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2014年4月28日

「米大統領尖閣発言 訳語の食違いは許容範囲?」

先日のオバマ大統領来日では、「二郎で寿司」を食べたことが何故かどこでも一番の感心事の様に取り上げられ、一部では二郎を「ラーメン二郎」と勘違いするような残念な…というか呆れた人たちも出てきたかと思えば、たかだか数万円のお寿司を国賓に振舞ったことを贅沢だと言い出す人たちもいて…何だか日本は大丈夫なのか?と思わずにはいられない…そんな出来事のオンパレードして、オバマ大統領来日は私の中に記憶されてしまいました。

その内の一つが下記の報道する側の姿勢です。内容をご存じの方であれば、報道機関は国民が耳を傾けるべき内容をわかりやすく正確に報道して欲しいとより強く感じたに違いないでしょう。(「二郎の寿司」よりも大事な事は沢山あります…。)

"profound mistake"を”正しくない”と通訳者が訳したとのこと。"profound..."という言葉は私にはとても強く響きます。もしかすると、権威ある人物の発言で激しく言い切ってしまうことを通訳者が躊躇したのかもしれません。しかし「正しくない」はやはり弱すぎると個人的には感じます。

ですがこの報道の中で問題なのは、通訳がどう訳したか?ではなく、文字にして報道する新聞各紙までもが「正しくない。」としたことです。音声を書き起こして、そこから正確な翻訳をすることが新聞であれば可能であったはずにもかかわらず、それを行ってない(通訳の訳に頼った?)のは怠慢以外の何者でもないのではないでしょうか?
米大統領尖閣発言 訳語の食違いは許容範囲?
一方で、オバマ大統領は、会見の中で尖閣問題の平和的解決の重要性に繰り返し言及。この点に関し、多くの主要メディアは、オバマ大統領が安倍首相に「事態がエスカレートし続けるのは正しくない」と述べたと報道していたが、朝日新聞と共同通信は「この問題がエスカレートし続けるのは大きな過ちだ」と述べたと伝えていた。
日本報道検証機構 GoHoo から抜粋
 話は変わりますが、ハリウッド俳優で中年の星(笑?)ジョージ・クルーニーが人権活動家の弁護士と婚約したと日本の報道機関も伝えています。でも、その報道の仕方を見て驚くのは「アメリカの◯◯誌が伝えたところによると…」と枕言葉が付いていることです。たかが芸能人の婚約でしょうが、日本の報道機関で裏をとった上で彼の婚約を報道しているところは果たしてあるのかしら…と呆れてしまいました。

日本の報道機関、本当にこんなことで良いのでしょうか?海外が伝えた内容をつぶさに検証、裏取りの努力をすることは報道機関として当然あるべき姿でしょう。情報ソースを現場に近い報道機関に頼る事があるのは、取材の厳しい環境・内容で有ればやむを得ないのかもしれませんが、それでも情報の伝達(翻訳)はできる限り正しくあることを担保できるような体制を整えるべきでは…?と思います。


2014年4月11日

簡易同時通訳機器(その5:自前で揃える)

通訳者の苦悩…
通訳現場に行ってみたところ、ウィスパリングと聞いていたのに聞かせる人数が3人以上でとても苦労した…とか、会場の都合等で「簡易通訳機器がないために通訳者が厳しい環境で通訳することを迫られた。」という状況をすべての通訳者は経験していると断言できます。

そういう状況が起こらないよう、手配をする人間(多くの場合エージェントコーディネータ)はエンドクライアントに出席者、会場、会議の運営形式について詳細なヒアリングをかけ、場合によっては会場まで出向いて行って状況を確認します。しかし、会場へ足を運べない事情があったり、当日の突然の変更により状況が一変し、上記のような苦しい通訳を迫られるということはどうしても発生してしまいます。

「自前で通訳機器を持つ」という選択
フリーランスになった当初にパナガイドを自分で購入することを検討していましたが、これまで様々な要素を考え見合わせていました。なぜなら、通訳者が自分の簡易通訳機器で自ら環境改善を行うことができる一方で、その事実による次のような幾つかの弊害を考えたからです。

レシーバーの数を一定数揃えようとすると莫大な初期投資がかかり、実質的な投資回収が不可能で、回収しようと思えばレンタル業でもするしかなくなります(笑)それは面倒…。その他、勝手な機器持ち込みでお客様に無料手配と勘違いされ、エージェントに叱られる…とか、細かいことを考えればいくつも有ります。

実際、機器は購入するには大変高価なものです。仮に送信機2機、受信機10機を想定するだけでも数十万。ところが、先日ご一緒した自前パナをお持ちのパートナーに話をお聞きして、この前提が間違っていたことに気付きました!彼女は「現場で自前パナに助けられた事は数知れず!」と仰っていました。そして、あくまでも「通訳者が困らない前提」で考えれば、送信機 2機、受信機 3機程度で十分なはずだということに気付きました。
自前調達に妥当と思われる機器数> 送信機 2機、受信機 3−4機
受信機はウィスパリングは通常二人まで、三人以上へは非常に難しいことをベースで考える。送信機は、生耳でスピーカー音声を拾うリスク回避のため、スピーカー用にも1機で合計2機。
豆知識>ステレオスプリッター
受信機のイヤホン挿入口に差して、イヤホン二本を差し込み可能にし、受信機1機で二人をサービスできます。
私が持ってるのはコレ。生産終了してるとか…悲
他にもいろいろ有りますが、プラグ差し込み口がケーブルになっているタイプの方が使い回しが効きます。会場用意の音声設備へのプラグインで上記のタイプでは本体が邪魔して入らなかった経験が…。

