2014年12月25日

サイマル・アカデミー主催「通訳者・翻訳者への道」

サイマル・アカデミー主催で下記の通りセミナーが開催されるようです。日本の同時通訳黎明期にご活躍され、業界にも多大な貢献をされてきた小松達也さん、そして最近のNHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀」やご著書「伝える力」等でさらにその名前が一般に知られるようになった会議通訳者の長井鞠子さんのご講演が聞けるようです。

一昨年は、横田謙さん、今年は村松増美さん、そして先月25日には國弘正雄さんという日英同時通訳者の草分けとして業界を支えて来られた方々が相次いでお亡くなりになっています。そういう意味でも、大先輩の話を聞く機会はますます貴重になってきました。

私が最初に通訳に興味をもったのは、やはりこうした大手通訳学校が主催するセミナーで同時通訳者の講演を聞いたのがきっかけでした。地方にいるとなかなかこうした機会がないのが歯がゆいですが、少しでも興味ある方はぜひ申し込みを!無料です(笑)


2014年12月14日

PEACELINK通訳セミナー緊急!開催のお知らせ

通訳セミナーを開催いたしますのでお知らせ致します。

主催:ピースリンク通訳事務所
日時:12月20日(土)13:15-17:00
場所:安芸郡府中町くすのきプラザ 研修室
地図URL:http://goo.gl/glZZgu
対象:通訳を勉強中の方
会費:1,000円
定員:15名程度

参加方法:下記URLよりお申込みください。
http://goo.gl/forms/HJuq35Fvj3

広島国際会議場の通訳ブースです。通訳機器が3台設置されたのはイレギュラー…笑。

【スケジュールと内容】
一部)13:15 - 15:00
>> ビジネス通訳シミュレーション
地方の通訳学校では、とかく講演会やニュースが教材として使われ、通訳キャリアの入り口とも言えるビジネス通訳(社内会議、商談)等を扱うことはかなり稀です。社内通訳やエントリーレベルのフリーランス通訳者が基本的に抑えているべきビジネス通訳とは、どういったものなのか?を体験します。当日はバイリンガル講師をお招きし、現場で実際の会議の様子を再現しながらレッスンを進行して行きます。できるだけ参加型のセミナーにしたいと考えています。

15:00 - 15:15  休憩

二部)15:15 - 17:00
>> 社内通訳、フリーランス通訳、東京そして広島
通訳の働き方にもいろいろありますが、仕事はどうやってとってくるのか?また市場ごとの仕事量、種類の違いはどのくらいあるのか?基本的に参加者の質問を受ける形で、インタラクティブに進めながら、これからみなさんのキャリアを探る中で知りたいと思われる情報の提供を目指します。

2014年11月18日

発音を鍛えてみる

先日FBのウォールでご紹介したら、思いの外語学関係の友人から「いいね!」が付いているのでこちらでもご紹介します。

知っている人には今更…だと思うのですが、最近こんなサイトを使っています。基本的に発音記号は読むようにしているのだけど、どうしても音のイメージが欲しいという時があって役に立ってます。



最近これで調べた語彙は "abdominal aortic aneuyrsm"...。 私は "ao" や "ae " の並びを発音のイメージと重ねて記憶することに、恥ずかしながらもう何年も苦労していて…。

スペルと発音には深い関係があって、(それはスペル通りに発音すれば良いというものでは無いですが)正しいスペルが書けることと発音が正確にできる事は必ずしも全く別の事ではないと考えています。もちろん、その前に英語の音の認識、聞き分けができる事は大前提なのですが。

そういう私は恥ずかしながらスペルミスけして少なくありませんが、大抵はワードやiPhoneの自動修正機能の範囲内です。その修正の幅を見ていると、恐らく発音によるスペリングの規則性をある程度考慮したものになっているのでは無いか?と勝手に推測しています。(違うかもしれません…汗)


また最近、お友達に紹介してもらって購入した発音訓練の本がこちら。全てPCに音声をダウンロードして暇な時にひと通り聞き流してみましたが、目からウロコな内容が満載です。なかなか発音にじっくり取組む機会はないと思いますが、(ちょっとお高いこともあり…)時間をかけて楽しむように聞いてみるのも良いかもしれません。
American Accent Training: A Guide to Speaking and Pronouncing American English for Everyone Who Speaks English

かならずしもネイティブレベルである必要はありませんが、通訳にとって発音の良さは商品価値の一つであることを今一度認識しましょう。どんなに通訳のできが良くても発音の悪ければ、内容がオーディエンスに届かないことも…。何より、正しい英語の発音でコミュニケーションできることがお客様に安心感を与えますし、それによって徐々に自信もついてくるはずです。

2014年10月12日

27. 仕事の準備の仕方(見本市ブース通訳編 その2)

さて、前回は現場に向かう前の資料ベースでの準備内容でした。今回は、会場で想定される通訳シーンから準備すべき内容を考えてみます。

2.現場の具体的な会話を想定する
経験上、海外へ商品を売り込む際に必ず聞かれたのは以下の質問項目です。
1.対象国に代理店があるか?
2.取引最低ロットはいくらか?
3.取引最低金額はいくらか?
4.発注から納品までのリードタイムは?
5.出荷条件は?(Ex-works/FOB etc)
6.パンフレット(英仏語あたり?)、Webサイトはあるか?
この代理店ですがDistributorなのかAgentなのかの違いは現場の会話の中で抑えるようにしましょう。もちろん Direct Salesしかしないとなれば、出店業者の海外窓口担当部門について聞かれるでしょうから、その部門の英語名称も要確認です。

「商談通訳」というタイトルで仕事が舞い込むんでも通常は出店側に標準レートが既に設定されている場合が多く、価格の話になるのは見本市で非常に興味を引いた場合に限られます。ですので、現場でいきなりそろばん弾いてディスカウント合戦!になるのは稀だと思います。

これ以外に考えられる質問としては…
7.サンプル商品の送付は可能?またその時の最低数量および価格は?
8.訪問企業側のニーズや好みをプラスして新製品の製造請負は可能?
すみません…再びワインについて全くのド素人なので、これはあくまで想像です。ただし私が以前海外商品見本市ブースで仕事した時、クリスタル・ガラス加工専門(デザイン含む)メーカーを担当したのですが「カスタマイズ対応できるか」質問していた業者がが有りました。現地プロデューサーとして利用者(消費者)のニーズに合わせた商品開発をしている業者の来場も考えられます。

次に現場での対応で重要な事を考えてみます。

3.アポ商談を想定したリサーチ
まず、持ち物ですがネット接続可能なタブレットデバイスの持参をおすすめします。出店企業がこういうイベントに合わせ、以前から商談をすすめている国内業者を招待していることが良く有ります。こうした招待業者について、通訳者が事前に知らせてもらえる場合もありますが、アポイントメント時間はイベント前後の来場者のスケジュールで常に変更を余儀なくされている場合がほとんどです。

アポのとれている企業について最低限のリサーチを進めておき、現場でアポ前にそれとなく「次のアポはこのお客さまですね。」とアポの詳細を聞き出す事が出きるはずです。さらに、海外出店企業が招待企業についてリサーチしていても、ほとんどの場合が英語によるチェックです。しかし、日本企業の情報は日本語でのほうが豊富であるのは言うまでも有りません。ここで知り得た情報が喜ばれる事は多々あります。また、現場でアポ有り業者が判明したら、客足の薄い時にリサーチを進めておくこともお忘れなく。

あとは、来場したお客さまと出店者に誠心誠意対応しましょう!

4.通訳者もクライアントカード整理(反省)
…と商談が終わったら終しまい?…ということも有りません。多くの場合出店業者は、それぞれの商談内容をクライアントカードのようなものに忘れないうちにその場で整理してきます。名刺交換をしていても、役職名が英語ではピン来ないという時や、商談内容そのものを思い出していただく手助けまでできれば、大いに喜ばれることでしょう。

こうして書いていくと「なんだ、通訳以外の作業が多いじゃない?思い出す手助けなんて…」と思うかもしれませんが、一緒に思い出しながら自分の通訳内容の反省をすれば問題なしです。確かに、言われたことだけ通訳できればいい、わけですがその時のパフォーマンスをできるだけ良い物にするためには「想像力を働かせてどんな準備が出きるか?」がどんな種類の通訳案件でも重要だと感じます。

2014年10月5日

27. 仕事の準備の仕方(見本市ブース通訳編 その1)

駆け出し通訳の登竜門的に、見本市などに「逐次通訳が出きる通訳者」が駆り出されることは良く有ります。このブログでもご案内したことが有りますがFOODEX JAPAN、そして直近のイベントではTGS(Tokyo Game Show2014)CEATECH2014、などなど実に多くのTrade Show(見本市)が主に東京では開催されています。こういったイベントでは出店企業にいわゆるブースが割り当てられ、入場者が興味をもった出展企業ブースを自由に見学して、その企業との取引に興味が湧けば商談を進めていくというものです。

こうした出展ブースでの商談通訳の準備方法について解説してみます。あくまでも、私の経験でお話していますので他の方のご意見も是非お聞かせ下さい。実は、知り合いが「VINNEX NIPPON TOKYO 1-2 Nov. 2014」でお仕事をすることになったようなので、こちらを例にとって考えてみます。

1.出店企業を知る
通常は、主催者側(あるいは通訳エージェント)から、どの企業ブースを担当するのか連絡があり、同時に全出展企業リスト、ブースレイアウト図が送られてきます。ここまで分かったら基本的調査項目は以下の内容です。
1.会社概要
2.会社が売り、や主要特許項目
3.出店目的の対象商品
4.対象商品の国内外出荷状況
5.国内外取引銀行
このイベントはサイトを確認したところ、海外のワイン業者が日本市場に向けて売り込むことを目的としたイベントのようです。であれば、ここから想像を膨らませて
6.今回対象ワインのカテゴリー
7.ぶどうの産地と気候
8.ワイン醸造に利用している特別な技法
などが考えられます。(ワインに詳しい方ならもっと思い浮かぶのかもしれません…汗)

また、現場でテイスティングがあると想定するとその味わいの表現方法にも気を遣いたいところです。私はワインは全くの素人なので思い浮かぶのは「芳醇な」「まろやかな」程度なのですが、詳しい方ならどういう表現をするのかは興味が有りますね。少なくとも、対象商品ワインの味わいが日本語ではどのように表現されているかを抑えた上で、それを英語で表現出きるようになっておくことは必要でしょう。

また、ワイン以外の場合にも「商品の特徴となるものは何か?」を考えれば、自ずと調査項目は見えてくるはずです。つまり、商品スペックと言われるものを、利用者(消費者)の目線でどう捉えるのか?を検証していけばいいわけで、それには出展企業が出している商品説明のWebサイトやパンフレットなどが大いに役に立つはずです。

ここまでは前準備。次回は、会場で想定される通訳シーンから、準備すべき内容を考えてみましょう。

2014年10月2日

2014仁川アジア大会通訳問題

連日アジア大会で日本選手のメダル記録が報道される中、アジア大会事務局の不手際が報道されています。その中に通訳者100名近くが離脱したという記事を見つけた方も多いのではないでしょうか?

