2014年10月12日

27. 仕事の準備の仕方(見本市ブース通訳編 その2)

さて、前回は現場に向かう前の資料ベースでの準備内容でした。今回は、会場で想定される通訳シーンから準備すべき内容を考えてみます。

2.現場の具体的な会話を想定する
経験上、海外へ商品を売り込む際に必ず聞かれたのは以下の質問項目です。
1.対象国に代理店があるか?
2.取引最低ロットはいくらか?
3.取引最低金額はいくらか?
4.発注から納品までのリードタイムは?
5.出荷条件は?(Ex-works/FOB etc)
6.パンフレット(英仏語あたり?)、Webサイトはあるか?
この代理店ですがDistributorなのかAgentなのかの違いは現場の会話の中で抑えるようにしましょう。もちろん Direct Salesしかしないとなれば、出店業者の海外窓口担当部門について聞かれるでしょうから、その部門の英語名称も要確認です。

「商談通訳」というタイトルで仕事が舞い込むんでも通常は出店側に標準レートが既に設定されている場合が多く、価格の話になるのは見本市で非常に興味を引いた場合に限られます。ですので、現場でいきなりそろばん弾いてディスカウント合戦!になるのは稀だと思います。

これ以外に考えられる質問としては…
7.サンプル商品の送付は可能?またその時の最低数量および価格は?
8.訪問企業側のニーズや好みをプラスして新製品の製造請負は可能?
すみません…再びワインについて全くのド素人なので、これはあくまで想像です。ただし私が以前海外商品見本市ブースで仕事した時、クリスタル・ガラス加工専門(デザイン含む)メーカーを担当したのですが「カスタマイズ対応できるか」質問していた業者がが有りました。現地プロデューサーとして利用者(消費者)のニーズに合わせた商品開発をしている業者の来場も考えられます。

次に現場での対応で重要な事を考えてみます。

3.アポ商談を想定したリサーチ
まず、持ち物ですがネット接続可能なタブレットデバイスの持参をおすすめします。出店企業がこういうイベントに合わせ、以前から商談をすすめている国内業者を招待していることが良く有ります。こうした招待業者について、通訳者が事前に知らせてもらえる場合もありますが、アポイントメント時間はイベント前後の来場者のスケジュールで常に変更を余儀なくされている場合がほとんどです。

アポのとれている企業について最低限のリサーチを進めておき、現場でアポ前にそれとなく「次のアポはこのお客さまですね。」とアポの詳細を聞き出す事が出きるはずです。さらに、海外出店企業が招待企業についてリサーチしていても、ほとんどの場合が英語によるチェックです。しかし、日本企業の情報は日本語でのほうが豊富であるのは言うまでも有りません。ここで知り得た情報が喜ばれる事は多々あります。また、現場でアポ有り業者が判明したら、客足の薄い時にリサーチを進めておくこともお忘れなく。

あとは、来場したお客さまと出店者に誠心誠意対応しましょう!

4.通訳者もクライアントカード整理(反省)
…と商談が終わったら終しまい?…ということも有りません。多くの場合出店業者は、それぞれの商談内容をクライアントカードのようなものに忘れないうちにその場で整理してきます。名刺交換をしていても、役職名が英語ではピン来ないという時や、商談内容そのものを思い出していただく手助けまでできれば、大いに喜ばれることでしょう。

こうして書いていくと「なんだ、通訳以外の作業が多いじゃない?思い出す手助けなんて…」と思うかもしれませんが、一緒に思い出しながら自分の通訳内容の反省をすれば問題なしです。確かに、言われたことだけ通訳できればいい、わけですがその時のパフォーマンスをできるだけ良い物にするためには「想像力を働かせてどんな準備が出きるか?」がどんな種類の通訳案件でも重要だと感じます。

2014年10月5日

27. 仕事の準備の仕方(見本市ブース通訳編 その1)

駆け出し通訳の登竜門的に、見本市などに「逐次通訳が出きる通訳者」が駆り出されることは良く有ります。このブログでもご案内したことが有りますがFOODEX JAPAN、そして直近のイベントではTGS(Tokyo Game Show2014)CEATECH2014、などなど実に多くのTrade Show(見本市)が主に東京では開催されています。こういったイベントでは出店企業にいわゆるブースが割り当てられ、入場者が興味をもった出展企業ブースを自由に見学して、その企業との取引に興味が湧けば商談を進めていくというものです。

こうした出展ブースでの商談通訳の準備方法について解説してみます。あくまでも、私の経験でお話していますので他の方のご意見も是非お聞かせ下さい。実は、知り合いが「VINEXPO NIPPON TOKYO 1-2 Nov. 2014」でお仕事をすることになったようなので、こちらを例にとって考えてみます。

