2015年5月29日

宮城の中学生に会ってきました!

宮城教育大学付属中学校の中学生4人に総勢5名の通訳者で「通訳という職業」についてお話をさせて頂くチャンスが有りました。良くして頂いてる同僚通訳者に誘って頂いたのがきっかけです。場所は虎ノ門にあるサイマル・アカデミーさんの教室をお借りしたのですが、3つの同通ブース併設のとても恵まれた環境でした。

集まった通訳者のバックグラウンドは様々。海外で育ち英語の後で日本語を習得された方、子ども時代から海外と行ったり来たりの生活をされた方、海外の大学に夢を持って留学された方、そしてそもそも27歳で初めて海外に出た私(笑)…という感じです。

前日にメンバーのご自宅スペースをお借りして、どういう構成にしようかと相談し合い「デモがあるといいよね!」などとアイデアが次々飛び出し、思いの外準備から楽しい!

通常は現場で通訳者がお互い「どんな気持ちで仕事に取組んでいるか?」について話をするはずもありません。目的意識を持って取組んでいる同業者の真摯な姿を準備や実際のセミナーを通して見せていただき、本当に励みになり「私もまだまだだぁー!」という気持ちになったのは言うまでもありません。

参加した中学生は4人で、なんと内3人は男子!それぞれ違う動機で参加してくれたようでしたが、数ある職業の中で通訳者を選んでくれた事がやはり誇らしい気持ちがして、私は個人的にとても嬉しかったです。

当日の様子はコチラのサイマル・アカデミーさんのサイトに公開されていますので、ご興味のある方はどうぞ!

2015年5月20日

「福井モデルー”未来は地方から始まる”篇」 藤吉雅春 著

SNSでは既に広く知れ渡った無駄な情報ですが、私はメガネが大好きです。特にブランドやメガネの機構に詳しいとか、そういうことではないのですが、どうもメガネに対する執着とも言える強い憧れが有ります。

そんな私に海外からメガネの仕事が舞い込みました。メガネといえば日本の90%の産出量を福井県鯖江市が占めており、この仕事も東京で関係者と会議後、恵那の生産工場に続いて大阪のメーカー本社から福井県鯖江市へ製造業者へのキャラバンとなりました。

海外のお客様について回る中で、福井のメガネ産業がどうなりたっているのか?ということを自分なりに見聞し「日本のものづくり」が地方創世において重要な位置づけにあることを肌で感じ、一層メガネへの思い入れを強くして出張を終えました。

福井モデル 未来は地方から始まる 
藤吉 雅春 (著)

その出張後に偶然に品川Ecuteの本屋さんで「福井モデル」という本を見つけ、なにかの縁を感じて買って帰りましたが、一週間ほど放ったらかしに…。ですが、読み始めたら面白くて二日かからず読み終えてしまいました。

福井だけでなく、まずは大阪や京都がどう発展した地域で、北陸三県は大阪京都とは違う環境の中、どのように這い上がり、打ちのめされ、また這い上がってきたのかを説明しています。そしてメガネ産業の言及に至っては出張の間に見聞きした同業者連携や、中国製造業による市場席巻での大打撃なども細かく書かれ、興味深く読むことができました。「中国に一番にやられたのは鯖江だ…!」

富山県についての記述では、都市デザインと行政がバランスよく、そして地元の人々の思いを味方に、時に勢い良く地域を導いてきた様子が語られています。地方の人口流出、高齢化が深刻化する中、北陸三県がどう生き残ってきたか?けしてめざましく発展した…というわけでなく、地方なりの独自の方法でのじわじわとした生き残り作戦!…。日本の他の地方都市が学べることは沢山有りそうです。

この本の産業の捉え方に長い時間軸があることは特徴だと思います。近代産業の発展の歴史だけでない、それよりもっと前からその土地に脈々と根付いたその地方の気質のようなものもしっかり抑えています。それらをからめて地方創世を考えることで、未来につながるヒントが得られるのではないかと感じました。(広島は原爆で壊滅都市となり、原爆が地域的気質に与えた影響が大きいと思われるため難しさもあるのかもしれませんが…)

また、巨大産業や大企業は利益の見込める可能性の高いものにしか投資をしません。ですが、もっとミクロに産業をとらえて「より良くするには?」を集積することで地方のニッチが育ちます。そして、地元気質や地方の連携を上手く活かした形でグローバルにしてしまえば、ニッチはニッチでなくなります。

