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2012年5月2日

ノマドワーキング、フリーランス、…セルフブランディング !?


-ノマドワーキングの原点


受験勉強をしていた高校時代、家に帰るとやる気が出なくて疲れて眠ってしまうので、学校の友達数名と一緒に学校近くの県立図書館の読書スペースに通ったのを思い出します。私の学校は県立図書館のすぐ近くでしたが、狭い読書スペースにもかかわらず遠方の学校からも決った顔ぶれの学生が勉強しに来ていたようです。もっとも、女子校でしたので男子生徒との社交場と化していた感もありますが。念のため、私は残念ながらそういう輪には入れないダサくて暗い学生時代でした(笑)

ノマドワーキングが言うところの、事務所を持たず、携帯電話とネット接続できるPCをもってカフェを転々としながらお仕事をこなすスタイルというのは、こうした「みんなで図書館で集まって勉強」的な要素があるのかな…と思いました。実際、私の知合いの映像翻訳者は、不定期に都内のカフェに集まり、とにかく数時間お互い喋りもせずに黙々と仕事をする…ということをしているようです。

家にこもりがちな翻訳者には、たまの外仕事は新鮮でしょうし、何より怠けたくなる自分にとって友人の目が周りにあるというのは、ある種「怠けの抑止」になっているように思われます。(違っていたらごめんなさい。私は怠惰なので、そういう所を期待しちゃいます、笑!)


-現代のノマドワーキングとフリーランス

 

ただ、今一般に言われているノマドワーキングはこれとは違い、「常時カフェで仕事」の形態を指すようです。自宅では仕事しない人達。この「ノマドワーキング」と共に必ず出てくるキーワードが「フリーランス」という「職業」を表わす言葉です。現在の様に、ノマドワーキング、フリーランスが語られるようになった背景に、私はあまり詳しくありません。

知っている限りでは本間直之さんが、「フリーランス」の女性、安藤美冬さんを取り上げたことで彼女と「フリーランス」という職業・行き方が一躍脚光を浴び、4月中旬にテレビ番組の「情熱大陸」でフィーチャーされ、それを機に一気に注目が高まったようです。


-安藤美冬さんという女性

 

私自身も以前からNHKの討論番組に彼女が出演しているのを見てはいました。しかし、肩書が「フリーランス」というのを見て、ひたすら???と思ったのを記憶しています。でも、その討論番組の内容に関連した彼女の発言の内容は何一つ覚えていません。

「情熱大陸」放映以降、彼女の名前はどんどんネット上で存在感を増してきたようで、私も何となく気になり始めました。「情熱大陸」のアーカイブを視聴し、彼女の経歴を簡単にですが調べ、彼女が社長を勤める会社のサイトもチェックしました。彼女の主張は「自由に働きたい。それがフリーランス。職業は『フリーランス
。思うことは率直に述べ、やるべきことを思いついたらすぐに行動に移す。」そして、その彼女の主張から出来上がったのが「セルフブランディング」を学ぶための学校のようです。


-セルフブランディングとは

 

実はかなりガッカリしました。まだ若くてスマートな彼女が、なぜ「セルフブランディング」を教える学校「自分をつくる学校」を主宰しているのか。彼女自身が「セルフブランディング」に成功したと思っているのかも知れません。

しかし、私には彼女が何を自分の専門にしてフリーランスで身を立てているのか分かりません。もちろん、専門をひとつに絞る必要はないかもしれませんから、今なら文筆業、コンサル、コメンテーター…と何とでも言えるはずです。しかし、彼女は自分の職業を頑なに「フリーランス」としか表現しません。

私には、彼女が「フリーランス」という「職業
」を真剣に考えた結果として「セルフブランディング」の考え方にたどり着いた、とはどうしても思えないのです。あくまでマスコミに引っ張り上げられて名前が売れててしまった結果、行き着くところは今流行りの「セルフブランディング」だった…という風にしか見えないのです。

そもそも、自分自身のブランディングを考える時に「ブランディング方法を学んでブランドを確立する」というのは随分ナンセンスだと思うのです。専門が有ろうが無かろうが、ある程度の時間とビジネス実績の積み重ねの中で、ビジネスマインドを持つ人なら「意識せずとも自然に積み上げていく事になる自分の強み」が生まれるはずです。そして、これこそが「セルフブランディングの根拠」であり、その根拠が存在してはじめて「セルフブランディング」を完成させることができる思うからです。


