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2011年11月3日

翻訳の品質

その他多くのサービスがそうであるように、翻訳には「翻訳(サービス)を享受する人が納得出来るレベルの品質が担保されている」というのは大前提です。どうも、それがあまりに当たり前すぎて、見落とされているケースが最近多い…という印象です。

先日、あるIT系のサイトのニュース記事翻訳が「まるで中学生が辞書と首っ引きでやったような翻訳だ」と叩かれている、という情報をTwitterで拾い、私も実際に見に行ってみました。

残念ながら全くその形容の通りで、機械翻訳を使ったのではないかと多くの人が推測するのも無理からぬ品質でした。いずれにしても、翻訳者の力量、翻訳者への(限られた?)報酬、翻訳時間、訳文品質のチェック体制等様々な要因がそれぞれ複雑に絡み合った結果だ、と言えそうです。

これ以外にも業界にいれば「全く酷すぎて使えずやり直した…」という話はよく耳にしますし、一般にもこの夏には「アインシュタイン-その生涯と宇宙-下」の出版で機械翻訳が使われ、全く読めない日本語の書籍が出版されてしまったことは記憶に新しいところです。

このIT系サイトの場合、専属翻訳者を数名雇っているようです。しかし、一般的に翻訳を依頼する場合は翻訳会社へアプローチして、コーディネーターと調整したのち、翻訳者へ依頼…というプロセスを経ます。もちろん、最終訳文は翻訳会社のチェックを経て依頼者へ返されることになりますから、そこで品質が担保されるというプロセスは少なくとも存在しています。(機能しているかどうかは別にして…)

しかし、そのプロセス全部あるいは一部WEB上で対応できるサービスが幾つか登場しています。以下のサイトもその1つです。おもしろいことに、プロセス効率化について触れられていますが、訳文の品質をどう担保するのか?ということには一切触れられていません。


翻訳システム開発で525万ドルの投資獲得…myGengo

翻訳サービス事業を展開する myGengo は、2011年9月2日、ベンチャーキャピタルとして著名な Atomico や 500 Startups から、525 万ドルの投資を受けたことを公表した。

 同社は、すでにヨーロッパの投資グループや個人投資家から175万ドルのシードラウンドを受けていた。今回、独自の翻訳システム開発の成功を受け追加投資が決定したという。

 現在、社内に翻訳者を雇うことはコストの面から困難になっている。だが、Google翻訳をはじめとする Web 上の無料翻訳機能では企業の翻訳ニーズを満たすことはできない。

 myGengo は、こうした翻訳業界の問題を解決するために、新しい翻訳システムを作りだした。

 翻訳産業は、この20年間で劇的に料金が下がった業界の1つだ。多くの分野で翻訳価格は従来の2分の1以下になっている。分野によっては10分の1程度にまで落ち込んだものさえある。

 また、産業翻訳では、多言語対応が増加したのも特徴。日本語から英語への翻訳では終わらず、日本語から英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、スペイン語の各言語への翻訳が要求されるのが普通になっている。また、最近は BRICs諸国への対応も必要となりつつある。

 これらに対応するため、翻訳会社の翻訳コーディネーターと呼ばれる人材には負担が強いられてきた。翻訳料金が下がったことで翻訳者の確保が困難になっただけではなく、海外の翻訳者との連絡を取るため、早朝、深夜の勤務も増加していた。

 翻訳会社も様々な企業努力を行ってきた。

 たとえば、ある翻訳会社はスペインのバルセロナに支社を設立した。同地にはバルセロナ大学があり、優秀でしかも複数のヨーロッパ言語に通じた学生が集まっている。だが、バルセロナの若年者層の失業率は40%を超えているため、こういった新卒学生を驚くほど低い賃金で雇うことができる。

 日本では、同じ理由で札幌に支社を作るのがトレンドになりつつある。同地も、北海道大学の卒業生など優秀な人材が豊富であるにも関わらず、失業率の高さから安く優れた人材を雇用できるという。

 myGengoのシステムは、このような翻訳会社の問題点を、コンピュータを使った翻訳システムによって解決する。同社のシステムは、翻訳を依頼する企業との窓口、翻訳者への連絡と進捗管理、完成した翻訳の納品などの業務を、コンピューターシステムを使ってある程度まで自動化する。

 これにより、翻訳会社の雇用問題と、翻訳コーディネーターの長時間労働問題が解決される。コンピューターによる翻訳システムは、世界中の顧客からの依頼に24時間対応できるからだ。

 myGengoの翻訳件数はトータルで1,500万語にのぼり、収益は過去12ヶ月の間に1,000%増となっているという。同社の翻訳システムは、翻訳業界を一変させるかもしれない。

(2011年10月19日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/net/news/internetcom/20111019-OYT8T00295.htm
効率化は大いに結構です。しかし、「品質をともなわない翻訳」はもはや「翻訳でない」ことを、翻訳者含め関係者全員が認識を新たにする必要が有るように感じます。そこには年々下がり続けているといわれる翻訳報酬の問題も見え隠れします。上記の記事を見ると、特に企業側は品質を通じてそうしたことを真剣に考える時期に来ているのかもしれません。

一方、私達翻訳者自身ができることは、やはり「高品質に仕上げて納品する。」ということになるでしょう。それは、翻訳者自身が翻訳技術を磨くこと、顧客のニーズに沿った翻訳を心がけること、可能であれば第三者の目を追加するということ、品質を担保できるレベルでのスケジュール管理等、いろいろ考えられます。

少なくとも、自分の名前が公表される事が分かっているのであれば、サイト運営者の責任の下で公開されるにしても「文責は訳者」というのが一般的です。最善の策を尽くして品質を仕上げていく…という結局「翻訳者がやるべき当たり前のコト」にたどりつきます。

でも、当たり前のコトができていない翻訳者がいるから、品質の悪い翻訳が表に出てしまうわけで…

いつも通り「最善を尽くす」しか無さそうです。