2012年3月24日

公開シンポジウム「裁判員裁判経験の法廷通訳人が語る」レポート その3

-通訳人の保護、現状は?

このように、法廷通訳人をめぐる直接的な報酬/クオリティーの問題に加えて、法廷通訳人自身が全く保護される立場にないということもトピックに登りました。

ある通訳人は、地方の裁判所での裁判の帰路にJRしか移動手段がないため、法廷を傍聴した関係者が全て同じ電車で帰らざるをえず、電車の中で記者に「どう思うか?」などと詰め寄られて困ったというエピソードを語りました。

また別の通訳人は、被告人から直接自宅に手紙が届き「自分の個人情報がどこから漏れたのだろう?」と怖くて仕方が無かったが、結局調べてわかったのは接見時警察に渡した名刺が、安易に被告人に手渡されていたという事実だった…ということでした。名刺そのものは被告人から取り返したものの、情報の控えを取られていたらと思うと恐ろしくて仕方が無かったそうです。

このように、事件を扱う法廷という場に非常に微妙な立場でかかわる事になる通訳人に対して、人身及びプライバシーの保護という観点から、まったく不適切な状態に法廷通訳人がおかれているということがよく分かる事例でした。

公開シンポジウム「裁判員裁判経験の法廷通訳人が語る」レポート その2


相通訳人によるチェック機能について

男性通訳人の訳出の正確性はさておいても、男性通訳人が訳した先から、女性通訳人が割って入り修正を行う場面が頻発していました。実は私もこの鑑定書には目を通したのですが、進行するにつれその介入度が増して行くのがよく分かりましたし、明らかに男性通訳人がストレスを感じて通訳に集中できなくなっている様子が手に取るように分かる内容でした。おまけに、修正した女性通訳人の訳が間違っている…ということも発生しており、男性通訳人の混乱ぶりはなかば気の毒な程であった…と記憶しています。

「チェック機能としての相通訳人」はよくいわれることですが、これは実は現実的ではありません。なぜなら、相通訳人が通訳をしている間に自分は通常休む、負荷を取り除かれることが相通訳人(ペア通訳)の本来の目的であるはずだからです。会議通訳においては実際それが基本です。

公開シンポジウム「裁判員裁判経験の法廷通訳人が語る」レポート その1

先日3月20日(火)に開催された「公開シンポジウム『裁判員裁判経験の法廷通訳人が語る』」に参加してきました。当初、仕事が入っていたので参加できないことを残念に思っていたのですが、急遽キャンセルが決り参加を決めました。残念ながら東海道新幹線管内で発生した人身事故の影響で新幹線が大幅に遅れ、第二部のパネルディスカッションからの参加となりました。
クリックで拡大します

2012年3月10日

11. 緊張感のコントロール

よく翻訳を専門にしている方に「通訳なんてあんなに緊張する作業私にはとても無理です。」と、言われます。それに対して「私ものすごいアガリ症なんです。」と切り返しても全く信じてもらえないことが殆どです。

私は本当にアガリ症です…と繰返して言うと余計信じてもらえないかも知れません。でも、通訳に限らず、小さい頃から本番に弱いタイプ。できる準備をきちんとこなしていなければ、その事が心理的な負担となって緊張し、どんなに準備/勉強していても逆に気負いすぎて緊張してしまうことはしょっちゅうです。

通訳学校に通っているころからそのアガリ症は災いしていました。先生に当てられると「自分はできない…。」という気持ちで頭が真っ白になります。(落ちこぼれ時期が長かったので…)そして十分に予習していったときでさえ、上手くやろうとしすぎて結局カミカミになり、準備したことの半分の成果も出せないのはいつものことでした。

そんな調子ですからはじめて通訳として仕事をはじめたときの様子は想像に難くないと思います。もうカチンコチンです。メモをとってない左手がブルブル震えるのを見てしまい、ペンをもつ右手まで震えはじめメモが取れなくなってしまったこともありました。今思い出すだけでもアガってしまいそうです。そのくらいアガリ症です。

ではそれをどうやって克服すればよいのでしょうか?最近Twitterでこんな内容の発言を目にしました。(正確な引用ではありません。)

人前で緊張しないのは、若い頃に演劇をやったことが役に立っている。 通訳コースの最初のレッスンに、寸劇が入っているのを見て大いに納得した。
なるほどな…と思う一方、これだけだと「人前で緊張しなくなれば通訳の場面でも緊張しなくなる。」と勘違いされないだろうか?と思いました。

2012年3月8日

2012/03/17 IJETプレイベント 翻訳セミナー in 福岡

すっかりご案内が前後してしまいましたが、IJET23運営委員会では福岡で最後の翻訳セミナーを行います。前回の高松翻訳セミナーは大変好評のうちに終わることができました。

今回はJAT会員である地元福岡の翻訳者ベンジャミン・トンプキンス氏を迎え、翻訳をはじめようと考えている人だけでなく、既にプロとして稼働している方にも興味深い話題について語って頂きます。私も個人的にとても楽しみにしています。

そして、この翻訳セミナーでは私、宮原がMCをつとめさせて頂きます!「宮原ってどんなヤツだ?」と思っているそこのアナタ!福岡で私を観察できるチャンスです(笑)

今回、IJET23 運営委員会が行ってきたプレイベントはこの福岡の翻訳セミナーと先に案内している広島の通訳セミナーをもって終了です。実はこれまでの毎年のIJETイベントでここまで精力的にイベントを開催した年はありませんでした。

運営委員会側も最初は怖々…だったのですが、皆さんからの反響を見るにつけ「やってよかった!」と思うことが多く、地方における翻訳者/通訳者のネットワークが随分広がったのでは無いかと思います。(過去イベントの反響についてはコチラの「参加者の声」をご覧下さい。)

運営委員会としてはこれから本番IJET23開催に向けて準備を加速していきます。プレイベントをはるかに上回る国際会議になると確信していますので、皆さんIJET23へもふるってご参加下さい。

セミナーと交流会の出欠確認の為、こちらからお申込みよろしくお願いします。

広島通訳 Tea Salon を開催します

例年、3月の決算締め月に向けて皆さん予算を使い切ろうとなさるのか、2月中旬から通訳業界は多忙を極めます。そんな中、 なんとかかんとか確定申告を終わらせて、週末にほっと一息ついているところです。 このブログのオーナーである私は、今でこそ東京住まいですが、出身の広島には頻繁に帰省して...