4年前に私も広州アジア大会の通訳を担当しました。その時はアジア大会事務局が通訳エージェントを雇ってそこが通訳者手配を一括管理していました。けして万全とはいえませんでしたが、通訳事務局は熱心に取り組んでいましたし、通訳と事務局側が協力してすすめようといういい雰囲気は有ったと思います。

ところが仁川アジア大会では、先日はとうとうこんな記事が出てきました。
<アジア大会>選手が通訳に…組織委「今後はアラビア語通訳を配置」
2014年10月01日16時42分
[ⓒ ISPLUS/中央日報日本語版] comment24hatena0

29日、2014仁川アジア競技大会陸上男子1500メートルのメダリストが集まった記者会見場には、アラビア語の通訳が現れなかった。関係者および取材陣は組織委の未熟な大会運営を批判した。金メダリストのモハメド・アル・ガルニ(カタール)は英語を話せたが、銀メダリスト(バーレーン)と銅メダリスト(イラク)の選手はアラビア語以外の言語を話せなかった。結局、金メダリストのアル・ガルニが他の選手の通訳を担当した。
(一部抜粋)
 アラビア語の通訳手配そのものがそもそも無かったとか。実際には、会場にいる記者にアラビア語ができないか募ったところ一人、アラビア語中国語ならばできるという人がいたけれど、会見公式言語の英語ができなかったため断念。その後、デキるという人が現れトライしてみるも英語のクオリティーが低く途中でギブアップ。見かねた金メダリストが助け舟を出した…ということだったようです。(ちなみに広州大会では北朝鮮を除き、アラビア語含めた必要言語が手配されていました。)

その他の記事をみると、通訳が「通訳ボランティア」として言及されていますがこれも気になるところです。記者会見通訳が無償ボランティアでまかなえる訳はないので、有償ボランティア…ということなのでしょうか?今回のアジア大会には知り合いの中国人通訳者が参加しているはずなのですが、恐らく彼に「ボランティア」の意識はないと思います。

スポーツの感動はそのパフォーマンスを目にすることにあるかもしれません。ですが、アスリートの思いをストーリーとして言葉で聞くことで、感動的なパフォーマンスがより大きな共感を生むと考えれば、それを伝える人の役割は大きいはず。韓国にとっては手痛い結果となったことは言うまでもないでしょうね。

さて、2020年東京オリンピックでの日本は…!?市民レベルの交流を考えれば民間の通訳ボランティアの養成は欠かせないと思いますし、ホスト国のボランティアが果たす役割はとても大きいです。(広州で見かけた街の若者のボランティアは素晴らしかった。)一方で、プロ通訳者をどういう場面で活用すべきか全く聞こえて来ないのがちょっと心配です。私が蚊帳の外なだけか…(笑)

2014年9月28日

JTFジャーナル 2014年秋号

日本翻訳連盟(JTF)によるJTFジャーナルが発行されたようです。ダウンロードして読めますのでご興味のある方は下記のリンクからどうぞ。

この度は、6月に開催されたIJETのダイジェスト版的な内容になっていますので、参加がかなわなかった方には美味しい一冊?といえるかもしれません。

JTFジャーナルWeb

2014年9月26日

翻訳百景に参加しました。

この翻訳百景は文芸翻訳者の越前敏弥さんがなさっている活動で、通常は夜開催のところをこの度初めての試みということでお昼間の開催で、しかも、直前にFBの知り合いがアナウンスを再度流してくれたためにギリギリのタイミングで参加申し込みして、翌日に参加となりました。

内容は、翻訳者が心得るべきことを翻訳事例を上げながら説明した前半と、文芸翻訳者の収入を視野に入れながらどうチャンスをものにしていくかというキャリア開拓についての後半、という構成でした。

文芸翻訳者のみならず、翻訳者が翻訳する上での基本姿勢、さらに仕事を得る上での心構えをギュッと凝縮して聞ける講座だったと思います。これ以上の具体的な内容にはここでは触れませんが、一つ質問したことが有りました。

「印刷物の流通が少なくなる中で、文芸翻訳が生き残る道として日本の出版社を介さない新たなプラットフォームを構築し発信する動きはないですか?」というものです。先日ここでも紹介した佐藤秀峰さんの取り組みにヒントを得ているのは言うまでもありません。

文芸翻訳者の収入については具体的な数字を出されながら、業界や版元が取ってきたあらゆる変化によって10年前と現在の「文芸翻訳で収入を得る」ことがさらに難しくなっている現状を自ら話されたことがきっかけになって質問してみました。この話についてはIJET25でされたお話の内容だそうで、アルクサイトの翻訳のトビラに一部まとまっているのでご興味ある方はぞうぞ。

『一部そういう取り組みをしている方は居るようである。ただ、どれほどの成功を収めているかは分からない。文芸翻訳の場合、翻訳の元になる書籍の著作権問題がからむため、版元との交渉など超えなければならないハードルが沢山ある。考え方としては面白いし、だれか力のある人がやってくれないかな、とは思う。実際、将来的にはそういうことができなければならない、或いはそういう人しか生き残れない時代が来るかもしれない。』

だいたい、こんなご回答でした。版元との著作権交渉については見落としていました。確かに大変そうですね…。

翻訳を職業にしたいと思っていても、よほど戦略的に進めて行かないと「生活していく」ことは難しい業界であると改めて知らされます。仕事をしたい、仕事を続けたいと考える時に、必要なことをもっと翻訳者自身が考えるべきであることを明確に示唆されていたと思います。「仕事は貰うもの。」と考えているうちは、仕事を「続ける事」は難しいということでしょうね。


まだ読めていませんが、ご著書も一冊購入して帰りました。
越前さんのサイン入りです(笑)

2014年9月10日

「めんどくさい」こと

なんだか通訳もサービス業も貶めるかのようなこの言葉。
でも、時々耳にします。

「通訳なんて所詮はサービス業だから。」

仕事をしていて面白くない場面はもちろんあるし、周囲に100%自分の仕事を理解してもらうなんて、この仕事に限らず無理な話です。そういう言葉を耳にすると「なんか嫌なことでもあったかな?」「疲れているんだろうな」と思います。

その上で客観的に上記の言葉を考えるに、サービス業の要素の伴わないフリーランス職業はまずないと言っていいでしょう。「人付き合いが苦手だからフリーになった。」という発言も聞きますが、ビジネスのインターフェースは人です。私もけして人付き合いが得意な方ではありません。ですが、一国一城の主である以上サービス業的側面を避けて通る事は不可能です。そしてサービス業に求められるものは自分にとっては「めんどう」なことのオンパレードじゃないでしょうか?

サービス業から想起されるものの対局にあるのが「ビジネスライク」という言葉かもしれません。この言葉にはまるで事実とデーターだけで淡々とやりとりが進むイメージがあリます。しかし、そこに人間が介在する以上、けして人間的なコミュニケーションを全てそぎ落として成り立つものではないと思います。

追求しているのはビジネス面での効率性であり、ビジネス効率向上を目指す上で「お互いが気持よく仕事できる環境に気を配る」ことはビジネスライクの一つの側面であるはず。

私もめんどうなことは嫌い。だけどめんどうなこと好きな人なんてそもそも居ないはず。みんな思っていても言わないだけじゃないでしょうか?

「所詮はサービス業だからめんどうなこともやらなきゃね。」という含みはなんとなく寂しい。翻訳や通訳はよく腕一本(技術だけ)で稼いでいる…という風に自ら言う人もいるし、周囲からもそう見られがちです。でも、必ずしもそうでないこと、もし気づいていないならとても残念なことです。

技術があるし業界に貢献しているから、知らない相手に今更あいさつなんてしない。
「めんどう」だから…
納期だから納品を受けた訳で、特に受領連絡しない。
「めんどう」だから…

これらの例ですら、人間関係が一旦出来上がってしまえば何でもないことかも知れません。でも、よくわからないうちはちょっとした気遣いの無さが「あれあれ?」という感覚につながる事があります。

最近こんなシーンを目にすることが続き「めんどうが嫌い」とわざわざ公言する人には「『めんどう』をかけると『めんどう』なことになるから、つまり自分に近づくなとサインをだしているのかも…」と、少し深読みしてしまう癖がついてしまいました。

疲れているのかもしれません(笑)疲れてくるとついつい「めんどうだな」と思っている自分がいます。日頃、自分とかかわる人が考えてくれている配慮を、ありがたいと感謝しつつ、少し疲れ気味な「めんどうな誰か」の気持ちを受け止められるくらいのココロの余裕が必要だなと思います。あるいは、そんな「『めんどうビーム』をはねのけるくらいのタフさ」が必要とも言えるかもしれません。

タフになる。疲れない。めんどくさがらない。
そのためにできる事ってなんだろう?
管理項目が山盛りすぎてちょっと疲れてきました。

あ〜めんどう。
いかんいかん…

2014年8月16日

「おい、スティーブ!」はオリジナルにはなかった…(世界の料理ショー)

昔から料理番組が大好きな私ですが、急に思い出して「子どもの頃に見てたあれなんだったっけ?」と調べたアメリカの料理番組がこれ。「アメリカ 料理 70年代」で検索したら一発で出てきました。

「世界の料理ショー」
Galloping Gourmet / Graham Kerr


まず、あの当時男性がネクタイ姿で料理しているのが斬新でした。当時の豊かな「アメリカ」が、電気製品、カトラリー、カラフルな鍋や食器類として「台所」ではない「キッチン」の随所に散りばめられていました。それら全部を曲芸みたいに操り、さらに軽妙なオシャベリでたまに裏方Steveに「おい、スティーブ!」なんて毒付いたりオヤジギャクを飛ばしながら、美味しそうな料理を完成させてしまいます。

今見ても本当に楽しい。ところが、あらためて気付いた事があります。当時私は当然日本語で観ていましたから、あの楽しい軽妙な彼の語り口は「日本語の吹替え」でした。つまり、吹替用のスクリプトが素晴らしい!ということだったのです。英語の動画も見ましたがGrahamの語り口を全く損なっていないし、再現している声優さんも本当に上手い。

最後に、翻訳者と声優の名前がクレジットされていたので、ちょっと調べてみたところやっぱり素晴らしいにはそれなりの理由がありました。翻訳者は小川裕子さん。そして声優は数名が担当していたみたいですが、最終的にはの黒澤良さんに落ちついたようです。
グラハム・カーGraham Kerr の初代吹替・浦野光インタビュー
(平凡社『QA』1991年2月号掲載)

「ぼくが声を担当していたころは、東北新社のディレクターの川村常平さんと翻訳の小川裕子さんで、日本語版を作ってたんですけど、翻訳の小川さんがこの番組に惚れ込んでいましてね。

外国のギャグなんて、そのまま翻訳しても日本では通じないもののほうが多いから、ストーリーに合わせていろいろアレンジしてくれたんですよ。
それでもまだ、グラハムの口と台詞が合わない部分が出てくるんです。

そこで、番組のスタッフロールにスティーブっていう監督の名前が出てくるんですが、こいつを使って台詞を作ろうということになりましてね。

ですから日本語では、『だめじゃないか、スティーブ!』とか言ってますが、実際の作品にはそんな台詞はないわけですよ」
なんとオリジナルではスティーブに突っ込んでなかったとは!この他にも、アメリカのポップを口ずさむところを吹替ではピンクレディーの歌詞で歌わせたりしていたそうです。Grahamのあの軽さに合わせて「やっこさん」「おっかさん」「べったり塗ってね、オバちゃんの厚化粧のように。」「はいはいカワイイ僕のチキンちゃーん」なんて、日本人の耳にとても楽しいじゃないですか。まぁおやじギャグではありますが(笑)

「奥様は魔女」に始まりアメリカや海外のテレビドラマやショーは小さい頃から見てきましたが「面白かった!」と記憶している物にあまり「吹替え」を意識して見た覚えは無いな…と今更思います。原語で理解できる楽しさもありますが、深く自分の中に馴染んだ日本文化の脈絡で優れた日本語吹替えを聞くことで、作品を堪能し尽くす事ができていたのだなぁ…と、映像翻訳者の仕事の奥深さを再発見しました。

2014年8月15日

「最低でも通訳には…」と言わないで!

