2025年10月31日

今年も健康診断を予約しました

  一昨年の夏の終わり頃だったか、広島出身の翻訳者の女性がXにまぁまぁ投稿しているのに気付いてフォローしました。広島の通訳翻訳関係者というだけで興味を惹かれるのだけど、彼女の独特のセンスある忖度のない投稿には、でも、優しさが随所に滲んでいて、そしてそれは最後までまったく変わることがありませんでした。定期健診で肺がんステージ4と診断されたとの投稿を目にし衝撃を受けたのは、しばらく経った年末だったと記憶しています。「がん」と「4」の組み合わせを自分の周辺でほぼ聞いた事がなく、調べてみて「手術が不可能なステージ」と分かり再度衝撃を受けたのでした。

 その時点では彼女とはまだ個人的なやり取りはしておらず、そんな状態で自分に何ができるか考えることさえおこがましいと分かりながら考えた末、実はほぼ10年振りに自身の健康診断を申し込みました。誕生月が1月なので、本当にギリギリのタイミングでした。
 私も実は過去にがんで二度手術しています。一回目は30代で社内通訳をしていた頃、二回目はフォローアップの半年に一回の検診で見つかった再発で、フリーランスになって4年目くらいでした。いずれも初期で、手術後に完全切除が確認できて、抗がん剤治療も不要、完治しています。ズボラな性格もあり、しかも臓器の完全摘出を受けていたので、その後1年くらいは定期でチェックを受けていましたがすぐに行かなくなっていました。

 健診を申し込んだタイミングで「みんな健康診断を受けようね!」的な投稿をしたのですが、それに彼女が気付いてくれて相互フォローが始まります。その後、昨年春に広島で開催した通訳者向けサロンに参加してくれて初対面、そして今年は5月に福岡で開催されたIJETというJAT(日本翻訳者協会)主催のイベントで再会し、ランチを食べながら色々おしゃべりできました。夏にも会おうと約束して彼女が食べたいと言ったもんじゃ焼き、私がお勧めのお店を紹介し、そこでまた再会の予定だったのに、運悪く私がコロナに罹患してしまいます。必ず会おうね、と約束していたしきっと会えると思っていました。こんなに早く逝ってしまうなんて思っていなかった。まだ30代…。

 個人的なやり取りはここには書きませんが、ニコニコしながら「美佳子さーん、会えた嬉しい〜」と5月の福岡では走り寄ってきてくれたのが忘れらません。SNSを通じて、数多くの人に愛されていた彼女だったと思います。聡明で知性に溢れる彼女なのに、どこか自分自身を頼りない存在と思っていたようです。「弱音ばかり吐く」と呟いていたけれど(彼女のこの春からの怒涛の環境変化を乗り切る様子を見てきたX民は誰も反論しないと思いますが)実際には本当に芯の強い人でした。そして優しい女性だな…といつも感心して見ていました。

 亡くなったことを数日知らずに過ごしてしまい、ご家族による訃報の投稿を目にした時には膝から崩れ落ちてしまいました。どうしようと思っても何もできない、もう会えない、若い彼女の無念を思うとしばらくはただ呆然とするばかりでした。が、今週の仕事を今日先ほど終えて、今年も来年1月の検診の予約を取りました。

 企業に所属しないフリーランスは、自分で計画しない限り地域の健康診断の案内が来ても行かずにスルーしてしまうことができます。皆さん、老いも若きも健診は必ず受けましょう。

2025年1月6日

2025年 あけましておめでとうございます

2025年
あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願いします

 2024年を以てフリーランスとして独立してから丸15年が経過しました。リーマンショックによる実質契約満了による社内通訳職からの解雇だったため、これからやっていけるのかと途方に暮れるところから始めた道のりでした。おかげさまでここまで続けることができました。お世話になったエージェント企業様、懇意にしてくれた同業者の皆さん、そして頼りにして下さる依頼者様には心よりお礼を申し上げます。本年もどうぞよろしくお願いします。

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 実は昨年末、早めに仕事を切り上げ1週間ハワイ旅行に出かけました。何を血迷って?とお思いでしょう。秋に予定され楽しみにしていたアメリカ出張が直前でキャンセルになったことから、手配したESTAを無駄にするには癪に触る…と何とも安直な理由での渡航でした。ヨワヨワの円に泣かされるのは目に見えていたのですが、思い立ったが吉日とばかりに強行した次第です。