1.出店企業を知る
通常は、主催者側(あるいは通訳エージェント)から、どの企業ブースを担当するのか連絡があり、同時に全出展企業リスト、ブースレイアウト図が送られてきます。ここまで分かったら基本的調査項目は以下の内容です。
1.会社概要
2.会社が売り、や主要特許項目
3.出店目的の対象商品
4.対象商品の国内外出荷状況
5.国内外取引銀行
このイベントはサイトを確認したところ、海外のワイン業者が日本市場に向けて売り込むことを目的としたイベントのようです。であれば、ここから想像を膨らませて
6.今回対象ワインのカテゴリー
7.ぶどうの産地と気候
8.ワイン醸造に利用している特別な技法
などが考えられます。(ワインに詳しい方ならもっと思い浮かぶのかもしれません…汗)

また、現場でテイスティングがあると想定するとその味わいの表現方法にも気を遣いたいところです。私はワインは全くの素人なので思い浮かぶのは「芳醇な」「まろやかな」程度なのですが、詳しい方ならどういう表現をするのかは興味が有りますね。少なくとも、対象商品ワインの味わいが日本語ではどのように表現されているかを抑えた上で、それを英語で表現出きるようになっておくことは必要でしょう。

また、ワイン以外の場合にも「商品の特徴となるものは何か?」を考えれば、自ずと調査項目は見えてくるはずです。つまり、商品スペックと言われるものを、利用者(消費者)の目線でどう捉えるのか?を検証していけばいいわけで、それには出展企業が出している商品説明のWebサイトやパンフレットなどが大いに役に立つはずです。

ここまでは前準備。次回は、会場で想定される通訳シーンから、準備すべき内容を考えてみましょう。

2014年10月2日

2014仁川アジア大会通訳問題

連日アジア大会で日本選手のメダル記録が報道される中、アジア大会事務局の不手際が報道されています。その中に通訳者100名近くが離脱したという記事を見つけた方も多いのではないでしょうか?

4年前に私も広州アジア大会の通訳を担当しました。その時はアジア大会事務局が通訳エージェントを雇ってそこが通訳者手配を一括管理していました。けして万全とはいえませんでしたが、通訳事務局は熱心に取り組んでいましたし、通訳と事務局側が協力してすすめようといういい雰囲気は有ったと思います。

ところが仁川アジア大会では、先日はとうとうこんな記事が出てきました。
<アジア大会>選手が通訳に…組織委「今後はアラビア語通訳を配置」
2014年10月01日16時42分
[ⓒ ISPLUS/中央日報日本語版] comment24hatena0

29日、2014仁川アジア競技大会陸上男子1500メートルのメダリストが集まった記者会見場には、アラビア語の通訳が現れなかった。関係者および取材陣は組織委の未熟な大会運営を批判した。金メダリストのモハメド・アル・ガルニ(カタール)は英語を話せたが、銀メダリスト(バーレーン)と銅メダリスト(イラク)の選手はアラビア語以外の言語を話せなかった。結局、金メダリストのアル・ガルニが他の選手の通訳を担当した。
(一部抜粋)
 アラビア語の通訳手配そのものがそもそも無かったとか。実際には、会場にいる記者にアラビア語ができないか募ったところ一人、アラビア語中国語ならばできるという人がいたけれど、会見公式言語の英語ができなかったため断念。その後、デキるという人が現れトライしてみるも英語のクオリティーが低く途中でギブアップ。見かねた金メダリストが助け舟を出した…ということだったようです。(ちなみに広州大会では北朝鮮を除き、アラビア語含めた必要言語が手配されていました。)

その他の記事をみると、通訳が「通訳ボランティア」として言及されていますがこれも気になるところです。記者会見通訳が無償ボランティアでまかなえる訳はないので、有償ボランティア…ということなのでしょうか?今回のアジア大会には知り合いの中国人通訳者が参加しているはずなのですが、恐らく彼に「ボランティア」の意識はないと思います。

スポーツの感動はそのパフォーマンスを目にすることにあるかもしれません。ですが、アスリートの思いをストーリーとして言葉で聞くことで、感動的なパフォーマンスがより大きな共感を生むと考えれば、それを伝える人の役割は大きいはず。韓国にとっては手痛い結果となったことは言うまでもないでしょうね。

さて、2020年東京オリンピックでの日本は…!?市民レベルの交流を考えれば民間の通訳ボランティアの養成は欠かせないと思いますし、ホスト国のボランティアが果たす役割はとても大きいです。(広州で見かけた街の若者のボランティアは素晴らしかった。)一方で、プロ通訳者をどういう場面で活用すべきか全く聞こえて来ないのがちょっと心配です。私が蚊帳の外なだけか…(笑)

広島通訳 Tea Salon を開催します

例年、3月の決算締め月に向けて皆さん予算を使い切ろうとなさるのか、2月中旬から通訳業界は多忙を極めます。そんな中、 なんとかかんとか確定申告を終わらせて、週末にほっと一息ついているところです。 このブログのオーナーである私は、今でこそ東京住まいですが、出身の広島には頻繁に帰省して...