私は常々、スポーツチーム所属の通訳者は究極のインハウス通訳者だと感じています。以前も何度か描いた事があると思うのですが、日々勝負を重ねる選手や監督たちと生活を共にし、同じ目標に進んでいくために彼らがカバーしなければならない範囲は、一般企業のインハウス通訳とは比べ物になりません。

先ごろワールドカップサッカーでの日本敗退を以ってザッケローニ監督が退任し、彼が就任以降ずっとサポートし続けた通訳矢野氏も退任となったようです。(矢野氏については彼が就任当初にも記事を書いています。)矢野氏が在任中にどんな風に自分の職務に取り組んでいたかが伺えるニュースを見つけました。

MSN産経ニュース
「通訳が今明かすザックのプライベート 和食レストラン探しに歯科医の付き添い!? 」
2014.8.15 07:00 (1/3ページ)[スポーツ・ウオッチ]

この中で彼は次のように語っています。
通訳業の重要なポイントに挙げたのが、(1)専門知識(2)集中力と記憶力(3)情報収集能力(4)伝達力(5)監督への忠誠心-の5項目。

多くの場合スポーツ通訳者はその競技の経験者が採用されることが多いようです。それは、求められる専門知識がかなり特殊で深い…ということが有るでしょう。また、日々繰り広げられる勝負の中で常に数字を意識しながら、選手と一丸になって試合に臨む姿勢は欠かせません。通訳者も間違いなくチームの一員です。

そして、何よりチームのメンバーからどれだけ信頼されているかは、最も重要なポイントではないでしょうか?矢野氏はこれについては「監督への忠誠心」という言葉で表現してます。ですが、実際には彼の人柄がとても重要なポイントを占めていたように推察しています。

私も個人的に地元野球球団の通訳さんを知っています。お会いして話したことは一度しかないのですが、球団に寄せる愛情と熱意をもって取り組んでおられる様子がオシャベリの中からもヒシヒシと伝わってきて、その人柄に触れてすぐに彼の大ファンになりました。

つまり、球団や選手に対する忠誠心や人柄で、通訳が好感を持たれ信頼される存在にならなければ、上手いコミュニケーションは取れないということです。これはビジネスでも程度の差はあれ同じことが言えると思っています。

インタビュー記事からは「やりきった!」という感じが読み取れます。本当におつかれさまでした!ただ一つ言わせて欲しいのは、記事の最後に「最低でも通訳くらいにはなれる(笑)」と言っている点…。選手として大成できなかった自分を評して謙遜している言葉だと思うのですが、とても残念です。彼が監督とチームに信頼され4年間務め上げた功績は大きいと思います。しっかりと胸を張って、今後スポーツ通訳を目指す人たちへエールを送って欲しい!と思いました。




2014年8月10日

「漫画貧乏」 佐藤秀峰 著

佐藤秀峰
漫画貧乏
Kindle版 ¥ 0
「海猿」「ブラックジャックによろしく」のマンガ家 佐藤秀峰氏のエッセイです。

デジタルの普及に伴い長い不況にあえぐ出版業界の影響を、マンガ家のみならず執筆を生業とする方はもろに受けているということが分かりました。その中でもマンガは、仕上げるために何人ものスタッフの手がかかり、題材の取材費などを含めると、「売れっ子マンガ家」と言われる人でも、単行本の売上が一定数なければ基本赤字運営なのだそうです。

佐藤さんのサイト: マンガ on Web
http://mangaonweb.com/creatorOnlineComicTop.do?cn=1


この本は、そういう出版業界とマンガ家の関係とは別に、独自で作品を発表するプラットフォームをデジタル・ネット上に構築するまでの佐藤氏の実話です。自分だけでなく多くのマンガ家が自分の作品に誇りを保てる対価を得る仕組みを作る中で、様々な困難や時には同業者からの批判に直面します。それを自分なりに解釈してそれでも前に進んでいく様子が語られています。

フリーランスという立場は翻訳者・通訳者にも共通しており、出版社を通訳・翻訳エージェントとして読んでみることができるように思います。さすがにマンガ家と出版社の関係ほどの酷さが「常識」とはなっていません。しかし、中には最低賃金を割るような翻訳レートのオファーも出てきているとか…?

マンガの中にも出てくる、編集者の「誰がお前のマンガを売ってやってると思ってるんだ。」というセリフと、それを言われると萎縮してしまうマンガ家の感じ…というのは何とも象徴的だと感じました。しかし、佐藤氏は「出版社も原資であるマンガを買い、それを売ることで利益を上げている。そう考えれば出版社はけしてマンガ家のために売っている訳ではない」と気付きます。お互いがお互いのビジネスを尊重し、利益を上げるために納得行く形で手をとれる関係が必要ということでしょう。

自分の仕事が好きで本当にそれを続けたいと思っているのに、それでは生活が立ち行かない…。私が購読しているメーリングリストにも最近までこんな話題が出ていました。でも、現状に不満を述べ自分の主張だけを叫んで何も行動を起こさなければ、変化はおとずれません。佐藤氏はものすごい精神的経済的な重圧の中で、諦めずに前へ前へ進んでいきます。

その中で、あまり多くは登場しないのですが、彼の奥様が優しくそして力強く彼を支えていることを随所で感じました。自分が正しいと思う道でも、必ずしも周囲の全てが支援してくれるとは限りません。その時に応援してくれる人がいるかいないかは、その人がどういう生き方をしてきた人なのか?他者を尊重できる人なのか?何より、自分の信念にどのくらい本気であり正直な人なのか?を知っている人達でしょう。

少し前に「速く行きたいなら一人でも行け、遠くに行きたいなら仲間と行け。」というアフリカだったかの言葉を聞いて、深いな…と思いました。

自分が変えたい現状について、他者による変化を望むのはおよそ不可能です。自分にしか変えられません。であれば、アイデアを沢山持っていることは変化に向けた行動をする上で大きな強みとなるでしょう。でも、それを支える信念や仲間も同じくらい大切だ、ということもこの「漫画貧乏」は教えてくれている気がします。

2014年8月1日

翻訳者のオフ会 @ 広島県福山市

Facebookの中国四国通翻グループに集まった翻訳者の会話から、来週土曜日に広島県福山市でオフ会が開催されることになりました。アメリカから一時帰国中の翻訳者を含めた地元翻訳者が集まってゆるくオシャベリの予定です。

福山はJR岡山駅から在来線でちょうど一時間くらい。岡山市や倉敷市在住の方がいらっしゃればアクセス圏内と思います。

マイナー地方都市(おっと失礼!)でこうしたオフ会があることは珍しいと思います。少し遠い方も足を伸ばして見てはいかがでしょうか?

【翻訳者オフ会(ゆるくオシャベリ)】

日時:
8月9日(土)13時~(14時の時点で全員顔合わせられたらいいな)

場所:
JR福山駅から徒歩圏内のカフェで
天満屋の中のアフタヌーンティー or
駅直結の「さんすて」内のUCCカフェなど

すでに数人のメンバーが出席予定です。特に事前の予約は必要ありませんが、一言お声をかけて頂いていると嬉しいです。よろしくお願いします。

2014年7月12日

26. 通訳学校では教えてくれないコト ー フリーランス通翻ビジネスの変化

私が所属するあるメーリングリスト(以下、ML)に、こんな投稿がつい先日ありました。プライバシーの問題もあるので詳しくは書きませんが、要旨は「皆さんはどうやって仕事を確保していますか?」というものです。

そんな投稿に、ML内のメンバーから温かい投稿が寄せられるのを見るのは大変励みになることでした。同時に、返信投稿を見ていてここ3-4年の間に大きな変化が起きている事をはっきりと読み取る事ができました。つまり、直クライアントにアクセスする手段を持つことがフリーランスビジネスの一貫として必須であるとの認識が格段に強化され広まってきていることが分かったのです。

1.数年前までの翻訳者の意識
IJET23を開催したのは2012年の事でしたが、その前年2011年秋におこなわれた大阪プレイベントで、翻訳者はどのようにして仕事を受けているのか?どう自分を差別化しているのか?のようなテーマでパネルディスカッションが行なわれました。私の記憶では、当時は「エージェントを通じて仕事を取ってくるのが基本モデル」というのが多くの方の共通見解で有ったように思います。

そのためか、「直クライアントの獲得についての提言」が明確になされたのにもかかわらず、お一人が「翻訳エージェントになるつもりはない。」という趣旨の発言をされ、各パネリストの発言も付き合いのある複数エージェントとのつきあい方を話されたに終始していました。

2.現在の翻訳者の意識
ところが、今回のMLでの反応はおよそ下記のような内容です。
  • 翻訳者やその他の集まりに顔を出し、自分を知ってもらい個人的なつながりをもつ。
  • 自分の差別化要素をアピールできる情報共有サイトに登録する。
情報共有サイトはいくつか具体的提案までなされ、返信者も同じようにビジネス獲得に苦労された様子が分かります。(同じ仲間が頑張れるように…と非常に有益な情報を惜しみなく出されること、心から尊敬します。)しかし、この2つによって個人翻訳者が多くの翻訳者を抱える翻訳エージェントの目に止まることは非常に考えにくく、行き着く先はやはり直クライアント(直ビジネス)の確保だと言えないでしょうか?

3.現状認識を裏付けるデータ

そんな中、タイミングよく日本翻訳者連盟のJTFジャーナル2014年7/8月号*が発行されており、その中にも大変興味深い数字が提示されていました。(http://journal.jtf.jp/files/user/pdf/JTFjournal272_2014jul.pdf

2014年JTF定時社員総会基調講演「日本翻訳産業の実態〜でJTF理事として登壇された井口耕二さんの講演内容として紹介されている下記の文章です。
受注方法については「翻訳会社から」 が 86.7%であるのに対し、「ソースクラ イアントから直接」が 38.2%と示され ている(複数回答可で重複あり)。ソー スクライアントとの直接取引のきっかけ については、「知人の紹介」が 48%、「以 前からの知り合い」が 43%と圧倒的な 数値を示している。「営業」が 12.7%を 示していることについては、翻訳会社の 営業力の強みが感じられるとの指摘があった。「翻訳マッチングサイト」と「SNS 経由」がそれぞれ 8.6%を示しているこ とについては、インターネット普及の効 果かが見られるとしながらも、意外に低い 数値てであるという印象をもったとの発言 があった。
フリーランス翻訳者をどう定義した上でのアンケートであったかまで確認していませんが、多くの「翻訳者」が直接クライアントを持って稼働していることが分かります。

4.通訳者の意識とこれからのビジネスモデル
一方、通訳業界はまだまだ日本では「エージェント対応モデル」でビジネスをしている通訳者がほとんどです。昨今レート崩壊が叫ばれる翻訳業界に比べると、レートを初め通訳環境を保護する観点から通訳エージェントがこれまで日本市場で果たしてきた功績が大きいため、通訳者とエージェントが強いつながりをもっている事が理由と考えられます。

しかし同時に、海外のエージェントを通じた仕事、国内・海外のお客様からの直接アプローチを受ける機会がじわりじわりと増えているのを身を持ってここ数年感じています。そういう状況の中で「生き残るエージェントはどこなのか?」さらに、フリーランスとして「エージェント対応モデルだけで生き残れるのか?」通訳者も真剣に考えるべき時期に来ているように感じました。

5.フリーランスは自営業
そもそもフリーランス(自営業)という職業を考える時、そのお客様が実は全て仲介業者(エージェント)であるということが少しイレギュラーであったと考えるべきかもしれません。よく言われることですが、フリーランスとは”技術職能を持つ人間であると同時にビジネス活動の主体である。”ということを、今一度肝に銘じる必要が今後よりいっそう出てきそうです。

*JTFジャーナル
どなたでも無料でDLして購読できます。
今号はこの他にも翻訳レートについての考察などとても興味深い内容になっています。

2014年7月5日

25. 通訳学校では教えてくれないコト ー 不安をマネージする 後編

3.「自分の実力」を知る(認める)
ただし、上記で上げた項目では、上から順番に「プロとして市場で稼働できる実力あり」を前提に考えられる選択肢となっていて、最終的に受け入れるのに辛いことかもしれませんが「実力が足りない。」という原因も4.として除外できません。

