2014年2月8日
「アンのゆりかご ー 村岡花子の生涯」 村岡恵理 著
日本語訳された外国文学は多数ありますが、それらを翻訳した人の生涯が取り上げられることは珍しいことです。村岡花子をご存知でしょうか?
カナダの小説家ルーシー・モード・モンゴメリの「赤毛のアン」と言えば、「アンの青春」「アンの愛情」…とシリーズで一人の女性の生涯をその日常生活で綴る名作で、日本人でも知らない人は珍しいほどに広く読まれていることは、わざわざ言及するほどでもないのですが、村岡花子こそ、その「赤毛のアン」の訳者です。
そして3月31日からNHKの朝の連続ドラマで「花子とアン」として彼女の生涯が放映されることが決まっています。これは花子の孫にあたる村岡恵理さんの手による評伝「アンのゆりかご」を原作として制作されます。
冒頭述べたように翻訳者の生涯にスポットを当てたもの…はあまりないことから、何となく気になり手にとってみました。これが…一気に読みきってしまいました。
考えてみれば当然のことなのですが、「翻訳者」であると同時に、女性として妻として母として、社会活動家として、また通訳としての生きた花子。その彼女が過酷な戦争を経験する同世代の同志達との交流の中で、生き生きと描かれていました。
訳書を多く残した「翻訳家」についての生涯とはいうものの、一人の人間、またその人間の感情に寄り添いながらも、一定の距離感を保って客観性を確保しながら、当時の厳しい時代背景との整合性を確認しながら書き上げていく作業はどんなに大変だったことかと思います。一人の「人間」の評伝として、彼女の強さ、優しさ、しなやかさが伝わるとても素晴らしい作品になっています。
花子自身の生き方に私なりに共感する部分も多かったことと、知識や情報収集の目的で読書をすることが増えていたので、久しぶりに人間の物語を読んで少しほっ…としています。久しぶりの作品が「アンのゆりかご」でよかった。やはり「人」を知ることはとても面白いことだ…と改めて思いました。
* 「アンのゆりかご」著者の村岡恵理さんは、6月21日-22日に開催されるIJET25で基調講演を担当されます。
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