 参考: http://p.tl/XEug

誰のリスクか…?
依頼書をもらった時点で怪しい…と思われれば、計画段階でコーディネーターに現場環境を詳しく聞いた上で機器準備をお願いするのは大前提。それでも、現場で全く無茶な同時(ウィスパ)通訳環境であるのが判明した際には、お客様に状況をご理解頂いた上でコーディネータにヘルプ要請(機器手配をお願い)するしかないでしょう。

また、「多くの受信機」を自前で準備してお使い頂くと「無料で手配」だと逆にお客様に勘違いさせてしまう…ということにも気付きました。実際、「多くの人」へ通訳サービスが行えない(「多くの人」が通訳サービスを受けられない)リスクを通訳者がカバーする立場にありませんし責任もありません。「通訳者は自分が気持ちよくサービスができる。」という一点において自前の簡易通訳機器を持てばよいのです。

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劣悪な通訳環境に影響を受けるのは、本来あるべきサービスを受けられない「お客様」…ですが、実は通訳者自身も非常に苦しい思いをするということは見逃されがちです。

私達通訳者は機械ではありませんから、お客様に通訳を聞いて頂いてはじめて通訳者として仕事をしたといえます。誰も聞く人がいないところでぼそぼそ機械のように通訳することを「平気で」できる存在では有りません。環境が悪ければ、聞きづらい、訳しづらい、役に立てているのだろうか、そして「申し訳ない…」という気持ちを持ちながら通訳をすることになります。

自前の簡易通訳機器を持って自らの手で環境改善をはかることができ、気持よくサービスを行いお客様に喜んでいただけるのであれば、フリーランス通訳者にとって「自前の簡易通訳機器を持つ」という選択は大変合理的なことだと今は思っています。





お客様のご要望により簡易通訳機器に限らず必要な通訳設備をご用意することが可能です。

ピースリンク通訳事務所

2014年4月4日

簡易同時通訳機器(その4:デジタル機器)

前回までで解説した通り、従来から広く使われているアナログ機器での対応チャネル数は最大6チャネルまでです。ところが困ったことに海外の客様から、分科会を4つ平行して開催しそれぞれに日英同時通訳で2チャンネル合計8チャンネルを使用して会議を進めたい、とのご要望を頂きました。

そこでいつもお願いしている機器サプライヤに尋ねてみたところ、従来のアナログ機器では対応できるものがないが、デジタル機器で対応可能なものがあると教えてくれました。「トラベルイヤホン」という商品名です。この商品は前回確認した電波法の中のB帯を使用するものです。


  1. A帯: 要ライセンス取得 テレビの番組中継波等として使用。
  2. B帯(700MHz~800MHz): 混信の可能性が高く使用にはリスクが伴う。音質はA帯と変わらない。ただしA帯とは異なり許可制ではないので自由にチャンネルを設定できる。
  3. C帯(300MHz): B帯同様に混信の可能性があり。音質はA・B帯より劣るようで電波の飛び(距離)は波長が低いため一般的に長いとされる。(パナガイドやTOA社製品が使用しているのはこの帯域です。)

以下のような利点、難点(特徴)があります。

【利点】
  1. B帯使用のため、好都合なことにアナログ機器との併用でも干渉は発生しません。(通訳機器以外の電波発信装置、例えば会場設置のワイヤレスマイク等との干渉確認は必要でしょう。)
  2. 同時使用可能チャネル数が16チャンネル!
  3. 機器が軽い。
  4. 海外の電波法に合わせて設定変更が可能なため、海外持ち出しも可能。
  5. レンタル料金が従来型簡易通訳機器と比較して圧倒的に安価。

【難点】
  1. デジタル操作のボタンを押してチャンネルを調節しますが、チャネル操作感に欠け操作しにくい(実際に業務で使用経験のある方の感想)。
  2. 多くの日本の通訳者は使用経験がない。
  3. レンタル業者数が限られているため、必ず予約可能とは限らない場合も…。

具体的なレンタル価格や業者については言及を避けますが、サービス業者は検索すれば直ぐに見つかります。私自身実際に行って実機を触って確認しましたが、機能上はまったく問題ありませんでした。

【レンタルの際の留意点】
レシーバーの視聴機器のデフォルトは「(消毒済の耳穴挿入タイプ: 写真参照)イヤホン」ですので、パナガイドに慣れているお客様向けにはレンタルの際に「耳たぶ装着式のイヤホン」を指定することをお忘れなく。

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実は随分前にもパナガイドについての記事を書いています。その中で、携帯電話、スマートフォンのような小型機器が出てくるにも関わらず未だパナガイドやTOA機が主流を占めていることに疑問を投げかけていたのを思い出します。技術の進歩によりもっと安価に、もっと便利にこうした機器は使えるようになるはずです。

今回は簡易通訳機器についてでしたが、技術の進歩は電話会議システム、テレビ会議システムにも及んできています。将来的には国際会議級の会議でも、現場に足を運ばなくとも通訳を聞きながら出席することは十分可能になるはずです。実際には技術はすでにそこにあっても、使う側が追いついていないことを認識し、通訳者もそういう時代にどう対処するべきかを考えておく必要があるでしょう。

しかし、設置型のシステムについては企業としては償却の必要があるためか、なかなか新しい物に出会うことは稀です。そんな中、通訳者が個人で簡易通訳機器を持つことの意味を、次回は考えてみたいと思います。