの日本の司法制度への信用を失うかも知れないという、重大な問題をはらんでいます。震災後に日本の国力に注目が集まる現在、もっと注目を集めるべきトピックだと考えます。