2014年6月28日

25. 通訳学校では教えてくれないコト ー 不安をマネージする 前編

キャリアを重ね技能を高めていく過程で「自分の実力(これからの伸び代も含め)で将来やっていけるのだろうか?」と誰もが不安に思うものです。私もかつては通訳志望の通訳学校の生徒、派遣通訳者を目指したバイリンガルセクレタリー派遣社員、嘱託契約社員を目指した通訳派遣社員、そして駆け出しのフリーランス通訳者でした。それぞれの段階で「職が得られるのか。」「派遣期間満了後はどうするのか。」「フリーランスの仕事が途切れたら…」と不安は尽きませんでした。

1.不安と向き合い現実を見て戦略を立てる
「不安」は誰にでもあります。しかし、その不安をマネージできてこそ初めて本当のプロといえるのかもしれません。では、「不安をマネージする。」とはどういうことでしょうか?

私個人を振り返ってみると、止めずに不安と折り合いをつけながら続けてこれたのは、「通訳者翻訳者としてやってきたい。」という意思が強かったこともありますが、それ以上に「なるためにどうするべきか?」を市場の情報を集めながら自分の中で分析して戦略を立ててきたからだと思っています。

ホントかよ…!?
「仕事の依頼が途切れたら…」というのは、新米フリーランスのみならずある程度経験ある通訳者翻訳者でさえ必ず陥る不安です。でも、そこでただ仕事を待つ時間は、不安な時間の継続に他なりません。不安な時間を回避、終了させるには「仕事が途切れるのはなぜか?」を客観的に分析することから始めましょう。



2.仕事が途切れる可能性ごとにに対策を考える
まず、途切れる原因は可能性として以下が考えられます。
a) (実力に対して)レートが高すぎる。
b) (実力を理解する)エージェント/クライアントにリーチできていない。
c) (実力に対して)レートが低すぎる。
d) 実力が足りておらず、市場で通用しない。
a) は、機械翻訳(使えるかどうかは別にして需要があるのは確か)やクラウドソーシングと行った翻訳ビジネスの台頭で、市場での価格圧力は翻訳者自身が一番感じていることでしょう。エージェントから価格を下げるよう、正面から求められるケースもあるようです。しかし、レート下げに応じるということは、そのレートでこの先も「できます。」と宣言することに他なりません。かつてそのレートで仕事がもらえていたのであれば、価格下げ要求に応じることは自分のブランド低下を意味します。慎重に対応しましょう。そうなると、考えられるのが登録エージェント/クライアント数の少なさの問題です。

b) に対処するには、その逆を貼ればいいわけですから比較的対策は簡単です。
  • トライアルを受けて登録エージェントを増やす。
  • 自分を知ってもらう努力をする(翻訳通訳関連サイトへの登録)
  • 通訳、翻訳者関連の技能グループへ所属する。
  • 得意分野のトピックの展示会や商談会へ足を運ぶ。
お住まいの地域の産業の特色を考えればもっとやり方はあるかもしれません。

c) は可能性として考えにくいですが、登録エージェントが少なく、しかも登録しているエージェントが求める通訳者レベルが高い場合は「レートが低いということは質の低い翻訳者である。」と判断される場合が考えられます。エージェントが仕事を依頼する時の一番の翻訳通訳者選択における判断基準は、レートです。しかし、多くの登録者や案件数を抱えるエージェントはわざわざ登録翻訳通訳者のバックグラウンドまで目を通して果たして依頼する相手を選んでいるでしょうか?

これは自分の経験値ですが、レートの上昇と共に明らかに「仕事の質」は上がったと思います。翻訳では社内文書や社内マニュアルなどのマテリアルを当初依頼されることが主でしたが、レートが上がってくるとより公の目に触れるものや、専門知識が求められる物に依頼内容が変化しました。また、通訳でも社内通訳にスポットで入るようなものが当初主流でした。資料もさほど出てきません。しかし、レートが上がると共に、客先の社外的にも重要な会議、社内会議でもエグゼクティブレベルの会議。そして、確実な準備作業が求められ資料も揃ってくるような大人数を集める講演会通訳、特定分野の国際会議などが増えるなどの変化がありました。

そう考えれば、自分の実力と経験にある一定の自信が持てれば、思い切って「レートを上げる。」と言うのは戦略として大変有効だと言えるでしょう。

2014年6月15日

「機械翻訳の威力」と「人間翻訳の威力」

通訳や翻訳という職業は、テクノロジーが発達すれば要らなくなる…というのはもう数十年前から言われていることですが、これだけ科学の進歩が目覚ましいにもかかわらず、幸いそうした現実は訪れてはいません。

とはいえGoogle翻訳、Excite翻訳など、いわゆる「機械翻訳」と言われるものはもう随分一般に普及しており、個人利用のためにこうしたサイトを使う人が少なくないのは周知のとおりです。

しかし、この機械翻訳は必ずしも個人利用にとどまっているわけではなく、翻訳業界へもじわりじわりと進出しつつ有ります。実際、原文がある一定のルールに従って書かれたマニュアルのようなものであれば、機械翻訳の訳文も悪くない精度で上がってくることがあるようです。

それでもやはりまだ人間による手直し、最終チェックは必要で、その際のチェック編集作業のことを「ポストエディット」と業界では呼んでおり、この「ポストエディットのお仕事」という名の案件を耳にするようになったのはここ二年程ではないでしょうか?