そしてさらに言えば、自分の強みを活かした方向性(セルフブランディングの根拠)を自分で発見し展開していく過程よりもむしろ、一般に言うセルフブランディングでは「マーケットに知らしめる」ということをより重要なプロセスとして取り上げているように感じます。

実際、安藤さんの主宰するセミナーでもTwitterでの「情報発信」と「つながりつくり」を焦点にして、「フォロワーさんを増やす法則」を公開しているようです。「一切営業をしないスタ
イル」がウリとのことですが「私はSNSを使ってステマしてますー。」という宣言にも聞こえますが、解釈として間違っているでしょうか。

つまり、一般的な「セルフブランディング」の手法とは、「セルフマーケティング」の手法の域を出ないのではないか…ということです。意地悪に言うと「売り物は何も無いけれど、看板だけはとにかく立派に作るための手法。」というところです。


―「フリーランス」は職業か?

 

「情熱大陸」の中で田原総一朗さんに「実際何やってるの?」と聞かれた安藤さんは「フリーランスです。」と自信を持ってこたえていました。しかし、田原さんが聞きたかったのはその先です。安藤さんが「フリーランス」を掲げて仕事をしていることを彼が知らないわけがありません。安藤さんはそこを敢えて語らないのか、それとも自分がやっていることを説明できないのか…。

正直なところ、田原さんの問いに「フリーランスです。」としかこたえられなかった安藤さんはセルフブランディングにはかなり失敗していると思うのです。なぜなら、自分の「ブランディング根拠」を明確に示せていないからです。
 

また、事務所を持たないということ。彼女の「フリーランス」という働き方の定義で重要部分を占めている「ノマドワーキング」という言葉のもとになる概念です。ですが、一昔前は事務所を持たないと言うことは「信用がない。」と見られました。携帯電話が普及した今、固定電話回線を持たないことが社会的信用を表わしていた時代はとうに過ぎ去りましたから、そんな今日にあって「事務所を持ってないの…?」などと言い始めるのはナンセンスなのかもしれません。

しかし、知合いのフリーランス翻訳者数人は、規模が小さいながらも法人化し、代表電話番号が東京03になることを狙ってバーチャルオフィスを構えるということをしています。それなりの地価の場所にオフィスを構え、マネージしていることを表わすことで信用が得られるメリットはまだまだ有りということです。もちろん、財務的に裏付ける物になっていなければ意味が無いかもしれません。しかし、彼女の場合そこが「無いこと(ノマドワーキングであること)」がブランディング。であれば、取引する相手は「それじゃぁ何がウリなの…?」という話になるのは当然の流れではないでしょうか。


-安藤美冬さんの勘違い?

 

厳しい言い方になるかもしれませんが、彼女は現在「知名度が上がった」ことを利用して商売をしているだけで、けして「セルフブランディング」に成功しているとは言えないと考えます。知名度の高い彼女に原稿や本の執筆を依頼し、彼女の知名度に乗っかり本のヒットを期待する出版社。知名度の高い彼女にコンサルを依頼し、コンサルを彼女にしてもらったことをウリにしたプロジェクト…と知名度の高さを「利用してやろう」というビジネスパートナーは多く寄ってくるでしょう。

しかし現在、彼女自身のタレントに魅力を感じて仕事をオファーするビジネスパートナーは果たしているのか、甚だ疑問です。たとえ彼女自身が非常に魅力的なタレントの持ち主であっても…です。


-自由に仕事するスタイル「フリーランス」と「社畜」

 

「フリーランス」という言葉を語るときに「『自由に』仕事がしたい。」と話した彼女。企業に属しながらのノマドワークを彼女は否定していませんが、企業に属さない立場で「好きなことを仕事にしたい。」という耳に心地よい言葉が一人歩きしているという気がします。

その対極にある言葉として「社畜」というのをよく耳にします。まるで、企業に属する人には全く自由も仕事のやりがいも無いような絶望的な響きではないですか(笑)!