出張中、多くの業者の方とお会いしましたが、ある程度みなさん英語がお出来になります。田んぼに囲まれた小さな工房の社長が、外国のビジネスマンと英語でやり取りする光景は「ニッチのグローバル化」をまざまざと見せつけられたような気がしました。一方、同じ社長が日本語を喋り始めた時のお国ことばや訛りに「ローカル」の力を感じて頼もしい気持ちになったのを思い出します。

お勧めです。


2015年5月7日

通訳案内士、試験担当者が「国策で合格率8割」発言

通訳案内士は会議通訳とは仕事の質が全く違います。確かに通訳をする場面は少なくないでしょうが通訳案内士のメイン業務は、その一般名「通訳ガイド」に見られるように「ガイド」です。そして経験豊かで優秀なガイドの方の仕事は、見ていて本当に気持ちがいいですし、何より旅行者の顔つきがまるで違ってきます。日本という国を印象づけるとても大切な仕事です。

中国政府の規制緩和で、中国を中心とする海外からの観光客は急激に増え、通訳案内士は大幅に不足するようになってきました。さらに、昨今の円安がそれに追い打ちをかけています。そこで苦肉の策として国は法改正を行い、2006年4月からは都道府県単位で地域限定の通訳案内士の登録が行えるようになっています。さらに、国家試験である案内試験の実施要項そのものの改定(英語であれば、英検を持っていれば英語科目の受験免除等…)を行って、実質合格者数増加を狙ってきました。

当初難関とされた試験もこうした経緯を経て合格ラインが低下していることは明らかなわけですが…。遂に、国の通訳案内士に対する無理解が今回のこのニュースで露呈した感じでしょう。
YOMIURI ONLINE
通訳案内士、試験担当者が「国策で合格率8割」
2015年05月06日 15時04分
***以下抜粋***
担当者が、採点役の試験委員に対し、「国策として80%の合格率を目指す」と発言していたことが、関係者への取材でわかった。

採点は受験者の絶対評価が原則。「発言が採点に影響した」とする試験委員もおり、専門家は「合格基準に達しないガイドを生みかねない」と発言を問題視している。
いわゆる通訳ガイドをされている方の場合、それを専業 ではなく副業でしている、あるいは同一世帯に別の主たる稼ぎ手がいる割合が高いと言われています。(4年前に通訳案内士についてこのブログでも詳しく書いています。ご興味のある方はどうぞ。)そうした影響もあってか、通訳案内士のレートは会議通訳者のそれと比べるとかなり低いのが実情です。ベテランの方になるとそうでも無いようですが、業界のヒエラルキーがガッチリしすぎていて、新人にはレートの良い仕事は回ってきにくい構造があるようです。そのため、通訳案内士不足であるにもかかわらず、一時は通訳案内士の資格そのものが敬遠されるようになり、閉鎖を余儀なくされた老舗の通訳案内士予備校もあるほどでした。

であれば、これだけ需要が爆発していれば下層の案内士にも仕事が…と、のんきなことを言えないほどのスピードで「無資格の案内士」が横行し始めてしまいました。国も質を保ちながら通訳士の数を急激に増やすことはできず、稼働中の有資格通訳士にとっては市場を低レートで荒らされる上に、仕事を持っていかれる…というなんともカオスな状況が、今現在です。

国家資格を必要とする士業と言われる職業は他にもありますが、国家資格であっても資格だけでは生活していけない…そういう時代に入ったということでしょうか。いえ、それよりやはり、なんともお粗末な国の失策の顛末としか思えません。資格を持たない、あるいは持っていても低品質の通訳士が日本を海外の方に案内した結果、旅行者はどういった感想を抱いて帰っていくのでしょうか…?

先日、東京駅でベトナムからの一行を引き連れた女性ガイドを見かけました。そのガイドはベトナム人女性でしたが、ホームに停まった電車のドアが開いた直後から旗をふりふり大声で号令をかけて乗り込む始末…。どこの国の人間が通訳案内士を務めてもいいと個人的には思いますが、せめて日本の公共マナーを実践し、美徳として紹介出きる方にお願いしたい、と思った光景でした。(単なるツアコンだったのかもしれませんが…)

2020年オリンピックに向けて民間通訳養成の動きを国も支援しているようですが、どういう資格をもった、あるいは実績のある通訳者が、何について、どういう場で通訳するのか、国が考える具体的な絵がいっこうに見えてこない…なんとも不気味ですね。