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2015年5月7日

通訳案内士、試験担当者が「国策で合格率8割」発言

通訳案内士は会議通訳とは仕事の質が全く違います。確かに通訳をする場面は少なくないでしょうが通訳案内士のメイン業務は、その一般名「通訳ガイド」に見られるように「ガイド」です。そして経験豊かで優秀なガイドの方の仕事は、見ていて本当に気持ちがいいですし、何より旅行者の顔つきがまるで違ってきます。日本という国を印象づけるとても大切な仕事です。

中国政府の規制緩和で、中国を中心とする海外からの観光客は急激に増え、通訳案内士は大幅に不足するようになってきました。さらに、昨今の円安がそれに追い打ちをかけています。そこで苦肉の策として国は法改正を行い、2006年4月からは都道府県単位で地域限定の通訳案内士の登録が行えるようになっています。さらに、国家試験である案内試験の実施要項そのものの改定(英語であれば、英検を持っていれば英語科目の受験免除等…)を行って、実質合格者数増加を狙ってきました。

当初難関とされた試験もこうした経緯を経て合格ラインが低下していることは明らかなわけですが…。遂に、国の通訳案内士に対する無理解が今回のこのニュースで露呈した感じでしょう。
YOMIURI ONLINE
通訳案内士、試験担当者が「国策で合格率8割」
2015年05月06日 15時04分
***以下抜粋***
担当者が、採点役の試験委員に対し、「国策として80%の合格率を目指す」と発言していたことが、関係者への取材でわかった。

採点は受験者の絶対評価が原則。「発言が採点に影響した」とする試験委員もおり、専門家は「合格基準に達しないガイドを生みかねない」と発言を問題視している。
いわゆる通訳ガイドをされている方の場合、それを専業 ではなく副業でしている、あるいは同一世帯に別の主たる稼ぎ手がいる割合が高いと言われています。(4年前に通訳案内士についてこのブログでも詳しく書いています。ご興味のある方はどうぞ。)そうした影響もあってか、通訳案内士のレートは会議通訳者のそれと比べるとかなり低いのが実情です。ベテランの方になるとそうでも無いようですが、業界のヒエラルキーがガッチリしすぎていて、新人にはレートの良い仕事は回ってきにくい構造があるようです。そのため、通訳案内士不足であるにもかかわらず、一時は通訳案内士の資格そのものが敬遠されるようになり、閉鎖を余儀なくされた老舗の通訳案内士予備校もあるほどでした。

であれば、これだけ需要が爆発していれば下層の案内士にも仕事が…と、のんきなことを言えないほどのスピードで「無資格の案内士」が横行し始めてしまいました。国も質を保ちながら通訳士の数を急激に増やすことはできず、稼働中の有資格通訳士にとっては市場を低レートで荒らされる上に、仕事を持っていかれる…というなんともカオスな状況が、今現在です。

国家資格を必要とする士業と言われる職業は他にもありますが、国家資格であっても資格だけでは生活していけない…そういう時代に入ったということでしょうか。いえ、それよりやはり、なんともお粗末な国の失策の顛末としか思えません。資格を持たない、あるいは持っていても低品質の通訳士が日本を海外の方に案内した結果、旅行者はどういった感想を抱いて帰っていくのでしょうか…?

先日、東京駅でベトナムからの一行を引き連れた女性ガイドを見かけました。そのガイドはベトナム人女性でしたが、ホームに停まった電車のドアが開いた直後から旗をふりふり大声で号令をかけて乗り込む始末…。どこの国の人間が通訳案内士を務めてもいいと個人的には思いますが、せめて日本の公共マナーを実践し、美徳として紹介出きる方にお願いしたい、と思った光景でした。(単なるツアコンだったのかもしれませんが…)

2020年オリンピックに向けて民間通訳養成の動きを国も支援しているようですが、どういう資格をもった、あるいは実績のある通訳者が、何について、どういう場で通訳するのか、国が考える具体的な絵がいっこうに見えてこない…なんとも不気味ですね。