2013年3月4日

19. 通訳学校では教えてくれないコト -同志を得る-

通訳学校へ通うことメリットとしてよく上がる一つに、同じように学ぶ生徒さんの姿を見て励みになり一緒にがんばれるから、というのがあります。

私も通訳学校時代はクラスメートの存在によく助けられました。あまりにできが悪くて落込んでいる私に声をかけてくれた友人達の事は忘れません。ちょうどその頃同じクラスにいたメンバー10名弱で、今でも時々「勉強会」という名の実は飲み会を年に何度か開いてくれます。本当にありがたい。でも、そのうちフリーランスの通訳になったのは私だけです。

そのため、得難い友を得たものの実際の業界事情他を肌身で理解している人はおらず、「フリーランス通訳」の視点でビジネスや技術の事について深く語れる相手はこの中にはいません。首都圏や関西都市部では事情が違うかも知れませんが、地方業界の厳しさからフリーランスとして稼働するようになる人は、やはり人数が限られています。

そんな少ないフリーンランスの中で社内通訳時代に親しく励まし合った友人もいましたが、残念なことにフリーになってからは音信が途絶えてしまいました。現場で見かける事は今までもあったのですが、どうも距離ができてしまったようで、親しく話すことが無くなってしまった人もいます。

他の地方の話を聞いても、業界の様相は競争が厳しいという印象です。狭い世界なのでその人の持つ印象や振るまい(残念ながら特に悪い方…)についてはすぐに伝わってしまう。また、地方は競争も激しいので、なかなか通訳者達がお互い助け合い協力しあって…という空気ができにくいのかもしれません。まぁ、これにはエージェントのコーディネーターの仕事の仕方も、けっして意図したものではないでしょうが大きく影響しているとは思います。

また、同じフリーランスといっても働くスタイルはそれぞれなので、なかなか価値観を共有する相手を見つけるのは難しいということなのかも知れません。でも、そんな中でも仕事を通して似たような価値観を持つ人や、仕事へ対する姿勢を見習いたい人には必ず巡り会うものだと最近つくづく思います。

よく行く出張先で、これまでも何度も一緒に仕事をした通訳者さんとお仕事をする機会が最近ありました。彼女とは勉強のこと、仕事へ取組み方、留守中の家庭のことまでいろいろ話ができるし、今回も随分相談に乗ってもらいました。

また、数日前に電話をくれたバリバリがんばっている友人。通訳市場の話から、具体的な現場へ向けての彼独自の準備の方法まで、お互い正直に話すことができる相手です。時間を忘れて真剣に話し込んでしまい、いつも長電話になります。

ただ単に「勉強頑張りましょう!」といううわべだけの関係ではありません。翻訳と違い、通訳は現場に出てお互いの実力が分かってしまう分、お互いを見る目は厳しくなります。それでも、単に実力の差だけにとらわれて自分を過大・過小評価することなく、お互いが本当の意味で向上できると思える相手を得られれば、それは大切な財産です。

独りで「どうしていいか分からない…」と途方に暮れている勉強中の方もいるかも知れません。もちろん、内にこもってばかりでなく自分から行動を起こすことも大切。積極的に人に会う、自分の意見をぶつけてみる…など。でも、熱意をもって誠実に向き合うことで得られる貴重な出会いが必ずあります。