2013年10月20日

ゲーマーを意識した翻訳、乙。

『グランド・セフト・オート5』の和訳スラングが面白い「乙」に「ワロタ」など

日本で10月10日に発売された『グランド・セフト・オート5(以外、GTA5)』だが、世界的にも次々と記録を塗り替えて話題となっている。

(中略)

とある『ブリッター』という『GTA5』の架空のSNSでのやりとりでネットの相手に「クソによるクソカキコ乙」「お前の赤ちゃんブサイクすぎワロタ」と発言していたと父親に報告しているシーンだ。これらのやりとりがエスカレートしてとんでもない事件に巻き込まれたのであったが……。

膨大なテキストを直訳せずにその国にあったアレンジを加えるという素晴らしい作業。昨今日本語に有料パッチを出す日本のメーカーもあるが、是非見習って欲しいものだ。
言葉が時代と共に変化し…というのは当たり前ながら、同時代にあってもある一定のコミュニティー内で使われる言葉というのは存在するものです。そういった言葉はやがてコミュニティーを飛び出し一般スラングとして使われるようになることもあるため、侮れません。例えば、その昔「デフォルト」や「〜フラグ」などはごく一部のITに詳しい人達の言葉でしたが、今は一般の会話にも随分浸透している気がします。

ですが、逆にコミュニティー内でなじまれている言葉を使わないと、その場のニュアンスを微妙に表現しきれない場面もあります。翻訳の際にそれらのコミュニティー用語を知っておくと、読み手に与える印象が大きく違ってきます。場合によっては、知らないが為に別の言葉を使い説明したものの、結局ニュアンスが正しく伝えられなければ誤訳と判断されてしまうレベルの物もあるかもしれません。

にしてもこのゲーム(私はゲームはしないのですが)…やってる人は二重に楽しいに違いないでしょうね。翻訳者グッジョブ(笑)!

2013年10月19日

ヒロシマの通訳者

谷本清平和賞:平和のためのヒロシマ通訳者グループ、代表の小倉さんに 市民の願い、世界に届ける /広島
毎日新聞 2013年10月19日 地方版

 公益財団法人、ヒロシマ・ピース・センターは16日、世界平和の実現のために寄与した個人・団体を顕彰する第25回谷本清平和賞を「平和のためのヒロシマ通訳者グループ」代表の小倉桂子さん(76)に贈ると発表した。贈呈式は中区の広島工業大で11月17日、留学生による世界平和弁論大会と共に開催する。
この小倉桂子さんの活動を取材したドキュメンタリーの翻訳に関わったことが有ります。彼女は広島では「平和のための広島通訳者グループ」の代表として有名な方です。

最初はヒロシマの語り部達の通訳として活動しておられました。自分も被爆者でらっしゃるために、被爆者の口から語られる被爆体験は彼女自身にも当時を思い出させ非常につらい思いをされたそうです。ですが、語り部たちが勇気をもって語るその姿を見て、後世に伝えることの大切さを身を以て知ったとおっしゃっていたのが印象的でした。その後、ご自身も英語で語る「語り部」となられています。

特に海外経験が長いわけでもなく、こうした英語通訳の活動をはじめられたのは40歳を過ぎてからの事とお聞きしました。「本当はあまり英語は上手くなくて恥ずかしかった。」とされながらも「伝えたい」という思いにつき動かされて英語や通訳の勉強をされて活動をされたことには、頭が下がります。

「平和のためのヒロシマ通訳者グループ」(HIP)のウェブサイトはコチラ
HIPが中心になって作っている出版物(特に「ヒロシマ辞典」)は、ヒロシマを翻訳するときには欠かせない重要な資料です。

2013年10月18日

「人の言葉」を訳すということ(通訳の二次利用)

以前、通訳批判の在り方 - ダライ・ラマ法王会見という記事を書いたことが有ります。この記事へのアクセスは比較的年間一定しており、通訳批判のあり方について、またダライ・ラマ法王のような権威のある方の通訳あるいは通訳者について一般的に興味が高いのだな…と個人的に感じていました。

そんな中、最近ダライ・ラマ方法のチベット語英語の通訳者を長く務めておられる方のニュースが掲載されていたので、興味深く読みました。全文は長いので部分的に抜粋しますが、全文はリンクからご覧ください。
By Jon Letman Posted: 10/18/2013 5:47 pm EDT | Updated: 10/18/2013 5:47 pm EDT

その中でやはり印象的だったのは、法王の言葉を語る事に伴う重責と、言葉を理解して訳出するために求められる知識量でした。この通訳者Mr. Dorjeeは法王との共著も出版するほど法王のメッセージには精通しておられます。しかし、その彼でさえ最初の通訳の場面は、法王に通訳の間違いを指摘され、重責のあまり緊張で
押し黙ってしまったとか…。

スピーカーが通訳者の訳出言語(この場合英語)に慣れているというのは、通訳者にしてはそれだけでも大きなプレッシャーです。でも、そうしたプレッシャーにさらされながら大きなミスをした通訳に、次からもオファーがあったのは何故でしょうか?
“As a Tibetan, the Dalai Lama is everything to us," he says. He is a human but also a divine being and so we put him on a pedestal. I couldn't imagine being in his presence but I was asked to translate. It was the first time and I got nervous.”

