2014年4月11日

簡易同時通訳機器(その5:自前で揃える)

通訳者の苦悩…
通訳現場に行ってみたところ、ウィスパリングと聞いていたのに聞かせる人数が3人以上でとても苦労した…とか、会場の都合等で「簡易通訳機器がないために通訳者が厳しい環境で通訳することを迫られた。」という状況をすべての通訳者は経験していると断言できます。

そういう状況が起こらないよう、手配をする人間(多くの場合エージェントコーディネータ)はエンドクライアントに出席者、会場、会議の運営形式について詳細なヒアリングをかけ、場合によっては会場まで出向いて行って状況を確認します。しかし、会場へ足を運べない事情があったり、当日の突然の変更により状況が一変し、上記のような苦しい通訳を迫られるということはどうしても発生してしまいます。

「自前で通訳機器を持つ」という選択
フリーランスになった当初にパナガイドを自分で購入することを検討していましたが、これまで様々な要素を考え見合わせていました。なぜなら、通訳者が自分の簡易通訳機器で自ら環境改善を行うことができる一方で、その事実による次のような幾つかの弊害を考えたからです。

レシーバーの数を一定数揃えようとすると莫大な初期投資がかかり、実質的な投資回収が不可能で、回収しようと思えばレンタル業でもするしかなくなります(笑)それは面倒…。その他、勝手な機器持ち込みでお客様に無料手配と勘違いされ、エージェントに叱られる…とか、細かいことを考えればいくつも有ります。

実際、機器は購入するには大変高価なものです。仮に送信機2機、受信機10機を想定するだけでも数十万。ところが、先日ご一緒した自前パナをお持ちのパートナーに話をお聞きして、この前提が間違っていたことに気付きました!彼女は「現場で自前パナに助けられた事は数知れず!」と仰っていました。そして、あくまでも「通訳者が困らない前提」で考えれば、送信機 2機、受信機 3機程度で十分なはずだということに気付きました。
自前調達に妥当と思われる機器数> 送信機 2機、受信機 3−4機
受信機はウィスパリングは通常二人まで、三人以上へは非常に難しいことをベースで考える。送信機は、生耳でスピーカー音声を拾うリスク回避のため、スピーカー用にも1機で合計2機。
豆知識>ステレオスプリッター
受信機のイヤホン挿入口に差して、イヤホン二本を差し込み可能にし、受信機1機で二人をサービスできます。
私が持ってるのはコレ。生産終了してるとか…悲
他にもいろいろ有りますが、プラグ差し込み口がケーブルになっているタイプの方が使い回しが効きます。会場用意の音声設備へのプラグインで上記のタイプでは本体が邪魔して入らなかった経験が…。

 参考: http://p.tl/XEug

誰のリスクか…?
依頼書をもらった時点で怪しい…と思われれば、計画段階でコーディネーターに現場環境を詳しく聞いた上で機器準備をお願いするのは大前提。それでも、現場で全く無茶な同時(ウィスパ)通訳環境であるのが判明した際には、お客様に状況をご理解頂いた上でコーディネータにヘルプ要請(機器手配をお願い)するしかないでしょう。

また、「多くの受信機」を自前で準備してお使い頂くと「無料で手配」だと逆にお客様に勘違いさせてしまう…ということにも気付きました。実際、「多くの人」へ通訳サービスが行えない(「多くの人」が通訳サービスを受けられない)リスクを通訳者がカバーする立場にありませんし責任もありません。「通訳者は自分が気持ちよくサービスができる。」という一点において自前の簡易通訳機器を持てばよいのです。

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劣悪な通訳環境に影響を受けるのは、本来あるべきサービスを受けられない「お客様」…ですが、実は通訳者自身も非常に苦しい思いをするということは見逃されがちです。

私達通訳者は機械ではありませんから、お客様に通訳を聞いて頂いてはじめて通訳者として仕事をしたといえます。誰も聞く人がいないところでぼそぼそ機械のように通訳することを「平気で」できる存在では有りません。環境が悪ければ、聞きづらい、訳しづらい、役に立てているのだろうか、そして「申し訳ない…」という気持ちを持ちながら通訳をすることになります。

自前の簡易通訳機器を持って自らの手で環境改善をはかることができ、気持よくサービスを行いお客様に喜んでいただけるのであれば、フリーランス通訳者にとって「自前の簡易通訳機器を持つ」という選択は大変合理的なことだと今は思っています。





お客様のご要望により簡易通訳機器に限らず必要な通訳設備をご用意することが可能です。

ピースリンク通訳事務所