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2012年8月21日

従軍通訳 -日本にいて気付かなかった職業

海外の通訳翻訳関連ニュースは、できるだけ読むようにしています。ところが、以前から読んでいたにもかかわらず…というか、おそらく目に入ってきても自分には関係ないこととして捉えていたようで、殆ど読み飛ばしていたものが有りました。従軍通訳です。

6月に参加した北米の通訳者会議"3rd North American Summit on Interpreting"の2日目に下記のプログラムが用意されていました。ですが、直接話を聞いていたにもかかわらず私にはピンと来なかったのです。今頃になって自分が平和ぼけの日本人だ…ということに気付いて愕然としています。

Saturday, June 16
Plenary Panel: Interpreting in Conflict Zones
Speakers: Barbara Moser-Mercer, University of Geneval - TBA: Military Officer and Linguist
Moderator: Jonathan Levy , Sargent Tariq Hamid (OEF), Specialist Waly Momen (OND) & Captain Simeon Harvey, Foreign Area Officer, US Army

Interpreters who help bridge communication barriers in war zones, during national disasters or for refugees provide a service of incalculable worth and often put themselves at risk of great harm, yet they are the least visible in our profession and have the fewest resources. This very special panel will shed light on interpreting on the front lines and provide suggestions for how the field can better meet the needs of these important sectors.

CASEY WEEKLYより
Targets ... interpreters have been threatened.
アメリカは現在のみならず、もうずっと長い間戦争当事国です。私が好んで見たテレビシリーズでも登場人物が軍関係者だったり、軍に志願したりというエピソードはひっきりなしに出てきます。それを、日本人の私は自分とは遠い国の話(関係のないこと)と捉えていたようです。正直に恥ずかしいと思います。

このプログラムで聞いた話は、戦場の最前線で最悪の場合は敵に銃を突きつけられながら通訳をしなければならず、自分の通訳したこと如何ではそのまま頭を打ち抜かれるという恐怖と隣り合わせ。また、戦地ごとの取り決め文書なども細心の注意を払い翻訳/通訳しないと文言一つで仲間を取り返しの付かない状況に追いやってしまうこと…などでした。彼らの経歴は若い頃に中東からアメリカに移民として入り、その後通訳として従軍したというものです。

しかし、最近目にする大きなニュースは二つ。NATO軍そしてカナダとオーストラリアが自国軍が現地展開する中で、彼らに従軍していた通訳も巻き添えになって爆撃で亡くなったというもの。そして、アフガニスタンから自国軍を引き揚げるにあたり、現地で採用していた従軍通訳のそれぞれの国への移民申請がなかなか受け入れられないというものです。

NATO軍の場合はInternational Security Assistant Force(IFAS)を介して現地の通訳要員と雇用契約を結んでいるようですが、オーストラリアはアメリカのWorld Wide Language Resourceという企業の仲介で契約社員(?)として現地通訳要員を調達しているようです。カナダについての記述は見つけられませんでしたが、おそらくオーストラリア同様にアメリカの仲介企業が間に入っていることは容易に想像できます。

現地採用の通訳者は、現地で欧米やNATO軍に従軍していることが分れば仕事を辞めてからそこでは生活できないと考えています。反体制分子から直接「仕事を辞めないなら殺す」と脅されることもあるようです。また、仕事中は通訳は口元が見えなくてはならないため、顔を隠したりすることができません。しかし、家族のもとに帰るときに顔を隠していると帰って怪しまれるためやはり顔を隠すことが出来ず、何時どこで敵や反対分子と鉢合わせになり欧米側の通訳だと特定され襲撃されてもおかしくない状況だと言います。

これだけ大きなリスクを払っていながら、退役後に従軍した国から何も保護が得られないという現実。オーストラリアもカナダもそれぞれに受入れの動きの兆しはあるようですが、はっきりした動きは全く見られていないようです。私がモンテレーで聞いた従軍通訳の方ももちろん戦場で大変な思いをされてきたようでしたが、彼らはアメリカ国民で有る以上より安全なアメリカに暮らすことができます。でも、実際には命をかけた従軍後に、それがもとで安全な暮らしを保証されない従軍通訳の方がはるかに多いのだと言うことを知りました。

以上は、私が下記のニュースサイトから拾った情報です。詳しく知りたい方は是非目を通して見て下さい。

Afghan interpreter arrives in Canada
July 29, 2012 Toront Star
Seven Afghans executed, 4 NATO troops die: officials
01 August 2012 France 24
Four NATO soldiers, interpreter die
02 August, 2012 Pakistan News Tribune
Future bleak for Afghan interpreters
05 Aug, 2012 03:00 AM Casey Weekly

少し話は逸れますが、先日亡くなった日本人の戦場ジャーナリスト山本美香さんは私と同じ年でした。彼女は戦場の様子を子ども達に伝えることで世界が変るかも知れないと考えて、命をかけて取材していたようです。また、尖閣諸島問題や竹島に絡んだ李明博大統領の行きすぎたポピュリズムなどが大きなニュースになっています。

しかし、ここに来てはじめて「日本も大変な事態に…」などと思うのは大変恥ずかしいと思います。大戦後日本が戦争をしないことを選び、その方法として海外へ目を向けないことを選んでしまいました。そうした外交政策が、日本のメディアに海外ニュースをあまりセンシティブなものとして流さない習慣を植付けたのかも知れません。国民が人の死について無関心になっているのかも知れません。

こうしたニュースが私達に「もういいかげん”世界の中の日本”を真剣に考えろ」と最後通牒のように迫っている様に思います。山本さんと戦地で亡くなった多数の従軍通訳の方のご冥福をお祈りします。