2015年5月20日

「福井モデルー”未来は地方から始まる”篇」 藤吉雅春 著

SNSでは既に広く知れ渡った無駄な情報ですが、私はメガネが大好きです。特にブランドやメガネの機構に詳しいとか、そういうことではないのですが、どうもメガネに対する執着とも言える強い憧れが有ります。

そんな私に海外からメガネの仕事が舞い込みました。メガネといえば日本の90%の産出量を福井県鯖江市が占めており、この仕事も東京で関係者と会議後、恵那の生産工場に続いて大阪のメーカー本社から福井県鯖江市へ製造業者へのキャラバンとなりました。

海外のお客様について回る中で、福井のメガネ産業がどうなりたっているのか?ということを自分なりに見聞し「日本のものづくり」が地方創世において重要な位置づけにあることを肌で感じ、一層メガネへの思い入れを強くして出張を終えました。

福井モデル 未来は地方から始まる 
藤吉 雅春 (著)

その出張後に偶然に品川Ecuteの本屋さんで「福井モデル」という本を見つけ、なにかの縁を感じて買って帰りましたが、一週間ほど放ったらかしに…。ですが、読み始めたら面白くて二日かからず読み終えてしまいました。

福井だけでなく、まずは大阪や京都がどう発展した地域で、北陸三県は大阪京都とは違う環境の中、どのように這い上がり、打ちのめされ、また這い上がってきたのかを説明しています。そしてメガネ産業の言及に至っては出張の間に見聞きした同業者連携や、中国製造業による市場席巻での大打撃なども細かく書かれ、興味深く読むことができました。「中国に一番にやられたのは鯖江だ…!」

富山県についての記述では、都市デザインと行政がバランスよく、そして地元の人々の思いを味方に、時に勢い良く地域を導いてきた様子が語られています。地方の人口流出、高齢化が深刻化する中、北陸三県がどう生き残ってきたか?けしてめざましく発展した…というわけでなく、地方なりの独自の方法でのじわじわとした生き残り作戦!…。日本の他の地方都市が学べることは沢山有りそうです。

この本の産業の捉え方に長い時間軸があることは特徴だと思います。近代産業の発展の歴史だけでない、それよりもっと前からその土地に脈々と根付いたその地方の気質のようなものもしっかり抑えています。それらをからめて地方創世を考えることで、未来につながるヒントが得られるのではないかと感じました。(広島は原爆で壊滅都市となり、原爆が地域的気質に与えた影響が大きいと思われるため難しさもあるのかもしれませんが…)

また、巨大産業や大企業は利益の見込める可能性の高いものにしか投資をしません。ですが、もっとミクロに産業をとらえて「より良くするには?」を集積することで地方のニッチが育ちます。そして、地元気質や地方の連携を上手く活かした形でグローバルにしてしまえば、ニッチはニッチでなくなります。

出張中、多くの業者の方とお会いしましたが、ある程度みなさん英語がお出来になります。田んぼに囲まれた小さな工房の社長が、外国のビジネスマンと英語でやり取りする光景は「ニッチのグローバル化」をまざまざと見せつけられたような気がしました。一方、同じ社長が日本語を喋り始めた時のお国ことばや訛りに「ローカル」の力を感じて頼もしい気持ちになったのを思い出します。

お勧めです。