この翻訳百景は文芸翻訳者の越前敏弥さんがなさっている活動で、通常は夜開催のところをこの度初めての試みということでお昼間の開催で、しかも、直前にFBの知り合いがアナウンスを再度流してくれたためにギリギリのタイミングで参加申し込みして、翌日に参加となりました。
内容は、翻訳者が心得るべきことを翻訳事例を上げながら説明した前半と、文芸翻訳者の収入を視野に入れながらどうチャンスをものにしていくかというキャリア開拓についての後半、という構成でした。
文芸翻訳者のみならず、翻訳者が翻訳する上での基本姿勢、さらに仕事を得る上での心構えをギュッと凝縮して聞ける講座だったと思います。これ以上の具体的な内容にはここでは触れませんが、一つ質問したことが有りました。
「印刷物の流通が少なくなる中で、文芸翻訳が生き残る道として日本の出版社を介さない新たなプラットフォームを構築し発信する動きはないですか?」というものです。先日ここでも紹介した佐藤秀峰さんの取り組みにヒントを得ているのは言うまでもありません。
文芸翻訳者の収入については具体的な数字を出されながら、業界や版元が取ってきたあらゆる変化によって10年前と現在の「文芸翻訳で収入を得る」ことがさらに難しくなっている現状を自ら話されたことがきっかけになって質問してみました。この話についてはIJET25でされたお話の内容だそうで、アルクサイトの翻訳のトビラに一部まとまっているのでご興味ある方はぞうぞ。
『一部そういう取り組みをしている方は居るようである。ただ、どれほどの成功を収めているかは分からない。文芸翻訳の場合、翻訳の元になる書籍の著作権問題がからむため、版元との交渉など超えなければならないハードルが沢山ある。考え方としては面白いし、だれか力のある人がやってくれないかな、とは思う。実際、将来的にはそういうことができなければならない、或いはそういう人しか生き残れない時代が来るかもしれない。』
だいたい、こんなご回答でした。版元との著作権交渉については見落としていました。確かに大変そうですね…。
翻訳を職業にしたいと思っていても、よほど戦略的に進めて行かないと「生活していく」ことは難しい業界であると改めて知らされます。仕事をしたい、仕事を続けたいと考える時に、必要なことをもっと翻訳者自身が考えるべきであることを明確に示唆されていたと思います。「仕事は貰うもの。」と考えているうちは、仕事を「続ける事」は難しいということでしょうね。
まだ読めていませんが、ご著書も一冊購入して帰りました。
越前さんのサイン入りです(笑)