去る9月16日(日)にTEDxKyotoが開催されました。以前からTEDについては興味深いスピーチが盛りだくさんで、素晴らしいスピーカーの動画を見ては「こういうスピーチの通訳がしたい!」と思っていたので、ボランティアでやらないか?と誘われたときには二つ返事でした。
ですが、実際に通訳関係で動きが出始めたのは本番10日前くらいからでした。コーディネーション担当の女性は非常に気配りのできる方で、資料の準備や同通機材の整備に奔走して下さいました。にもかかわらず…なかなか普段通訳を使わない方には、通訳準備について理解が得られなかったようで、いろいろご苦労頂いたようです。大変良くしていただき助かりました。
さて、私が担当したのは以下の三本です。
まずお一人目は殿岡康永さん。
「Reconsutructing memories of Tohoku with GPS」
震災後に自分の強みを活かして何ができるか?を考えて行動された経験をプレゼンされました。直前に打ち合わせした時に、内容がリハーサルを受けて随分変更になっていたので、変更分のスライドを頂き「一度スライドを見ながら本番さながらに喋って頂けますか?」とお願いしたところ、快く応じて下さいました。
リハーサルの時にはかなり緊張されて、神経質になっておられた様子でしたが、変更後は見せ方や内容が格段に充実していました。思わず「すごく良くなりましたね!私も楽しみです。頑張りましょう。」と声をかけたら、ニッコリ笑って応えて下さったのが印象的でした。
さぁでも、通訳はここからが勝負(笑)!喋って頂いた内容は全て録音したのですが、そこから重要表現と自分がつまずきそうな表現を抜き出し、訳出していきます。この間ほぼ30分強くらいだったでしょうか?脳味噌フル回転です。
本番では堂々とスピーチされたので、そういう言葉運びになるように注意しました。
お二人目は森田真生さんです。
「What is math about?」
数学は数字だけを追究したものではなく、深く自分と向き合うためのものだ!という考え方を提唱されています。森田さんは英語が堪能で、英語で講演をされました。実は、日本語も英語も両方スクリプトをもらっていましたので、正直なところ「準備すれば楽勝かな~」と思っていました。
ということで準備。まずは日本語を読み込んでコンテクストを理解し、記憶しました。英語原稿と読み合わせて、耳で聞いてすぐに反応できそうにないものをリストアップ。英語と日本語原稿の内容は過不足なく対応していたので、日本語ボイスオーバーでほぼいけるだろうな、と考えていました。
英語と日本語原稿は「翻訳」という視点で見れば非常によく練り上がった訳になっていました。訳出は先方が提出されたものなので、思い入れもあると認識していましたし、だからこそボイスオーバーが良いと思っていました。ところが…
彼が喋りはじめてから分かったのですが…尺が合わないものがいきなり飛び出しました。また、日本語を読んでしまってはスピーカーのその時のバイブが伝わらない!と訳し始めてすぐに気付いたのです。それは日本語と英語の語順の違いもあるでしょうし、書き言葉と話し言葉の違いもあったと思います。
普段なら、原稿が出ていれば自分で読上げたものを録音して、それに合わせて「自分が訳出したもの」をボイスオーバーしてみるのですが…今回は日英両方の原稿が出ていたために安心してそれをしていなかったためのサプライズ(汗)。
すぐに方針転換し、日本語原稿はキーワードをハイライトしたところ以外は一切見るのをやめました。内容は把握していたし、スピーカーがこだわったであろう日本語の表現は全てチェックしていた事が奏功しました。準備は大事…。
原稿が出ているからといって安心はできません。スピーカーが原稿通りに喋らない事はよくありますから、それを考えればこの方針転換は正しかったと思います。
三本目はこのTEDxKyotoのトリをつとめたCatherin Courageさん。
「Igniting creativity to transform corporate culture」
想像力、クリエイティビティーは誰もが生まれながらに持っている才能であり、それを企業活動の中で活かしていこう、という内容です。トリと言うことで私も身が引き締まる思いでした。英語原稿最終稿は、前日に出ました(笑)よくあることです。
リハーサルで彼女の雰囲気としゃべるスピードを確認。全訳を付けて、読んでみて読みにくいところを修正し、英語を読上げて録音したものをベースに尺合わせをし…。真夜中を随分過ぎるくらいまでかかってしまい、もうこうなると体力勝負!結局、体力温存を優先し、尺合わせは途中で断念。
ですが、本番は何とか上手くノッて訳せていたと思います。そういう時の通訳はメチャクチャ楽しい!大トリと言うことで、彼女を紹介するMCも興奮気味で、そういった雰囲気の中はじまったセッションでした。彼女は最初だけ緊張していたようですが、その後はすぐにリラックスしていたようで、それにつられて私もユッタリ通訳できたと思います。
全体を通しての感想ですが、とにかく楽しかった!フリーランスで活動していると、「誰かと共同で作り上げた感」を味わう機会はそう多くはありません。ですが、ボランティアのイベントとして作り上げられたTEDxKyotoには、そういう感覚が参加者全員にあふれていたように思います。その一部をお手伝いできた事を本当に嬉しく思います。この場を借りてお礼を申し上げます。
関西の通訳さんとも知合いになれましたし、以前からお声がけ頂いているエージェントさんにもはじめてお目にかかる事ができました。様々なチャンスや気付きを与えてもらったイベントになりました。これからもTEDイベントがあれば状況が許す限り参加したいと思っています。
最後に私の最近のお気に入り、そしてオススメのTED Talkを紹介します。
目からウロコで、感動して何度も聞き、娘に通訳して聞かせました(笑)。
Amy Cuddy
「Your body language shapes who you are」
ちなみに私の住む広島でもTEDxHeiwakinenParkが開催されるようです。
今から楽しみ!