自分の「技術」を活かして仕事を始めたいと考える時、果たしてその「技術レベル」が市場でお金に還元できるものか?が「仕事にできる/できない」の大きな判断基準になってくるでしょう。ですが、すべての技術系の職業人がプロの域に達してから仕事を開始しているかというと、正直なところそうでない場合がほとんどです。なぜなら技術は訓練で完成に近づき、経験を積み重ねるからこそ独自のスキルが身につくからです。

自分が思うだけの実力が自分にないことを知り認めることは辛いことです。しかし、仮にそうでならそれを認めて戦略を立てるしか有りません。無意味に「不安」な状態を継続したところで、世界の終わりはきませんから永遠に不安と戦う辛い状態が続くだけです。そしてその判断は自分にしかできないのです。

4.自分で判断する。
「自分の技術レベル」は自分で判断する」しか方法は有りません。それは「キャリアのどのステージにあっても」です。そしてその「自分で判断する。」という事こそ、ビジネスの主体として翻訳者通訳者自身が責任を持って行うべき業務なのです。

例えば、通訳としての訓練は通訳学校で勉強することもそうですが、ある程度レベル的に及ばない事を納得づくで低レートの派遣社員として職場を得ることもできるでしょう。ですが「いつフリーランスになるか?」「プロで食べて行くか?」は誰かが教えてくれるものでは有りません。

会社組織に属していれば通訳翻訳者が組織内で使える存在かどうかを、周囲の人の評価から知ることができるかもしれません。しかし、彼らの判断は市場価値という観点から見た「使える/使えない」の判断であり、技術職能を「売り」とする通訳者翻訳者としてやっていく中で一つの指針にはなっても、技術レベルとして自分がどこにいるかの判断基準には本質的になり得ないと考えるのが適当でしょう。

つまり、翻訳や通訳の職能技術に明るくない人からは、自分の実力レベルを知る上で有効な情報やヒントを得られないということであり、裏返せば同業者(一切のエージェントを含みません。)に当たればそれらが得られるということです。

5.仲間を持つことの意義
そうかもしれないけど
違う気もする…
もうお分かりかと思いますが、フリーランスは孤独と思われがちですが、常に孤独なわけでは有りませんし、そうであっては実際ビジネスは成り立たないということなのです。

もちろん、孤独に言葉と向き合いコツコツと自分の中に力を積み上げていく作業は必要です。しかし、多くの仲間を得ることで、仲間から翻訳通訳スタイルやテクニックを学ぶ事ができます。さらに、実はそうやって技能レベルを高めるということ以上に、派遣フリー立場を問わず、仲間を得るということはビジネス上「自分で判断する力」を養う上で重要なことであると認識しましょう。

何より、同じ翻訳通訳に魅力を感じて集まる仲間と共感し合える事は、大きな喜びです。不安も共有した上で建設的に解決するための智恵を仲間が分けてくれるはずです。

私自身も仲間のお陰で切り抜けた場面が数えきれない程ありました。そして、エラそうにこんなブログを書いている私でさえ(ごめんなさい、エラそうで…)、仲間に支えられながら不安と向き合いフリーランス通訳翻訳者として頑張っていることを書き添えておきます。

2014年6月28日

25. 通訳学校では教えてくれないコト ー 不安をマネージする 前編

キャリアを重ね技能を高めていく過程で「自分の実力(これからの伸び代も含め)で将来やっていけるのだろうか?」と誰もが不安に思うものです。私もかつては通訳志望の通訳学校の生徒、派遣通訳者を目指したバイリンガルセクレタリー派遣社員、嘱託契約社員を目指した通訳派遣社員、そして駆け出しのフリーランス通訳者でした。それぞれの段階で「職が得られるのか。」「派遣期間満了後はどうするのか。」「フリーランスの仕事が途切れたら…」と不安は尽きませんでした。

1.不安と向き合い現実を見て戦略を立てる
「不安」は誰にでもあります。しかし、その不安をマネージできてこそ初めて本当のプロといえるのかもしれません。では、「不安をマネージする。」とはどういうことでしょうか?

私個人を振り返ってみると、止めずに不安と折り合いをつけながら続けてこれたのは、「通訳者翻訳者としてやってきたい。」という意思が強かったこともありますが、それ以上に「なるためにどうするべきか?」を市場の情報を集めながら自分の中で分析して戦略を立ててきたからだと思っています。

ホントかよ…!?
「仕事の依頼が途切れたら…」というのは、新米フリーランスのみならずある程度経験ある通訳者翻訳者でさえ必ず陥る不安です。でも、そこでただ仕事を待つ時間は、不安な時間の継続に他なりません。不安な時間を回避、終了させるには「仕事が途切れるのはなぜか?」を客観的に分析することから始めましょう。



2.仕事が途切れる可能性ごとにに対策を考える
まず、途切れる原因は可能性として以下が考えられます。
a) (実力に対して)レートが高すぎる。
b) (実力を理解する)エージェント/クライアントにリーチできていない。
c) (実力に対して)レートが低すぎる。
d) 実力が足りておらず、市場で通用しない。
a) は、機械翻訳(使えるかどうかは別にして需要があるのは確か)やクラウドソーシングと行った翻訳ビジネスの台頭で、市場での価格圧力は翻訳者自身が一番感じていることでしょう。エージェントから価格を下げるよう、正面から求められるケースもあるようです。しかし、レート下げに応じるということは、そのレートでこの先も「できます。」と宣言することに他なりません。かつてそのレートで仕事がもらえていたのであれば、価格下げ要求に応じることは自分のブランド低下を意味します。慎重に対応しましょう。そうなると、考えられるのが登録エージェント/クライアント数の少なさの問題です。

b) に対処するには、その逆を貼ればいいわけですから比較的対策は簡単です。
  • トライアルを受けて登録エージェントを増やす。
  • 自分を知ってもらう努力をする(翻訳通訳関連サイトへの登録)
  • 通訳、翻訳者関連の技能グループへ所属する。
  • 得意分野のトピックの展示会や商談会へ足を運ぶ。
お住まいの地域の産業の特色を考えればもっとやり方はあるかもしれません。

c) は可能性として考えにくいですが、登録エージェントが少なく、しかも登録しているエージェントが求める通訳者レベルが高い場合は「レートが低いということは質の低い翻訳者である。」と判断される場合が考えられます。エージェントが仕事を依頼する時の一番の翻訳通訳者選択における判断基準は、レートです。しかし、多くの登録者や案件数を抱えるエージェントはわざわざ登録翻訳通訳者のバックグラウンドまで目を通して果たして依頼する相手を選んでいるでしょうか?

これは自分の経験値ですが、レートの上昇と共に明らかに「仕事の質」は上がったと思います。翻訳では社内文書や社内マニュアルなどのマテリアルを当初依頼されることが主でしたが、レートが上がってくるとより公の目に触れるものや、専門知識が求められる物に依頼内容が変化しました。また、通訳でも社内通訳にスポットで入るようなものが当初主流でした。資料もさほど出てきません。しかし、レートが上がると共に、客先の社外的にも重要な会議、社内会議でもエグゼクティブレベルの会議。そして、確実な準備作業が求められ資料も揃ってくるような大人数を集める講演会通訳、特定分野の国際会議などが増えるなどの変化がありました。

そう考えれば、自分の実力と経験にある一定の自信が持てれば、思い切って「レートを上げる。」と言うのは戦略として大変有効だと言えるでしょう。

2014年6月15日

「機械翻訳の威力」と「人間翻訳の威力」

通訳や翻訳という職業は、テクノロジーが発達すれば要らなくなる…というのはもう数十年前から言われていることですが、これだけ科学の進歩が目覚ましいにもかかわらず、幸いそうした現実は訪れてはいません。

とはいえGoogle翻訳、Excite翻訳など、いわゆる「機械翻訳」と言われるものはもう随分一般に普及しており、個人利用のためにこうしたサイトを使う人が少なくないのは周知のとおりです。

しかし、この機械翻訳は必ずしも個人利用にとどまっているわけではなく、翻訳業界へもじわりじわりと進出しつつ有ります。実際、原文がある一定のルールに従って書かれたマニュアルのようなものであれば、機械翻訳の訳文も悪くない精度で上がってくることがあるようです。

それでもやはりまだ人間による手直し、最終チェックは必要で、その際のチェック編集作業のことを「ポストエディット」と業界では呼んでおり、この「ポストエディットのお仕事」という名の案件を耳にするようになったのはここ二年程ではないでしょうか?

そういう時代だからこそ、翻訳者も人間翻訳だからこそ出せる「原文の深い読み込み」「訳文の精度」をより追求すべきであり、機械にできるレベルをこなしていたのでは、商売にならなくなるのは時間の問題だと言えます。

そこで「機械翻訳の威力」と「人間翻訳の威力」の例を考えるのに相応いとも言える動画を見つけたので、どうぞお楽しみ下さい(笑)

「機械翻訳の威力」


「人間翻訳の威力」


まぁ…どちらも極端な例ですが(笑)

ですが、人間翻訳では原文の理解もさることながら、ターゲット言語(この場合広島弁、笑)を知ることでここまで広島人に訴えかける訳文に仕上がるわけです。(博多弁バージョンはこちら)広島弁を知らない翻訳者に「広島がわやなんよ」の訳文は絶対に無理です。そして、これは機械翻訳には逆立ちしたって出きっこない、まさに「人間翻訳」がなせる技。こういうの目指したいですね。


そして…
ピースリンク通訳事務所では広島弁も扱えます。ご要望に合わせ、旧市内、西条、呉方面それぞれの微妙な言葉の使い分けにも対応できます(笑)

2014年6月8日

24. 通訳学校では教えてくれないコト ー キャンセル規定見てますか? その2

前回は、エージェントによってキャンセル規定が大きく異なること、そしてキャンセル規定の重要性と留意点について見てみました。今回は、キャンセル規定を理解した上で、仕事の受け方を考えてみます。

1.確定案件、仮案件の意味
通訳案件が入ってくる場合、これはもうお約束と言っても良いかもしれませんが、業務日まで日にちのある場合に「確定案件」で話が来ることはほぼなく、まずは「仮案件」として抑えて欲しいと言われることがほとんどです。基本的に、案件確定してから「キャンセル規定」が適用されるます。

ですから、案件打診の段階から各社のキャンセル規定をある程度頭に入れ、受けるか受けないか決めることは割と重要です。なぜなら「確定案件」であっても、キャンセル料金が発生するタイミングに入ってこない限りは、通訳者にとっては本当の意味での「確定」では無いからです。

2.各エージェントの案件依頼時の傾向を把握する
そこで、知っておくべきは各エージェントの傾向でしょう。下記は前回上げたエージェントのキャンセル規定にそれぞれ依頼の傾向を追加してみたものです。
【エージェントA】
打診頻度は時期によりまちまち、打診は早い時期にあてっても直前まで確定しない。
1日前~当日 合計の100%
5~2日前 合計の60%
※キャンセル日は、土日、祝日を除く営業日数で計算いたします。

【エージェントB】
打診頻度は低いが、仮案件で入ってきてもほぼ確定に結びつく。
当日/前日 100%
2,3日前 50%
4~5日前 10%

【エージェントC】
打診は頻繁にあり確定時期も早いが、直前キャンセルが多い。
前日 100%
前々日 50%
3日前 25%

【エージェントD】
打診頻度は頻繁ではないが、比較的複数日案件が多い。仮案件はまずまず確定に結びつく。
当日/前日のキャンセル: 100%
前々日/3日前のキャンセル: 50%
4/5日前のキャンセル: 30%

