先日3月20日(火)に開催された「公開シンポジウム『裁判員裁判経験の法廷通訳人が語る』」に参加してきました。当初、仕事が入っていたので参加できないことを残念に思っていたのですが、急遽キャンセルが決り参加を決めました。残念ながら東海道新幹線管内で発生した人身事故の影響で新幹線が大幅に遅れ、第二部のパネルディスカッションからの参加となりました。
パネルディスカッションにはこれまで裁判員裁判を経験した10名の通訳人がパネリストとして参加。言語は様々で、英語、中国語、スペイン語をはじめとする全6カ国語の方々でした。取り上げられたトピックは主に以下の通りです。
目新しい情報、あるいは視点を期待していったのですが、全体的に既知の内容が多く、場の空気を察してか、期待したような本音は語られなかったように思います。(あるいは私が期待した本音がパネリストの方の本音と合致していなかったのかもしれません。)その点については正直とても残念でした。
(当日メモを取っておらず記憶をたどっているので、抜け落ち記憶違い等ある場合は遠慮無くご指摘下さい。)
報酬体系
これが不透明である(あるいは安い)とは言われています。その上、明細をもらってみないと報酬がいくらか分からない…という状況だということ。法廷通訳人は法廷での通訳のみならず、事前に準備される書類(起訴状/冒頭陳述/論告/弁論他)の翻訳もしなければなりません。事前に準備される…と言っても、充分余裕をもって準備されることは非常に稀です。
例えば、起訴状の翻訳は、それが3行であっても30ページであっても一通あたりの料金は変わらないらしいことを最近仲間から聞いたことが有ります。あるパネリストの話では、何時間かかるか聞かれ「30時間くらいかかります。」と回答したところ、2日後の開廷の件について「それでは明日のお昼過ぎにでも取りに来て下さい。」と言われたそうです(笑)通常の翻訳業としてやる仕事であれば、特急料金請求以上に「あり得ない依頼」がなんの問題意識もなくされているというのが現状のようです。
また、これは次の相通訳人をたてるかどうか…にも関係するのですが、裁判所の予算は限られており(限られていない予算があるのか?笑)、相通訳人をたてる場合には報酬は折半となります。相通訳人をたてて負荷が半分になる…という考えがまず安易といえるでしょう。相通訳人をたてるということは、一人では対応できない案件であるということです。つまり、負荷が二人分だということが理解されていない。お友達の法廷通訳さんが「『割り勘通訳』なんてねぇ、笑えないよ。」と言っておられるのを私も直接聞きました。
相通訳人をたてることについて
通訳人の中には、厳しい案件で裁判所に相通訳人をたてるかどうかを聞かれた場合でも「一人でやります。」と言われる方のほうが多いそうです。もちろん報酬折半を嫌ってのことです。通訳クオリティーに影響がでることが分かっていても…です。
では実際の通訳面で厳しい負荷のかかる通訳の場合、相通訳人をたてれば上手く行くか?…というと必ずしもそうでないようです。お互いの進め方をわかり合えている通訳人であれば、息を合わせて進めることが出来ても、そうでない場合には「やりにくい…」と感じてしまうこともあるようです。
ここで、私も傍聴した「誤訳6割」と報道されたベニース事件の例を出した通訳者がいました。この事件では専門家による「鑑定書」が出ていますが、その鑑定書内に読み取られる通訳人2名のやり取りを見る限り、二人の間にまるで信頼関係が出来ていなかった…というのです。
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パネルディスカッションにはこれまで裁判員裁判を経験した10名の通訳人がパネリストとして参加。言語は様々で、英語、中国語、スペイン語をはじめとする全6カ国語の方々でした。取り上げられたトピックは主に以下の通りです。
目新しい情報、あるいは視点を期待していったのですが、全体的に既知の内容が多く、場の空気を察してか、期待したような本音は語られなかったように思います。(あるいは私が期待した本音がパネリストの方の本音と合致していなかったのかもしれません。)その点については正直とても残念でした。
(当日メモを取っておらず記憶をたどっているので、抜け落ち記憶違い等ある場合は遠慮無くご指摘下さい。)
法廷通訳を取巻く諸問題に詳しくない方にもできるだけ分かりやすく、既知の情報も含めてシンポジウムでのディスカッションを解説した後、私自身の感想を述べたいと思います。-不透明な報酬体系
-相通訳人をたてることについて
-第三者によるチェック機能について
-法廷通訳のクオリティー
-通訳人の資格試験制度
-通訳人の保護、現状は?
報酬体系
これが不透明である(あるいは安い)とは言われています。その上、明細をもらってみないと報酬がいくらか分からない…という状況だということ。法廷通訳人は法廷での通訳のみならず、事前に準備される書類(起訴状/冒頭陳述/論告/弁論他)の翻訳もしなければなりません。事前に準備される…と言っても、充分余裕をもって準備されることは非常に稀です。
例えば、起訴状の翻訳は、それが3行であっても30ページであっても一通あたりの料金は変わらないらしいことを最近仲間から聞いたことが有ります。あるパネリストの話では、何時間かかるか聞かれ「30時間くらいかかります。」と回答したところ、2日後の開廷の件について「それでは明日のお昼過ぎにでも取りに来て下さい。」と言われたそうです(笑)通常の翻訳業としてやる仕事であれば、特急料金請求以上に「あり得ない依頼」がなんの問題意識もなくされているというのが現状のようです。
また、これは次の相通訳人をたてるかどうか…にも関係するのですが、裁判所の予算は限られており(限られていない予算があるのか?笑)、相通訳人をたてる場合には報酬は折半となります。相通訳人をたてて負荷が半分になる…という考えがまず安易といえるでしょう。相通訳人をたてるということは、一人では対応できない案件であるということです。つまり、負荷が二人分だということが理解されていない。お友達の法廷通訳さんが「『割り勘通訳』なんてねぇ、笑えないよ。」と言っておられるのを私も直接聞きました。
相通訳人をたてることについて
通訳人の中には、厳しい案件で裁判所に相通訳人をたてるかどうかを聞かれた場合でも「一人でやります。」と言われる方のほうが多いそうです。もちろん報酬折半を嫌ってのことです。通訳クオリティーに影響がでることが分かっていても…です。
では実際の通訳面で厳しい負荷のかかる通訳の場合、相通訳人をたてれば上手く行くか?…というと必ずしもそうでないようです。お互いの進め方をわかり合えている通訳人であれば、息を合わせて進めることが出来ても、そうでない場合には「やりにくい…」と感じてしまうこともあるようです。
ここで、私も傍聴した「誤訳6割」と報道されたベニース事件の例を出した通訳者がいました。この事件では専門家による「鑑定書」が出ていますが、その鑑定書内に読み取られる通訳人2名のやり取りを見る限り、二人の間にまるで信頼関係が出来ていなかった…というのです。