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2010年12月3日

第16回広州アジア大会 - スピード/柔軟性/チームワーク

そろそろ仕事の話を...。 今回の仕事で求められたのは「スピード、柔軟性、チームワーク」でした。

そろそろ仕事の話を...。 今回の仕事で求められたのは「スピード、柔軟性、チームワーク」でした。 本アジア大会では某エージェントがGAGOC(Guangzhou Asian Games Organizing Committee)の要請を受けて通訳を手配し、私もその一人だったわけです。日英通訳者は計10名(日本:3名 アメリカ:3名 オーストラリア:3名 イギリス:1名)でした。他にも、中英、露英、韓英、亜英(?アラビア語)の通訳者がそれぞれ集められましたが、大会公用語が中国語(北京語)と英語とされていたため、最も多忙を極めたのは中英通訳さん達でした。

日本もメダル競争に苦戦はしたものの、中国に次いで、韓国人通訳者と同様に忙しく稼働し、大会期間中に完全オフは数日のみでした。

私が担当したのは、ダンススポーツ、水泳、陸上、女子ソフトボール。他にも担当を割り振られたものもありましたが、メダル争いで負けてしまい、会場には行ったもの日英通訳は不要となったり、会見そのものがキャンセルになることもありました。ところが、せっかくの準備も無駄(?)に…と腐ったり、思うようなパフォーマンスが出せなかった時にもいつまでも悔やんでいる暇はなく、次の日の仕事のために気持ちをすぐに切り替えなければならない、そんな日々でした。

準備段階から仕事まではざっと以下の通り。
まず、夜中にこっそり部屋のドアの下から差し入れられるアレンジシートで、自分の担当する競技を確認します。次に、これまで、およびこれから先のアジア大会、オリンピック、世界選手権、ワールドカップなどの開催地と、その競技に出場する日本人選手をwebから調べ、出場日本人選手のこれらの大会で残した成績を確認します。後は、アジア大会前の選手たちの様子を伝えるニュースを片っ端から検索して頭に叩き込みます。
それ以外にも、担当したダンス競技のように私にとって全く未知のものから、少しは知っている程度のソフトボールまで、出来るだけ一般的に出てきそうな用語の確認を行いました。
実は、一番知っていそうなソフトボールについて、日本語の用語やルールさえも曖昧だった…という事に気づいて愕然としたのを今でも忘れません。無知を知った瞬間でした。恥ずかしながら…本当に…。

通常、記者会見は夕方から夜遅くにかけて行われるため、日中十分に時間はあるものの、調べ物をしていると時間はあっという間に過ぎていきました。ホテルに缶詰めも精神衛生上よろしくないため、それなりに出かけたりもしたのですが、必ず自分をピックアップする車に間にあうように、いつも時間を気にして行動していました。

競技場に到着すると、ボランティアの学生がプレスルームまで案内してくれますが、時間が許せば競技観戦することも出来ました。最初に担当したダンススポーツは初めて直接目にする競技で、私には何の知識もありませんでしたが、華麗な衣装に身を包んだ二人がダイナミックに舞う姿には、鳥肌が立つような感動を覚えました。トップレベルの本物のダンスだからこそ、そう感じたのかもしれません。
聞いて知っているのと、実際に体感するのでは大きな違いだ!と心から感動した瞬間でした。これぞ役得!



 


クイックステップ、ワルツで銀メダルの石原正幸、久保斐美ペア

(石原君の会見中の輝くような笑顔に
イチコロで、観戦する後姿をこっそり
写真に収めてしまいました…笑)


その後、プレスルーム待機中に出場選手名簿とそれまでの成績が配られます。この時に気を付けてチェックしたのは、以下の三点。
1)各メダリストのあいだのポイント/タイム差
2)各メダリストの名前の読み方
3)別種目での成績、と翌日以降の競技スケジュール

1)については、僅差か大差で、競技者たちが口にす感想に大体予想が付きます。
2)は、同じ種目で戦った競技者に対して言及することは大いにあり得ますが、日本人以外の名前の読みは難しいので、それぞれ各国の通訳者と名前の読み方を確認しあいました。
3)については、当日競技内容を終えて、次の種目が控える選手であればそれに対して抱負を述べるという事も考えられたからです。

このように、通常のビジネス通訳/会議通訳にはない意味での「スピード」を要求されたのが、今回プレス通訳での大きな特徴でした。スポーツに関する専門用語に出くわすこともありましたが、むしろ「悔しかった」「一丸となって」「雪辱をはらした」などなど、ビジネス/会議通訳では殆ど使わないような感情表現を、どうロジカルに選手たちが口にする感想の中に織り交ぜて逐次通訳するか?が私にとってはチャレンジでした。

また、大体様子がわかってきた頃に、日英に限らず他の言語の通訳さんたちとも「きっとこんな質問がでる。」「こんな風な受け答えがこの競技ではよく見られた。」など連携もはかれるようになりました。通訳は根っから話好きな人が多いですが、みなさん同じ競技担当の他言語通訳さんとのチームワークはバッチリで、柔軟に協力し合っていたように思います。

通常、ペア以上の人数で会議を担当することは珍しいので、今回の多人数でチームワークを組んでの仕事は、私にとって貴重な体験になりました。


 一つハプニングというか予期していなかった事として、北朝鮮の選手の通訳を韓英通訳の方々が拒否されていたことが有ります。
数人に話を聞いたのですが「北朝鮮の通訳はしないことになっている。」と事前に確認していたようです。南北の言葉の基本は同じだけれども、北では外来語を認めずすべて北朝鮮仕様に訳語を当てはめているとのこと。フットボール、ゴールなどという言葉一つとっても、北朝鮮独特のいいまわしが有るようで、実質的に通訳することは難しいそうです。
最初にこの話を聞いた時には、スポーツの祭典なのだから政治的感情は抜きにしてスポーツマンシップで”柔軟に”対応出来ないものかしら?と思いました。しかし、出来ない理由があった訳です。そうは言いながら、現場で助け船を出すシーンも数回あったようです。やっぱりそうでなくちゃ…ですよね。

しかし、通訳がこうしてスピード感を持って、柔軟にチームワークを発揮することが出来たのは、エージェントのおかげもあるのです。
あらかじめどの競技でメダリストが誕生するかは、日程から明らかです。GAGOCからエージェントに次の日にどの会場にどの言語の通訳が必要か(大体は夕方遅い時間に)連絡が入り、エージェントが言語ごとに担当を割り振り、会場までの移動手段を手配します。
というと至ってシンプルに聞こえますが、これがエージェントにとって大変骨の折れる作業でした。というのも、広州アジア大会と言えども競技会場は市内から遠方に位置するもの(片道二時間!)も少なくなく、手配できる車の数が限られているため、初めの数日はアレンジに困難を極めていたようです。エージェント担当者がスケジューリング作業を進めて、ホテルの部屋のドアの下にそっとシートを差し入れるのが日課になっていましたが、早くても12時前後、遅い時には明け方3時半という事もあったようです。(私はすっかり夢の中でしたが…)

こうした大きな大会だからこそ、関わる全ての人の懸命の作業があってこそのイベントの成功だな、とつくづく思いました。

次は、アジア大会で感じた中国、中国人について書いてみようと思います。