※上記日数表記は原則営業日換算ですが、土日、祝祭日業務の場合はその都度取り決めさせていただきます。 ※終日案件が半日案件になった場合、差額分がキャンセレーションの対象になります。 ※各種拘束費のキャンセレーションについては、その都度ご相談させていただきます。
このように、エージェンの案件依頼傾向とキャンセル規定を見るだけでも、それぞれのエージェントがどういう信条でビジネスをやっているところかが見えてこないでしょうか?例えば…

エージェントAはキャンセル規定は割と寛大な内容ですが、確定をなかなか持ってこない。それをある程度彼らサイドの保険としていることろがあります。こうしたエージェントは場合によっては案件が確定していても、レートの安い通訳者が見つかるのを待って(もちろん、そうとは告げずに)案件キャンセルを連絡してくるところがあるので要注意。

さらにエージェントCは案件は多く抱えているようですが、客先要件のためか変更キャンセルが多いようで、あえてキャンセル料発生タイミングを直前にすることで、自社リスクを最小限に抑えようとしています。つまり、その分のリスクは通訳者が取らなければならない構造です。

エージェントBとエージェントDについては確定に結びつきやすというのは通訳者にとっては大きな信頼感につながります。通訳者の顔を一人一人意識してビジネスをしていることが分かります。

3.仕事を受ける順序を考える
例えば、エージェントCから2ヶ月先迄の日程で「空いてる日程」を全部教えて欲しいと言われました。あなたならどうしますか?この「空いている日程を教えて欲しい。」攻撃…(笑)皆さん、安易に教えていませんか?これは通訳者の稼働状況や、どの位お仕事を欲しがっているかなど、相手に手の内をすべて明かしてしまうのも同じことなのです。経験上、通訳者を尊重してくれるエージェントであれば個別にそうした問合せを入れてくることは、ほぼ有りません。

通訳者には仕事の内容を見て、仕事を選ぶ権利があることを認識しましょう。もし、このエージェントCの要望に応え空き日程をすべて確定として抑えられてしまい、軒並み4日前にキャンセルされてしまったら…!大変なことです。

或いは、複数日をエージェントAやエージェントCに仮で抑えられる場合には、その期間に一日でも別エージェントからオファーがあった時には受けられない場合も出てきます。割と頻繁に打診をしてきますし、直前案件も沢山抱えているらしいことから早い時期に日程をこの2つのエージェントで抑えるのにはリスクが伴います。

むしろ、エージェントB、Dからの打診をしばらく待ってみて、埋まらない隙間をバランスよくエージェントA、Cで埋めるということを考えるのが得策でしょう。

通訳者側がエージェントを評価するという視点を持つことは大変重要な事です。もちろん、繁忙期にはお世話になっているエージェントのちょっと無理目のお願いも頑張ってみる!というサービス精神も必要ではあります。が、ただ「仕事をもらう。」のではなく「仕事を選んで取ってくる。」という姿勢は持っておきたいものです。

案件が埋まらず、空いているスケジュールを見ては不安になる気持ちは誰もが経験するところです。しかし、「武士は食わねど高楊枝」とまでは言いませんが、いい仕事を選んで、着実にこなし、お客様からよいフィードバックをもらうことこそが、エージェントからの評価にも自分自身の自信、ひいてはレートアップにつながることをしっかり認識しておきましょう。

2014年6月1日

23. 通訳学校では教えてくれないコト ー キャンセル規定見てますか?その1

フリーランス通訳のお仕事形態としてはエージェントモデルが主流です。かくいう私も自分の売り上の多くをエージェントからの仕事が占めていますが、おそらく東京で常時稼働の通訳者の中には、ほぼ100%がエージェントとの取引ではないかと考えています。

めまぐるしく動く東京のビジネスシーンでは変更も度々です。そんな中、意外と皆さんエージェントのキャンセル規定は注意していないことに気が付きました。私が契約するエージェントのキャンセル規定を四社程調べてみました。

1.各社キャンセル規定の違い
以下はいずれも案件確定連絡後に適用されるキャンセル規定です。
【エージェントA】
1日前~当日 合計の100%
5~2日前 合計の60%
※キャンセル日は、土日、祝日を除く営業日数で計算いたします。

【エージェントB】
当日/前日 100%
2,3日前 50%
4~5日前 10%

【エージェントC】
前日 100%
前々日 50%
3日前 25%

【エージェントD】
当日/前日のキャンセル: 100%
前々日/3日前のキャンセル: 50%
4/5日前のキャンセル: 30%

※上記日数表記は原則営業日換算ですが、土日、祝祭日業務の場合はその都度取り決めさせていただきます。 ※終日案件が半日案件になった場合、差額分がキャンセレーションの対象になります。 ※各種拘束費のキャンセレーションについては、その都度ご相談させていただきます。
2.キャンセル規定の注意点
見比べて分かる通り、前日および当日キャンセルの場合は100%というのは業界標準のようです。ですがそれ以外は各社まちまちで、中には3日前にならないとキャンセル料が発生しないものが有ります。さらに、営業日で計算する規定のあるエージェントもあります。

実は実際にキャンセルされてみて「そういうことだったの!?」と驚くパターンは少なく有りません。例えば…
1.キャンセル規定をそもそも確認してなかった…。
2.営業日計算の規定はないのに、実は営業日計算。
3.複数日案件が一気にキャンセルの場合でも、一日単位ごとの保障
4.「案件ごとにご相談」対象の案件だった…

1.は無いだろう…と思われるかもしれませんが、意外とこちらからお願いしないと提示してくれないエージェントもあリます。例えば、上述のエージェントCがそうでした。先方にしてみれば積極的に出したい内容ではないですね(笑)

2.についても明記が無い場合はこちらから確認しておく方が無難でしょう。

3.は一番痛いパターンです。例えば1週間フルで抑えられた案件が案件3日前にキャンセルになった場合、上記エージェントCを除くエージェントでは一週間の1日目のキャンセル料は発生します。しかし、2日目以降はどうでしょう?多くの場合は発生しないことがほとんどですが、通訳者にしてみれば抑えている一週間の仕事がすべて無くなる訳ですからこれはかなり痛い…という事になります。

そうならないためにも、長い案件を受けるときには4.を踏まえて、個別にキャンセル規定がどのように適用になるのかを予め確認しておくことは大変重要です。そうすることで、対象案件が4.の「ご相談」案件だったとしてもダメージを最小限に防ぐことが可能となります。

2014年4月28日

「米大統領尖閣発言 訳語の食違いは許容範囲?」

先日のオバマ大統領来日では、「二郎で寿司」を食べたことが何故かどこでも一番の感心事の様に取り上げられ、一部では二郎を「ラーメン二郎」と勘違いするような残念な…というか呆れた人たちも出てきたかと思えば、たかだか数万円のお寿司を国賓に振舞ったことを贅沢だと言い出す人たちもいて…何だか日本は大丈夫なのか?と思わずにはいられない…そんな出来事のオンパレードして、オバマ大統領来日は私の中に記憶されてしまいました。

その内の一つが下記の報道する側の姿勢です。内容をご存じの方であれば、報道機関は国民が耳を傾けるべき内容をわかりやすく正確に報道して欲しいとより強く感じたに違いないでしょう。(「二郎の寿司」よりも大事な事は沢山あります…。)

"profound mistake"を”正しくない”と通訳者が訳したとのこと。"profound..."という言葉は私にはとても強く響きます。もしかすると、権威ある人物の発言で激しく言い切ってしまうことを通訳者が躊躇したのかもしれません。しかし「正しくない」はやはり弱すぎると個人的には感じます。

ですがこの報道の中で問題なのは、通訳がどう訳したか?ではなく、文字にして報道する新聞各紙までもが「正しくない。」としたことです。音声を書き起こして、そこから正確な翻訳をすることが新聞であれば可能であったはずにもかかわらず、それを行ってない(通訳の訳に頼った?)のは怠慢以外の何者でもないのではないでしょうか?
米大統領尖閣発言 訳語の食違いは許容範囲?
一方で、オバマ大統領は、会見の中で尖閣問題の平和的解決の重要性に繰り返し言及。この点に関し、多くの主要メディアは、オバマ大統領が安倍首相に「事態がエスカレートし続けるのは正しくない」と述べたと報道していたが、朝日新聞と共同通信は「この問題がエスカレートし続けるのは大きな過ちだ」と述べたと伝えていた。
日本報道検証機構 GoHoo から抜粋
 話は変わりますが、ハリウッド俳優で中年の星(笑?)ジョージ・クルーニーが人権活動家の弁護士と婚約したと日本の報道機関も伝えています。でも、その報道の仕方を見て驚くのは「アメリカの◯◯誌が伝えたところによると…」と枕言葉が付いていることです。たかが芸能人の婚約でしょうが、日本の報道機関で裏をとった上で彼の婚約を報道しているところは果たしてあるのかしら…と呆れてしまいました。

日本の報道機関、本当にこんなことで良いのでしょうか?海外が伝えた内容をつぶさに検証、裏取りの努力をすることは報道機関として当然あるべき姿でしょう。情報ソースを現場に近い報道機関に頼る事があるのは、取材の厳しい環境・内容で有ればやむを得ないのかもしれませんが、それでも情報の伝達(翻訳)はできる限り正しくあることを担保できるような体制を整えるべきでは…?と思います。


2014年4月11日

簡易同時通訳機器(その5:自前で揃える)

通訳者の苦悩…
通訳現場に行ってみたところ、ウィスパリングと聞いていたのに聞かせる人数が3人以上でとても苦労した…とか、会場の都合等で「簡易通訳機器がないために通訳者が厳しい環境で通訳することを迫られた。」という状況をすべての通訳者は経験していると断言できます。

そういう状況が起こらないよう、手配をする人間(多くの場合エージェントコーディネータ)はエンドクライアントに出席者、会場、会議の運営形式について詳細なヒアリングをかけ、場合によっては会場まで出向いて行って状況を確認します。しかし、会場へ足を運べない事情があったり、当日の突然の変更により状況が一変し、上記のような苦しい通訳を迫られるということはどうしても発生してしまいます。

「自前で通訳機器を持つ」という選択
フリーランスになった当初にパナガイドを自分で購入することを検討していましたが、これまで様々な要素を考え見合わせていました。なぜなら、通訳者が自分の簡易通訳機器で自ら環境改善を行うことができる一方で、その事実による次のような幾つかの弊害を考えたからです。

レシーバーの数を一定数揃えようとすると莫大な初期投資がかかり、実質的な投資回収が不可能で、回収しようと思えばレンタル業でもするしかなくなります(笑)それは面倒…。その他、勝手な機器持ち込みでお客様に無料手配と勘違いされ、エージェントに叱られる…とか、細かいことを考えればいくつも有ります。

実際、機器は購入するには大変高価なものです。仮に送信機2機、受信機10機を想定するだけでも数十万。ところが、先日ご一緒した自前パナをお持ちのパートナーに話をお聞きして、この前提が間違っていたことに気付きました!彼女は「現場で自前パナに助けられた事は数知れず!」と仰っていました。そして、あくまでも「通訳者が困らない前提」で考えれば、送信機 2機、受信機 3機程度で十分なはずだということに気付きました。
自前調達に妥当と思われる機器数> 送信機 2機、受信機 3−4機
受信機はウィスパリングは通常二人まで、三人以上へは非常に難しいことをベースで考える。送信機は、生耳でスピーカー音声を拾うリスク回避のため、スピーカー用にも1機で合計2機。
豆知識>ステレオスプリッター
受信機のイヤホン挿入口に差して、イヤホン二本を差し込み可能にし、受信機1機で二人をサービスできます。
私が持ってるのはコレ。生産終了してるとか…悲
他にもいろいろ有りますが、プラグ差し込み口がケーブルになっているタイプの方が使い回しが効きます。会場用意の音声設備へのプラグインで上記のタイプでは本体が邪魔して入らなかった経験が…。

