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2011年10月19日

10. IT業界と通訳準備 キーワードはクラウド! その2

ギリギリに資料が出てくることはよくあることなのですが、今回もまた、事前に用意されたのは二日間のAgendaとそれぞれのセッションのSynopsis、スピーカー名程度の情報だけでした。日本で開催された同類のセッション資料のコピーを、エージェントさんが気を利かせてくれて参考資料として送ってはくれたのですが、印刷物ざっと厚さにして12cmほど…。しかもあくまで参考資料…。心が折れそうになりながらも準備を進めました。


左:BOSCH通訳機器、今回は中国語、韓国語通訳とのリレーもあり入念にチェック
右:休憩中の一コマ。カンペが…。そして、おやつ持込みはあたりまえのブース(笑)

そこで、今回の準備についてまとめてみました。

資料が限られているときには、その1.の前半の記事のように、その分野・トピックの大まかな変遷・歴史をおさらいしておくことが不可欠です。しかし、なかなかコンパクトにまとまった「分野・トピックの歴史」のようなものは見つかりませんし、それがあったとしても最初から内容を十分に理解することは難しいでしょう。でも、とりあえず関係有りそうなものは全て目を通して、URLを保存しておきます。

Synopsisは出ていたので、とりあえずそれを翻訳して各セッションの流れを頭に叩き込みました。またそこに出てくるキーワードをもとにネット検索をかけて、関係のありそうなトピックを片っ端から読みあさりました。ネット上の記事はあらゆる業者やメディアが同じトピックを手がけていることも多く、それらを全部読み込む事によって自分の思考が整理されていくというメリットもあります。

ネットでIT関連のトピックを検索する時には、検索対象から動画を外さないことです。IT企業は自社製品を啓蒙するのに、当たり前ですがインターネットを時にメディアの力に頼ることなく駆使しています。今回もネット検索するうちに、クライアントの技術責任者が自ら製品・概念を語る動画に多数ヒットしました。

動画の利点は音声で語られることによって、なじみの無かった略称が話の流れの中で耳に定着しやすくなることです。そして、実際の会議の場でそうしたトップエグゼクティブが前面に出て話をすることも多く、その人の発音、口調、話の持って行き方に慣れる事ができます。今回も見つけた動画の人物が壇上に立ち、まるで長年憧れるアイドルに出会ったような気持ちでした(笑)

こうした一連のリサーチ活動の中で、キーになりそうな略語や用語をチェックして行きます。私は必ずその都度エクセルにまとめていますが、これはいわゆる「クイックレスポンスの素材」としてではありません。あくまで「用語の意味を理解するためのもの」で、略称用語であれば、それに対するフルセンテンスの他に、用語の意味や使われ方をできるだけ細かく記入しておきます。そして、用語や意味・用法とは別に関連資料カラムを作り、役に立った情報のおかれていたURLを合わせて記入しておきました。

ちなみに印刷してしまうと、こうしたURL標記は役に立たないのでは?と思われるかも知れません。しかし、前回書いたとおりブースにはPCを持ち込むことができます。

隣の韓国語通訳の方もPCを開いているのが見えます。

私は自宅PCの特定フォルダをSugarSyncを利用してシンクロさせているので、ネットのつながるところであれば世界中どこからでも自宅PC保存のファイルが参照できます。もちろん、iPadに情報は事前に入れていきます。仮にそれすら時間がなかったとしても、現場からネット経由で自宅PCのファイルを同期し、クリック一発で情報確認することができます。


以前、IT通訳案件を「カタカナ変換」と「てにをは」のコンビネーションでのりきる残念なケースについて触れました。しかし、“いつも”これをやってしまうと、概念情報は自分の中には蓄積されず、ITの勘所を培うこともできません。例えば、基本的なDistributionという言葉ひとつとっても、クラウドで使われる際の「ディストリビューション/Distribution」が何を意味するのか?を押さえておくことは、とても重要なことなのです。カタカナ処理をしていたのでは、こうした知識は身につきません。

ここまで来る頃には、会議のトピックについての勘所ができ、その技術分野の歴史的な成り立ちや最近の傾向などは、ぼんやりとですが見えてきます。

ここまでやって一番最後の作業としてクイックレスポンス用の用語シートを作成しました。どんなに用語・訳語を”知って”いても、字面だけでクイックレスポンスをすることは難しいものです。ですが、こうやって自分の中で概念を理解したり、その用語を使ったトピックを繰り返しインプットすることで、クイックレスポンスも比較的楽になります。

ここに紹介したのは「私の場合」であって、ほかにも準備方法は色々あると思います。私自身もこれからさらに経験を積む中で、新しいやり方を見つけていくかもしれません。「資料が無いなりの取り組み方」があるわけですから「資料が無いから何も準備できないー。」では痛い思いをするかもしれない…と、いつも自分に言い聞かせています。

資料が無ければできる準備の内容は限られます。それでも、特定の分野やトピックに詳しいということは「何を調べればよいのかの勘所がある」ということです。すると、限られた情報からの可能な準備量は、全く経験のない通訳者と比べると全く違ってきます。つまり資料が無い時にこそ通訳としての経験と取り組む姿勢が問われるのかもしれません。
(いや…トピックによっては“無い”にも限度はあるのですけれどね、笑)

翻訳についても同じことが言えます。自分で調べて理解するまで追求するのは苦しい作業です。人にすぐに聞いてしまう事もできます。どうしても雲をつかむような話…である時は、それもよいかもしれません。でも、人に聞いても必ず納得いくまで理解することが大事です。(自戒の意味も込めて…)だからこそ、自分の強みになるのだということを忘れないでいたいものです。