 比較的お天気には恵まれ、滞在期間中には晴れ渡る空の下でワイキキビーチから太平洋に沈む夕陽を世界中から集まった観光客と一緒に(?笑)眺めることができました。ちょうどLIFE GUARDの櫓のそばから見ていたのですが、ライフセーバーのお兄さん達が「長くいるけどこんなの見たことねぇ!」って何度も興奮しながら後ろで叫んでるから「あらそうなのね!」とワクワクしながら見守っていたのですが、ふと声の方に振り向くと、綺麗なお姉さんが「本当に?そうなの?」とお兄さんが構えるカメラのファインダーに顔を寄せて数人でわちゃわちゃしていました。なんだ、そういうことか…笑。若いって良いわね、と思った次第です。でも夕日は本当に美しかったです。

ワイキキビーチ
North Shore

 滞在中は特にアクティビティは計画せずにゆるゆる過ごすつもりで出かけたのですが、そうなると充実させたいのが食事です。が、円安、チップ、プレミアムなビーチ価格でざっと三倍だな、というのが現地物価の体感でした。ABC Storeで水とポテチを購入して2,000円ですからね。レストランで食事をすればチップを含めどうなることか、思い出しても恐ろしい。自分にとって日本が物価的に過ごしやすい良い国であることは間違いない一方で、ここまで格差がついてしまった現実と、この格差ゆり戻しの動きが将来大きく負担になって日本に押し寄せたらどうなる…。南国ビーチ、クリスマスにもかかわらず多少暗澹たる気持ちになる程ではありました。

Oreoがレギュラー価格で800円…!
 
大好きなフムスが
コンビニで買えるのはポイント高い!
けどお値段も高い! 

 ブランドショップの立ち並ぶワイキキを多くの幸せそうな観光客とすれ違いながら(そして自分自身も幸せそうにしていたはずですが)、日本や世界各地の災害復興が進まない地域や戦火に翻弄される人々についてもぼんやり考えていました。誰かが豊かに暮らせることが、他の誰かの尊厳の搾取と引き換えに成り立つものであってはならないと思います。でも、きっと自分が今享受してる豊かさが1ミリもそれに加担していないといえる人など皆無であるほど世界中が繋がっている現在、誰もが自分に何ができるかを「真剣に考える姿勢」を持つことが大切だとしみじみ考えてしまいました。これまで自分自身がテーマにしてきた「より善く生きる」を今後も考えながら自分の軸に過ごしていきたいと思います。

Merry Xmas in Summer

 そして、還暦まであと数年となった現在、自分自身の残りの職業人生をどう歩んで締め括っていくのかを少しずつ考え始めました。生成AIの進化が目覚ましかった昨年秋の繁忙期が少し落ち着きを見せた頃に次々とやり取りした同僚とのメッセージがそれを後押しした気がします。通訳という職業の行末について「翻訳と比べれば通訳はまだしばらく大丈夫だろう」と考えていた同僚が多く、以前は現実味を持って話題に上ることはほとんどなかったのですが…。実際、私自身も昨年までは「もう10年くらいは大丈夫だろう」と漠然と思っていましたが、ここにきて「あっという間」だと考えるようになりました。それがどのくらい「あっという間」なのかはあえてここでは触れませんが、私はおそらく多くの人が考えるよりもっと「あっという間」を想定している気がします。それに対して何ができるか、は一般的によく訊かれる問いですが、結局は今までと変わらず「一つ一つの仕事に丁寧に誠実に取り組んでいく」ことを精一杯心がけるしかなさそうです。

 そして、さてさて、まずは確定申告!笑。
 改めまして、本年もどうぞよろしくお願いします。

ピースリンク通訳事務所
代表通訳翻訳者 宮原 美佳子

今年も健康診断を予約しました

  一昨年の夏の終わり頃だったか、広島出身の翻訳者の女性がXにまぁまぁ投稿しているのに気付いてフォローしました。広島の通訳翻訳関係者というだけで興味を惹かれるのだけど、彼女の独特のセンスある忖度のない投稿には、でも、優しさが随所に滲んでいて、そしてそれは最後までまったく変わること...