 参考: http://p.tl/XEug

誰のリスクか…?
依頼書をもらった時点で怪しい…と思われれば、計画段階でコーディネーターに現場環境を詳しく聞いた上で機器準備をお願いするのは大前提。それでも、現場で全く無茶な同時(ウィスパ)通訳環境であるのが判明した際には、お客様に状況をご理解頂いた上でコーディネータにヘルプ要請(機器手配をお願い)するしかないでしょう。

また、「多くの受信機」を自前で準備してお使い頂くと「無料で手配」だと逆にお客様に勘違いさせてしまう…ということにも気付きました。実際、「多くの人」へ通訳サービスが行えない(「多くの人」が通訳サービスを受けられない)リスクを通訳者がカバーする立場にありませんし責任もありません。「通訳者は自分が気持ちよくサービスができる。」という一点において自前の簡易通訳機器を持てばよいのです。

****

劣悪な通訳環境に影響を受けるのは、本来あるべきサービスを受けられない「お客様」…ですが、実は通訳者自身も非常に苦しい思いをするということは見逃されがちです。

私達通訳者は機械ではありませんから、お客様に通訳を聞いて頂いてはじめて通訳者として仕事をしたといえます。誰も聞く人がいないところでぼそぼそ機械のように通訳することを「平気で」できる存在では有りません。環境が悪ければ、聞きづらい、訳しづらい、役に立てているのだろうか、そして「申し訳ない…」という気持ちを持ちながら通訳をすることになります。

自前の簡易通訳機器を持って自らの手で環境改善をはかることができ、気持よくサービスを行いお客様に喜んでいただけるのであれば、フリーランス通訳者にとって「自前の簡易通訳機器を持つ」という選択は大変合理的なことだと今は思っています。





お客様のご要望により簡易通訳機器に限らず必要な通訳設備をご用意することが可能です。

ピースリンク通訳事務所

2014年4月4日

簡易同時通訳機器(その4:デジタル機器)

前回までで解説した通り、従来から広く使われているアナログ機器での対応チャネル数は最大6チャネルまでです。ところが困ったことに海外の客様から、分科会を4つ平行して開催しそれぞれに日英同時通訳で2チャンネル合計8チャンネルを使用して会議を進めたい、とのご要望を頂きました。

そこでいつもお願いしている機器サプライヤに尋ねてみたところ、従来のアナログ機器では対応できるものがないが、デジタル機器で対応可能なものがあると教えてくれました。「トラベルイヤホン」という商品名です。この商品は前回確認した電波法の中のB帯を使用するものです。


  1. A帯: 要ライセンス取得 テレビの番組中継波等として使用。
  2. B帯(700MHz~800MHz): 混信の可能性が高く使用にはリスクが伴う。音質はA帯と変わらない。ただしA帯とは異なり許可制ではないので自由にチャンネルを設定できる。
  3. C帯(300MHz): B帯同様に混信の可能性があり。音質はA・B帯より劣るようで電波の飛び(距離)は波長が低いため一般的に長いとされる。(パナガイドやTOA社製品が使用しているのはこの帯域です。)

以下のような利点、難点(特徴)があります。

【利点】
  1. B帯使用のため、好都合なことにアナログ機器との併用でも干渉は発生しません。(通訳機器以外の電波発信装置、例えば会場設置のワイヤレスマイク等との干渉確認は必要でしょう。)
  2. 同時使用可能チャネル数が16チャンネル!
  3. 機器が軽い。
  4. 海外の電波法に合わせて設定変更が可能なため、海外持ち出しも可能。
  5. レンタル料金が従来型簡易通訳機器と比較して圧倒的に安価。

【難点】
  1. デジタル操作のボタンを押してチャンネルを調節しますが、チャネル操作感に欠け操作しにくい(実際に業務で使用経験のある方の感想)。
  2. 多くの日本の通訳者は使用経験がない。
  3. レンタル業者数が限られているため、必ず予約可能とは限らない場合も…。

具体的なレンタル価格や業者については言及を避けますが、サービス業者は検索すれば直ぐに見つかります。私自身実際に行って実機を触って確認しましたが、機能上はまったく問題ありませんでした。

【レンタルの際の留意点】
レシーバーの視聴機器のデフォルトは「(消毒済の耳穴挿入タイプ: 写真参照)イヤホン」ですので、パナガイドに慣れているお客様向けにはレンタルの際に「耳たぶ装着式のイヤホン」を指定することをお忘れなく。

***

実は随分前にもパナガイドについての記事を書いています。その中で、携帯電話、スマートフォンのような小型機器が出てくるにも関わらず未だパナガイドやTOA機が主流を占めていることに疑問を投げかけていたのを思い出します。技術の進歩によりもっと安価に、もっと便利にこうした機器は使えるようになるはずです。

今回は簡易通訳機器についてでしたが、技術の進歩は電話会議システム、テレビ会議システムにも及んできています。将来的には国際会議級の会議でも、現場に足を運ばなくとも通訳を聞きながら出席することは十分可能になるはずです。実際には技術はすでにそこにあっても、使う側が追いついていないことを認識し、通訳者もそういう時代にどう対処するべきかを考えておく必要があるでしょう。

しかし、設置型のシステムについては企業としては償却の必要があるためか、なかなか新しい物に出会うことは稀です。そんな中、通訳者が個人で簡易通訳機器を持つことの意味を、次回は考えてみたいと思います。 

2014年3月24日

広島通翻 Let's お花見2014 in 広島

4月6日(日)に広島平和記念公園でお花見をします!

通訳翻訳に興味のあるかた、気軽にご参加下さい。お昼から集まって夜までグダグダします(笑)詳しくは下記のPeatixページに情報が有ります。アンケートに答えるのをお忘れなく!(ちなみに、「チケットを申し込む」となっていますが、出席者集計のためだけで、会費は現地徴収となります。)お昼だけ、夜だけの参加も可能です。

お昼の部ではオードブルを注文し、あとはちょこちょこ買い出し、夜の部は近隣の居酒屋へ移動します。本の交換会も実施予定!

ご質問あれば、遠慮無く私までお問い合わせ下さい。

Peatixサイト: http://peatix.com/event/32513/view

2014年3月19日

映画『ドストエフスキーと愛に生きる』

先日は、戦火を逃れて厳しい時代の中で「赤毛のアン」の翻訳を手がけた村岡花子をご紹介しましたが、今回は同様に戦時を生き抜いた翻訳者スヴェトラーナ・ガイヤーを追った作品「ドストエフスキーと愛に生きる」をご紹介します。2月22日から東京で公開されています。

広島ではサロンシネマで「近日公開」となっていますが、公開予定作品の中にはまだ入っていないようです。私もまだ見ていないのですが…。

最近、翻訳という職業に少し世の中の興味が集まっているのかな…と思います。出版翻訳者に限られるのかもしれませんが…。文章が時代を超えて広く読み継がれるのは、時にたった一人の翻訳者によって発掘(翻訳)されたからです。翻訳者がどんな風に原文を読み発掘(翻訳)していくのか興味をそそられます。

****
84歳の翻訳家スヴェトラーナが織り成す、
深く静かな言語の世界と、紡がれる美しい言葉たち。
ドストエフスキー文学と共に歩んだ一人の女性の、
数奇な半生を追ったドキュメンタリー。



***
今回の映画劇場公開に合わせて、webDICEというサイトでは文芸翻訳家9名にインタビューをしています。経歴もお人柄も人それぞれ。その中でも柴田元幸さんと、鴻巣友季子さんはひときわメディアにお出になっているように感じます。お二人はオシャベリも大変面白いです。ご興味のある方はPodcast 「学問のススメ」で試聴できます。

言語をほどき紡ぎなおす者たち───海外文学界の第一線で活躍する翻訳家9名の仕事場を訪ねて vol.1 <柴田元幸/きむふな/野崎歓>
文芸翻訳家たちに訊いた“翻訳”という営為の魅力
http://www.webdice.jp/dice/detail/4096/


言語をほどき紡ぎなおす者たち───海外文学界の第一線で活躍する翻訳家9名の仕事場を訪ねて vol.2 <野谷文昭/松永美穂/飯塚容>
文芸翻訳家たちに訊いた“翻訳”という営為の魅力
http://www.webdice.jp/dice/detail/4112/


言語をほどき紡ぎなおす者たち───海外文学界の第一線で活躍する翻訳家9名の仕事場を訪ねて vol.3 <和田忠彦/鴻巣友季子/沼野充義>
文芸翻訳家たちに訊いた“翻訳”という営為の魅力
http://www.webdice.jp/dice/detail/4113/


2014年3月11日

簡易同時通訳機器(その3:アナログ機器の干渉・混信注意点)

前回まで見てきたように、同じメーカーの製品であっても干渉・混信の危険があることがわかったと思います。そのため、事前のチャンネル確認は割と重要なポイントといえるでしょう。それ以外にも当然と思われるものも含め、干渉・混信についてはいくつかの注意点が有ります

チャンネル使用上の決まり(?)

通訳がチャンネル切換しやすいようにチャンネルの割り当ては、隣同士のチャンネルを割り当てます。つまり、1ch-2ch、3ch-4ch…のような組合せです。「若い番号の方が必ず英語が常識」と社内通訳時代に言われたことが有りますが、フリーになってからは特に聞きません。指定のない限り現場でペアの方と相談して割り当てています。


異機種間の干渉・混信

また、TOA社製機器とパナガイドはチャンネルによって完全干渉します。つまり、完全互換があると言えます。社内通訳時代の同僚に確認したところ、受信機の台数が足りない時には、両社製の受信機を合わせて台数を揃えることもあるそうです。

干渉・混信についての注意点

代表的な上記二社製品について述べましたが、それぞれの機器を使っていても完全互換(完全干渉域)があるなど「必ず大丈夫!」とはいえず、大事な場面であればあるほど必ず事前確認を徹底することが大切でしょう。これを怠ったがために「当日現場で干渉・混信した…」となれば、機器を貸し出した側にも一定の責任が伴うからです。

さらに注意しなければならないのは、このパナガイドが非常に普及している製品であるために、自分が関わる会議以外でしかも近隣で同じ製品が使用されているケースが東京では少なからず発生するということです。

例えばホテルの会議場やオフィスビルの場合は、建物の構造や気象条件にも左右されるとは言うものの50M以上電波が届くことはめずらしくなく、会議が始まって混信を確認して慌てて不使用のチャンネルを探すはめになる…ことが残念ですが稀に有ります。

オフィスビルの場合は仕方がないですが、ホテル会議などの場合は使用チャネルを決めた上で、ホテル側に対して主催者を通じて予め「パナガイド使用の旨と使用チャンネル」を連絡しておき、後日設定の別会議では同チャンネル使用を回避してもらうなどの対策を講じることが有効でしょう。

電波法による分類

ここで、電波法による分類について簡単に見ておきます。日本では電波法により周波数帯域を周波数の高い順に次のように使い分けています。
  1. A帯: 要ライセンス取得 テレビの番組中継波等として使用。
  2. B帯(700MHz~800MHz): 混信の可能性が高く使用にはリスクが伴う。音質はA帯と変わらない。ただしA帯とは異なり許可制ではないので自由にチャンネルを設定できる。
  3. C帯(300MHz): B帯同様に混信の可能性があり。音質はA・B帯より劣るようで電波の飛び(距離)は波長が低いため一般的に長いとされる。(パナガイドやTOA社製品が使用しているのはこの帯域です。)

また、日本製の電波を発信する製品は日本の電波法に準拠して製造されているため、メーカーは基本的に海外への持ち出しを禁止しています。海外とは周波数使用帯域が異なる場合があるためです。

次回は、4グループ以上に同時通訳サービスを提供したい(8チャネル以上同時使用したい)場合に使えるデジタル機器についてです。

2014年3月6日

簡易同時通訳機器(その2:主なアナログ機器)

