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2011年3月29日

4. 欲しいのは「伝えようとする熱意」

今回の予定は、勉強法に触れる予定でしたが急遽予定を変更させて頂きました。震災以降考えていることがあり、どうしても通訳を目指す方に知って頂きたく書きます。通訳に必要な資質とは何かを、皆さんにしっかり考えて欲しいのです。

どうやっても100%の通訳は有りません。でもそれを分かった上で、異言語間を橋渡ししてメッセージを伝える仕事です。(分かっているよと言わないで、笑)通訳技術が必要とされることは当然ですが、実は同じくらい大切なのは「どうやってでも伝えてやろう!」とする熱意です。

少し説明としては回り道になるかも知れませんが、震災以降考えていたことを率直に書きますので何かを感じ取って頂ければ嬉しいです。


震災以降一週間も経たないうちに日本を出て、シンガポール出張、アメリカ出張と仕事が続いており、間に成田に一泊したもののもう10日以上自宅に戻っていません。アメリカ出張は震災直後に決まったもので、こんなに長く家を空けるとは思っても居ませんでした。

自宅に居た数日間に、息子の卒業式や出張準備でとても忙しくしていたのですが、気持ちが落ち着かなかったのは、やはり毎日伝えられる震災の状況を皆さんと同じように心痛めて見ていたためです。

何か役に立てないかと、震災当日からTwitter仲間とニュースや有用と思われるツイートの翻訳をはじめました。献血も考えたのですが、私は悪性腫瘍の病歴があり(初期完治)資格が有りません。仕方が無いので何が無くとも寄付だろうと思い、私にとってはかなりの金額を一応夫と子どもに相談した上で寄付することを決めました。


一方、ボランティア通訳として登録したものの、企業数社の緊急メールをお手伝いしたのみです。被災地へ向かうメディア数社や団体からアプローチが有りましたが、すぐに東京から出発出来る人という条件があるなど、実際の貢献には至っていません。

海外のニュースは、最近は日本を支援するムードの中にも、政府や東京電力の対応を検証する内容の報道も増えてきました。そんな中「日本に(家ではなくて)帰りたい…」という気持ちがどんどん強くなりますが、今は自分のできることを責任もってこなすしかないと、自分に言い聞かせています。さらに稼いで義援金!も目指したいところです。

私のことはさておき…、一般的にこうした状況の中で、言語スキルで一番貢献出来るところとしては在日外国人に対する言語サービスでしょう。翻訳サービスは各方面ボランティア翻訳が立ち上がり活動しています。知事、首相発言ニュースの翻訳から放射線に関する難しい文献からIAEAサイトの翻訳まで、草の根の活動が広がっています。

通訳サービスについては、海外からの医療チームが多数入って来ているようですが、どうもそうした部隊は言語専門家を連れてきているという噂を聞きました。すると、現実的に考えられるのは電話を等した通訳サービスや、ローカルで診療を続ける医院に来た外国人に対する通訳サービスでしょう。あるいはLost in Translation の彼らの話し相手になってあげることも、大切な活動の1つかも知れません。きっとローカルで語学の出来る方や正義感からある程度の犠牲をはらって現地に入られている方がこうした作業に当たられていることでしょう。

ここで、震災当初から
大変疑問を感じている事がありました。それは、大手通訳学校の名前が1つも聞こえてこない事です。

お知らせでも何件か流していますが、国を挙げて医療観光を全面に出すことを公言して以降、大手通訳学校は軒並み医療通訳コースを設けています。そういう意味では彼らの「医療通訳」の知識の蓄積は相当のものが有ると思われます。なぜ彼らはこうした情報をすぐに公開しないのでしょうか?

