2013年4月28日

「戦後史の中の英語と私」 鳥飼玖美子 著

「鳥飼先生は学生時代から同時通訳として活躍した英語界のアイドル的存在だ」とどこかで聞いたことが有ります。そのくらい有名な方なのに、私が実際に彼女を知ったのはNHKの教育テレビ「クロスロード・カフェ」に出られていた頃からで、彼女の経歴他は全く知らなかったのですが、彼女の持つ気取らない雰囲気がとても好きで、それ以降なんとなくずっと気になる存在でした。

近年出された著書国際共通語としての英語」 (講談社現代新書)(2011/4/15) 「英語公用語」は何が問題か (角川oneテーマ21) (2010/11/10) については、このブログでも書評を書いていますが、読んでいて「そうそう!」と膝を打つことが多く、それ以降すっかり彼女のファンになりました。

というものの、それ以外の有名な著書「歴史をかえた誤訳」 (新潮文庫)  (2004/3/28) 「通訳者と戦後日米外交」 (2007/8/11) については読んでいない…という呆れたファンなのですが(

ファンで有りながら、彼女がどういう経緯で同時通訳になり、さらには教員・研究者の道へと進んでいったのかは知りませんでしたし、ましてや女性として三人の子育てをしながら40才を過ぎて英語教育について海外の大学院で学位を取られたということなど想像すら及ばず、英語を母国語と同じレベルで習得された
帰国子女らっしゃるとさえ思っていました

この著書では、ご自身の言葉に対する思い入れ、英語に対する興味と情熱がどう芽生えて彼女のその後のキャリアへと導いいったかを、ご自身が研究した日本同時通訳界の草分け達と対比しながら、また時代背景に影響されたご自分の姿を客観的にとらえながら紐解いておられます。

読み進めながら、人よりもずっと遅くに勉強をはじめた私自身の中にも、言葉、英語への興味が実は小学校前からくすぶっており、中高時代にあまのじゃくな性格からスッカリ英語嫌いになってしまった自分がいたものの、それが単なる「フリ」でしかなく、実は「言葉」「英語」で「対話」することにはいつも興味津々だった自分に気付かされました。

今年三月に亡くなられたという同時通訳草分けの一人、村松増美先生が出会った中学時代の英語教師で今石益之先生のエピソードがこの本のはじめの部分で紹介されます。今石先生の名前を見たときにはドキドキしました。院長先生があの村松先生をインスパイアした方だったとは…!

私が通った母校で、丁度私が在籍した六年間にずっと院長先生をされていた方です。もちろん言葉を交わしたことはありませんし、いつも礼拝の時には小首をかしげて静かに椅子に座っておられた姿が思い出されます。あれだけ中学高校に馴染めなかった私が院長先生を覚えているのは、あの温厚なお顔のせいなのか、単なる偶然なのか…。担任して下さったのに名前もロクに思い出せない先生もいるのに(失礼)!

鳥飼先生とは丁度親子の年の差ですから時代背景は随分違います。もちろん育った環境も違うのですが、彼女を通して自分自身がどういう「時代」に生きてきたのか、自分の言葉、英語に対する興味を支えたものは何だったのかを振り返るとても貴重な時間を頂きました。

そして、ますます鳥飼先生のファンになったことは言うまでもありません。
現在、引き続き「通訳者と戦後日米外交」を読んでいます(笑)

2013年4月10日

海外の通訳・翻訳者事情

私が通訳・翻訳のキャリアパスを語る時は、やはり自分の経験から語ることがほとんどです。もちろん、それ以外のことを語っても説得力がないので、当たり前なのですが(笑)。

でも、海外の通訳・翻訳者がどういうキャリアパスをたどっているのか、どう業界に参入して仕事をするようになったのか?フリーランス通訳者・翻訳者の仕事の仕方は?また自分たちの職業をどうとらえているのか?などなど、気になるところではないでしょうか。

そんな方のためにお薦めの一冊を紹介します。


日本語以外の言語を商売道具としているわけですから、海外のクライアントと直接取引することも実際出てきます。海外の事情を垣間見ておくことに損はないでしょう。

ただ、何か特別これを知らないと困る…と言うことが書かれている訳では有りません。ですが、世界中の同業者が少し身近に感じられるようになると思います

日本の雑誌や、通訳・翻訳学校では私が知る限り勧めているのを聞いたことがないのですが、組織(日本だとJAT、JTFなど)に所属することのメリットを複数の人が説いているのが印象的でした。そして、 私自身も同じ意見です。


キャリアの長い短いに関係なく、同業者との横の繋がりはフリーランスにとっては技能向上ビジネスの両面において大変重要だと思います。

短いですし、英語もとても平易なのですぐに読み切れてしまいます。ちょっと、ATA(American Translators Associationの宣伝が多い気がしなくもないですが、そこはご愛敬でしょう。

2013年4月9日

スポーツ通訳の涙

DeNA・ラミレスの通訳、関根一途さん感涙
サンケイスポーツ
 4月7日(日)7時0分配信
 


このニュースを見た方も多いのではないでしょうか?

横浜ベイスターズで見事2000本安打を達成したラミレス。そのお茶目な人柄でジャイアンツ時代からファンに親しまれていた…などと言うことは、野球音痴の私でも知っているその彼。先日、2000本安打を達成したその記者会見に同席した通訳の関根さんが、記者会見中に感極まって涙した場面がありました。関根さんは、ラミレスについてきて欲しいと言われ巨人から一緒に移籍した方だそうです。

翌日朝の、フジテレビ「特ダネ」でもこのシーンは放送されていましたが、司会の小倉氏が「通訳さんも嬉しかったんでしょうね~」とにこやかに軽く言うのを聞いて、ニコニコしながらテレビを見ながら「あなたには分からないわよ~ん、うぇ~ん!」と思い、直後に私も感極まってテレビの前で涙してしまいました。

特にこの部分…

ラミレスが「自分は接する人を厳しく選んでいるつもり。彼は自分を助けてくれる。ときには通訳であり、ときには友だちでもある」と述べた感謝の言葉を自ら通訳したときだった。


以前、「究極のインハウス-スポーツ通訳」として書きましたが、スポーツ通訳者は通訳対象との距離感が全く違います。時には通訳以上の気遣いや物理的な支援が必要になることもあるでしょう。そんな風に選手と生活や戦いをともにする中で、普段全くの当らない自分の働きを、記者の方々の前で労って、そして達成したことを一緒に喜んでくれる姿勢に感じる感謝の気持ち…。涙を以て以外に表せないでしょうね。

これを見ていた、スポーツ通訳者の方々の中にはきっと同じように感じた方も多いでしょうね。多くの方の励みになったと思います。私も励まされました。

ラミちゃん、ありがとう!