組織の中で働くと言うことは多くの人の中で自分自身をマネージすることであり、その時に周りにはお手本も反面教師も沢山いるはずです。厳しい仕事環境を強いる会社や上司に苦しむこともあるでしょうが、自分が勤務する会社が掲げる製品やサービスを意気に感じることが出来るなら、敢えて個人の困難を乗り越えて仲間と共に頑張ろうという精神も生まれます。

そしてこの「自社の製品やサービスを意気に感じることができる…」という心意気こそが、企業に属す属さないにかかわらず、職業人にとって大切な要素だと私は思うのです。

私自身は図らずもフリーランス通訳・翻訳者として仕事をしています。しかし、「ビジネスをやるという観点」で言えば企業に勤めたくない理由は特にありません。まだまだ日本には「企業は社員を大切にするものだ…」という考え方が根強く有りますし、上手くそこに乗っかることが出来ればサラリーマンでいることは比較的楽チンな場合も少なくないでしょう。(早朝から怒濤の通勤ラッシュを毎日経験するのには閉口しそうですが…笑)


-「社畜」の不幸、「フリーランス」の不幸

 

苦しいのは自分が「これはいい!」と感じることが出来る要素が、勤務する会社になにも無いこと、です。たとえ意気に感じられる何かが皆無でも、素晴らしい同僚、上司、会社業績、オフィス環境、福利厚生、報酬体系、社内旅行の行き先…何でも「これ!」と思うものがあれば、大抵のことは目をつむることはできるはず。それがかなわず、さらにそこから抜け出す手段が無いときにはじめて「社畜」と呼ばれる訳で、企業勤めの人がみな「社畜」かと言えば、それは全く違います。

フリーランスであれば何も嫌いなことをせずにビジネスできるというのも、当然ながら幻想です。会社という枠組みで守られていない分、個人規模でのビジネスの足下は多くの場合脆弱です。共通の目標に向かって困難を一緒に乗り越えていける仲間や上司もいません。全てのビジネスパートナーとのやり取りを一人でこなさなければならないのです。
 

「やりたいこと」だけをやっていたのでは、そのうち「やりたいこと」すらできなくなります。常に今だけの感覚で「やりたいことだけ」をやって動いていたのでは、将来のビジネス環境の変化に対応していくことは厳しくなる…というのは、何時の時代にも変わらないでしょう。


-「フリーランス」「ノマドワーキング」という言葉に注がれる無責任さ

 

フリーランス、ノマドワーキングという言葉の登場で、フリーランスが何か実態とかけ離れた「なんだかよく分からないけどカッコイイ職業」の様に世の中に誤解を通じて浸透してきたように感じます。そして、自由に颯爽とビジネスをカフェで片付ける仕事スタイルを「ノマドワーキング」と呼ぶようになった裏には、マスコミの策略的なでっちあげが見え隠れして、何とも気分がよくありません。

どんな大企業に勤めていても、それだけでは安心が得られそうになくなった日本社会の安易な逃げ道の提案でしかないと思います。そして、無理のありすぎる超理想論という罠であること…それを多くの人たちは果たして見抜けているのでしょうか。安藤さんも、もしかするとその罠の犠牲者なのかもしれません。


-今後の安藤さんに期待

 

今の勢いに乗っているうちに、彼女自身が市場にとっての価値となる知名度以外の本当の自分のブランド力が何なのかに気付き、気付いた経験から何かを見つけて開発することができればいいな…と思います。まだ彼女が若くてエネルギーがあるというのは何にも代え難い財産ですから。

辞めてしまった彼女の前職場である「集英社」。そこでの受賞歴の数々。彼女自身がどれだけ聡明な女性かを、図らずも彼女自身が属すのを疑問視した「企業」のブランド力によって、人々は直感的に認識していることでしょう。そして、今の彼女がその延長線上にあるということも、市場が折り込み済みで評価をしている…ということを見逃すべきでないと思います。

もしかしたら、彼女自身もマーケットからの注目は、自分自身の「ブランド」ではなく、かつて彼女が勤めた「企業」のブランド力に向けられていることを知っているのかもしれません。なぜなら、彼女を紹介するどのプロフィールにも「集英社」勤務時代の栄光が記載されているからです。
 

そう言った意味でも、企業勤務時代に発見された彼女のタレントに気付くことができたら、そこから彼女自身のブランディングがはじめてはじまるのではないでしょうか?是非、フリーランスの星として今後も輝き続けて欲しいと思います。

* 5月2日(水)一部加筆修正