そういう時代だからこそ、翻訳者も人間翻訳だからこそ出せる「原文の深い読み込み」「訳文の精度」をより追求すべきであり、機械にできるレベルをこなしていたのでは、商売にならなくなるのは時間の問題だと言えます。

そこで「機械翻訳の威力」と「人間翻訳の威力」の例を考えるのに相応いとも言える動画を見つけたので、どうぞお楽しみ下さい(笑)

「機械翻訳の威力」


「人間翻訳の威力」


まぁ…どちらも極端な例ですが(笑)

ですが、人間翻訳では原文の理解もさることながら、ターゲット言語(この場合広島弁、笑)を知ることでここまで広島人に訴えかける訳文に仕上がるわけです。(博多弁バージョンはこちら)広島弁を知らない翻訳者に「広島がわやなんよ」の訳文は絶対に無理です。そして、これは機械翻訳には逆立ちしたって出きっこない、まさに「人間翻訳」がなせる技。こういうの目指したいですね。


そして…
ピースリンク通訳事務所では広島弁も扱えます。ご要望に合わせ、旧市内、西条、呉方面それぞれの微妙な言葉の使い分けにも対応できます(笑)

2014年6月8日

24. 通訳学校では教えてくれないコト ー キャンセル規定見てますか? その2

前回は、エージェントによってキャンセル規定が大きく異なること、そしてキャンセル規定の重要性と留意点について見てみました。今回は、キャンセル規定を理解した上で、仕事の受け方を考えてみます。

1.確定案件、仮案件の意味
通訳案件が入ってくる場合、これはもうお約束と言っても良いかもしれませんが、業務日まで日にちのある場合に「確定案件」で話が来ることはほぼなく、まずは「仮案件」として抑えて欲しいと言われることがほとんどです。基本的に、案件確定してから「キャンセル規定」が適用されるます。

ですから、案件打診の段階から各社のキャンセル規定をある程度頭に入れ、受けるか受けないか決めることは割と重要です。なぜなら「確定案件」であっても、キャンセル料金が発生するタイミングに入ってこない限りは、通訳者にとっては本当の意味での「確定」では無いからです。

2.各エージェントの案件依頼時の傾向を把握する
そこで、知っておくべきは各エージェントの傾向でしょう。下記は前回上げたエージェントのキャンセル規定にそれぞれ依頼の傾向を追加してみたものです。
【エージェントA】
打診頻度は時期によりまちまち、打診は早い時期にあてっても直前まで確定しない。
1日前~当日 合計の100%
5~2日前 合計の60%
※キャンセル日は、土日、祝日を除く営業日数で計算いたします。

【エージェントB】
打診頻度は低いが、仮案件で入ってきてもほぼ確定に結びつく。
当日/前日 100%
2,3日前 50%
4~5日前 10%

【エージェントC】
打診は頻繁にあり確定時期も早いが、直前キャンセルが多い。
前日 100%
前々日 50%
3日前 25%

【エージェントD】
打診頻度は頻繁ではないが、比較的複数日案件が多い。仮案件はまずまず確定に結びつく。
当日/前日のキャンセル: 100%
前々日/3日前のキャンセル: 50%
4/5日前のキャンセル: 30%

※上記日数表記は原則営業日換算ですが、土日、祝祭日業務の場合はその都度取り決めさせていただきます。 ※終日案件が半日案件になった場合、差額分がキャンセレーションの対象になります。 ※各種拘束費のキャンセレーションについては、その都度ご相談させていただきます。
このように、エージェンの案件依頼傾向とキャンセル規定を見るだけでも、それぞれのエージェントがどういう信条でビジネスをやっているところかが見えてこないでしょうか?例えば…

エージェントAはキャンセル規定は割と寛大な内容ですが、確定をなかなか持ってこない。それをある程度彼らサイドの保険としていることろがあります。こうしたエージェントは場合によっては案件が確定していても、レートの安い通訳者が見つかるのを待って(もちろん、そうとは告げずに)案件キャンセルを連絡してくるところがあるので要注意。

さらにエージェントCは案件は多く抱えているようですが、客先要件のためか変更キャンセルが多いようで、あえてキャンセル料発生タイミングを直前にすることで、自社リスクを最小限に抑えようとしています。つまり、その分のリスクは通訳者が取らなければならない構造です。

エージェントBとエージェントDについては確定に結びつきやすというのは通訳者にとっては大きな信頼感につながります。通訳者の顔を一人一人意識してビジネスをしていることが分かります。

