さて、実は今次のお仕事に向けて福岡行の新幹線の中です。
第16回広州アジア大会での通訳レポートもこれで7回目ですが、すでに帰国後2週間、そろそろ大会の余韻からも卒業する時期に来ています。
こんなに、名残惜しい気持ちになるのは何故か色々考えていたのですが、通常の仕事ではそこまで強く感じなかったいくつかの事が思い当りました。
最後なので、思い出深い写真も多めに公開していきます。
1.逐次通訳の奥深さ
まずは、一年中あちらこちら飛び回っている私ですが、一度に多くの他言語通訳の方と仕事することは珍しかったということ。
リレー通訳は、今までも何度も経験していますが、逐次リレーはおそらく初めてではないでしょうか?今までリレーというと、ブースに入り同通というスタイルばかりでした。
同通の場合は、多少長めに話されても、話した順番に訳出していくわけですから、通訳としてとくに時間を気にする必要はありません。一方、逐次ではスピーカーが話している間は、他言語対象の方は黙って聞いているわけで、通訳の訳出をまだかまだかと待っているわけです。
その状態でリレーとなると、さらに別のターゲット言語に訳出するのを待っている聴衆に至っては、2倍の待ち時間が発生するわけです。待たされた上に「長ったらしい冗長な通訳」を聞かされたのでは聴衆はたまったものではありません。
前回のレポートでも触れましたが、如何に逐次通訳で簡潔にまとめつつ、スピーカーの伝えたい思いまでしっかりメッセージとして伝える技術が大切かを、リレー通訳の現場を通して改めて痛感しました。
2.緊張感伴う現場
次に、記者会見という場での、普段とは違う緊張感がある職場だったことがあります。
これまでも、多くのジャーナリストが集う場でのプレスカンファレンスは、日本でも海外でも何度も経験しています。しかし、やはりそこには何度やっても独特の「見られている」という緊張感があります。自意識過剰と言われればそうかもしれませんが、スピーカーの横に座って、スピーカーと同じように通訳が喋るときには視線を向けられ、自分は映っていなくてもカメラのフラッシュを浴びる…という状態です。
今回は期間も長かったですから、大会後半になるにつれて徐々に緊張も解けてきたような気でいました。それでもやっぱり緊張していたんだ…と、メモに繰り返しOK!OK!と書いているのを会見後に見て、(書いた意識はもちろんあったのですが)正直自分で自分が可笑しくて仕方ありませんでした。
3.通訳の世界は一つ
国は違えど、通訳という職業でいる私たちです。普段通訳する場合にどんなことで悩む?とか、事前資料ってなかなか出てこないよね、こんなスピーカーは困る、等々驚くほどに同じ思いを抱いていることが分かりました。しかも、アジア大会で通訳してやろう!なんて、オモシロイこと無いかと普段から探している方が多いのか、仕事に誇りを持ちながら精一杯楽しんでやろう!という方々が多かったように思います。
日本の通訳者は特にそういう人の集まりではなかったでしょうか?ONもOFFも、それぞれめいっぱい楽しみまくっていたように思います。なかなか全員がそろうことはありませんでしたが、そんな中でも「今日はこんな競技で!初めて見たけれど楽しかった。」という声や、「日本やってくれたよ!」「残念だったー。」などと、すれ違いざまにでもよく声を掛け合っていたと思います。
OFFになるとこぞって市内の美味しいものどころや、スーパーに買い物に出かけたり、中には足を伸ばしてサファリパークに行かれた方もいらっしゃるそうです。そんな調子の日英通訳勢、最終日夜には大集合して、広州の夜を地元料理で締めくくりました。
実はお一人とは、以前スペインの出張で一週間ご一緒させていただいたロンドンの方でした。ですから、これから先もきっと、皆さんとのご縁はどこかでつながっていくのかな?と思っています。
4.「本物」を目指す
ですが今回の仕事はなんといっても、スポーツ分野でアジアの最高峰が集う「本物」を間近で見せていただいたこと、これが一番でした。
本物のすばらしさは、言葉では説明出来ません。直に伝わるオーラやパワー、それはそこにいる本人しか感じることが出来ないものです。
大会の場は、施設や現地の歓迎もあり大変華々しいものでした。しかし、選手たちの努力は大会が始まるずっとずっと前から続いているわけです。技能を競うには当たり前のことですが、日々の積み重ねが無ければこの舞台もない…。しかも、技能を磨くには、精神的な強さも要求されます。舞台が派手であるほど、勝てば喜びもひとしおです。でも、負ければ次の舞台までのバネにして進むしか有りません。
自分の通訳という職業と重ね合わせてしまい、そういう選手たちのこれまでの歩み、そしてこれから先にも続く努力を考えると、様々なシーンで胸が熱くなりました。そして、たくさん勇気をもらいました。
私も、まだまだ行くぞ!
来年の仕事の打診が通訳も、翻訳も、ここ一週間で続々と入り始めています。
お客様のプロフェッショナルなお仕事を、プロ通訳としてしっかりとサポート出来るよう2011年も走ります!
