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2015年11月17日

WiFi通訳アプリABELON(2)ー 活用可能性(課題編)

 前回は製品としての「ABELONを使う」という切り口で「性能と使用感」を評価してみましたが、今回は実際に通訳シーンで活用が可能なのかという視点で検証してみました。が、結論から言うと「本格的な会議シーンへの活用へはまだまだ多くの解決すべき課題がある」と思います。まずは解決するべき課題から具体的に見ていきましょう。

【言語切替の操作性の悪さ】
通訳者はPCでABELONサーバを立ち上げPC接続マイクに音声を入力していく、という手順は前回説明した通りです。通訳者は当然二ヶ国語を行き来するわけで、そのためには入力音声を(日英なら)日本語、英語と切り替える作業が発生します。ところがこの切替はABELON画面の中にプルダウンメニューとして表示されていますが、切り替えの度に「マウスでクリック表示」→「プルダウン上でカーソル移動」→「選択」という実に3ステップが要求されます。従来型の通訳機器ですとハード的にボタン一つで切替えることができるため、この操作は繁雑を極めると言わざるを得ません。
上から二つ目のプルダウンメニューが「Language」
【スピーカー音声の通訳者フィードの別途準備の必要性】
通常同時通訳ブースは固定ですので、定位置そのものは問題有りません。しかし、ブース通訳の場合は必ず通訳者の耳にスピーカー音声をフィードするシステムが用意されています。当然のことながら、この通訳への耳フィードは別途準備の必要が出てきます。

▶フィード準備の手配・コスト
事前の準備が必要です。ホテルや貸し会議室などでは大抵の場合、デフォルトでマイク利用できるよう機器が設置されており、会場側に相談することで簡単な機器一つでマイク音声をフィードしてもらう体制を作ることは多くの場合難しく有りません。しかしこの場合はもちろん、ホテル、貸し会議室で追加料金がかかるかどうかの確認は必要です。

▶定位置通訳による音声環境不全
基本的にスピーカーの声が聞こえないため、通訳不可能になります。マイクが使えない環境では「スピーカーの声が聞こえない」という事態はよくあること。現場の通訳者の間ではこれを「生耳(なまみみ)」と呼んでいます。

この場合多くは持ち歩き可能な簡易通訳機器(パナガイド等)を利用する前提で、会議中に部屋の中をスピーカーの声の聞こえる場所に移動できることは必須条件なのです。そういう現場に行く際にはエージェントを通じて「会議中動きまわる可能性がある」事を伝え、ディスカッションになればスピーカーが代わることにアッチへコッチへと通訳者は忙しく動きまわる事になります…。が、ABELONのようにPCサーバーを立ち上げるシステムでは移動ができません。

補足ですが…移動するとなるとメモは取れませんし、例えスピーカーがマイクを使用しても部屋が広ければ音は発散してしまい、通訳者への物理的負担はかえって増大する場合さえ有ります。ですのでこの「生耳同通」は避けて通りたい通訳現場の一つとされています。が…、そういう現場にも対処せざるを得ない状況というのは日常的に発生しています。

その他同時通訳環境不備に対する追加準備
従来型の同時通訳ブース環境に配備されているのは、何も同時通訳機器だけでは有りません。マイクスタンド、デスクスライト、メモスペース、会場内と通訳者の環境を分離するブース・簡易パーティションがありますが、これらを別途準備する必要が出てきます。

従来型のマイクは通常指向性のあるものが使われており、通訳者もここに向かって喋ればいいというのがハッキリ分かるタイプのものを好むと思います(少なくとも私はそうです)。そのためにはイヤホン兼マイクのタイプではないものの準備が必要になります。さらに言語切替スイッチ操作やメモ取りのため両手は空けておきたいため、マイクスタンドは必須でしょう。

また、暗い会場であれば資料を見るのに手元のライトは欠かせません。さらに、通訳者の通訳音声はイヤホンを通じてのみ提供されなければオーディエンスに邪魔になりますし、逆に通訳者は会場の一切の音を遮断してスピーカー音声だけを聞きたいため、ブース・簡易パーティションは外せません。

このように課題がいくつかあり、すぐには現場適用…という訳に行かないのが現状です。では、全く活用の可能性がないのか?というとそうでも有りません。次回はそのABELON活用の可能性を見ていきます。