市場で利用されている一般的な簡易同時通訳機器として有名なものが2種類有ります。どちらもアナログ機器で機能的に大きな違いはありませんが、細かい注意事項があります。基礎知識として頭の片隅においておきましょう。

パナガイド(パナソニック社製)

(俗に「パナ」と呼んでます。)

チャンネル数が6チャネルあるものが一般的です。(2チャンネルの製品も有り。)しかしながら(意外と知られていないのですが…)メーカーの推奨使用条件では「同一エリアに於いては1ch~4chの4つを最大同時使用チャンネル」としているようです。細かいスペックで言うなら、2chー5ch、4chー6chのチャンネルペアではそれぞれ干渉の危険性があるとのこと。

ただ、完全に同一のチャンネルを複数の送信機で使用する場合よりも影響は小さく、1ch~4chと5ch〜6chの使用エリアが離れていれば受信機に対して近い送信機の電波が勝つため、この場合6チャンネル全てを同時に使用したとしても(例えば、1Fと3Fで1ch~4chと5ch〜6chを分けられれば)それほど深刻な影響は出にくいようです。

私は6チャネルをフルで使う場面では、安全策をとって必ず現場での事前確認を行うようにしています。ですが、個人的な使用経験からは、特に6チャンネル使っていて深刻な影響を検知したことはありません。

ワイヤレスガイド携帯型送信機/受信機(TOA社製)


こちらもチャンネル数が2−6までのものが一般的なようですが、最大では13チャネルタイプの物も商品ラインナップに入っています。しかしながら、同時使用可能チャンネル数は6チャンネルまでとのこと。注意しましょう。


個人的な使用感等

市場に出回っている数で言うと圧倒的にパナソニック社製パナガイドが多く、簡易同通機器の代名詞としてほぼ「パナ」という呼び方が定着しています。使用感も個人的にパナガイドの方が使いやすいと感じています。理由は、以下の二点です。

  1. パナガイドはチャンネル、電源・音量のツマミの位置が適度に離れていてつまみやすい。
  2. TOA社製はツマミ回転にパナガイドに比べてかなり力が要るので、回しすぎてしまう。
ただし、購入するのであれば若干TOA社製品の方が安く手に入るようですが、購入価格については大抵オープン(法人と個人で違うなど…)となっていますので、個別に確認されることをオススメします。

次回は干渉・混信についての留意点等についてです。

2014年3月2日

簡易同時通訳機器(その1:使用場面と特徴)

同時通訳機器を使う場面

一般的に同時通訳をする際には当然ですが、機材の助けを借りる必要が有ります。同時に同程度の音量で原発言と通訳発言を聞き取ることは不可能だというのがその理由です。その問題を回避するために利用する無線機器が同時通訳機器です。

大きな専用会議場などでは会場場備え付けの通訳ブースがあり、通訳者がオーディエンスの前に姿を表すことは殆んどありません。ホテルの会議室などの場合は、会議室の後方に簡易通訳ブースを設置して、オーディエンスから隔離された状態でブースに入って機材を操作しながら通訳することも有ります。オーディエンスは一人ひとり自分の受信機を持つか、比較的大規模の近代型会議場では、オーディエンス席に用意されているジャックにイヤホンを差し込んで受信するというシステムのところも有ります。

広島国際会議場 会議室ダリア常設ブース
この時は便宜上通訳機材が三台入ってますが、通常は二台です!

ですが、傾向として比較的小さなビジネスミーティングなどでも、いわゆる「簡易同時通訳機器」といわれる物を利用して同時通訳をすることが通訳を利用する立場のお客様にも好まれるようです。これは、逐次通訳と比べた時の同時通訳の時間効率の良さ、そしてウィスパリング通訳*と比べた時の同時視聴可能オーディエンス人数における効率とオーディエンス視聴の音声クオリティの良さが理由です。
*ウィスパリング通訳
通訳者が聞き手の耳元でささやくように通訳をすることからウィスパリングという名前がついています。聞き手が1-2名までに限定される場合に用いられる同時通訳です。通訳者はオーディエンスの後ろや横に座り、他の聞き手の迷惑にならない程度の小声で訳出します。簡易同時通訳機器を使った同時通訳(パナ同通と言ったりします。)をこれに含めることも有ります。

簡易同時通訳機器の主な特徴

機器は送信機(マイク/トランスミッター)と受信機(レシーバー)と呼ばれる2タイプの機器で構成されます。機能は至ってシンプル。送信機を持った通訳者が送信機マイクに向かって通訳し、受信機をもった人が通訳を受信し視聴するというものです。

その際、送信機・受信機とにチャンネルが装備されており、言語ごとに仕様者が割り当てチャンネルを決めて運用します。基本的には受信者が聞きたい言語は一言語のはずですから受信側では最初にチャンネルを合わせるだけで以降のチャンネル操作は発生しません。一方、通訳者側はターゲット言語ごとに設定されたチャンネルに切り替える作業を行います。

もっと具体的にいうと、事前に通訳者とオーディエンスの間で言語へのチャンネル割り当てを取り決めておき、例えば右下の図の場合だと通訳者は英語に訳出する場合はチャンネル2に合わせ、日本語に訳出する場合は1に合わせる。日本語オーディエンスはチャンネル1、英語オーディエンスはチャンネル2に設定する…といった具合です。

   

イヤホンですが、耳たぶにかけるタイプのものが一般的です。これは、多くの人が使いまわす際の衛生上のことを考慮して、耳穴挿入タイプになっていないと考えられます。しかし、はじめて使われる方はなかなか上手く耳にかけることができず苦労される場合もあるようなので、慣れないお客様の場合には最初に装着の仕方を説明して差し上げるのが親切かも知れませんね。



次回は一般的な簡易同時通訳機器について説明します。

2014年2月28日

「伝える極意」 長井鞠子 著

まずはじめに長井鞠子さん、NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀」にご出演のご案内です。
NHK総合テレビ
毎週月曜日 午後10時~10時48分 今と未来を描くドキュメンタリー
第225回 2014年3月3日(月)
言葉を超えて、人をつなぐ
会議通訳者・長井鞠子
http://www.nhk.or.jp/professional/schedule/index.html#20140303

東京出張からの帰りには品川駅を利用することが多いのですが、品川駅の新幹線改札を抜けるとホームに降りる前のスペースに新刊や雑誌をメインに扱う本屋が有ります。よくないな…と思いつつも、最近はハウツーものや情報収集のための読書に飽きてしまい軽い小説をかばんに入れていることが多いのですが、今読んでいるものがなかなか読み進まないので珍しく立ち寄ってみました。

出版予定であることは知っていたのですが、そこで見つけたのが会議通訳者の長井鞠子さんの「伝える極意」。「ぜひ読みたい!」というほどの期待感は無かったのですが(すみません…)偶然の出会いに何か「引き」を感じて購入。帰りの新幹線で一気に読みきってしまいました。

これまで、大学で教鞭を取る元通訳者、教師兼業通訳者による、学術的な観点から書かれた本や、トレーニング目的で書かれた本はずいぶんあったと思うのですが、考えてみれば実務通訳者が実務経験から自分のキャリアを俯瞰しながら「通訳」について語った本は大変珍しいのではないかと思います。

メッセージを発信することの意味、通訳がそれをどう捉えて訳出という作業に結びつけていくのかを、ご自身のキャリア内での経験を元に明快に綴られています。さすが半世紀以上の優秀な通訳としてのキャリアを持つ長井さんだけあり、登場する人物や会議名は錚錚たるメンバー。こうしたメンバーを個別に取り上げ、通訳の視点でとらえた「メッセージを伝えること。」を、スピーカー個人の性格や大衆へ与えた印象を分析しながら、丁寧に解説されています。

(以前ご紹介した原不二子先生の「通訳という仕事」がそれに近いと思いますが、原先生の本は「通訳」というよりもう少しご自身のキャリアに絞った形で通訳という「仕事」をお書きになったものでした。)

印象的だったのは、ご自身では努力するのは性に合わない…的なことを書かれていた事でした。お仕事をされる中で多くのことを楽しみながらやっているため、それを苦労とか努力とか思うヒマもなかった、というような爽やかな語り口。

ご家庭がありお二人のお子さんを持たれながらも、70歳になる現在まで最前線を走っていらっしゃる彼女。「性に合わない」と言い切れる強さは恐らくもともと彼女に備わっていたものかもしれませんが、やはりそれでも「爽やかに言ってのけること」が今おできになるには、彼女がご自身の通訳に対する情熱の火を灯し続けることができたからだろうな…と思うのです。

今の私が勇気を得た部分を引用します。仕事を持つお母様をお持ちの長井先生とは違い、私の母は専業主婦だったので、自分の感覚が「正しい」のかいつも迷っています。これを読んでもまだ今の自分の仕事のやり方が「私や私の子ども達にとって正しい。」ことなのかどうかはわかりません。でも「仕事か家庭か」ではなく「仕事も家庭も」という考え方は欲張りではない、とまた一つ自分に言い聞かせることのできる糧となりました。

第三章 通訳者の生活とその技術
p. 83〜
母が家にいることは、すごくうれしい。でも、だからといって母がいない日にさみしい思いをしているわけではありませんでした。それは、私にとっての「普通」の状態。「うれしい」の逆は「さみしい」ではなく、「普通」ということです。

こういった自分自身の体験から自分自身が母親となってからも「母親が仕事を持って、家にいない時間が多くても、子どもがさみしい思いをするわけではない」という確信が私にはありました。

2014年2月20日

【通訳翻訳WEBマガジン】寄稿

「プレゼンテーション・講演通訳の準備」についてイカロス出版主催の「通訳翻訳WEBマガジン」二回に渡り寄稿しました。 
通訳翻訳WEBマガジン】
プロが伝授!通訳スキルアップTips
1.「準備・ウォーミングアップ編」
2.「準備マジ(本気)トレーニング編」
どちらも、具体的に準備の仕方がわかるように動画を付けてもらいました。本当はもう少し詳しく解説したかったのですが、字数制限の関係で何だか駆け足に項目をできるだけカバーすることに努めたので、ちょっと無味乾燥な感じがするかもしれません。

他に「こんなやり方も有効!」という提案があればお寄せいただければ嬉しいです。


通訳翻訳WEBマガジン:
日本通訳翻訳協会(JAT)の通訳グループによるリレーエッセイ。多くの現場経験から実戦に通訳に使えるコツ・小技を伝授します。

2014年2月8日

「アンのゆりかご ー 村岡花子の生涯」 村岡恵理 著


 アンのゆりかご
日本語訳された外国文学は多数ありますが、それらを翻訳した人の生涯が取り上げられることは珍しいことです。村岡花子をご存知でしょうか?