…の前に、福岡のお客様の仕事を誠心誠意務めてきます(笑)
第16回広州アジア大会での通訳レポートもこれで7回目ですが、すでに帰国後2週間、そろそろ大会の余韻からも卒業する時期に来ています。
こんなに、名残惜しい気持ちになるのは何故か色々考えていたのですが、通常の仕事ではそこまで強く感じなかったいくつかの事が思い当りました。
最後なので、思い出深い写真も多めに公開していきます。
(男子バスケット会場
1.逐次通訳の奥深さ
まずは、一年中あちらこちら飛び回っている私ですが、一度に多くの他言語通訳の方と仕事することは珍しかったということ。
リレー通訳は、今までも何度も経験していますが、逐次リレーはおそらく初めてではないでしょうか?今までリレーというと、ブースに入り同通というスタイルばかりでした。
同通の場合は、多少長めに話されても、話した順番に訳出していくわけですから、通訳としてとくに時間を気にする必要はありません。一方、逐次ではスピーカーが話している間は、他言語対象の方は黙って聞いているわけで、通訳の訳出をまだかまだかと待っているわけです。
その状態でリレーとなると、さらに別のターゲット言語に訳出するのを待っている聴衆に至っては、2倍の待ち時間が発生するわけです。待たされた上に「長ったらしい冗長な通訳」を聞かされたのでは聴衆はたまったものではありません。
前回のレポートでも触れましたが、如何に逐次通訳で簡潔にまとめつつ、スピーカーの伝えたい思いまでしっかりメッセージとして伝える技術が大切かを、リレー通訳の現場を通して改めて痛感しました。
(見事、優勝を果たした日本女子サッカーの会見
監督、選手の喜びがひしひしと…)
2.緊張感伴う現場
次に、記者会見という場での、普段とは違う緊張感がある職場だったことがあります。
これまでも、多くのジャーナリストが集う場でのプレスカンファレンスは、日本でも海外でも何度も経験しています。しかし、やはりそこには何度やっても独特の「見られている」という緊張感があります。自意識過剰と言われればそうかもしれませんが、スピーカーの横に座って、スピーカーと同じように通訳が喋るときには視線を向けられ、自分は映っていなくてもカメラのフラッシュを浴びる…という状態です。
(男子水泳、背泳のアイドル!
入江陵介選手。かっこよかった…)
今回は期間も長かったですから、大会後半になるにつれて徐々に緊張も解けてきたような気でいました。それでもやっぱり緊張していたんだ…と、メモに繰り返しOK!OK!と書いているのを会見後に見て、(書いた意識はもちろんあったのですが)正直自分で自分が可笑しくて仕方ありませんでした。
3.通訳の世界は一つ
国は違えど、通訳という職業でいる私たちです。普段通訳する場合にどんなことで悩む?とか、事前資料ってなかなか出てこないよね、こんなスピーカーは困る、等々驚くほどに同じ思いを抱いていることが分かりました。しかも、アジア大会で通訳してやろう!なんて、オモシロイこと無いかと普段から探している方が多いのか、仕事に誇りを持ちながら精一杯楽しんでやろう!という方々が多かったように思います。
(左は中英Weng 右は韓英Kei)
日本の通訳者は特にそういう人の集まりではなかったでしょうか?ONもOFFも、それぞれめいっぱい楽しみまくっていたように思います。なかなか全員がそろうことはありませんでしたが、そんな中でも「今日はこんな競技で!初めて見たけれど楽しかった。」という声や、「日本やってくれたよ!」「残念だったー。」などと、すれ違いざまにでもよく声を掛け合っていたと思います。
(美味しいものには目が無い日英通訳チーム
広東料理の老舗、陶陶居にて
ガッツリ食べました。)
(OFFに出かけた広州市内
裏路地はこんな感じ)
OFFになるとこぞって市内の美味しいものどころや、スーパーに買い物に出かけたり、中には足を伸ばしてサファリパークに行かれた方もいらっしゃるそうです。そんな調子の日英通訳勢、最終日夜には大集合して、広州の夜を地元料理で締めくくりました。
(そして最後もやっぱり食べて締めくくる日英通訳チーム。
増田明美さんもテレビクルーと同じレストランに!
快く写真に一緒に入っていただきました。)
4.「本物」を目指す
ですが今回の仕事はなんといっても、スポーツ分野でアジアの最高峰が集う「本物」を間近で見せていただいたこと、これが一番でした。
(左:男子バスケ、田臥選手後ろ姿
右:女子200m平泳ぎ決勝)
右:女子200m平泳ぎ決勝)
(日本の平尾選手減点ゼロでラウンドB/決勝出場!
2落下減点8で惜しくも5位)
(2日目に行ったレセプション会場で、すでにメダリストの選手たちと!
左:射撃銅メダル 松田選手と トライアスロン女子金メダル 足立選手
右:トライアスロン男子金 細田選手、とちょっと寄り添う私、笑)
大会の場は、施設や現地の歓迎もあり大変華々しいものでした。しかし、選手たちの努力は大会が始まるずっとずっと前から続いているわけです。技能を競うには当たり前のことですが、日々の積み重ねが無ければこの舞台もない…。しかも、技能を磨くには、精神的な強さも要求されます。舞台が派手であるほど、勝てば喜びもひとしおです。でも、負ければ次の舞台までのバネにして進むしか有りません。
(水泳のメダル授与式での国旗掲揚
日本はメダル競争で中国に苦戦…
象徴するような写真です。)
自分の通訳という職業と重ね合わせてしまい、そういう選手たちのこれまでの歩み、そしてこれから先にも続く努力を考えると、様々なシーンで胸が熱くなりました。そして、たくさん勇気をもらいました。
私も、まだまだ行くぞ!
来年の仕事の打診が通訳も、翻訳も、ここ一週間で続々と入り始めています。
お客様のプロフェッショナルなお仕事を、プロ通訳としてしっかりとサポート出来るよう2011年も走ります!
…の前に、福岡のお客様の仕事を誠心誠意務めてきます(笑)