通訳学校大手以外の例では、震災直後には多言語コールセンターを運営する「ブリックス」が、通訳サービスを提供しはじめました。また、東京通訳アカデミーがボランティア通訳を募集しているのも広くTwitterで伝えられています。この他にも、企業主導で震災を支援しようという動きは沢山有ります。

また民間ボランティアレベルでは、通訳翻訳仲間の間で震災以降のニュースや時事に関する用語集を作り、さらにそれを公開しはじめる動きも多く見られます。

ですが、大手の活動は全く聞こえてきません。試しに私が大手と認識するエージェント機能併設の通訳学校5社を一通り調べてみました。震災に対するお見舞いの言葉をサイトのトップに掲げているのは1社、開校スケジュールに影響が出ることを断った上で震災のお見舞いを合わせているのが4社で、うちの1社は「今話題の『医療通訳
セミナー~開催決定!!」と、ビジネスチャンスは絶対に逃さない構えでした。

私のお世話になった通訳学校では、時事英単語・表現集が用意されていました。日々起きているニュースを理解するのにこの冊子の暗記は必須でしたし、どんなに助けられたか分かりません。


ですから、医療通訳についても同様の用語集、表現集があるのでは?と思っています。たとえ、用語集・表現集が無くても大手として幅広い医療関係機関とのビジネスを経験しているでしょうから、その中から実際の医療現場で役立つ表現や知識の蓄積は膨大だと思うのです。でも、それらを公開したという情報は残念ながらつかんでいません。

通訳学校が教えていないことの1つ、もうおわかり頂けたのではないでしょうか?(全ての学校がそうとは言いませんが)

冒頭にもお伝えしましたが、大切なのは「伝えようとする熱意」です。

海外へ行く機会が多いことから「世界をまたにかけカッコイイね」と言われます。もちろん、そうした姿を想像して過去に頑張った自分もいました。ですが実際に出張に出るようになって思うのは「単に会議や通訳の場所が海外に移動しただけ」ということです。

もちろん、海外に出ることで出会える人の種類は増えますし、その国の文化に直に触れ、ビジネスのグローバル化を肌で感じることが出来るという特典は否定しません。しかし、通訳の現場がどこであっても、通訳は「メッセージの伝達者」だと言うことにかわりないのです。伝えるということに熱意が持てなければ、通訳された言葉に力は生まれません。(詳しくは原不二子先生:「通訳ブースから見る世界」を読んで下さい。)

私は大変なあがり症です。信じてくれない人も多いでしょうが…。社内通訳の仕事を始めた頃は通訳するときの緊張のせいで「もっと本当は出来るのに…」と悔しがることも多々ありました。まぁ実際のところはそれを差し引いて実力なのですが。

それでも、社員さんと問題意識を共有していく中で「これを伝えるのが私の仕事」という使命感のようなものが生まれました。当時の私の通訳スキルはかなり残念でしたが、そこから少しずつスキルを上げることが出来たのは「伝えたい」という自分の熱意だったと思っています。伝えられないからもどかしくて勉強するし、伝えたいから恥ずかしさも忘れて自分の持てる全てを出そうとしました。

これを読んで下さる方の中には通訳学校に通っておられる方も多いでしょう。しかし、技術に終始するのではなく、今一度なぜ自分が通訳になりたいのかをよく考えて下さい。自分の中に「橋渡しをしたい」という熱意があるか考えてみて下さい。

今世界が日本に注目しています。各国がどう日本を見ているか、日本人に知って欲しいと思いますか?

日本で原発事故が日々伝えられています。また、未だに被災者は難しい状況にさらされています。世界に日本の苦境を伝えたいですか?

被災していない地域の日本人も、限られた環境の中で必死に日本を支えようとしているその状況を世界に伝えたいですか?

少ない原子力、放射線関係の資料がIAEAや各機関から出ています。確実な情報が限られている日本の方に伝えたいですか?


今だからこそ、自分の中にこうした気持ちが確認出来るなら、あなたの実力は確実に伸びます。



追記
私が知る限りの情報でしか有りません。通訳翻訳学校の中にも素晴らしい活動をされているところもあるでしょう。改めてそうした活動をなさっている方々に敬意を表します。また、私の情報に間違いが有りましたら遠慮無くご指摘下さい。