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2011年5月5日

ニーズ高まるコミュニティー通訳

今年に入ってからコミュニティー通訳のニーズの高まりが顕著に見られるニュースが相次いでいます。でも、日本が本当にサービス大国としてこれからの復興にかけていこうとするのであれば、通訳要請のあり方や通訳者の身分保障について、行政サイドの足並みのそろった取り組みが必要だと思います。最近のいくつかの出来事から、こうしたことを強く考える様になりました。

厚生労働省が医療観光を全面的に打ち出して以来、大手通訳学校をはじめとした通訳養成機関では医療通訳になることを目的とした講座開講が目白押しのようです。医療通訳とは何か?といったようなセミナーも最近は聞かれるようになりました。

基本概念は、日本の進んだ医療技術を”売り”にして海外から観光客を呼び込みお金を落としてもらう、というものだと理解しています。日常生活でさえことばの壁は厚いため、医療機関での稼働に対応できる通訳の育成は尚更急務です。

一方で日本国内の医師不足という現状が有る中、むしろ日本人が通貨メリットのあるタイへ医療観光するパターンがあるとも聞きます。タイ語日本語の医療通訳スタッフが現地タイの病院には待機しているため、日本人が治療・検査を受ける際にも不安はありません…というインタビューをテレビなどで繰り返し見た記憶もあります。

2月に発生したニュージーランド地震での行政記者会見に手話通訳が付いていたことが注目を浴び、日本でも東北関東大震災関連の枝野長官の会見に途中から手話通訳者が付くようになったのは、記憶に新しいでしょう。公に対するサービスとして提供される手話通訳は、上記で述べたコミュニティー通訳と少し違うかも知れませんが、通じるモノは大いにあるでしょう。

しかし、手話通訳者はいまだ「ボランティア通訳」という側面が強く、手話通訳を職業として生計を立てている人は稀なようです。報酬体系も確立されていません。手話通訳サービス利用者が通訳サービスの利用を全額負担する…というモデルは、どう考えても利用者に負担が大きいため、本当はこうしたサービスの提供・体系の整備は、行政がリードしていかなくてはいけないと思います。

同じような話で思い出すのが司法・法廷通訳です。法廷通訳も社会奉仕的の意味合いが多分に含まれており、報酬体系は明確でなく、もらってみるまで報酬がいくらか正確には分からないそうです。これがここ10数年変わらない状況である事は、先日の中西さんのUstreamの中でも話がありました。

そんな中、期せずして東北関東大震災が発生しました。東北関東地方で被災した外国人のための通訳もボランティアを募る動きがあちらこちらで見られます。この場合、医療機関での通訳はもちろんですが、公共機関への問合せ、或いはその他の情報にアクセスするためのサポートといった、もっと広い意味でのいわゆる「コミュニティー通訳」がボランティア募集対象になっています。

地震とは関係なく、コミュニティー通訳を地方自治体や民間組織で募集する動きは以前からあります。しかし報酬が書いてあればよい方で、明記していないものもあります。明記してあってもかなり残念な金額です。

どんなに良いサービスを提供できる人材がいても、その人の生活がままならないような報酬体系では、サービス提供者がプロの仕事・職業とすることを諦めてしまう場合が出てくるのは当然のことです。持続可能なモデルが必要です。

以前ついたアメリカ人上司は日本をこよなく愛した人でした。そして彼がいつも言っていたのは、日本のサービスレベルの高さこそが、日本を経済大国に押し上げた、ということです。でも、製造業に勤めていてサービスレベルが…?ってどういうこと?と思っていましたが、彼曰く「常にサービスを受ける人(相手)の立場に立った行動ができる国民性が日本人にある。」とのこと。そして、彼が上海出張に出るときに、多くの外資系有名ホテルに目もくれず、必ずホテルニューオータニに宿泊していたのは、サービスの高さを評価していたためでした。

製造業にしろサービス業にしろ、そこで発揮される相手の立場に立って考えることができるという国民性は、私たちが先祖から受け継いできた大切な財産です。今回の震災で海外から注目された日本人の気質にも大きく通じる部分でしょう。

日本が長く続いた経済難と震災からの復興を果たして行くには、よその国には真似できない日本人らしさを活用すべきですし、簡単に真似されるようなモデルでは先行きは明るくないでしょう。

そうした復興をはかるためにも、行政がもう一度原点に立ち返って、高いサービスを提供できる日本を実現するためにはどういう仕組み作りが必要なのかを考え、取り組み、民間をリードすることが重要だと思います。

コミュニティー通訳においても、手話通訳者や法廷通訳者の厳しい状況の轍を踏まないためにも、市場の遅れた認識のままに任せておくべきではないと思います。サービスが公にもたらす利益をしっかりと定義しなおして、国民が納得できる政策を先手をとってトップダウンで進めて欲しいと思います。