カナダの小説家ルーシー・モード・モンゴメリの「赤毛のアン」と言えば、「アンの青春」「アンの愛情」…とシリーズで一人の女性の生涯をその日常生活で綴る名作で、日本人でも知らない人は珍しいほどに広く読まれていることは、わざわざ言及するほどでもないのですが、村岡花子こそ、その「赤毛のアン」の訳者です。

そして3月31日からNHKの朝の連続ドラマで「花子とアン」として彼女の生涯が放映されることが決まっています。これは花子の孫にあたる村岡恵理さんの手による評伝「アンのゆりかご」を原作として制作されます。

冒頭述べたように翻訳者の生涯にスポットを当てたもの…はあまりないことから、何となく気になり手にとってみました。これが…一気に読みきってしまいました。

考えてみれば当然のことなのですが、「翻訳者」であると同時に、女性として妻として母として、社会活動家として、また通訳としての生きた花子。その彼女が過酷な戦争を経験する同世代の同志達との交流の中で、生き生きと描かれていました。

訳書を多く残した「翻訳家」についての生涯とはいうものの、一人の人間、またその人間の感情に寄り添いながらも、一定の距離感を保って客観性を確保しながら、当時の厳しい時代背景との整合性を確認しながら書き上げていく作業はどんなに大変だったことかと思います。一人の「人間」の評伝として、彼女の強さ、優しさ、しなやかさが伝わるとても素晴らしい作品になっています。

花子自身の生き方に私なりに共感する部分も多かったことと、知識や情報収集の目的で読書をすることが増えていたので、久しぶりに人間の物語を読んで少しほっ…としています。久しぶりの作品が「アンのゆりかご」でよかった。やはり「人」を知ることはとても面白いことだ…と改めて思いました。

* 「アンのゆりかご」著者の村岡恵理さんは、6月21日-22日に開催されるIJET25で基調講演を担当されます。

2014年2月5日

IJET25申込み開始

JAT(Japan Association of Translators/日本翻訳者連盟)によるIJET25(第25回英日・日英翻訳者国際会議)東京大会が開催されます。

すでに申込み開始になっているようです。
詳しくは下記サイトまで!


2014年2月4日

ダボス会議で通訳による誤訳!?

通称ダボス会議、世界経済フォーラムに出席した安部首相のスピーチが問題になりました。国内外のメディアが大きく取り上げて、安部首相が第一次世界大戦前夜英独に現在の日中関係の『状況と似ている…』としたことが物議をかもしました。

結果的には外務省の調査で、通訳が総理の発言していない文言を独自の解釈で付け足したことが問題だとされ、通訳を手配したエージェントに厳重注意し、外務省内での優秀な通訳者要請が急務であろう…というニュースが流れて事態は収束しているようです。

コトの顛末については「IR通訳会社代表のブログ」で代表通訳者の丹埜段さんが丁寧にまとめたうえで、ご自身の見解について述べられています。その中でも下記は私も大きくうなずけるところです。
ダボスの通訳者に対する安易な批判は、それが「通訳という作業がいかに高付加価値であるかという事実に対する無知・無関心」に端を発している、という意味で、ダボスの通訳者一人ではなく、我々通訳者全員に対するものと考えるべきです。

ただ、担当通訳者は「悪くない。」ということは十二分に理解できるし同情もするのですが、一方「非が無かったか…?」という視点でみると、厳しいかもしれませんがそうとは言い切れないと私は思うのです。

担当通訳者は経験豊富な優秀な方だったに違い有りません。でも、そうだからこそ彼女/彼が訳出してしまった原発言にないセンテンスを加えることで、「確かに」しかし「背後に」流れているコンテクストが多くの人の注目を集めるメインコンテクストとして認識された為に問題視されるに至ったのは事実でしょう。

通訳者に非がある…とするのは短絡的ですが、やはり実際に「付け足しをした。」という事実については、その場に相応しいものであったかを通訳者は謙虚に考えていく必要があると思います。

タイトルはセンセーショナルですが、通訳が果たす役割が大きいことを自負する態度が伺える英語ブログ記事があります。最後の文は通訳の仕事の深さを再確認させてくれて、身が引き締まる思いがします。

Translation Guy
Ken Clark CEO of 1-800-Translate on the power of translate and language
The Interpreter Who Almost Started a War
Even meticulous planning for live events cannot prevent all error.

2014年1月31日

鶴田知佳子先生 - インタビュー記事リンク

ずっと前からファンで、彼女の著書などもここで紹介したことのある鶴田知佳子先生です。

実は、先日念願叶って先生に直接お会いすることができました。(ミーハーってやってみるものかも…本当にお会い出来ました!笑)全く総括できていないのですが、昨年11月に開催したInterpretJAPAN2013の様子をお話させていただいたり、実務通訳者の横のつながり、またそこからどういった活動が望まれるのか…など、ご意見を頂いたりお話をさせていただくことができました。

以後、InterpretJAPAN2013の講演者を紹介させていただいたり、地方の通訳学校事情をお問い合わせいただくなどやり取りさせて頂く中で、先生がインタビューを受けられた様子を掲載したサイトをご紹介頂きました。

鶴田先生個人については、以前に先生が書かれていた個人ブログも頻繁に見せて頂いた時期があり、また、昨年夏以来メールをやり取りさせて頂く中からそのお人柄を知ることになりました。

(お会いしてますますファンになった訳ですが!でも、一線で活躍されている方は本当に魅力的な方が多いのです。InterpretJAPAN2013で基調講演をお願いした野口由紀子さんもそうですが、彼女ともNHK放送通訳を通じて長年のお友達だとおっしゃっておられました。)

このインタビューサイトでは鶴田先生の「通訳観」がどのよなものなのかとてもよくまとまっており、しかも先生の優しい語り口がよく再現されているな…と思います。これだけ先生が「通訳」についてご自身のことを語られているサイトを私は他に知りません。

御託はこれくらいにして、どうぞ!

BOOKSCAN 世界の本好きのために
BOOKSCAN × 著者インタビュー
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授
同時通訳者 鶴田知佳子

2014年1月25日

23. 通訳学校では教えてくれないコトー通訳者のスタンドプレー(?)

Twitterへある通訳者さんが下記の趣旨でポストしているのを見つけました。
ペア通訳者がクライアントの面倒見が過度によくて、頼まれもしないのに業務後のお買い物に付き合ったりしていた。こういうスタンドプレーは次から同じことを期待されると他の通訳者が困る…。


まず、本当に「困る」かどうかというと、恐らく実際には困らないだろうと思います。なぜなら「頼まれもしないのに」の時点でクライアントがありがたがっているかどうかよくわかりませんから(笑)でも何より、多くの通訳者はどちらかというと「”通訳業務以外のこと”はしない主義」の方が圧倒的に多いからです。(あくまでも私の印象…ですけれど。)このアプローチは正しいと思います。

そういう見地から考えれば、次に困るのは「同じレベルの過剰サービスを期待される通訳者」ではなくて「過剰サービスを期待して期待はずれに終わるクライアント」ということになり、他の「通訳者のスタンドプレー」を過度に気にすることはないでしょう。

ただここで一つ気になるのは「どこまでが”通訳業務”か?」です。この定義付けが通訳者によって違っているため、時にスタンドプレーのように映ってしまう行動もあるのかも知れません。仮に上記の例でクライアントが「買い物に付合って欲しい。」と依頼していたとして、果たしてそれがスタンドプレーといえるのか、そういう意味では難しいところです。

また、これはエージェント経由・直請けの仕事如何で随分と事情が違ってきます。

以前、やはりTwitterの投稿で
同じプロジェクト付きの他の通訳者達が、業務終了時間がくると訳してる途中でも一斉に通訳をやめて業務終了してしまい、釈然としない。
とおっしゃった方がいました。いくらエージェント仕事とは言え「訳出を途中で切り上げるなんて…!」と思ったのですが、一概にそれがひどい、とも言えない事情も考えられます。

例えば…

* クライアントが残業代を支給しない契約をエージェントと交わしている。
* 都合よく通訳者を使い倒すクライアントで、エージェントが通訳者を守ろうとしている。

などです。ただ、本来であれば途中までの通訳(訳出)は意味がないので、時間いっぱい仕事をすることを目的にするのであれば、切りの良いところまで訳出するのが当然のサービスでしょう。そうしたことを他の通訳者と話ができる状況をエージェントさんが作ってくれれば理想的ですし、たとえエージェントを介さない仕事でも他の通訳者と良い関係が築けることは重要になってきそうです。

直請けの仕事であれば(私の場合)、残業代を支給しない契約のクライアントであれば、自分の中で時間的線引をして対処ができますし、それ以外なら、後の予定が詰まっていない限り可能な範囲で残業は引き受けます。

エージェント経由の場合であれば、事前に残業の言及がなければ残業依頼された時点でエージェントに一報し判断を仰いだ上で対応することになります。

ですが"通訳業務"の定義によっては、残業以外の事情もいろいろ考えられます。

* アテンドなどでネットで調べ物をして欲しい…と言われたら?
* タクシーやホテルの手配をして欲しい…と言われたら?
* 業務後、自分も向かう最寄り駅まで案内して…と言われたら?

明らかに「通訳」行為では有りませんが、ならばそれが全部「通訳業務以外」であるかどうか、それは個人の判断です。愛想ばかりよくて技術のおぼつかない通訳は使えませんが、愛想を振りまかないまでも「一緒に気持よく仕事できない通訳」だと思われることは、やはり残念なことでしょう。

フリーランスとして稼働する上で、自分なりの”通訳業務”の定義を持っておくことは必要だと思います。そのスタンスがはっきりしていれば、同僚のスタンドプレー(?)に遭遇しても動揺することはないでしょう。

2014年1月3日

【広島】通訳・翻訳者2014年新年会のお知らせ

今年も広島で通訳者・翻訳者の新年会が開催されます!

2012年のIJET広島で出会うことのできた多くの広島および中四国地区在住の通訳・翻訳者とは今も交流が続いており、その和は広がってきていると感じます。

東京や関西で開かれている翻訳勉強会の情報も積極的にその中で交換され、昨年は東京の翻訳者が地方遠征の一環として広島で勉強会開催の音頭をとってくださいました。私は出張中で参加できなかったのですが、広島のメンバーも数名発表して有意義な会になったと聞いています。

通訳者が情報交換出来る場は地方ではまだまだ少ないのですが、今年もすでに数名通訳学習中の方が参加表明されています。お互い学ぶもの同士、得られるものもあるでしょうし、共通の悩みを見つけて励まし合える友人ができるかも知れません。

でも、あまり難しく考えずに「通訳・翻訳に興味がある!」という方も是非ご参加下さい。開催の詳細は以下のURLまで…。お会いできるのをお待ちしています。(主催は私じゃないんですが…汗)
通翻新年会2014 in 広島 だっちゃ
日時 2014年 1月17日(金)
場所 未定
http://tweetvite.com/event/2014NYP_hiro

2014年1月1日

2014年 本年もよろしくお願いします。



   皆様、昨年はどんな年だったでしょうか?私はプライベートも仕事も一昨年に引続きさらに厳しい一年になりました。プライベートでは一昨年から引続いた身内の健康問題に絡むいろいろ、十代の二人の子どもの子育て、仕事面では本格的な東京への進出、そして11月に開催したInterpretJAPAN2013への取組み、海外エージェントの新規開拓等、どれも一筋縄ではいかないことばかりでした。

新年はじめに目標を設定したわけではなく、走りながら見つけた課題を何とか片付け、チャンスを必死に追いかける日々でした。チャレンジして失敗したことも実は沢山有ります。中でもJAT(日本翻訳者協会)の理事に就任しながら、わずか4ヶ月で辞任してしまったことは期待して下さった方に対して、今でも大変申し訳なく思っています。この場を借りてお詫び申し上げます。

ですが、難しさも有りながら毎日を懸命にこなして行く中で、ぼんやりとですが会議通訳者としても、翻訳者としても自分が行きたい方向が見え来てたように感じています。

その中でも、仕事やその他を通して今までの付き合いの枠を超えて多くの方に出会い、刺激を受け、励まされたのは本当に有難いことでした。あまりブログの中で自分の個人的な感情を書かないようにしていますが、正直に書くと私は本当に怠け者です。いつも言い訳をして悩んでばかりで「前向き」という言葉がとても苦手なのです。でも、悩む事で前に進み始められる「自分」も知っています。とても効率が悪いのです…(笑)

昨年はそんな私を見かねて「しっかりしなさい!」と直接・間接的に励まして下さった大先輩が何人もいました。今年はそうやって気にかけて下さった方々に対して、少しでも「胸を張れるような何か」を自分の中に残せる年にしたいと思っています。

あらためて、本年もどうぞよろしくお願いいたします。

宮原 美佳子
ピースリンク通訳事務所 代表