ですが、実際に通訳関係で動きが出始めたのは本番10日前くらいからでした。コーディネーション担当の女性は非常に気配りのできる方で、資料の準備や同通機材の整備に奔走して下さいました。にもかかわらず…なかなか普段通訳を使わない方には、通訳準備について理解が得られなかったようで、いろいろご苦労頂いたようです。大変良くしていただき助かりました。
さて、私が担当したのは以下の三本です。
まずお一人目は殿岡康永さん。
「Reconsutructing memories of Tohoku with GPS」
震災後に自分の強みを活かして何ができるか?を考えて行動された経験をプレゼンされました。直前に打ち合わせした時に、内容がリハーサルを受けて随分変更になっていたので、変更分のスライドを頂き「一度スライドを見ながら本番さながらに喋って頂けますか?」とお願いしたところ、快く応じて下さいました。
リハーサルの時にはかなり緊張されて、神経質になっておられた様子でしたが、変更後は見せ方や内容が格段に充実していました。思わず「すごく良くなりましたね!私も楽しみです。頑張りましょう。」と声をかけたら、ニッコリ笑って応えて下さったのが印象的でした。
さぁでも、通訳はここからが勝負(笑)!喋って頂いた内容は全て録音したのですが、そこから重要表現と自分がつまずきそうな表現を抜き出し、訳出していきます。この間ほぼ30分強くらいだったでしょうか?脳味噌フル回転です。
本番では堂々とスピーチされたので、そういう言葉運びになるように注意しました。
お二人目は森田真生さんです。
「What is math about?」
数学は数字だけを追究したものではなく、深く自分と向き合うためのものだ!という考え方を提唱されています。森田さんは英語が堪能で、英語で講演をされました。実は、日本語も英語も両方スクリプトをもらっていましたので、正直なところ「準備すれば楽勝かな~」と思っていました。
ということで準備。まずは日本語を読み込んでコンテクストを理解し、記憶しました。英語原稿と読み合わせて、耳で聞いてすぐに反応できそうにないものをリストアップ。英語と日本語原稿の内容は過不足なく対応していたので、日本語ボイスオーバーでほぼいけるだろうな、と考えていました。
英語と日本語原稿は「翻訳」という視点で見れば非常によく練り上がった訳になっていました。訳出は先方が提出されたものなので、思い入れもあると認識していましたし、だからこそボイスオーバーが良いと思っていました。ところが…
彼が喋りはじめてから分かったのですが…尺が合わないものがいきなり飛び出しました。また、日本語を読んでしまってはスピーカーのその時のバイブが伝わらない!と訳し始めてすぐに気付いたのです。それは日本語と英語の語順の違いもあるでしょうし、書き言葉と話し言葉の違いもあったと思います。
普段なら、原稿が出ていれば自分で読上げたものを録音して、それに合わせて「自分が訳出したもの」をボイスオーバーしてみるのですが…今回は日英両方の原稿が出ていたために安心してそれをしていなかったためのサプライズ(汗)。
すぐに方針転換し、日本語原稿はキーワードをハイライトしたところ以外は一切見るのをやめました。内容は把握していたし、スピーカーがこだわったであろう日本語の表現は全てチェックしていた事が奏功しました。準備は大事…。
原稿が出ているからといって安心はできません。スピーカーが原稿通りに喋らない事はよくありますから、それを考えればこの方針転換は正しかったと思います。
三本目はこのTEDxKyotoのトリをつとめたCatherin Courageさん。
「Igniting creativity to transform corporate culture」
想像力、クリエイティビティーは誰もが生まれながらに持っている才能であり、それを企業活動の中で活かしていこう、という内容です。トリと言うことで私も身が引き締まる思いでした。英語原稿最終稿は、前日に出ました(笑)よくあることです。
リハーサルで彼女の雰囲気としゃべるスピードを確認。全訳を付けて、読んでみて読みにくいところを修正し、英語を読上げて録音したものをベースに尺合わせをし…。真夜中を随分過ぎるくらいまでかかってしまい、もうこうなると体力勝負!結局、体力温存を優先し、尺合わせは途中で断念。
ですが、本番は何とか上手くノッて訳せていたと思います。そういう時の通訳はメチャクチャ楽しい!大トリと言うことで、彼女を紹介するMCも興奮気味で、そういった雰囲気の中はじまったセッションでした。彼女は最初だけ緊張していたようですが、その後はすぐにリラックスしていたようで、それにつられて私もユッタリ通訳できたと思います。
全体を通しての感想ですが、とにかく楽しかった!フリーランスで活動していると、「誰かと共同で作り上げた感」を味わう機会はそう多くはありません。ですが、ボランティアのイベントとして作り上げられたTEDxKyotoには、そういう感覚が参加者全員にあふれていたように思います。その一部をお手伝いできた事を本当に嬉しく思います。この場を借りてお礼を申し上げます。
関西の通訳さんとも知合いになれましたし、以前からお声がけ頂いているエージェントさんにもはじめてお目にかかる事ができました。様々なチャンスや気付きを与えてもらったイベントになりました。これからもTEDイベントがあれば状況が許す限り参加したいと思っています。
最後に私の最近のお気に入り、そしてオススメのTED Talkを紹介します。
目からウロコで、感動して何度も聞き、娘に通訳して聞かせました(笑)。
Amy Cuddy
「Your body language shapes who you are」
ちなみに私の住む広島でもTEDxHeiwakinenParkが開催されるようです。
今から楽しみ!