Dorjee had made a mistake to which the Dalai Lama responded with a firm "No."

“I was so scared, I had a blackout,” Dorjee says. “When I regained my senses I realized that His Holiness was speaking in English and I thought, 'Well, that was the first and last chance for me. No one will call me back.'”

But they did call back, repeatedly. By working closely with the Dalai Lama again and again, Dorjee says he was able to develop a relationship that allowed him to better understand the Dalai Lama’s way of thinking and gradually he grew more confident.
もしかすると、当初はただ単に渡米の際にチベット語英語通訳に他に適当な人がいなかった…だけかも知れません。でも、そうした偶然を大切にして法王との関係を構築し、法王の考え方をより深めることで自分の通訳に自信を持てるようになった…というのはなんとも心強い話だと思いました。

前回は、通訳批判のあり方について「いつも担当しない通訳が自分の知識を総動員し、発言を瞬時に判断して訳出したものが、いつも担当する通訳のパフォーマンスと比べて批判されるのはフェアでない。」と書きました。これが、今回のMr. Dorjee氏の発言にしっかり裏付けられていると思います。

誰か「人の言葉」を訳すという行為はそれだけ深い行為だ、といえるかもしれません。

話は少しそれますが、通訳の二次利用についてご存知でしょうか?通常、私達が会議通訳で呼ばれて行う同時通訳ですが、主催者側の都合で録音を取ることが有ります。ですが、特に事前の契約のない限り、これを公開目的で利用することはありません。なぜならば、
その現場でしか得られないコンテクストの多くが削ぎ落とされた形でしかまとめられないことが多く、さらに事前のスクリプトなくその場ではじめて行われる発言につけられるベストエフォートの通訳パフォーマンスは、何度も繰り返し再生して行う検証に耐えるパフォーマンスであることは稀だからです。

ところが、時々これをご存じない業者がこれ幸いと動画に音声をのせて流すことがあります。実際に私もこの二次利用について主催者と揉めたことが有りました。説明してもなかなか分かってもらえない、難しい問題の一つです。

2013年10月17日

GoogleのNgram Viwer

GoogleのNgram Viwerご存知だったでしょうか?

Google Updates Ngram Viewer With Improved Search Tools

言葉は時代と共に変化するというのは周知の事実ですが、時代と共にどのように変化してきたのかを確認することができるのがこの、GoogleのNgramViwerです。この機能に新機能が加わり、さらに使いやすくなったというニュースです。

実は今までGoogleNgramについて知ってはいたものの、翻訳する場面で特に役立てようと使ったことは有りませんでした。でも、とにかく使ってみました。

接続副詞として「さらに」「加えて」の意味で使われる語を幾つかランダムに投入してみました。文頭に来る場合に限定し、最初の文字は大文字で検索。通常、書き言葉での頻出語としてはFurthermore、Moreoverが一般的だとされています。ところが…


個人的にIn additionはより口語的で、字数の面から考えても不利だと思っていたのですが、近現代以降は圧倒的にIn additionが群を抜くようになっています。一方、19世紀には圧倒的だったBesidesは近現代に入るとFurthermore、Moreoverにさえ譲る形で使用頻度が低下しているのが分かります。

使用語彙や表現には時代の流れだけでなく地域的な特色もあるでしょうし、その時々の時代背景を考えて読み解くことが必要になってくるとは思われます。しかし、それにしても書き言葉の適切性の指標としては大いに役に立ちそうです。

2013年10月7日

明海大学「通訳と翻訳の世界」イベント

明海大学(学長:安井利一)では、10月19日(土)に浦安キャンパスで「通訳と翻訳の世界」をテーマに公開講座を開催する。当日は、立教大学特任教授で国立国語研究所客員教授の鳥飼玖美子氏による「通訳者の役割 -透明な存在か、文化の仲介か」、株式会社静山社会長・翻訳家で「ハリー・ポッター」の翻訳者としても名高い松岡ハリス 佑子氏による「言葉の魔法 -ハリー・ポッターの翻訳者として」と題した講演、また同大外国語学部英米語学科教授・山岸勝榮氏および同学科准教授・小林裕子氏をまじえたパネルディスカッションを行う。受講料無料、要事前申し込み。
宮原はこれに行きます!鳥飼先生には随分長いことお会いしたいと考えていましたがなかなかその機会を得られませんでした。やっとやっと…!という気持ちです。若い子がアイドル芸能人のコンサートに行く時にはこんな気持なのでしょうか(笑)。 春に上梓されたご著書「戦後史の中の英語と私」を持参して、サインしていただこうと思います。



そして、鳥飼先生のみならず通訳者としても以前はご活躍されていた松岡佑子さんのご講演もとても楽しみです。通訳だけでなく、翻訳を同じステージ上で語るイベントというのは近年かなり珍しいのでは無いでしょうか?お席にはまだ多少余裕もあるようですので、ご興味のある方は是非足を運んで見て下さい。会場でお会いしましょう!