3.仕事を受ける順序を考える
例えば、エージェントCから2ヶ月先迄の日程で「空いてる日程」を全部教えて欲しいと言われました。あなたならどうしますか?この「空いている日程を教えて欲しい。」攻撃…(笑)皆さん、安易に教えていませんか?これは通訳者の稼働状況や、どの位お仕事を欲しがっているかなど、相手に手の内をすべて明かしてしまうのも同じことなのです。経験上、通訳者を尊重してくれるエージェントであれば個別にそうした問合せを入れてくることは、ほぼ有りません。

通訳者には仕事の内容を見て、仕事を選ぶ権利があることを認識しましょう。もし、このエージェントCの要望に応え空き日程をすべて確定として抑えられてしまい、軒並み4日前にキャンセルされてしまったら…!大変なことです。

或いは、複数日をエージェントAやエージェントCに仮で抑えられる場合には、その期間に一日でも別エージェントからオファーがあった時には受けられない場合も出てきます。割と頻繁に打診をしてきますし、直前案件も沢山抱えているらしいことから早い時期に日程をこの2つのエージェントで抑えるのにはリスクが伴います。

むしろ、エージェントB、Dからの打診をしばらく待ってみて、埋まらない隙間をバランスよくエージェントA、Cで埋めるということを考えるのが得策でしょう。

通訳者側がエージェントを評価するという視点を持つことは大変重要な事です。もちろん、繁忙期にはお世話になっているエージェントのちょっと無理目のお願いも頑張ってみる!というサービス精神も必要ではあります。が、ただ「仕事をもらう。」のではなく「仕事を選んで取ってくる。」という姿勢は持っておきたいものです。

案件が埋まらず、空いているスケジュールを見ては不安になる気持ちは誰もが経験するところです。しかし、「武士は食わねど高楊枝」とまでは言いませんが、いい仕事を選んで、着実にこなし、お客様からよいフィードバックをもらうことこそが、エージェントからの評価にも自分自身の自信、ひいてはレートアップにつながることをしっかり認識しておきましょう。

2014年6月1日

23. 通訳学校では教えてくれないコト ー キャンセル規定見てますか?その1

フリーランス通訳のお仕事形態としてはエージェントモデルが主流です。かくいう私も自分の売り上の多くをエージェントからの仕事が占めていますが、おそらく東京で常時稼働の通訳者の中には、ほぼ100%がエージェントとの取引ではないかと考えています。

めまぐるしく動く東京のビジネスシーンでは変更も度々です。そんな中、意外と皆さんエージェントのキャンセル規定は注意していないことに気が付きました。私が契約するエージェントのキャンセル規定を四社程調べてみました。

1.各社キャンセル規定の違い
以下はいずれも案件確定連絡後に適用されるキャンセル規定です。
【エージェントA】
1日前~当日 合計の100%
5~2日前 合計の60%
※キャンセル日は、土日、祝日を除く営業日数で計算いたします。

【エージェントB】
当日/前日 100%
2,3日前 50%
4~5日前 10%

【エージェントC】
前日 100%
前々日 50%
3日前 25%

【エージェントD】
当日/前日のキャンセル: 100%
前々日/3日前のキャンセル: 50%
4/5日前のキャンセル: 30%

※上記日数表記は原則営業日換算ですが、土日、祝祭日業務の場合はその都度取り決めさせていただきます。 ※終日案件が半日案件になった場合、差額分がキャンセレーションの対象になります。 ※各種拘束費のキャンセレーションについては、その都度ご相談させていただきます。
2.キャンセル規定の注意点
見比べて分かる通り、前日および当日キャンセルの場合は100%というのは業界標準のようです。ですがそれ以外は各社まちまちで、中には3日前にならないとキャンセル料が発生しないものが有ります。さらに、営業日で計算する規定のあるエージェントもあります。

実は実際にキャンセルされてみて「そういうことだったの!?」と驚くパターンは少なく有りません。例えば…
1.キャンセル規定をそもそも確認してなかった…。
2.営業日計算の規定はないのに、実は営業日計算。
3.複数日案件が一気にキャンセルの場合でも、一日単位ごとの保障
4.「案件ごとにご相談」対象の案件だった…

1.は無いだろう…と思われるかもしれませんが、意外とこちらからお願いしないと提示してくれないエージェントもあリます。例えば、上述のエージェントCがそうでした。先方にしてみれば積極的に出したい内容ではないですね(笑)

2.についても明記が無い場合はこちらから確認しておく方が無難でしょう。

3.は一番痛いパターンです。例えば1週間フルで抑えられた案件が案件3日前にキャンセルになった場合、上記エージェントCを除くエージェントでは一週間の1日目のキャンセル料は発生します。しかし、2日目以降はどうでしょう?多くの場合は発生しないことがほとんどですが、通訳者にしてみれば抑えている一週間の仕事がすべて無くなる訳ですからこれはかなり痛い…という事になります。

そうならないためにも、長い案件を受けるときには4.を踏まえて、個別にキャンセル規定がどのように適用になるのかを予め確認しておくことは大変重要です。そうすることで、対象案件が4.の「ご相談」案件だったとしてもダメージを最小限に防ぐことが可能となります。