2011年9月12日

8. 通訳メモの訓練-その2

通訳メモについておもしろいビデオを見つけました。これは英語→スペイン語通訳の例です。5分弱の英語スピーチを一度も休憩することなくメモをとり続け、取ったメモをもとに再生するというものです。


通訳メモを全く見たことが無い人は「なるほど…」と思うところも多いのでは無いのでしょうか。また、言語ペアが違うのでメモを見ても全てを理解することは出来ませんが、メモの取り方には言語ペアを問わず共通点があるようです。



1.メモは縦長にとる。
スピーチ内容をある一定の文脈をもって理解するには、横に長いメモはあまり有効ではありません。縦長にとることで、訳出時に流れを思い出しやすくなります。この女性通訳者もメモ用紙を縦半分にしてとっていましたし、私も同じようにしています。

2.文章の区切りが分かるようにする。
必ずしもスピーカーと同じ区切りでセンテンスを区切る必要は有りません。ですが、通訳者はスピーチを聞いたときに瞬時にどういう区切りにすれば文脈が伝わりやすいか判断しているような気がします。その区切りの判断ごとに、この女性通訳の場合は斜めに二重線を引いています。私の場合は細長いメモエリアの端から端まで線を引いてしまします。また、どこまで訳し終えたかが分かるように、訳したところ全体を斜めに線を入れて”ここまでは訳した”ということが分かるようにしながら訳出する人も多いです。私もそうしています。

3.記号や略字を多用している。
矢印や、丸、三角といった記号が多用されているのはごらんのとおりです。また、国名を略称でFR-フランス, TK-トルコ、等と書いていますが、時間的制約の中でとるメモは通訳者でなくてもこうした事は咄嗟に行えるでしょう。また、漢字は一語で意味を表せるため、結構、英日、日英問わず重宝します。

4.数字は必ずメモをとる。
数字は必ずメモにアウトプットされています。ただ、ここで重要なのは、何を表わす数字なのか…が明確に分かることです。

内容が比較的平易で、さらにここまで論理展開のしっかりしているスピーチだと、話がどう展開したかを記憶するのは実はそれ程難しい事ではありません。ビデオにとってあるため「事前に通訳者には内容を知らされているんじゃないだろうか?」と思われるかも知れませんが、私は自分の経験からもそれは無いだろうと思っています。

実は数年前PTA活動の一環で、こどもを暴力犯罪から守るために、子どもと親に対してその知識と方法をレクチャーしてもらうよう、ある団体にお願いしたことがありました。数百円ではありましたが、出席できない方からもPTAの行事ということでお金を頂いていたため、欠席者にもできるだけ情報提供しようと、メモをとってまとめて配布する計画になっていました。およそ一時間近いレクチャーでしたが、とったメモから全体をまとめてレポートにまとめました。内容に齟齬があってはまずいため、依頼した団体にチェックを依頼したところ「まさか録音はしていないですよね?ここまで詳しいものが外に出てしまうとちょっと…」と言われたことがあります。

この時のレポートは、レクチャーした方の一言一句を再生することはしていませんし、かなり図式化して内容を整理していました。それでも難色をしめされたのはつまり、メモから起こしたレクチャーのレポートは文章になっていなかったものの、第三者が読んでもしっかりと文章として再生され、理解されるものだったということです。

そして改めて、私がとった元のメモですが、私でない第三者が見て正確に理解できる代物ではなかったと思います。メモをとった私がメモを読み取るからこそ、メモを見た時点でレクチャーを聞いたときの記憶がメモをきっかけによみがえり、また具体事例や数字をメモの中から読み取る事で、最終的に詳しい情報を含めた全体文脈の再生に至る、と言えるでしょう。

自分にとってピントこない発言、文脈のない言葉の羅列、雰囲気でしゃべる人の発言… これらを通訳するのが難しいということ、理解していただけたと思います。